「まだ終わらんぞ、スカーレットォォ!貴様と決着をここで付けてやる!」
「ナイトウォーカー…」
「一隊長に過ぎないお前がエドラス王国王子の私に刃を向けるつもりか?エルザ・ナイトウォーカー」
「くっ!」
1人激昂するエドエルザを諭すように話していたその時、どこからか国王の声がこだまする。
『貴様を息子となぞ思って居らぬ、ジェラール』
「王様だ!」
「どこから!?」
『知っておるぞ、姿を眩ませてた7年もの間、お主がアニマを封じて回っておったことをな。この売国奴が』
「あなたの計画は失敗した。もはや戦う意味もないだろう?」
その時、大地から1つ大きな振動が伝わった。
『腑抜けたことを…これは戦いではない』
森から聞こえるその音は大地を踏みしめ、空を揺るがす。
『王に仇なす者への一方的な報復…すなわち殲滅。ワシの目の前に立ちはだかるなら例えお前だろうと跡形もなく消してくれる』
「父上…!」
『父ではない。ワシはエドラス王、我が王国の力に不可能などない!』
王の乗るその機械の名は『ドロマ・アニム』、強化装甲をつけた竜型の二足歩行ロボットだ。
「あれは外部の魔法を無効化しちゃうから相手にするだけ無駄だよぅ!王様は中で操縦してるし!」
『この鎧の力で貴様らを滅ぼせば何度でもエクシードを融合できる。さあ、我が兵よエクシードを捕らえよ!』
レギオンの大群、武力と数の圧倒的力量差になすすべもなく次々にラクリマへと変えられていく。エクシード達は逃げ惑うしかない。
「王国軍から皆を守るぞ。ナイトウォーカー達を追撃する!」
「そっちは…任せても良いか?」
「どうしたの?」
「…ケリをつけにきたか。そこで待ってろ」
「ここで最後にしましょう。あんたを倒さなきゃ先に進めないわ」
指差した先には部隊のほとんどが伏せているのか、単騎で待ち構えていたジェニファーの姿があった。もはや退くことは叶わない、前に進んで終止符をうつのみという覚悟の表れだ。
「あんたはあたしの手で冥土に送るわ。王に反逆したんだ」
「…お前を倒してアースランドに帰る。仲間と共にな」
「さあ…決めようじゃないの」
2つの信念、2つの誇り、2人の力。
「「どちらが正しいのかを!!」」
進む道は違う。故にぶつかる。その道の先にある己が描く未来に進むのはただ1人。武器と武器がぶつかり、火花が散る。その後も何度もしのぎを削って武を振るう。
「あんた、なぜあたしたちの邪魔をするんだ?」
「仲間の命が掛かってんだ、当たり前だろ。お前も魔力と国のために体張ってるんじゃねえのか?他に手はなかったのか、魔力を作り出す策は…」
「陛下が正しいとおっしゃるならそれが最善に決まってる。陛下のおっしゃる事が正義だ、それを信頼してついていくのが我々の務めだ」
「それじゃあ、なおさら止めさせてもらうぜ、もう1人の『俺』よ!」
こうなってはこの相手は魔力がなくなるか倒れるまでは止まりはしない。それだけの覚悟はあると感じたジンヤは相棒を握る拳に一層力が入る。
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その頃、ミストガンは密かに王都に向かおうとしていた。その隣には負傷したパンサーリリーもいる。
「怪我は大丈夫か?」
「ええ…なんとか。王子、これからどうなさるおつもりで?」
「この国にとっての最後の仕事をする。そのためにも君の力が必要だ」
「私の、ですか?」
「ああ、一緒に城まで行こう。総仕上げだ」
森を抜けた2人は王都の城へと急ぐ。
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2人のマーナガルムの衝突は続いている。今までの戦いの傷からか、長くなる衝突ゆえか流石に息が上がり始めている。
「つぇあ!」
「はぁ!」
それでも止まろうとせず、もはや死合いの領域にまで達しようとしていた。流れた血が多く、視界がぼやけ始めてもいた。お互いに武器を使い、能力を使ってひたすらに殴り合う。どちらが倒れてもおかしくない。
「このままじゃ、ケリがつかんな…」
「そうね。なら…これで終いにしましょ」
そう言って手元にある武器を組み替えると、禍々しいほど黒い太刀へと姿を変えた。
「獄刀『エペタム』。私にしか扱えぬ血染めの妖刀よ」
「…仙法『獅子奮迅』、そして『斉天の剛腕』。俺の相棒、猿翁の力だ」
「あんたの最高の力ってわけね…気分が高揚するのが分かるわ!」
「終わらせようぜ、ここでな!」
身体が壊れようと、勝つ。その覚悟が正面からぶつかり合う。
「息の根止めてやるわジンヤ!」
「お前はそこで寝てろジェニファー!」
「「うおおおお!!!」」
最強の力がぶつかり、衝撃の大きさを物語るように2人のいる浮遊島が少しの足場を残して全て崩れ去っていた。
「わ、私の刀をいとも…容易く…」
「諦めな、テメェの負けだ」
深すぎる傷と限界まで酷使した身体が悲鳴をあげ、2人してその場に倒れこんでしまった。
「なんだい。あんたもボロボロじゃないの?」
「誰のせいだと思ってんだ…2度とこういうことはすんなよ、良いな?」
「陛下になんて言えば良いのさ。この国ではあの方は絶対だぞ?」
「その意識は変えろ。真に国を思うなら上を止めることも必要だぞ」
「そういうもの…かしらね」
島が崩れ、魔力のバランスが不安定になったからか、次第に堕ちはじめていた。周りを見ると光のようなものが空へと流れている。
「ま、魔力が…還っていく。私たちの…唯一の、希望が」
「何が起こってんだ?他の島も堕ちてる?」
「これからどうやって生きていけば…」
「ミストガンが何かしたのか?」
空を見上げると大きなアニマがあちこちに空いている。さっきまで使えていた魔法が次々に壊れ、街の方では混乱が起き、収集がつかなくなっている。
「どうなってるんだ!噴水が止まったぞ!」「火の魔法が壊れたわ!」「風の魔法もだ!」
生活用のものが使えなくなり、商売用のものも容赦なく壊れ、頭を抱えるものもいた。
「これからどうやって生活すれば良いんだ…」「もう終わりだ…」
国のあちこちでこのような悲鳴が聞こえてきた。
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「王子、これで良かったのですか?魔力をなくすなんて…」
「この国は一度滅ぶほうがいい。魔力なき世界で生きていかねばならないからな」
ここは城内部にあるアニマ発生装置前。魔力をアースランドに戻そうとしていたミストガンとリリーの姿があった。
「それには悪役がいる、魔力を奪ったという悪役が。その役は魔法を奪った元凶の私が責任を持ってやる、今後のことはリリー、君にまかせようと…」
「本気でおっしゃっているのですか、王子?責任を感じるならあなたが導くべきです!この世界を憂い、想えるあなたが!」
「それでは示しがつかない」
すべてを背負って悪になろうとするミストガン、背負うならば前に進むべきというリリー。二人の議論が平行線をたどっていると、一人の兵士があわてて部屋にやってきた。
「隊長、大変です!町に暴徒化しているものがいるとのことです!」
「混乱が広がってるか。分かった、ありがとう。王子、どうなさいます?」
「止めに行こう。私もいく」
「えっと、この方は?」
「後で話す、それより暴徒の数は?」
「三人です!我々近衛師団が鎮圧に行ったんですが大半がやられまして…」
王宮のバルコニーから外を眺めると、そこにはナツたちと戦いに敗れて囚われの身になっている国王がいた。
「あれは、ナツ!?」
「どういうつもりだ?」
「ぼきゅが教えたんだ。君たちの会話を聞いちゃったからね」
「ナディ様!?じゃああの者たちは自ら悪役を?」
「君たちも覚悟したほうがいいよ、もうすぐ世界が変わる」
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周りの魔力と反応しはじめ、空のアニマに吸い寄せられる前に身体が光に包まれていく。
「どうやらお別れみたいだぜ、俺たちも」
「すまないね、最後まで迷惑かけたよ」
「何を謝る?俺たちは敵だぞ?」
「関係ない…それと、ありがとうジンヤ」
「じゃあな、ジェニファー。もう会わないといいな」
体を光が包み徐々に空へと流されていく。これがエドラスでの最後の会話となった。