FAIRY BEAST   作:ぽおくそてえ

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どうも、ぽおくそてえデス。VCのポケモンやってたら時間かかっちゃいました、すみません。今回は字数多めです。

それでは本編どうぞです!


第89話 束の間の平和

「黒魔導士の伝説、ここに潰えたり」

 

少しの隙を見逃さず、邪悪な者を葬り去った。先ほどまで脅威を振るっていた伝説と言われた男の亡骸が静かに横たわる。

 

「さすが伝説だ、死ぬかと思ったよ。だが、勝ちは勝ちだ」

『ルミナ殿が待っておるじゃろ、報告に行くとしようかね』

 

彼の死亡を確認し、背中を向けて去って行く。そして一言、小さな声で骸に声をかけた。

 

「お前とは仲間として話したかったよ、ゼレフ」

 

夜明けをその目に焼きつけながら、仲間の無事と勝利を信じて墓へと向かう。

 

「助かったよ、悟空。おかげでなんとか勝てたよ」

『危なっかしいやり方じゃったな。奴が油断しなけりゃ死んどったぞ?』

「…俺もまだまだだな」

『精進せぇよ。ワシとて、いつまでもいられる訳じゃ無いからのう』

 

危険な戦い方をしていたことを改めて実感し、背筋が凍った。生きて帰れた奇跡を身を以て知ったジンヤは複雑な気分であったが、これ以上深く考えても仕方ないと先に進む。

 

「…とりあえず報告だ。それにナツやルーシィがどうなってるか気になるしな、キャンプに戻ろうか」

『はぁ…本当に分かっとるのかのう?』

 

話をスルーして歩く相方に呆れ、溜め息を吐く悟空をよそに歩いていると目的の墓にたどり着いた。そこで待っていたのはルミナではない、綺麗な金髪を持つ小さな幽霊だった。

 

『話はルミナから聞いています。貴方がジンヤさんですね?』

「え、ええ。確かにそうですが…失礼ながら、どなたです?」

『私はメイビス、メイビス・ヴァーミリオン。ルミナの友であり、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の初代マスターです』

「…マジ?」

 

まさかこんなに若いとは思わず、つい固まってしまったジンヤを見て何を考えてるのか察したのか、ふくれっ面をしてしまう。

 

『私にも色々あったんです。それなのに…それなのに…』

「あっ、いや、すいません。つい…」

『良いんです、ルミナにも似たことやられたんです。もう慣れましたから…』

「(何やったんだ、あの人)それで、ルミナさんはどこに?結果報告に来たんですが…」

 

周りを見ても墓を見ても、彼女の姿が見当たらない。ゼレフを討ち取ったことと、能力を返しに来たことを伝えようにも居ないのならどうしようもない。

 

『少し休んでます。それにしても…あのゼレフをよくぞ倒してくれました』

「殺さざるを得ませんでしたがね」

『あれだけ罪を重ねた男です、せめて最期くらいは誰かが裁く必要がありましたから』

 

生きていた頃に彼と何かしらあったのか、悲しげな表情を浮かべ、それ以上このことを語りたくないと言った雰囲気を醸し出していた。

 

『それより、船に向かっていた方々が戻っていくみたいですよ』

「…今日はお話できて光栄です。また来年にでも、お会いしましょう」

『はい!』

 

その場で一礼し、すぐにその足で皆がいるというキャンプに戻る。

 

====

 

「いやぁ、なんとかなったな」

「ラクサスが来てくれたからな」

「俺ぁ何も出来てねぇよ」

 

敵船から離れる戦士たちの中には破門になっていたラクサスがいた。旅の途中で胸騒ぎを覚えた彼が参戦したことでハデスを倒すことが出来たのだ。

 

「戦ってる時は気づきませんでしたけど、いつの間にか天狼樹が元に戻ってましたね」

「そう言えばそうね。何でだろ?」

「(ウルティアか?まさかな…それより、ジュビアは無事なのか?ゼレフはどうなったんだ!?)」

 

グレイはウルティアと戦っている間に、ゼレフを追うように彼女に伝えていたのだが、テントに戻っていないと聞き、何かあったのではと一抹の不安を抱えていた。

 

「おいカナ、ジンヤはどうした?ここには居ないみたいだが…」

「別の場所で戦ってるんだってさ。詳しいことは聞いてないけど…」

「そうなのか?まあテントに戻ってるかもれねえから、そこまで行くか。疲れたし」

「…そうね。(お父さん無事かしら…)」

 

ラクサスに声をかけられたカナだったが、こちらでも父親(ギルダーツ)の安否を確認できておらず、表情は沈んでいる。不安を抱えているメンバーもいる中、ウェンディの提案で全員でテントまで戻ることになった。

 

====

 

「さてと、もうそろそろかね」

『全員無事だと良いが…』

「すみません、態々運んでもらって」

 

墓を離れ、辛くも勝利を得たジンヤはキャンプにたどり着こうとしていた。その脇には骨折して歩けなくなっていたジュビアを抱えていた。キャンプに向かう途中で倒れていたのを介抱してから回収したのだ。

 

「そういやぁ何であんなとこに居たんだ?」

「実はゼレフを追ってたのですが…逃しちゃいまして。グレイ様に頼まれてたのに!」

「あー、それ大丈夫だ。もう片付いたよ」

「良かった…あ、着きましたね」

 

そうこうしているうちに、目的のテントまで無事に戻ってこれた。そこにはみんなが戦いを終え、笑顔で待っていた。試験の中止が報告されて何人かが抗議する中、ラクサスがこっちに歩み寄ってきた。

 

「おう、そっちも用が済んだみたいだな」

「どうにかな。って、ラクサス!?何でここにいんだよ!」

「初代の墓を拝みにきただけだよ。他意はねぇ」

 

数ヶ月も旅をしていたので、ただの気まぐれとは思えないが、指摘して雷を落とされるのも嫌なので言わないでおいた。

 

「ま、とにかく元気そうで良かったよ。旅の方はどうだ?」

「色々見てきたけどよ、やっぱり世界は広いな。面白い発見もあったよ」

「へぇ、詳しく聞かせてくれ」

「そうだなぁ。例えば…」

 

旅であちこち回った時に人々の生活や他ギルドの仕事に触れてきたり、旅を通して1人で生きることの大変さを実感したりと実りの多いものだったと聞かされた。

 

「自分の視野の狭さに気付かされたよ。外に出るのも悪かねえな」

「そりゃあ良かった。ところで、マカロフと話したか?」

「今更話すことなんてねえよ。それよりお前に客がいるみたいだ、行ってきな」

 

ラクサスの視線の先には薬草の泉まで行っていたルーシィと、何か不安そうなカナが立っていた。

 

「どうした?」

「ちょっと付いてきて、ギルダーツに話があるんだ」

「ギルダーツに?」

 

色々と疑問を抱えながらもルーシィと一緒にカナを連れて歩いていると、ギルダーツとナツが釣りをしている所に出くわした。

 

「ギルダーツ、ちょっといい?」

「待ってくれ、ナツが今男のロマンに目覚めるとこなんだ!あとで聞くからよぉ」

「カナが急ぎで話したいんだとよ」

「俺に?なんでだ」

「さあね?俺も連いてきただけだしよ。ほんじゃ、俺は戻るぜ」

 

肩をすくめるジンヤを余所にルーシィは騒ぐナツたちを釣り場から離し、近くの茂みに追いやっていた。2人きりになったところでようやくカナが口を開いた。

 

「あのさ、私…ギルドに入った理由がね、父親を探すため…なんだ」

「へぇ、そりゃ初耳だ。ってことはあれか?その親父さんってのは妖精の尻尾(このギルド)に居たのか?」

「う…うん。そういうこと」

 

何か話しづらいのか、時々言葉を詰まらせながら少しずつ話していく。

 

「あいつの親父、ウチに居たのか。ビックリだぜ」

「誰なんだ?」

「気になるね」

「頑張って、カナ。あんたたち帰ってなさい」

 

茂みの陰から見ているジンヤたちも、彼女の過去への興味からその場を離れられずにいた。そして数秒の沈黙の後、カナの口から長らく伝えられなかった、ある名前が告げられた。

 

「私のお父さん……ギルダーツ、なんだ」

「えっ、ええぇえぇ!?」

 

まさかの言葉にギルダーツは驚きの声を上げ、頷いているルーシィ以外の3人もあまりの事態に混乱している。

 

「なんか…伝え辛くって、今更になっちゃったけど」

「お、おお、お前…ちょ、ちょっと待て!」

「…受け入れにくいよね、こんなこと言われても」

 

頭の中が真っ白になってしまっている父親(ギルダーツ)に言葉を返す(カナ)。静けさが辺りを包む中、空気をぶち壊したのはギルダーツだった。

 

「だ、誰の子なんだ! サラ、ナオミ、クレア…もしかしてイライザか?いや、全員髪の色が違ぇ!エマ、ライラ、ミシェル、ステファニー…こっちは目の色とか違う!」

「おい、おっさん!何人女作ってんだよ!」

 

焦りのあまり、今まで過ごしてきた女性をかたっぱしから虱潰しに上げていく親父に思わず突っ込んでしまい、真剣な雰囲気も流れてしまった。自分の親が女たらしなことに小さな怒りがこみ上げ、その場を去ろうと踵を返した。

 

「と、とにかくそういうことだから!それだけ!」

「ま、待てって!」

「別にこれまでの責任とれって言ってるんじゃないの!今まで通りで…」

 

構わないと続けようとした言葉がギルダーツに抱きしめられたことで遮られた。

 

「コーネリアの子だ、間違いねぇ。結婚したのもあいつとだけだ。でも、なんで俺に黙ってたんだ」

「色々あってさ、いつの間にか言い辛くなっちまったんだ」

「18年前に別れた後に逝っちまったのは聞いてたが、子供が居たとは…」

「良いんだよ、バレないように隠してたんだし。これからもいつも通りでいいよ」

 

震える彼の腕を離し、そして正面から笑顔で言葉を続ける。

 

「ただ、1つだけ言わせて。お父さん…会えてよかったよ」

 

その言葉を聞くと、脳裏にはカナと出会った時から今までにあった彼女との思い出が浮かんでくる。涙を浮かべたまま、もう二度と離れないと誓うように力強く抱きしめた。

 

「もう寂しい想いはさせねえ!これからはずっと一緒にいてやる!仕事に行くのも、酒を飲むのも…ずっと一緒だ…」

「それはちょっと勘弁かな?」

「だから…俺にお前を愛する資格をくれ」

 

12年もの間、親子として過ごせなかった時間はゆっくりと、そして優しい光に誘われるように流れ始めた。これからの未来を祝福するように…。

 

2人を見守っていたルーシィの目元にあった涙を拭い、ジンヤは彼女の肩に手を置き、軽く抱きしめた。

 

「(愛する資格、か。俺もいずれその意味がわかる時が来るのかもな)」

 

 

 

X785年、1月3日。青空に包まれ、暖かい日差しに照らされた天狼島に突然、破滅が訪れようとしていた。

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