それでは、本編どうぞ!(次から原作の流れに戻ると思います)
「(こいつ、どうやって今の一瞬で入れ替わった?)」
「(動きが鈍った…好機!)」
「グッ!」
「逃がすか、ってのぉ!」
突然の変身に動揺した隙を狙い、重くて素早い拳を何度も振り抜いていく。
「(しつこいわね…
「なんじゃこれは…粘液か?」
「(動けずに徐々に苦しむがいい…)」
粘土のように絡みつく水が徐々に動きを奪い、そして気づけば周りの森をも包むほどの濁流になっていた。
『我に水中を動く活力を…閉水の術!』
「これもダメか…」
そんな濁流をも割って現れ、ユマをなおも驚かせる。危機を感じた彼女は自分の寿命さえも蝕む禁術に手を出す。
「呪劇『死屍操演』。出でよ、死霊たち!」
ユマの一声に反応し、地中からは何十という異形のものどもが唸り声をあげて這い出てくる。
「(なんて数だ、覚悟ありか…)」
「これで終わりよ!」
緊迫した空気が流れる中、先に動いたのはユマのバケモノだった。何体も寄ってたかって暴れ始めた。
「危ないのう。死ぬかと思ったわい」
「余裕で避けておいてそれはないでしょ…ってね!」
「(さっきより疲れが見えておる。体力の消耗が激しいみたいじゃな…早くケリをつけてやるか)」
己が力を示すように寄ってくる有象無象を次々に蹴散らし、怪力乱神が如き立ち回りを魅せる。
「(これ以上壊されてたまるか!)…第二幕『紅月舞踏会』」
次々に倒される化け物を見てもまだ冷静なユマはすぐに気持ちを切り替え、残った二十体程に火を纏わせる。
「(退かぬか。ならば、こちらもやるしかないのう…)『身外身の術』!」
自分の体毛を抜き、力を込めてばら撒くと自分と同じ姿の者たちが本体の悟空を囲むように現れてユマを驚かせる。
「分身?(こいつ…変わっているな)…
「行け、ワシの分身たちよ!」
死せる怨霊と生ける猿魔の勢力は大きな衝突を起こし、一進一退のせめぎ合いの様相を呈していた。
「さて、お主の燃える人形はワシの分身たちが遊んでくれよう。その間、この孫悟空と戦って頂こうか?」
「貴方は親の仇、そして故郷を奪った化け物。生かしては置けない…」
「ならば、全力で参られよ」
「そのつもりよ、最終幕『鬼神阿修羅』」
死なば諸共。そういった気概を示すように命を生贄にする禁術の最後の形態を己が身にかけ、赤い蒸気が噴き出す。
「それがお主の覚悟か。本気で行くぞ、大武仙『闘将・軍鶏』!」
髪が逆立ち、トサカのように一部が黄色く光る。
「終わらせましょ?」
「当たり前じゃぜ…」
一陣の風が両者の間を吹き抜け、静寂が流れる。風に吹かれた一枚の葉が落ちた時、2人は同時に動き出した。
「はあぁああぁ!!」「でりゃあぁあ!!」
様々な思いがこもった拳が交錯した。そして最後まで立っていたのは、悟空の方だった。
「私は…この程度の、存在だったの?」
「…済まぬな、お主の親御さん達のことは全てワシの責任よ。じゃが死ぬ訳にはいかぬ」
地に倒れ、天を仰ぐその目にはほとんど生気が無く、もはや生きることは叶わない状態だった。
「お母様と暮らす幸せは、大魔導世界は…すぐそこにあったのに…ハデス様、申し訳ありません」
亡き母への想いとハデスへの謝罪を口にした途端、命の糸が切れてそれ以上は動かなかった。そんな彼女を見て、改めて自分にのしかかる罪の重さを実感するのだった。
「(これがワシの罪、か。己の非力さゆえ、大勢の家族を壊してきたんじゃな…)」
最期まで仇を忘れず、全力で来た少女の姿に、何かを魅せられた気がした。最後に自分の罪を気づかせてくれた少女の亡骸をそっと側の木に預けた。
「済まない、名も知らぬ少女よ。ワシは…」
『生きろ、悟空。お前がやったことは自分で償うしかないんだよ』
「相棒…」
『殺めた分はこれから助けていけ。例え消せなくとも、それがお前にとって罪への清算になると思えるならな』
「そうじゃな…とりあえず交代しようかのう、ワシは疲れた」
『全く…ま、おかげで助かったがな。ゆっくり休みな』
罪を見つめ直そうとする殺戮を繰り返した者と、憎しみに囚われて最期まで戦い続けた少女の決戦はここに終わりを告げた。
はい、というわけでユマ戦終了です。次は華院戦になるかと思います。