前話後書きで模擬戦編と書いたのですが、すみません。模擬戦編は次回となりました。
かなり短めです。
広い部屋だった。
壁一面に巨大なパネル状のモニターが展開され、その周りに小さいモニターも多数展開されている。
それらを見ながら、なにやら話し込んでいた人物は、入ってきた俺たちに気付いて声をかけてきた。
「おや、目覚めたようだね」
彼が俺を作り出した人物、Dr.ジェイル・スカリエッティ。
その横に秘書然として立っているのが、俺たちの一番上の姉、1番ウーノ姉。
「ふむ。その様子では、動作等に問題はなさそうだね」
「あぁ、特に問題はない」
「融合させたレリックの方はどうかな?」
「そちらも問題はない。おかげで身体能力やら魔力やらがかなり上がっている。身体能力は戦闘機人たる姉たちと大差なかろうし、魔力も魔導師換算でS以上だろう」
「それは良かった」
彼は満足そうに微笑んだ。
「その赤い上着は? 用意したものにはなかったはずよ?」
俺の格好を見たウーノ姉が、訝しげに眉を寄せる。
「あぁ、これか。これは概念武装といってな、私の魔術で作り出したものだ」
「魔術で?」
「あぁ。私の対魔力はかなり低くてね。簡単な射撃魔法でも致命傷になりかねん。私の魔術では、こちらの魔法のように簡単には防御障壁を作り出せんのだ。それを補うためのもの、と思っておいてくれ」
「素晴らしい。目覚めたてでもそれだけの魔術を行使できるとは。早速だが、君の魔術を見せてくれんかね?」
ドクターの言葉に、俺は眉を寄せた。
「なに、確かに私は魔術も研究しているのだがね、君のそれは所謂一般的な魔術とはずいぶんと違うのだよ。こちらの魔法風に言えば、君だけが使える稀少技能〈レアスキル〉といった所だ」
「ふむ。まぁいいだろう。それで? 私は何をすればいいのだ?」
ドクターはにやりと唇を歪めると、モニターを操作して、画面いっぱいに一本の槍を表示する。
「君の魔術は投影、見たもの触れたものの複製品を作り出せるものだ。この槍―ある人物の使うデバイスなのだが、これを投影してみてはくれんかね」
「それは少々語弊がある。確かに私の魔術は投影といって、複製品を作り出すことだがね。私のそれは少々勝手が違う。私の魔術は剣製に特化し過ぎているのだ。無論、他の武器や防具などもできなくはないがね、剣のそれと比べると、魔力の消費が大きい。それに剣とは違い、能力や強度も落ちる」
俺の説明に、ドクターは納得したように頷くと、再びモニターを操作して、今度は剣を表示する。
「これならばどうかね。これもある人物の使うデバイスなのだが、君の要望通り、剣だよ」
「残念だがね、ドクター。私の魔術とこの世界の魔法は相容れないものだ。その剣を投影することは可能だが、デバイスとしての役割は何らはたせん外側だけのものになるぞ」
まぁ、目の前に実物があって、触れられるなら、デバイス機能はともかく、内部機構くらいなら再現できるだろう。そもそも俺は、デバイスの構造自体、まったくわからん。
「ふむ。ではこの世界の武器は、君はほとんど投影できないということか。そうなると、君の武器となるものが何もないということになってしまうね」
「その点は心配いらん。私の元となった人物は、元の世界で随分多くの剣を見てきているらしい。向こうの世界のものだが、この世界においても十分通用しそうだ」
「ほう、それならば安心だ。そうだ、その威力とやらを見せてくれないか? 丁度いい、チンク、君が相手をしてあげなさい」
「了解した、ドクター。付いて来い、シロウ」
チンク姉に促されて、俺はドクターたちのいる部屋から出た。
「チンク姉? これから何するんだ?」
「なに、戦闘訓練だ。お前がどれほどのものか、楽しみにしているぞ」
シロウ達が後にした部屋の中では、スカリエッティとウーノがモニターを見ながら、なにやら話し込んでいた。
モニターには、シロウのと思わしき身体データが映し出されている。
その近くには、なにやら映像が映し出されていた。
「あの様子では、記憶の方も問題なさそうだね」
「そのようですね、ドクター」
「やはり彼は面白い素材だね。それに、あの能力はかなりの戦力になる」
「ですがよろしかったのですか?」
「ん? なにがかね?」
「戦力になるというのなら、彼のあの能力も封印しなかった方がよろしかったのでは?」
「あぁ、固有結界というヤツのことかね? なに、封印といっても『私が封印している』という記憶を植え付けているだけで、実際にしているわけではないからね。いざとなれば封印を解除したといって使ってもらえばいいさ」
「それはそうですが…」
「彼の記憶映像を見せてもらったが、あれはこの世界の魔導師には対抗不可能だ。そんな反則技を使ってしまっては面白くないだろう? さて、今はそれよりも彼の戦闘を見ようじゃないか。記憶映像で見たとはいえ、やはり実際に見る方が何倍もいいからね」
「そうですね。先程の彼の言葉からも分かりましたが、彼の記憶も完全に映像化できたわけではありませんし、魔術というものを知る、いい機会ですから」
次回は今回書けなかった模擬戦編です。次こそは模擬戦編です。