何とかして零崎と宗像の戦いを書きたいです。
「いーたん、久し振り。元気してた?」
僕が自室で仕事の資料を確認していると、急に後ろから甘ったるい――まるで久し振りに恋人に会って甘えている彼女みたいな声が聞こえてきた。
またか……。そう心の中で呆れつつ僕は資料から目を離さないで声の主に返事する。
「何ですか、その口調は。最近は少女漫画にでもハマっているんですか?」
「面白いぜ、少女漫画。もちろん私が好きなのは少女漫画でも王道だ。幼なじみとか大好きだ。ナヨナヨした男は読んでいて腹が立つが。具体的に言うと今読んでいるヤツは主人公が優柔不断すぎてムカつく。男なら全員を幸せにするぐらいの甲斐性を見せやがれ!」
「イテッ!」
いきなり頭に物凄い衝撃が走ったので見てみると、僕の近くに見たことのない少女漫画(キャラの目がキラキラしていて苦手な雰囲気の絵だ)が落ちていた。
漫画にイラついたからって僕に八つ当たりしないでほしい。あなたが投げると漫画でも洒落にならないんだから。一瞬、金属でも投げれたのかと思ったほどだ。脳震盪を起こしてないか心配だから後で絵本さんにでも見てもらおう。
ていうか、珍しいな。漫画なら基本的に全肯定のこの人が批判するなんて。どれだけ面白くないんだ。
「……そんなハーレム展開の少女漫画ってあるんですか? 僕は見たことないんですが」
僕は適当なツッコミをしながら頭を押さえて後ろを振り返る。
するとそこにはイラつきを隠そうともしない全身を真っ赤に包まれた人類最強の請負人――哀川潤の姿があった。
物凄く怖い……振り向かない方が良かった。とはいえ、ここでまた後ろを向いたら更に潤さんを怒らせるだけだし、普通に会話を続けよう。
「……ん? 私が今読んでいたのは少年漫画だぞ?」
ああ、そういえば勝手に少女漫画だと思っていたけど、潤さんは一言もそんなこと言ってなかったな。
でも、この絵で少年漫画なのか。斬新だな。少なくとも僕が読んできた漫画の中にはないタイプだ。
「商業誌のコミックじゃなくて、いわゆる同人誌ってヤツだけどな。少し前に依頼人に何冊か勧められて読んでみたんだが、これはハズレだったな。他の漫画は面白かったけど」
「へぇ……そうだったんですか。ところで今日は何の用事なんですか?」
僕は然り気無く話題を変える。
自分で始めといてなんだが、このまま話を続けているとまた八つ当たりされそうな気がしたからだ。
「何だよ、用事がないと来ちゃいけないのか?」
「そういうのはいらないんで。今は仕事中なんで早くしてください」
「ちぇー……つまらないな。私はすぐに本題に入るつもりだったのを、いーたんが話がずらしたのに」
愚痴っぽく言う潤さん。
だが、そこはやはり哀川潤。特に気にする様子もなく、すぐに切り替えて本題に入る。
「今日はいーたんに仕事の紹介をしに来たんだよ」
「仕事ですか……」
まぁ、予想通りだ。
僕が請負人を始めてから何回か仕事を紹介してもらっているからね(ちなみにマトモな仕事は一つもなかった)。
それ以前もよく仕事を手伝わされたりしたけど(この頃もやっぱりマトモなのは一つもなかった)。
「箱庭学園って知ってるか?」
「箱庭学園……え~と、確か全国から優秀な生徒を集めているとんでもないマンモス高校ですよね」
僕は自分の記憶力を限りなくゼロに近いと思っていたが、その評価を改めないといけないかもしれない。
何故なら前に一回聞いたことがあるだけの話をすぐに思い出せたのだから。……まぁ、誰から聞いたかまでは思い出せないけど。
「なんだ、知っていたのか。やっぱりいーたんは女子高生が絡むと詳しいな」
「何でそうなるんですか……。人を女子高生マニアみたいに言わないでください。違いますよ」
確かに依頼人に女子高生が多いが、それはただの偶然であって、決して女子高生が好きだから狙ってやっているわけではない。
大体、僕は友と結婚しているんだからそんな浮気みたいな行為はしない。女子高生成分は崩子ちゃんだけで充分だ。
「で、その箱庭学園がどうかしたんですか?まさか姫ちゃんの時みたいに囚われの姫様がいるから助けに行くとか言うんじゃないでしょうね?」
「お、いーたんにしては鋭いな。だが、残念。30点ってところだ」
「ギリギリ赤点は回避ですか。じゃあ、何なんですか?」
「今回の仕事はお嬢様を悪の魔王から守る正義の騎士様だよ」
感想、評価待ってます。
基本的に不定期更新ですが、感想が貰えると早くなるかもしれません。