神を喰らう日常 作:指切りの約束
第1話
「……て下さい。起きてください」
凛とした声に呼ばれて目を開ける。目にはこの時代には少しばかり豪華すぎる部屋の内装と、ショートボブの金髪の女の子が顔を覗き込んでいた。
「おはようフラン」
「おはようございますレムさん」
眠い眼を擦りながら、体を起こしベッドの縁に捕まるようにしてしゃがみこむフランに声をかける。彼女は僕以外に見せることのない顔で微笑んでくる。
彼女は現在僕らがいるフェンリル極致化技術開発局「フライア」のオペレーターである。本名はフラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュと長く、本人からの意向もありフランと読んでいる。
「それでこんなに早くにどうしたんだ?」
基本フライアは行く手にアラガミが現れたり、他の支部からの救助要請が無い限りは討伐の依頼はなく僕のようなゴッドイーターやフランのようなオペレーターは十分に休息を取ることができる。
「少しばかり早く起きてしまったので、庭園にでも誘おうかと思いまして。迷惑でしたか?」
上目遣いで首を少し傾けられた状態で、可愛い娘にお願いされて断ることが出来ようか、いや出来ない。
素早く身支度を整えて、エレベーターを使いフライアの最上階へと向かう。そこは前時代の自然があり、心安らぐ所となっている。小川からの涼し気な音を聞きながら、中央にある大きな木に二人して寄りかかる。周りに人が居ないという事もあってフランは僕に体を預けて幸せそうな顔をしている。
「そういえば今日、新人が二人来るそうですよ」
「ブラッドに所属の子達かな」
「おそらくそうでしょうね」
「これでジュリウスと話が出来る子がいたらいいね。それとロミオを先輩として呼ぶ子かな」
「二人がその様な人ならあまり心配事は無いでしょうね」
「流石にそれは言いすぎじゃないかな。前提として生き抜くための力がなきゃ」
「それは貴方とジュリウスさんがいれば問題ないでしょ」
「確かにそうだけど」
「……それに、ようやく貴方と結ばれることが出来ますし」
自分で言っておきながら恥ずかしくなったのか、赤らめた顔を僕の胸に押し付けるようにして隠す。普段のクールな彼女とのギャップにドキッとしてしまう。
「ようやくフランの両親も認めてくれたからね」
もともと僕の生まれは極東のスラム街だ。親もいなければ頼れる人もいない。そうやって暮らしている時に極東支部のゴッドイーターにスカウトされたのだ。
生きる為に必死だったあの時の僕は、失敗して自分がアラガミになる事など考えずにそれを了承した。結果としてはそんな事は起こらず最善の選択をしたこととなったのだが……。
同期のリンドウと共にずっと極東支部で働いていたのだが、何やかんやと上層部の秘密計画を邪魔したりだとか、やりたい様にやっていたら榊支部長にフライアに行く様に命令された。それが大体二年前。
そして僕がフライアにやってくるのと同時に知り合ったのがフランだ。フェンリルに就職し、まもなくフライア所属になった彼女と意気投合しこれまでなかよくなってきた。
様々な事があり付き合うことになったのだが。元々出自が良いフランと何処の出かも分からない僕との交際を彼女の両親が認めるわけもなく。更に歳の差が10歳ある事や僕が任務であっさり死んでしまうかもしれない事が、両親の反対を後押しした。
最近になってようやく僕が過去にやった事が時効をむかえたようで、支部長をやってみないかと誘われた。とは言ってもその時は既にフライアに欠かせないゴッドイーターとなっており、またブラッドの計画が始まっていたので簡単に了承する事は出来なかった。
そのため上からはゴッドイーター兼副局長としてフライアに務めることを命じられた。どうやらこの一件にはリンドウと榊支部長が一枚噛んでいたようで感謝してもし切れないほどだったのだが、考えてみると彼らのせいでこうなった所もあるので、感謝の言葉を伝えるだけにした。
当面はブラッドが完成するまでフライアに務め、ブラッドが完成しフランの後釜がやって来るのと同時に二人で新たな支部に移ることが目標である。出来る事ならフランの事をいやらしい目付きで見てくるフライアの局長を止めさせて、フライアの局長になるのも一つの手だが、自分を守る為なら何でもやる奴なので、色々と暗躍しなければならなく危険な為その案は放棄した。
「あっという間に時間が過ぎてしまいました」
フランの頭を撫でたり、手を握って見つめ合ってるいるうちに仕事の時間が迫って来ていた。もう少し一緒にいたいが我儘を言う事も出来ないので、フランを仕事場まで送り届けた。
自室兼副支部長室で書類(明らかに支部長向けのものも含まれている)を書いていると、ラケル博士から連絡が入ってきた。
「もしもしレムですがどうかしましたか?」
「新しくゴッドイーターとなる子たちの最終試験がこれから始まるので、ご覧になられてはどうかと思いまして」
何処か儚げな所があるラケル博士からのお誘いだった。僕自身、朝にフランから言われて気になったがしばらくするとアラガミ討伐のミッションが入っていた為、申し訳ないとラケル博士の誘いを断ることにした。
ジュリウスが後輩の訓練を見るとの事で久々のソロミッションとなったが、極東のアホみたいに強いアラガミではない為難なく終えることが出来た。強く無いとは言っても慢心は死を招くため、フランを悲しませない為にも気を引き締めないといけない。
フランと通信機越しにやり取りをしてフライアに戻り、ミッションカウンターで話をしているとラウンジに先ほど資料で見かけた新人二人が座って話をしていた。
「あの二人が新人か」
「ちょうどレムさんがミッション中に訓練をしていて、今は休憩中です」
極東支部にいた頃は新人育成の為に沢山の新人ゴッドイーターと出会ってきた為、何となくだがこの子は長生きするとか、強くなるとか、その逆も分かるような目が鍛えられてきたのだが、二人はどうやら強いゴッドイーターになる気がする。
「声をかけられてはどうですか?」
「それもそうだね。これからミッションで一緒になることもあるだろうから行ってくるよ」
フランに手を振り二人の元へと歩をすすめる。どうやらフランと話をしている間にロミオも二人に合流していたらしい。僕が近づいてくるのに気がついて、挨拶してきた。
「レムさんお疲れ様です!」
「ロミオくんも訓練お疲れ様。この子たちがブラッドに所属する事になった新人さんかな?」
「そうです!ほら、自己紹介しろ」
小声でロミオに言われた二人は立ち上がり、自己紹介をする。
「神威ヒロ、17歳です!よろしくお願いします!!」
「香月ナナ、同じく17歳!これからよろしくお願いします!!」
ビシッと効果音を付けてもおかしくないほど立派に敬礼をしてきた。
「僕はレム。第1世代の神機使いで26歳になるのかな。ゴッドイーターとしてはそこそこ長いけど、フライアに来てからは二年くらいしかそこまで緊張しなくていいよ」
後ろのフランから『ゴッドイーター歴2桁でそこそこ長いは無いでしょう』という視線が向けられている気がするが、気にしないでおこう。
「何か困ったことがあったら部隊長のジュリウスでも、先輩のロミオでも、またまた同じくフライアに所属する僕にでも気軽に聞いていいからね」
さっそくヒロくんが質問をしてきた。
「レムさんはブラッド所属では無いんですか?」
「僕は只の遊撃部隊だよ。僕以外に人がいないから部隊というのもおかしいけど」
「レムさんのお陰でフライアが無事に移動できてるって事だよ」
なる程なる程と二人は納得する。
「第1世代ってどういうことですか?」
続いてナナさんが質問してくる?
「ナナはそんなことも知らないのかよ」
「ならロミオ先輩は知ってるの?」
「……」
沈黙が場を埋め尽くす。
「君らみたいに剣形態と銃形態そして捕食形態が使えるゴッドイーターを第2世代って言って、ここ最近の主流かな。2、3年前は珍しかったけどね。君らブラッドは第2世代特有のものを少し強化したゴッドイーターだから、便宜上は2.5世代ってところになるのかな」
『へー』
三人して僕の言葉に耳を傾けているようだ。
「その第2世代が出回る前まで主流だったのが第1世代。剣形態と捕食形態の2つを扱える、銃形態のみを扱える神機を使うゴッドイーターだね。ちなみに僕は銃形態の神機を使うからもしミッションで一緒になったらよろしくね」
「レムさんはあの極東支部に長年務めてたから、扱えない剣形態の事にも詳しいから困ったらちゃんと聞けよなー」
ブラッドと話をしていたら、また進行経路にアラガミが現れたらしいので僕は再びミッションに出かけた。
フランとのイチャイチャが書きたかったのだ……。
しばらくGOD EATERという作品に触れていなかったので、もし設定が違っていたらゴメンナサイ。
小説のタイトルを付けるのが一番難しい件について。