46番目の魔術使い   作:眞神零一郎

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ナンバーズたちの食事情。
あの人たち、普段何食べてるんでしょうか?
まったく描写がないので、かなり悩みました。
コンビニ弁当にしようとしたものの、ミッドチルダにコンビニはあるのか? でつまずき、カロリーうんちゃら系かとも思いましたが、ドクターはともかく、ナンバーズの皆は絶対腹一杯にはならないだろうなぁでつまずき、結局こうなりました。
うーん、これも無理あるよなぁ……。



第四話 シロウ、厨房に立つ

 

 ぐぐぅきゅるるるる。

 突然の怪音(?)に、チンク姉が動きを止めた。

 そして辺りをきょろきょろと見回し、俺が音源だと気付いて目を留めた。

 

「ぷ。くははははっ。い、今のはお前の腹の音か?」

 

 そして盛大に笑われた。

 し、仕方ないだろ。目覚めたてで何も食べてなかったのに、いきなり戦闘訓練に駆り出されたんだから。

 

「そ、そうか。目覚めてから何も食べてなかったな。くくっ」

 

 そんなにおかしかったのか、笑いを堪えながら身を捩る。

「い、いつまで笑ってるんだよ、チンク姉」

「いやなに。さすがのお前でも、腹の虫には抗えないのだと思うと、おかしくてな。くくっ」

 

 何でここまで笑われなきゃいけないのさ。

 というか、俺の腹も、何も今鳴らなくたっていいんじゃないか!?

 

「食事にしよう。そ、そういえば私も腹が減った。ぷっ」

 

 笑いを堪えようとしながらも、俺を見るたびにあの音を思い出してしまうらしい。小さく吹き出したり、口元を押さえたりしながら、食事を提案してくる。

 そりゃ俺としちゃ願ったり叶ったりだけど。

 

「……どうでもいいけど、いつまで笑ってるんだよ。チンク姉」

「いや、すまん。たが、どうしても押さえられなくてな」

「……もういい」

 

 諦めて一人、踵を返した。

 

「まぁ待て。弟のくせに姉を置いて行くな」

「姉のくせに弟の腹の音で笑うな」

「ぷっ。くくくくっ」

「はぁ〜」

 

 もう言い返すのも面倒だ。

 いいさ。いつまでも笑ってればいいんだ。

 再び笑いはじめたチンク姉を置いて、俺は一人で訓練場を後にした。

 

 

 

 後から追い付いてきたチンク姉と二人で、食堂へとやってきた。

 とはいっても、最初に姉たちと会ったあの部屋だったけど。

 どうやらあの部屋は、食堂というよりも、リビング的な場所らしい。

 食事時以外でも、たまり場みたいになっているようだ。

 部屋に入ると、食事時とも相まって、ノーヴェ姉とウェン姉、セイン姉とクア姉が食事中だった。

 食事の内容といえば……。

 

「なんだよ、それ」

「ん? どうしたっスか?」

 

 茫然と俺が漏らした呟きに、一番近くにいたウェン姉が『それ』を食べながら首を傾げた。

 姉たちが食べていたのは、どっかの店で買ってきたかのような、出来合いの弁当。

 飲み物に関しては、水のペットボトルとお茶用らしきポットが置かれている。カップは一応、ちゃんとしたグラスやらティーカップだ。

 クア姉が一つ、セイン姉が二つ、ウェン姉とノーヴェ姉が四つずつ確保している。

 って四つも食べんの!?

 

「あらシロウちゃんもお昼? 奥にお弁当置いてあるから、好きなのとって自分であっためてね〜」

 

 クア姉が、フォークで唐揚げをつつきながら奥を指差す。

 

「なんで弁当なのさ」

「なんでって、んなの作る奴がいないからに決まってんだろ」

 

 当たり前だろうとばかりにノーヴェ姉。

 

「いや、そんな当然みたいに言われても……。誰も作れないの?」

「だぁって私たちには料理なんてプログラム、入ってないんだもの」

 

 そっか。料理する人がいないから、誰も料理できないのか。たしかに、ドクターが料理なんてするはずないしなぁ。ヘタしたらあの人、カロリーうんちゃらとかうんちゃらゼリーとかですませそうだもんなぁ。いや、もしかすると研究に没頭して食べることすら忘れてるかも。

 うん。ありえる。

 でもだからって弁当はなぁ。カロリーは高いし、栄養価は低いし、なにより味気ないだろ。

 こういうのを見てると、なんかこう、イライラというか、ムズムズというか、とにかく気に入らない。

 

「ここって台所はあるわけ?」

「台所っスか? それならあっちの扉がそうっスけど」

 

 そういって、さっきクア姉が、弁当が置いてあるといって指差した扉を示す。

「材料は?」

「材料って食事の?」

「他になにがあるのさ」

「そんなもん、あるわけないだろう。食料品はこの弁当だけだ」

 

 俺を置いて、チンク姉は先に弁当に手を付けていた。

 

「この弁当ってどうしてるのさ」

「週に一回送られてくる。なに、弁当は真空パックだからな、賞味期限の心配は要らないぞ」

 

 そんな心配はしてない。

 

「じゃあそれもうナシで」

「は?」

「代わりに食材届けてもらってくれ」

 

 俺の言葉に、姉たちは理解不能とばかりに茫然としている。

 

「だから。これから俺が食事作るから、弁当はもうなしにして、代わりに食材送ってもらってってば」

「お前、メシ作れんのかよ?」

 

 ノーヴェ姉が胡乱気に俺を睨んでくる。

 

「出来ないのにやるなんて言わないよ。食材がないって言うんじゃ何も作れないから、今日の所は弁当で我慢するけど、俺は出来合いの弁当は認めんっ」

 

 きっぱりと宣言する。

 

「だいたい出来合いの弁当なんて、カロリー高いは栄養バランス悪いは、ロクなモンじゃない……」

 

 ブツブツと呟きながら、仕方なしに今日の糧を得るために、弁当を取りに行った。

 

 

 

 そして翌日。

 誰が手配してくれたんだか、夕方近くなって食材が届いた。

 それにしても、どうやって届けられてるんだろう。っていうか、アジトに宅急便は来ないだろう。いや、来るのか? うーん。

 ま、いっか。

 どんなルートで来たにしろ、食材はここにあるんだし。

 一週間分で頼んだらしく、結構な量だった。

 まぁそりゃ十人分が一週間分だからな。

 さて、早速作るか。

 

 

「これでよしっと。あ、セイン姉、出来たからみんな呼んできてくれないか?」

 

 俺の作業をずっと後ろから覗いていた、セイン姉に声をかける。

 

「呼びに行くまでもなくみんな集まってるよ。何せ初めての手料理だからな」

 

 そう言って、俺が盛り付けた料理の皿を、珍しそうに眺めている。

 

「じゃあ運ぶの手伝ってくれないか?」

「まかせとけ」

 

 ウインクするセイン姉に、大皿を手渡す。

 俺もいくつかの皿を載せた盆を持って、食堂に移動する。

 

「おぉ〜」

 

 皿を並べると、姉たちから歓声が漏れた。

 

「ほぅ、美味そうだな」

「うっわ〜、こんな料理見たことないっスよ〜」

「あれ。ドクターとウーノ姉は?」

「研究室。今は手を放せないから後でいいってさ」

 

 辺りを見回して、二人の姿がないことに気付くと、セイン姉が教えてくれた。

 しょうがないなぁ。料理はみんなで揃って食べるのがおいしいのに。

 まぁウーノ姉がついてるなら、食べ忘れるなんてことはないだろうし、まぁいいか。

 

「よし、これで最後だな」

 

 最後にみんなの箸を分ける。

 

「ったく、遅ェーんだよっ。てッ! 何しやがるッ」

 

 一人先に食べようとしていたノーヴェ姉の手をぴしゃりと叩く。

 

「食べるのは『いただきます』をしてからだ」

「はぁ? 何だよ、ソレ。いてっ」

 

 再び出されたノーヴェ姉の手を同じように叩く。

 

「『いただきます』をしてからだ」

「だから何だよ、ソレ!」

「食事に対する感謝の言葉だ。言わないかぎり、ここに並んでるおかず一切れ、飯粒一つすら食わせん」

 

 今までどうだったか知らんが、俺が作った以上、断固として譲らないからな。

 

「みんなもだ。食べる前には『いただきます』。食べ終わったら『ごちそうさま』。これが言えない奴は、たとえドクターだろうがメシは食わせん」

 

 一瞬、しんと静まり返る食堂。

 

「シロウちゃんが作ったものですからね。作った人の言うことは聞きましょ」

「そうだな」

『いただきまーす』

 

 かくして、全員が声を揃えた。

 よし。

 ちなみに今日のメニューは、ご飯とわかめの味噌汁、肉じゃがにてんぷらの盛り合わせ、煮魚に揚げ出し豆腐にほうれん草の胡麻和え。純和風なメニューにしてみました。

 

「うわ、美味っ。なんスかこれ〜。めっちゃ美味いっスよ〜」

「それは煮魚だ」

「むぅ、これは何だ? ものすごく美味いぞ」

「そっちのは肉じゃが」

「これは芋か? 揚げてあるみたいだが」

「さつまいものてんぷらだよ」

 

 聞かれたそれぞれの料理を説明しながら、内心でホッと胸を撫で下ろす。

 よかった〜。これでマズイとか言われたらどうしようかと思った。

 

「うぐっ! ぐっ」

「うわ、ほらノーヴェ姉、水水」

 

 すごい勢いで口に詰め込んでいたノーヴェ姉は、案の定喉に詰まらせた。グラスに水を注いで差しだすと、ひったくるように奪って一気に飲み干す。

 

「っはぁ〜。あー、今のはマジでヤバかった……」

「勢い込んで食べるからだよ。そんなに慌てなくても大丈夫だって」

「早く食わねぇとなくなっちまうだろっ」

「そんなに気に入ってもらえて嬉しいよ」

「ばっ! そ、そんなんじゃねぇよっ!!」

 

 途端、ノーヴェ姉は、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。

 

「なぁシロウ。ここに出てるの、全部食べちゃっていいのか?」

「ん? あぁ、ドクターとウーノ姉の分はちゃんととってあるから平気だよ」

「よっしゃ。んじゃ最後のエビ天もーらいっ」

 

 質問に答えると同時に、セイン姉がエビ天をかっさらっていった。

 

「あっ、ずるいっスよ!」

「じゃあ私はイカ天を頂こう」

 

 冷静に、チンク姉がイカ天を確保。

 

「んじゃアタシはまいたけと芋貰うぜっ」

 

 続いてノーヴェ姉も、まいたけと芋をダブルでゲット。

 

「揚げ出し豆腐、貰った」

 

 ぼそりと呟き、ディエチ姉が揚げ出し豆腐を口の中へ。

 

「あぁ〜。揚げ出し豆腐狙ってたんスよ〜」

 

 取り損ねたウェン姉が力なくうなだれた。

 

「やめんか貴様等っ! みっともないッ」

「と、言いつつ、トーレ姉様は煮魚を確保されてるみたいですけど?」

 

 クア姉が、トーレ姉の皿を眺めやる。そこには、煮魚の最後の一切れが、確かに確保されていた。

 

「うっ。こ、これはだな、その、なんというか…」

 

 指摘されて、トーレ姉はしどろもどろになっている。

 うわ、トーレ姉のこんな姿初めて見た。

 他の姉たちも同様らしく、目を丸くしてトーレ姉を見つめている。

 

「し、仕方ないだろう……」

「まぁ確かに。すっごい美味かったっスからね」

「トーレ姉の気持ちもよーっく分かるよ」

 

 セイン姉の言葉に、全員が何度も頷いた。

 

「確かにこれを食べたら、お弁当なんてもう食べる気起こらないわね」

 

 嬉しいことを言ってくれるなぁ。

 

「まぁ、その、なんだ……」

「ん?」

「だからっ、美味かったよっ」

 

 照れ臭そうに、ノーヴェ姉が怒鳴る。

 

「ははっ。ありがとな。さて、じゃあ最後に……」

『ごちそうさまでしたっ』

「はい、おそまつさまでした」

 

 食器を片付けようと腰を浮かせると、チンク姉に止められた。

 

「あぁ、シロウ。片付けは私たちでやるからお前はいいぞ」

「え? なんでさ」

「まぁなんだ。おいしいご飯を作ってくれたお礼っていうかさ、とにかくあたしらでやるから、シロウはお茶でも飲んでなって」

 

 セイン姉に押し止められると、すかさずディエチ姉がお茶を注いだカップを差し出してくる。

 

「う。じゃあお願いするよ」

「おう、お姉ちゃんに任せとけっ」

 

 そう言ってウインクすると、セイン姉はお盆にみんなの食器を載せて台所へと消えていった。

 

 余談だが、以後、食後の片付けは姉たちが分担してやってくれることになった。

 ちなみに、チンク姉がやるときは、どこからともなく持ってきたらしい踏み台使用であることは、公然の秘密だ。




とりあえず、今日はここまでの投稿です。


*前書きや後書きは当時のものをほぼそのまま転載しています。
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