46番目の魔術使い   作:眞神零一郎

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前々話同様EX.回です。
こちらは本編になかったシロウたちの日常風景を三人称でお送りします。



EX.2 博士の朝ごはん

 

 姉たちと共に朝食を終え、食後のお茶を楽しんだ後、シロウは、避けておいた二人分の食事ののったお盆を両手に持ち、スカリエッティの研究室へ向かった。

 ほぼ毎日のことながら、本日もスカリエッティとウーノは食堂には現われていない。

 当然ながら食事前に声をかけたが、『今は手が離せない』と言って通信は切られてしまった。

 

「おはよう、ドクター、ウーノ。朝食だ」

 

 声をかけられて、二人が作業の手を止めてシロウを見やる。

 

「やぁ、おはよう、シロウ。今日のおかずは何かな?」

「だし巻き卵にたけのこの土佐煮、なすのそぼろあん、あぶらあげの味噌汁に、納豆だ」

 

 お盆ごと二人の前に差し出し、一つずつ説明する。

 するとスカリエッティは、最後の納豆の所で顔をしかめた。

 

「私は納豆は嫌いだと言っただろう。どうして毎朝出すんだい?」

「何故、だと? そんなものドクターが好き嫌いばかり言ってるからだろう。アレは嫌い、コレは嫌だと、好き嫌いが多すぎる。挙句どれも栄養価の高いものばかりときた。本来ならここに、ほうれん草のおひたしとトマトサラダを加えたいところを、納豆だけで済ませてやっているというのに……」

 

 スカリエッティは、やたらと好き嫌いが多い。

 特に野菜系は絶望的だ。

 ほうれん草とトマトに関しては、大真面目に『アレは別次元からの侵略者だ』とのたまっている。

 他にも、ピーマンは『管理局の策謀だ』とか意味不明な事を言うし、セロリは『人類(私)に対する挑戦状だ』とか抜かすし、キャベツとレタスに至っては『存在そのものが悪』などと言う始末。

 それを聞いたシロウは、呆れ返った挙句、二時間ほど説教をかました。

 スカリエッティは耳を塞いで聞いてなかったが。

 それにブチ切れたシロウは、問答無用と、食事時の強権を発動し、『ドクターの好き嫌いをなくそう大作戦』を実行中なのである。

 ちなみにスカリエッティ曰く、

 

「納豆はテロリストなんだぞ。殲滅してしまえ、そんなもの」

 

 らしい。

 しかし、直後にシロウから、

 

「誰に対する、何のためのテロだ。第一、これからテロを起こそうとしている人間が何を言うか」

 

 と、呆れられた。

 

「今までは何やら忙しくて付き合ってやれなかったが、今日は運良くヒマでな。ドクターが食べ終わるまでここで待っていてやることにした」

 

 にやりと、それはもう楽しそうに笑いかけた。

 

「なっ! い、いや。食事を作ってもらった上、そこまでの手間はかけさせられない。シロウ、構わないから戻り給え」

「眼が泳いでるぞ、ドクター」

 

 指摘されてぎくりと肩を震わせると、ついとシロウから視線を反らした。

 

「私が気付かないとでも思ったかね? 今まで納豆が出るたびに、ウーノに押しつけてきただろう? 今日はそんなことにならないように、私がしっかりと見ていてやるからな。あぁそうだ。納豆を食べ終えるまで、他のおかずは一切食べてはならんぞ」

「な、なんだと!?」

 

 シロウの宣告に、スカリエッティは思わず大声を出した。

 

「今まで人に押しつけてきた罰だ。なに、ごはんなら食べても構わんぞ。あぁ、味噌汁もな。ただし、他のおかずは納豆を完食するまでお預けだ」

 

 そう言ってスカリエッティの前に置かれたお盆を取り上げると、ごはんと味噌汁、そして納豆だけを並べる。

 

「シロウ、それが創造主に対する態度かね?」

「創造主だろうが造物主だろうが、食事に関しては私のほうが立場は上だ。それともなにかね? 次の食事からドクター一人、以前通り弁当を食べるかね?」

「それは嫌だ」

 

 即答である。

 

「ならば納豆を完食する事だ」

「くっ」

 

 小さく歯噛みした後、スカリエッティは観念したように箸と納豆入りの小鉢を取り上げる。

 いかにも恨めしいとばかりにシロウを睨み付けると、意を決して、けれどもちょびちょびと納豆を摘む。

 そんなことでは、嫌いな納豆と相対する時間が延びるだけなのだが。

 シロウはスカリエッティの背後で溜息を盛らしつつ、小さく肩を竦めた。

 

 スカリエッティが、納豆という名のテロリストの殲滅を終え、滅多に見られないような満面の笑みでおかずを平らげると、二人分のお盆を持って部屋を後にした。

 シロウたちの食器は既に姉の手によって片付けまで終わっているため、二人の食器を片付けるのはシロウである。

 ちなみに、スカリエッティとウーノの二人が研究室から出てきて食事を共にするのは、多くて三日に一回。つまりは九食に一食程度である。

 これでもシロウのおかげで随分増えたのだが(それまでは研究室で合間に栄養補助食品を摘む程度だった)、シロウ自身、あまり由としてない。

 彼的には『食事は家族揃って』が理想というか、そうあって然るべきだと思っている。

 まぁスカリエッティ自身、最近ではかなり食事(というよりは、シロウの作るごはん)に興味というか執着を持ってきているため、今後、共に食事をする時間はもっと増えるかもしれないと、姉たちは心密かに思っていたりする。

 




お子様舌のスカリエッティでした。

以降、スカリエッティはギャグ要員と化します。
残念度が大幅にアップするので、スカリエッティが好きな人はご注意ください。
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