それでは、本編どうぞです!
「(この一振りであのバケ猿との因縁も終わる!私の失った過去との決別だ!)」
====
遡ること5年前、マグノリアから少し離れた場所に小さな集落があり、そこでは何事もなくただ平和な時間が流れていた。
「お母様、野菜取ってきたよ!」
「良くやったわ、頑張ったわね」
この集落で暮らす者たちは争うこともなく、各々好きなように過ごしていた、ごく普通の人々だった。
だが平穏は長くは続かない。厄災は突然に訪れる。
「隣の村が怪物にやられたらしい」
「またか。これで何回目だ」
「何人か死んだそうじゃねえか」
「ここに来なきゃいいけど…」
この集落の付近で次々に村がバケモノに破壊されるという災害のような事件が起きていた。
「お母様、何の話です?」
「貴女は何も知らなくていいわ。ほら、早く寝なさい」
真剣な表情と流れる不穏な空気に戸惑うが、それ以上は話さないと言う母の言葉を素直に聞き、涙目になりながら家に戻った。その次の日から集落では重苦しい空気が流れた。
「評議会も近隣のギルドも取り合おうとしなかったよ」
「見殺しにするつもりか」
「我々のような小さな村では仕方あるまい」
「全員は無理だが、子供と母親たちだけでも避難させよう」
武装なき村が襲撃を受けたら反撃できないことは火を見るより明らかだった。犠牲者を1人でも減らすつもりだ。
「でも…」
「大丈夫だ。お前たちなら生きていけるさ」
それが平穏と呼べる最後の日となった。集落の数少ない少年少女とその母親たちは怪物の現れない内に村を離れた。
「なんで逃げなきゃいけないの?」
「変なバケモノが村の近くに現れたんだと。父ちゃんがそう言ってた」
山の上を見やればそのバケモノが暴れているのか、所々で火柱が上がっており、激しい地鳴りが轟いた。
「そんな…家が、村が……」
驚く彼女たちの元に厄は非情にも襲いかかってきた。
「主ラノ血ヲ寄越セ!」
「こんなに早く…」
「ユマ、逃げなさい」
「で、でもお母様…」
「最後まで良い子で聞きなさい。これが最後のお願い…さあ、早く!」
ここで別れたらもう会えない、そんな不吉な予感がしていたが、涙をこらえて、振り返ることなく走り続けた。そして逃げること数時間…集落も遠くになり、あのバケモノも何処かへと姿を消していた。一緒に逃げていた子供達も結局、自分を逃がすために犠牲になってしまった。
「お母様、皆…この恨み、魂魄尽き果てようと必ず晴らします!」
逃げ延びた最後の少女は月夜に照らされた小道を1人、生きていくために只ひたすらに歩いた。
それから数ヵ月、孤児院で暮らしていたユマの元に初老の男が訪ねてきた。その風体からは尋常ならざる雰囲気をつくりだしていた。
「魔法?私が?」
「お主なら深淵の魔法に近づけよう…その名も『呪音』、音の魔法だ。ワシとともに来れば仇に出会えよう」
「私の…仇…」
「左様、お主の親を殺めた孫悟空に…」
その時からだった、1人の少女が仇を討つために深淵の魔法に染まったのは…。
====
「これで終わりよ…」
怨恨の篭った一振りは勢いよく振り下ろされた。
「舐めるなよ小娘」
「なっ!?」
幻術にかけられて動けないはずの男が刀を止め、あまつさえ喋ったのだ。あまりの出来事に冷や汗が止まらない。
「(どうやって!しかも刀が離れない!)」
「ジンヤのやつ油断しやがって、全く…」
眠る男と心身を入れ替えた悟空の目覚めの時だった。
次回からはジンヤ→悟空に選手交代です。