46番目の魔術使い   作:眞神零一郎

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仕方のないことですが、敵側がメインなのでいろいろ大変です。
どうしても原作では触れられていない部分が多すぎて、捏造と辻褄合わせに四苦八苦しております。


第八話 模擬戦 ノーヴェ&ウェンディ

 

 昼食が終わり、今日の片付け当番であるディエチ姉が食器を片付けていると、ふいにノーヴェ姉とウェン姉が立ち上がり、俺のそばまで寄ってきた。

 そういえばこの二人、今日は遅れてやってきてたな。

 食事が始まる前には揃ってたけど、いつもなら準備中には二人とも揃っているはずなのに、珍しいこともあるもんだとちょっと思ったんだよな。

 何かあるのかと二人のほうに体を向けると、何やらもごもごした様子でノーヴェ姉が話しかけてきた。

 

「おい、シロウ。お前、午後ヒマか?」

「おやつの時間までは別に暇だけど……」

 

 首をひねって答える。

 今日って何かあったっけ?

 

「したらあたしらにちょーっと付き合ってくれないっスか?」

「ノーヴェ姉とウェン姉に? 別にいいけどなにするんだ?」

「運用試験っスよ~。あたしらの固有武装が、昨日やっと完成して、午前中まで調整とか最終確認とかいろいろあったんスけど、実際にどんなもんか試してみたいんスよ~」

 

 あぁ、なんかそんなことドクターも言ってたっけ。

 そのせいであんまり寝てないとかウーノ姉がぼやいてたっけ。

 ていうか、何で固有武装が完成するのにこんなに時間かかったんだ?

 武装が先に完成してるってのも変な話だけど、武装がなけりゃ何にもできないじゃないか。

 現に二人は今まで何の任務もこなしてないわけだし。

 

「ふーん。別にいいけど。でもなんで俺なんだ?」

 

 別に俺じゃなくてもいい気がするんだが。

 不思議に思って聞いてみると、途端にノーヴェ姉が顔を真っ赤にして吼えた。

 

「なんでって、決まってンだろっ!」

「なに?」

 

 何が決まってるんだろう。

 訊ねると、ノーヴェ姉はうろうろと視線を逸らし、必死に何かを考えるように唸ると、『閃いた』とばかりに俺をびしりと指差した。

 

「そ、それは、その、えっと。そうっ! テメェが一番ヒマそうだからだっ!」

「いや、俺、ドクターとウーノ姉除いたら一番忙しいと思うんだけど」

 

 家事とか家事とか家事とか。

 皆のメンテすることもあるし。

 他の姉たちは別に仕事もなく、戦闘訓練とかしてる程度だしな。

 すると後ろから小さな笑い声が聞こえた。

 

「ノーヴェ。素直に言わねば伝わらないぞ?」

 

 くくくっと笑いながら、チンク姉がにやりと笑う。

 

「シロウは鈍いからな」

 

 それに呼応するように、ディエチ姉がしれっと呟いた。

 俺、鈍いか?

 自分では結構鋭いほうだと思うんだけどな。

 

「だめだめっスよ~、ノーヴェ。最初はチンク姉にお願いしようとしたんスけど、『どうせなら最強に相手して貰え』ってアドバイス貰ったんスよ~。ドクターにもシロウのがいいって言われたっスからね」

 

 ちちちっと指を振りながらウェン姉が答える。

 

「最強って、俺別に最強ってわけじゃないぞ?」

 

 まず空飛べないし。

 陸ならまだしも、海とか空とかじゃあ何にも出来ない。

 それに物理的な防御力はともかく、対魔防御力はかなり低いから、魔導師相手だと下手したら一撃食らってアウトしかねない。

 まぁ聖骸布があるから、そうそう一撃死って事にはならないだろうけどさ。

 そりゃあ魔力量は多いからよっぽどのことでもない限りガス欠にはならないだろうし、宝具の投影なんかはかなり強力だけど。

 でも攻撃力が高くたって、防御力と機動力に制限があるようじゃ最強なんて程遠い。

 

「何言ってるんだ。少なくとも私より上だろう?」

 

 するとチンク姉が呆れたように溜息を吐いた。

 俺がチンク姉に勝てたのは、相性の問題だ。

 そもそもチンク姉は、ナイフによる超接近戦しか出来ない。そりゃあオーバーデトネイションなら中距離くらいまで出来るけど、基本はインファイトだ。

 シェルコートがあるから防御力は高いが、距離が開くと攻撃手段がまったくない。

 戦闘機人だから人間よりは身体能力が高いとはいえ、一瞬で距離を詰めるほどの高速機動も、相手を翻弄する瞬発力もない。

 それもまぁ、間合いに入っちゃえば翻弄できる機動力はあるんだけどな。

 チンク姉小さいし。

 いや、声に出して言うとチンク姉にドツかれそうだから言わないけどさ。

 まぁ要するに、離れてさえしまえば手も足も出せないのだ。

 

「模擬戦で勝っただけだろ? 第一トーレ姉だっているじゃないか」

「私は空戦型だからな。陸戦とは勝手が異なる」

 

 俺の言葉に、トーレ姉が紅茶を一口の見ながら呟いた。

 

「そうかな。空戦型って言っても、トーレ姉は接近戦主体じゃないか。それだったらあんまり関係ないと思うけど」

 

 そう言うと、トーレ姉はぴくりと肩を震わせて、持っていたカップをテーブルに戻して俺をじろりと睨む。

 

「なに?」

 

 う。怖いよ、トーレ姉。

 

「い、いや、だって、空飛んでたって、戦闘方法が接近戦じゃあ結局攻撃の時には近づかないといけないだろ? 射撃型とか砲撃型なら離れた所からの攻撃手段もあるけど、トーレ姉の場合は、確実に相手に接近しないと攻撃できないじゃないか。それなら、空飛んでようと陸を走ってようと結局は同じ事だろ?」

 

 説明すると、トーレ姉はゆらりと立ち上がった。

 えっと、怒って、る?

 

「つまりなにか? 近接型は空を飛ぶ意味がないと?」

 

 こ、怖ッ。

 

「そ、そうは言わないけどさ、陸戦でも似たようなモンだろ?」

「言ってるも同然だ!」

 

 叫ぶと同時に、テーブルに掌を叩き付けた。

 

「え、ご、ごめん! 別にそんなつもりじゃ……」

 

 反射的に謝るが、俺、そんなにマズイ事言ったか?

 するとトーレ姉は、なにやら小さく笑い始めた。

 楽しそうとかじゃなくて、何か企んでそうというか、距離を取りたくなるというか。

 な、何だろう。

 なんかすごく嫌な予感が……!

 

「よし、いいだろう。そこまで言うならシロウ、私と模擬戦だ」

「なんでさ!?」

 

 も、模擬戦!?

 って、俺とトーレ姉がか!?

 

「今回はノーヴェとウェンディが先約だから私は引くが、次に手が開いた時に私と模擬戦をするぞ」

「それは決定事項、なんだよな?」

 

 恐る恐る確認してみると、胸を張って一言答えた。

 

「当然だ」

 

 そのあまりにも『当たり前』然とした姿に、覆すことは不可能だと悟る。

 

「はぁ。分かったよ」

 

 まぁノーヴェ姉とウェン姉との模擬戦が終わったらすぐにやろうとか言われなかっただけマシか。

 でもトーレ姉と模擬戦かぁ。

 俺の発言が原因だし、自業自得かな。

 とはいえ、ああは言ったものの、言うほど簡単でもないんだよなぁ。

 何しろトーレ姉が得手とするのは高速機動戦。

 俺だって身体強化されてる身だから、捕らえきれないほどの速度じゃないだろうけど、厄介は厄介なんだよな。

 はぁ。

 なんか改めて溜息が出てくるよ。

 

「そりゃあ楽しみだな。決まったら教えろよ~?」

 

 それまで成り行きを見守っていた、というかニヤニヤ笑いで楽しそうに様子を伺っていたセイン姉が、見物する気満々で言う。

 

「そうねぇ~。決まったら教えて頂戴ね、シ・ロ・ウ・ちゃん」

 

 クア姉まで便乗して来た。

 うぅ。誰も助けてくれないんだ。

 それどころかその様子を伺って楽しんでるなんてそれでも姉かっ!?

 ……いや。クア姉あたりは、『それでこそ姉というものよ』なんて真顔で力説しそうだ。

 やめよう。

 

「さぁて、それじゃあ行くっスよ、シロウ」

 

 ニヤニヤ笑うウェン姉に促されて、溜息混じりに席を立つ。

 部屋を出る直前後ろをちらりと見やると、変わらずニヤニヤ笑いを続けている姉たちが見えた。

 

「はぁ~」

 

 もう一度大きく溜息を吐くと、がっくりと項垂れて部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 食堂から出て、チンク姉と模擬戦をした訓練スペースにやってくる。

 中には既にドクターとウーノ姉が待機していて、その横には、二人の固有武装だろうなにやらでっかい盾というかボディボードみたいなものと、ローラーブーツらしきものと篭手らしきものが置かれている。

 盾らしきものがウェン姉の『ライディングボード』で、ローラーブーツらしきものがノーヴェ姉の『ジェットエッジ』、篭手らしきものが『ガンナックル』だろうな。

 一応二人の能力というか、固有武装の能力なんかは、どういうものかは知ってる。

 ウェン姉の『ライディングボード』は、砲・盾・乗機の三つを兼ね備えた複合武装だ。

 戦闘時には砲・盾として、移動時にはトランスポーターとして飛行もできる。

 射撃型だけあって、設置弾や直射弾、誘導弾から砲撃まで可能だ。

 盾としても結構頑丈だから、よほどの砲撃とかでも直撃しない限りは防御可能らしい。

 ノーヴェ姉の『ジェットエッジ』『ガンナックル』は、ノーヴェ姉の姉妹とも言うべき『タイプ・ゼロ』ナカジマ姉妹の使うデバイスを参考に作られている。

 同じ遺伝子から作られたためか、ノーヴェ姉もナカジマ姉妹同様、固有能力が使える。

 というか、どうやらドクターはそれを狙ったらしい。

 ナカジマ姉妹のそれは『ウイングロード』というらしいが、ノーヴェ姉のは『エアライナー』という。

 名前は違うが、基本は同じだ。

 魔法(ノーヴェ姉の場合は異なるが)による光の道を作り出せる。

 『ジェットエッジ』は、その光の道を走り抜けるために作られた装備だ。

 普通の人間なんかが使えばただの高速移動用のローラーブーツだが、この能力と組み合わせることで、半空戦とも言える使い方が出来るようになる。

 両方がセットでこそ、最大の能力を発揮することが出来るわけだ。

 ちなみに『ガンナックル』のほうは補佐的なもので、エネルギー弾を撃てるが、ノーヴェ姉の射撃能力があんまり高くないから、ウェン姉みたいに誘導したり付加をつけたりは出来ないらしい。

 完全な直射弾オンリーみたいだ。

 二人はウーノ姉から武装を受け取り装備する。

 装備といっても、ウェン姉は持つだけ。

 ノーヴェ姉も足にローラーブーツを装着するだけ。

 装着というよりは履く?

 

「ウェンディ。あたしから行くからなっ」

 

 ローラーブーツの具合を確かめて、ノーヴェ姉が意気込む。

 

「はいはい。分かってるっスよ~」

 

 あらかじめ順番を決めていたのだろう、ウェン姉も頷いている。

 

「ちょっと待ちたまえ」

 

 さぁやるぞというところで、ドクターからストップがかかった。

 

「どうしたっスか、ドクター」

「模擬戦をやるなら二対一でやりたまえ」

 

 なんだって?

 

「私に一人でやれ、と?」

 

 低く訊ねると、ドクターは肩を竦めた。

 

「なに、二人ともまだ武装を手にして日が浅い。それに、出撃の場合、その二人にはコンビを組んでもらう事が多くなるだろう。コンビネーション訓練も兼ねて、という所だよ」

「私は別に構わないが? どうする、二人とも?」

 

 まぁチンク姉みたいに、実践経験豊富じゃないし、二人同時でも大丈夫だと思う。多分。

 というか、これで負けるようならチンク姉に怒られる気がする。

 二人を見ると、ノーヴェ姉は明らかに不機嫌面。ウェン姉は少し考え込む。

 

「あたしは別に構わないっスよ~。一人じゃあ即行でやられるのは目に見えてるスからね~」

「ちっ。分かったよ」

 

 ここで反抗しても仕方がないと判断したのか、ノーヴェ姉も結局は折れて、二対一での模擬戦となった。

 それを聞いてドクターは頷くと、ウーノ姉と共に壁際まで後退する。予め用意していたのであろう椅子に腰掛けて観戦するらしい。

 ウーノ姉はデータ収集分析用だろうモニターを多数展開して、こちらは椅子には座らず(というか元々椅子は一脚しか用意されてなかった)その横に立つ。

 それを見届けると二人に向き直り、俺も聖骸布を完全に投影する。

 ちなみに戦闘時以外では、聖骸布は上衣しか身に着けていない。

 最初の頃は完全版というか上下ともに着てたんだけど、邪魔なんだよな。

 下衣部分のひらひらしたのが。

 いや、いつだったか、料理中に棚の引き出しに挟まってるのに気づかなくて、こけそうになった事があって……。

 やってみたら上と下を別々に投影する事ができたから、戦闘時以外は下を省略したんだ。

 聖骸布の状態を確認し、干将・莫耶も投影する。

 

「さぁて、じゃあ行くっスよっ!」

 

 こちらの準備が整ったのを見て取り、ウェンディが声を上げる。

 どうやら戦闘開始らしい。

 ウェンディの声をと同時に、ノーヴェが『ジェットエッジ』で真正面から爆発的な加速で接近してくる。

 彼女らしいが、いささか正直すぎやしないか?

 とりあえずその場から動かずに構える。

 激突三メートル手前というところで、『エアライナー』を発動させた。

 黄色い光の帯が頭上に道を作る。

 ふむ、なるほど。

 初戦闘の割りに、なかなか考えているな。

 目の前で『エアライナー』を使われたから、左右それぞれ二割程を除いて、視界が黄色い帯で埋められた。ほぼ視界を塞がれたと言っていい。

 となると、次に来るのはウェンディの射撃か?

 案の定、僅かの間を置いて『エアライナー』が消えると、至近距離までピンク色の直射弾が迫っていた。

 目前に八つ。背後に誘導弾が一つ。

 目前に迫る八つの直射弾のうち、半分は避け、残る半分は干将・莫耶で切り伏せる。

 そして背後から迫る誘導弾をかわしざまに、右手の莫耶で斬り上げる。

 避けた直射弾は、それぞれ床やら壁やらに当たり(勿論、ドクターとウーノに被害がない位置なのを確認して)、切り伏せたものは『弾』を維持できなくなり霧散した。

 当然、斬り上げた誘導弾も同様だ。

 すべての弾を処理しきると同時に、先ほど俺の頭上を通り過ぎて行ったノーヴェが、空中で背後から回り込んでくる。

 私の頭上まで戻ってくると、『エアライナー』から飛び降りざまに縦回転し、重力で威力を倍化させた踵落しを放った。

 

「でりゃぁぁぁぁっ!」

 

 叫びながら落ちてくるノーヴェを横に一歩避けてかわすと、ズドンという鈍いを響かせて床に足がめり込んだ。

 おい、ここの床って金属製ではなかったか?

 いや、戦闘機人の身体能力に重力まで加わればこうもなるのか?

 そもそも、こんなものをまともの食らったら、人間の頭くらいふっ飛ぶだろう。

 

「ちっ」

 

 いや、舌打ちされてもな。

 私に何を求めてる、ノーヴェ。

 まさかとは思うが、アレを食らえと?

 冗談じゃない。

 普通に死ぬぞ。

 

「避けるなっ」

「避けるに決まっているだろうが」

 

 言って莫耶を振り下ろす。

 む。

 当たる直前で刃を引っ込めると、その場所をウェンディの直射弾が通り過ぎていく。

 と、同時に誘導弾だろう。左側から弾丸が飛んでくる。

 続けざまに放たれるそれを、後ろに跳び退ってかわす。

 その間に移動していたノーヴェが正面から、再び『ジェットエッジ』の加速で突っ込んでくる。

 最初と同じく真正面から来るが、今度は『エアライナー』で上には行かず、私の目の前で急停止すると同時に右の回し蹴りを放つ。

 干将を逆手に持ち替えて剣で受け止める。

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 叫び、『ジェットエッジ』のブレイクギアを回転させて、噴射推進で威力にブーストをかけてきた。

 左手にかかる負荷が倍増する。

 支えきれなくもないが、念のために腕を強化しておく。

 む。

 左手はそのままに、右の莫耶をウェンディに向けて投擲。

 射撃体勢に入っていたウェンディは、莫耶を防ぐために射撃を中断し、『ライディングボード』で剣を防いだ。

 盾で弾かれると同時に莫耶を破棄。

 ノーヴェの方は、さらに強化を重ねがけすれば力押しで弾くことも可能だが、あえて強化は使わずに、剣を滑らせて蹴りの軌道を逸らせ腰を落とす。

 その間に干将の方もウェンディに向けて放つ。

 こちらも盾で防いだな。

 ノーヴェの方は、突然力点をズラされたのと、加速の勢いも相まって、そのままの勢いでもって私の頭上を右足が通り過ぎて行く。

 そこで一歩踏み込み、右足でノーヴェ姉の脇腹を蹴り飛ばす。

 

「がっ」

 

 わけも分からぬうちに脇腹に蹴りを食らって、対処も出来ずにそのまま吹っ飛んでいく。

 ノーヴェが起き上がる前に。

 ウェンディが射撃体勢に入る前に。

 たいした神秘も込められていない剣を、二人に突きつける形で投影する。

 

「ここまで、だな?」

「あ~あ。やーられちゃったっスね~」

 

 突きつけられている剣を見て溜息を吐き、ウェンディはその場に座り込んだ。

 

「くそっ!」

 

 ノーヴェもその場から立ち上がらずに悪態を吐いている。

 二人が負けを認めたことを確認して、それぞれに突きつけた剣を破棄する。

 

「ふむ。初めての戦闘にしてはまぁまぁだな。ノーヴェ、回転踵落としは良かったが、その後の回し蹴りはいただけなかったな」

「なんでだよっ」

 

 説教じみたアドバイスが気に入らないのか、それとも単に負けたことが気に入らないのか。

 ノーヴェ姉が突っかかってくる。

 

「直前で止まったから勢いが全て殺された。飛び蹴りでもしていれば、その勢いも威力に上乗せさせることが出来ただろう?」

「ちっ」

 

 詳しく説明すれば、納得したのか、納得は出来なくとも理解はしたのか。

 舌打ち一つでそっぽを向いてしまった。

 やれやれ。

 

「ウェンディもあの場で援護をしようとしたのは良かったが、飛んできた剣を盾で防ごうとしたのは失敗だったな」

「なんでっスか?」

 

 ウェン姉の方にもアドバイスを。

 こちらはノーヴェ姉と違い、素直に聞く気があるようだ。

 というよりも、ノーヴェ姉ほど勝負というか勝敗にこだわりがないのかな。

 

「あそこでお前が移動して避けていれば、僅かに遅れはするがノーヴェの援護も出来たのではないかね? 避けられるものはなるべく避けろ。防ぐのは最後の手段だ。そのほうが手間もかかるし、余計な力も使うからな」

「う~。やーっぱあたしらじゃあこんなモンっスかねぇ~」

 

 暫し唸ると盛大に溜息を吐いた。

 

「まぁ今回はお前たちの経験地がなさ過ぎたのがそもそもの敗因だ。チンク程に、とまでは言わんが、経験をつむことだな。さて、そろそろ戻ってもいいかね、ドクター?」

 

 それなりに訓練はしていたものの、固有武装を使った始めての戦闘だったわけだから、仕方ないといえば仕方ないけどな。

 観戦席に目を向けると、ドクターは楽しそうに笑っていた。

 

「あぁ、かまわないよ。おかげでいいデータも取れたしね。そうだろう? ウーノ」

「えぇ。やはり重要なのは経験値のようですね。姉妹間の動作データの継承・蓄積システムを早急に完成させる必要があるようですわ」

 

 ドクターの問いかけに、ウーノ姉はいくつかのモニターを見比べながら呟いた。

 動作データの継承・蓄積システムか。確かにそれが完成すれば、経験が乏しくても、チンク姉やトーレ姉の豊富な戦闘経験を体験できて、なおかつ、動作のタイミングを計算すれば、正確なコンビネーションも行える。

 戦闘プログラムのコピーじゃなく、生きた経験と感覚を共有し蓄積するということは、まったく同じ動作ではなく、それを元に自分に合わせて発展・応用させることが出来るというわけだ。

 そのあたりは、機械と生体を併せ持つ、姉たちならではといったところだろう。

 なんとまぁ厄介なもんだよなぁ。

 生まれたばかりでも、歴戦の戦士の経験を持ってるんだからな。

 

「それはそうとシロウ。今日のおやつはいったいなんだね?」

「む。今日はチーズケーキだ。小振りながら、ベイクドとレアの二種類を作るつもりだから期待しておけ」

 

 流石に十等分にすると小さくなるが、おやつで腹いっぱいにしたら夕食食べられなくなるからな。

 あ、いや。おやつを腹いっぱい食べても、夕食はまた別だとか言って、結局そっちもたらふく食べるんだろうけど、やっぱり満腹時に食べるより空腹時に食べたほうがおいしく感じるから。

 ちなみにチーズケーキは過去に何度か作ったことがあって、ベイクドもレアもどっちも好評だった。

 

「ほぅ。それは楽しみだ。出来たら呼んでくれたまえ」

 

 にやりと笑うと、椅子から立ち上がってウーノ姉と共に部屋から去っていった。

 多分、研究室に戻ってさっきのデータの検証って所かな。

 今日はドクターとウーノ姉もそろって食堂でおやつとなりそうだ。

 

「さて、と。じゃあ俺は行くよ」

「今日はつき合わせちゃって悪かったっスね~」

 

 未だ座り込んだままの二人に声をかけると、ウェン姉がひらひらと手を振った。

 

「俺で役に立ったんなら良かったよ。出来るまで時間もかかるし、二人とも風呂にでも行ってゆっくりしてくれば?」

「そっスね~。疲れたし、汗も流したいし、そうするっスよ」

「あぁ。じゃあまたな」

「あ、おいっ!」

「む?」

 

 踵を返したところで、ノーヴェ姉から呼び止められた。

 振り返ってみると、座り込んだままのノーヴェ姉が落ちつかな気に視線を彷徨わせている。

 

「どうした?」

「その、あの、な? えっと……」

 

 聞き返すと、ノーヴェ姉はしどろもどろになっている。

 む? そういえば心なしか顔が赤いような……。

 もしや怪我でも……!?

 

「だぁっ! だからっ、そのっ、きょ、今日は付き合ってくれて、その、アリガトなっ!」

 

 へ?

 

「な、なんだよっ! あたしが礼言っちゃおかしいかよっ!」

「え、あ、いや」

 

 ノーヴェ姉が素直? に礼を言ってくれるなんて驚いた。

 だってノーヴェ姉だぞ?

 チンク姉に対しては結構甘えたりとか素直だったりするけど、俺に対しては結構頑なというか、警戒されているというか、意地っ張りな態度しかとられたことなかったから、予想外すぎてびっくりした。

 でも、なんかうれしい、かな。

 だってそれってノーヴェ姉が俺に対して心を開いてくれたってことだろ?

 

「こんなことでいいなら、またいつでも付き合うから言ってくれよ、ノーヴェ姉」

「あ、あぁ。そん時は、その、頼む、な?」

「任せろ。じゃあ俺はいくから。おやつ、楽しみにしてろよ」

 

 言って、俺も部屋を後にした。

 む?

 そういえば、何でノーヴェ姉は顔を赤くしてたんだ?

 あの様子じゃ怪我はしてないはずだし。というか怪我したならモニターしてたウーノ姉がそう言っただろうし。

 あ! 戦闘直後で熱かった、とか?

 いや、でもなんか話せば話すほど赤くなってたような……。

 うーん。分からん。

 ま、怪我してるわけじゃないし、大丈夫だろ。

 さて、それじゃあがんばってケーキを作るとしよう。

 

 




ノーヴェ&ウェンディとの模擬戦闘回でした。
ついでにトーレとの模擬戦闘フラグがたちましたが。
トーレとの模擬戦闘は、おそらくEX.になると思います。


昨日、まとめて投稿したせいか、たくさんの感想ありがとうございました。
にじファン当時から見てくれていた方もいて、なんとも嬉しい限りです。
個別に返信ができなくて大変申し訳ありませんが、いただいた感想はすべて目を通させていただいています。
にじファン投稿分はなるべく早く手直しして投稿したいと思います。
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