なのはStS本編第12話と同タイトルですが、その時の話ではありません。また、一応なのはStS本編の時系列にそって書いていますが、だからといってこっちの1話となのはStS1話は同時期ではありませんのであしからず。
正確に言うと第1話がだいたい第7話『ホテル・アグスタ』あたりです。
目が覚める。
どうやら俺は、ベッドに寝かされているらしい。
無機質な部屋で、病室というよりは、どちらかというと実験室というか研究室に近い。
「目が覚めたようだな」
そう俺に話し掛けてきたのは、俺が寝ているベッドの横に立つ一人の少女だった。
年令は十歳を少し越えたくらい。銀色のロングヘアで、右目に眼帯をしている。
「自分のこと、私のこと、わかるか?」
聞かれて、考えるように目を閉じる。
……。
俺はシロウ。Dr.ジェイル・スカリエッティが、別次元に存在するという『魔術師』に興味を持ち作り出した、人造魔術師の、46番目の実験体。
さっきの少女は…、同じくドクターが作り出した、戦闘機人の五番目。チンク。俺の姉だ。
「うん。大丈夫みたいだ、チンク姉」
目を開けて、少女―チンクを見やる。
「ふむ。記憶の方は大丈夫そうだな。ドクターは目が覚めれば動いても大丈夫だと言っていたが、どうだ?」
「同調開始〈トレース・オン〉」
肉体、損傷他問題ナシ。
肉体年令、十七歳。
魔術回路、正常稼働。強化、投影、問題なく使用可能。
投影、武器・防具ともに可能。宝具および武器・防具以外の投影も魔力消費量は多少大きいものの、問題なく使用可能。
宝具、真名解放可能。
固有結界、リミッター稼働。任意発動不可。
魔力、レリックの融合により増大。魔導師ランク換算、推定Sランク。
よし。どこにも問題はないな。固有結界はリミッター付きだけど、そうそう使うことなんてないだろうし。必要ならドクターとウーノ姉とクア姉の三人に、解除してもらえばいい。まぁ三人分の認証がないといけないってのは、正直面倒だけどな。
「それも問題ないよ」
「そうか。では早く服を着ろ」
へ?
言われて、ふと自分の体に目を落とす。
「なんでさっ!?」
お、俺、ふ、服…!
チンク姉から隠れようとあたふたしたはずみに、ベッドから転がり落ちる。
正直かなり痛かったけど、今はそんなことどうでもいいっ!
「なんだ、気付いてなかったのか?」
苦笑混じりのチンク姉。
そう、俺は素っ裸だったのだ! なんで気付かなかったよ、俺!?
「気付いてたんならなんでもっと早く言ってくれないんだよ、チンク姉」
恥ずかしいのと情けないのとで、ベッドの横に隠れながらチンク姉を睨む。
「ははっ。すまない、てっきり気付いてて平然としてるのかと思ってな」
「なんでさ…」
ありえないから。フル●ン見られて平然としてるなんて、どんな変態超人だよ。
「いいじゃないか、別に。姉弟なんだから」
「いやいやいや。姉弟だろうがなんだろうが関係ないから、この場合」
同性ならまだしも、いや、同性だろうが恥ずかしいけどっ。
「着替えはそこだ。そういうなら早く着ろ」
苦笑したままで、チンク姉が部屋の一角を指差す。
ほっと安心するも、チンク姉はその場から動こうとしない。
あの、チンクさん?
「着替えないのか?」
あなたがそこにいるから動けませんっ!
目で訴えると、チンク姉は大きく溜め息を吐く。
「わかった。部屋の外で待ってるぞ」
そう言って部屋から出ていった。
「はぁ〜。そりゃ女のチンク姉にはわからないだろうけどさぁ」
ぶつぶつと文句を言いながら、とりあえず着替える。
用意されていた着替えは、チンク姉も着ていた戦闘服とほぼ同じ。一体型の戦闘服に簡易装甲。俺のはそこに長袖のハーフジャケットと、ゆったりとしたズボンが用意されている。胸元のナンバーは、チンク姉と違い、数字で46。
ちなみに俺だけ数字なのは、俺が人造魔術師だから。戦闘機人たる姉たちとは違うから、ナンバーの表記も違うのだ。まぁ、単純にローマ数字だと面倒だってのもあるだろうけどね。なにせXLVIだし。三文字くらいならともかく、それ以上だと見にくい。
服を手に取り着替える。最後にジャケットを羽織ろうと手をかけ、ふと手を止める。
ふむ。
しばし考えてから、ジャケットを元の場所に戻すと、魔術で作り出した赤い聖骸布を纏った。
「こんなもんかな」
鏡がないので確認できないけど、まぁこんな所だろう。
部屋を出ると、チンク姉が扉の横の壁に寄り掛かり、腕を組んで待っていた。
「ん? そんな服、用意してあったか?」
チンク姉が俺の格好を見て首を傾げる。
「あぁ、これは違うよ。俺が魔術で作り出したものだ。俺は魔力抵抗が低いから、簡単な射撃魔法でも致命傷になりかねないんだ。それを補うための概念武装だよ」
「概念武装? おまえの能力はいまいちよくわからんな」
「まぁこの世界の魔法とは根本から違うからね。こっちの魔法が科学なら、俺の魔術は神秘ってとこかな」
俺の説明に、チンク姉はわかったようなわからないような、複雑そうな顔を浮かべた。
「まぁいい。それより他の姉妹達に会いに行くぞ」
諦めたらしく、肩を竦めて歩きだした。
そりゃ俺だってこっちの魔法に関してはいまいちよくわからないさ。まぁ自分で使えればそれなりにわかるんだろうけど、俺には魔術回路はあってもリンカーコアはないからなぁ。
そんなことを考えながらチンク姉について行った。
連れていかれた部屋には、数人の姉たちがいた。
「お。目覚めたみたいっスね」
真っ先に声をかけてきたのは、赤紫っぽい髪の11番、ウェン姉。
「わかってるとは思うっスけど、11番ウェンディっスよ〜」
言葉遣いからもわかるように、ウェン姉は姉妹中もっとも明るい性格だ。どうでもいいけど、何であんな口調なんだ?
「や〜っと起きたのねぇ、シロウちゃん」
次に声をかけてきたのは、栗色の髪を両脇で一つに繰り眼鏡を掛けている、4番クア姉。
「なんでシロウちゃんなのさ、クア姉」
「あ〜ら〜? 弟がお姉さんに口答えする気〜?」
う。それを言われたら何も返せない。
「シロウちゃんが私を言い負かせるようになったら、ちゃんと読んであげるわよ? シ・ロ・ウ・ちゃん」
うぅ。
「からかうのもそれ位にしておけ、クアットロ」
助け船を出してくれたのは、紫色のショートヘアで、この場では最年長になる、3番トーレ姉。
「トーレ姉」
「お前もお前だ、シロウ。男があれ位でへこたれるな、情けない」
喜んだのも束の間、逆に叱られてしまった。
「まぁまぁ二人とも。それ位にしてあげなよ」
割って入ってきてくれたのは、薄緑色の髪をした6番、セイン姉。
ふと見やると、セイン姉は『お姉ちゃんに任せろ』とばかりに小さく笑う。
「シロウだってまだ目覚めたばかりなんだしさ」
セイン姉の説得に、クア姉もトーレ姉も、『仕方がない』とばかりに溜め息をついた。
おぉ〜。さすがはセイン姉。
感嘆の視線を向けると、セイン姉は小さくウインクしてくれた。
「けっ。男のくせに軟弱なんだよ」
せっかく話は終わったと思ったのに、別の方向から再び叱られた。
声の方を見てみると、苛立った様子の9番ノーヴェ姉がいた。
「ノーヴェ姉」
「んだよっ!」
声をかけたのは10番ディエチ姉。しかしノーヴェ姉はそれに対して、さらに苛立ったように吐き捨てた。
「ノーヴェ」
「ちっ」
チンク姉にたしなめるように名前を呼ばれて、ノーヴェ姉は、舌打ちしながそっぽを向いてしまう。
それを見たチンク姉は、小さく溜め息を吐いて俺に向き直った。
「さて、顔見せも済んだし、後はドクターに報告へ行くか」
チンク姉に促されて部屋を出た。
「ノーヴェのことはあまり気にするな。あの子は常にあんな感じだ」
「大丈夫だよ、チンク姉」
まぁ正直ちょっと恐かったけど。
「そうか」
チンク姉は安心したように微笑んだ。
いかがでしたでしょうか?
ナンバーズとの顔合わせ編その1です。
どうも難しいですね。
ナンバーズの日常はほとんど出てこないので、口調とか呼び方とかいまちいわからない…。
チンクはなにやら口調がシグナムです。あれ?
ともあれ、次回はナンバーズ顔合わせ編その2とシロウの模擬戦編です。
よろしければまた読んでください。