あの人たち、普段何食べてるんでしょうか?
まったく描写がないので、かなり悩みました。
コンビニ弁当にしようとしたものの、ミッドチルダにコンビニはあるのか? でつまずき、カロリーうんちゃら系かとも思いましたが、ドクターはともかく、ナンバーズの皆は絶対腹一杯にはならないだろうなぁでつまずき、結局こうなりました。
うーん、これも無理あるよなぁ……。
ぐぐぅきゅるるるる。
突然の怪音(?)に、チンク姉が動きを止めた。
そして辺りをきょろきょろと見回し、俺が音源だと気付いて目を留めた。
「ぷ。くははははっ。い、今のはお前の腹の音か?」
そして盛大に笑われた。
し、仕方ないだろ。目覚めたてで何も食べてなかったのに、いきなり戦闘訓練に駆り出されたんだから。
「そ、そうか。目覚めてから何も食べてなかったな。くくっ」
そんなにおかしかったのか、笑いを堪えながら身を捩る。
「い、いつまで笑ってるんだよ、チンク姉」
「いやなに。さすがのお前でも、腹の虫には抗えないのだと思うと、おかしくてな。くくっ」
何でここまで笑われなきゃいけないのさ。
というか、俺の腹も、何も今鳴らなくたっていいんじゃないか!?
「食事にしよう。そ、そういえば私も腹が減った。ぷっ」
笑いを堪えようとしながらも、俺を見るたびにあの音を思い出してしまうらしい。小さく吹き出したり、口元を押さえたりしながら、食事を提案してくる。
そりゃ俺としちゃ願ったり叶ったりだけど。
「……どうでもいいけど、いつまで笑ってるんだよ。チンク姉」
「いや、すまん。たが、どうしても押さえられなくてな」
「……もういい」
諦めて一人、踵を返した。
「まぁ待て。弟のくせに姉を置いて行くな」
「姉のくせに弟の腹の音で笑うな」
「ぷっ。くくくくっ」
「はぁ〜」
もう言い返すのも面倒だ。
いいさ。いつまでも笑ってればいいんだ。
再び笑いはじめたチンク姉を置いて、俺は一人で訓練場を後にした。
後から追い付いてきたチンク姉と二人で、食堂へとやってきた。
とはいっても、最初に姉たちと会ったあの部屋だったけど。
どうやらあの部屋は、食堂というよりも、リビング的な場所らしい。
食事時以外でも、たまり場みたいになっているようだ。
部屋に入ると、食事時とも相まって、ノーヴェ姉とウェン姉、セイン姉とクア姉が食事中だった。
食事の内容といえば……。
「なんだよ、それ」
「ん? どうしたっスか?」
茫然と俺が漏らした呟きに、一番近くにいたウェン姉が『それ』を食べながら首を傾げた。
姉たちが食べていたのは、どっかの店で買ってきたかのような、出来合いの弁当。
飲み物に関しては、水のペットボトルとお茶用らしきポットが置かれている。カップは一応、ちゃんとしたグラスやらティーカップだ。
クア姉が一つ、セイン姉が二つ、ウェン姉とノーヴェ姉が四つずつ確保している。
って四つも食べんの!?
「あらシロウちゃんもお昼? 奥にお弁当置いてあるから、好きなのとって自分であっためてね〜」
クア姉が、フォークで唐揚げをつつきながら奥を指差す。
「なんで弁当なのさ」
「なんでって、んなの作る奴がいないからに決まってんだろ」
当たり前だろうとばかりにノーヴェ姉。
「いや、そんな当然みたいに言われても……。誰も作れないの?」
「だぁって私たちには料理なんてプログラム、入ってないんだもの」
そっか。料理する人がいないから、誰も料理できないのか。たしかに、ドクターが料理なんてするはずないしなぁ。ヘタしたらあの人、カロリーうんちゃらとかうんちゃらゼリーとかですませそうだもんなぁ。いや、もしかすると研究に没頭して食べることすら忘れてるかも。
うん。ありえる。
でもだからって弁当はなぁ。カロリーは高いし、栄養価は低いし、なにより味気ないだろ。
こういうのを見てると、なんかこう、イライラというか、ムズムズというか、とにかく気に入らない。
「ここって台所はあるわけ?」
「台所っスか? それならあっちの扉がそうっスけど」
そういって、さっきクア姉が、弁当が置いてあるといって指差した扉を示す。
「材料は?」
「材料って食事の?」
「他になにがあるのさ」
「そんなもん、あるわけないだろう。食料品はこの弁当だけだ」
俺を置いて、チンク姉は先に弁当に手を付けていた。
「この弁当ってどうしてるのさ」
「週に一回送られてくる。なに、弁当は真空パックだからな、賞味期限の心配は要らないぞ」
そんな心配はしてない。
「じゃあそれもうナシで」
「は?」
「代わりに食材届けてもらってくれ」
俺の言葉に、姉たちは理解不能とばかりに茫然としている。
「だから。これから俺が食事作るから、弁当はもうなしにして、代わりに食材送ってもらってってば」
「お前、メシ作れんのかよ?」
ノーヴェ姉が胡乱気に俺を睨んでくる。
「出来ないのにやるなんて言わないよ。食材がないって言うんじゃ何も作れないから、今日の所は弁当で我慢するけど、俺は出来合いの弁当は認めんっ」
きっぱりと宣言する。
「だいたい出来合いの弁当なんて、カロリー高いは栄養バランス悪いは、ロクなモンじゃない……」
ブツブツと呟きながら、仕方なしに今日の糧を得るために、弁当を取りに行った。
そして翌日。
誰が手配してくれたんだか、夕方近くなって食材が届いた。
それにしても、どうやって届けられてるんだろう。っていうか、アジトに宅急便は来ないだろう。いや、来るのか? うーん。
ま、いっか。
どんなルートで来たにしろ、食材はここにあるんだし。
一週間分で頼んだらしく、結構な量だった。
まぁそりゃ十人分が一週間分だからな。
さて、早速作るか。
「これでよしっと。あ、セイン姉、出来たからみんな呼んできてくれないか?」
俺の作業をずっと後ろから覗いていた、セイン姉に声をかける。
「呼びに行くまでもなくみんな集まってるよ。何せ初めての手料理だからな」
そう言って、俺が盛り付けた料理の皿を、珍しそうに眺めている。
「じゃあ運ぶの手伝ってくれないか?」
「まかせとけ」
ウインクするセイン姉に、大皿を手渡す。
俺もいくつかの皿を載せた盆を持って、食堂に移動する。
「おぉ〜」
皿を並べると、姉たちから歓声が漏れた。
「ほぅ、美味そうだな」
「うっわ〜、こんな料理見たことないっスよ〜」
「あれ。ドクターとウーノ姉は?」
「研究室。今は手を放せないから後でいいってさ」
辺りを見回して、二人の姿がないことに気付くと、セイン姉が教えてくれた。
しょうがないなぁ。料理はみんなで揃って食べるのがおいしいのに。
まぁウーノ姉がついてるなら、食べ忘れるなんてことはないだろうし、まぁいいか。
「よし、これで最後だな」
最後にみんなの箸を分ける。
「ったく、遅ェーんだよっ。てッ! 何しやがるッ」
一人先に食べようとしていたノーヴェ姉の手をぴしゃりと叩く。
「食べるのは『いただきます』をしてからだ」
「はぁ? 何だよ、ソレ。いてっ」
再び出されたノーヴェ姉の手を同じように叩く。
「『いただきます』をしてからだ」
「だから何だよ、ソレ!」
「食事に対する感謝の言葉だ。言わないかぎり、ここに並んでるおかず一切れ、飯粒一つすら食わせん」
今までどうだったか知らんが、俺が作った以上、断固として譲らないからな。
「みんなもだ。食べる前には『いただきます』。食べ終わったら『ごちそうさま』。これが言えない奴は、たとえドクターだろうがメシは食わせん」
一瞬、しんと静まり返る食堂。
「シロウちゃんが作ったものですからね。作った人の言うことは聞きましょ」
「そうだな」
『いただきまーす』
かくして、全員が声を揃えた。
よし。
ちなみに今日のメニューは、ご飯とわかめの味噌汁、肉じゃがにてんぷらの盛り合わせ、煮魚に揚げ出し豆腐にほうれん草の胡麻和え。純和風なメニューにしてみました。
「うわ、美味っ。なんスかこれ〜。めっちゃ美味いっスよ〜」
「それは煮魚だ」
「むぅ、これは何だ? ものすごく美味いぞ」
「そっちのは肉じゃが」
「これは芋か? 揚げてあるみたいだが」
「さつまいものてんぷらだよ」
聞かれたそれぞれの料理を説明しながら、内心でホッと胸を撫で下ろす。
よかった〜。これでマズイとか言われたらどうしようかと思った。
「うぐっ! ぐっ」
「うわ、ほらノーヴェ姉、水水」
すごい勢いで口に詰め込んでいたノーヴェ姉は、案の定喉に詰まらせた。グラスに水を注いで差しだすと、ひったくるように奪って一気に飲み干す。
「っはぁ〜。あー、今のはマジでヤバかった……」
「勢い込んで食べるからだよ。そんなに慌てなくても大丈夫だって」
「早く食わねぇとなくなっちまうだろっ」
「そんなに気に入ってもらえて嬉しいよ」
「ばっ! そ、そんなんじゃねぇよっ!!」
途端、ノーヴェ姉は、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。
「なぁシロウ。ここに出てるの、全部食べちゃっていいのか?」
「ん? あぁ、ドクターとウーノ姉の分はちゃんととってあるから平気だよ」
「よっしゃ。んじゃ最後のエビ天もーらいっ」
質問に答えると同時に、セイン姉がエビ天をかっさらっていった。
「あっ、ずるいっスよ!」
「じゃあ私はイカ天を頂こう」
冷静に、チンク姉がイカ天を確保。
「んじゃアタシはまいたけと芋貰うぜっ」
続いてノーヴェ姉も、まいたけと芋をダブルでゲット。
「揚げ出し豆腐、貰った」
ぼそりと呟き、ディエチ姉が揚げ出し豆腐を口の中へ。
「あぁ〜。揚げ出し豆腐狙ってたんスよ〜」
取り損ねたウェン姉が力なくうなだれた。
「やめんか貴様等っ! みっともないッ」
「と、言いつつ、トーレ姉様は煮魚を確保されてるみたいですけど?」
クア姉が、トーレ姉の皿を眺めやる。そこには、煮魚の最後の一切れが、確かに確保されていた。
「うっ。こ、これはだな、その、なんというか…」
指摘されて、トーレ姉はしどろもどろになっている。
うわ、トーレ姉のこんな姿初めて見た。
他の姉たちも同様らしく、目を丸くしてトーレ姉を見つめている。
「し、仕方ないだろう……」
「まぁ確かに。すっごい美味かったっスからね」
「トーレ姉の気持ちもよーっく分かるよ」
セイン姉の言葉に、全員が何度も頷いた。
「確かにこれを食べたら、お弁当なんてもう食べる気起こらないわね」
嬉しいことを言ってくれるなぁ。
「まぁ、その、なんだ……」
「ん?」
「だからっ、美味かったよっ」
照れ臭そうに、ノーヴェ姉が怒鳴る。
「ははっ。ありがとな。さて、じゃあ最後に……」
『ごちそうさまでしたっ』
「はい、おそまつさまでした」
食器を片付けようと腰を浮かせると、チンク姉に止められた。
「あぁ、シロウ。片付けは私たちでやるからお前はいいぞ」
「え? なんでさ」
「まぁなんだ。おいしいご飯を作ってくれたお礼っていうかさ、とにかくあたしらでやるから、シロウはお茶でも飲んでなって」
セイン姉に押し止められると、すかさずディエチ姉がお茶を注いだカップを差し出してくる。
「う。じゃあお願いするよ」
「おう、お姉ちゃんに任せとけっ」
そう言ってウインクすると、セイン姉はお盆にみんなの食器を載せて台所へと消えていった。
余談だが、以後、食後の片付けは姉たちが分担してやってくれることになった。
ちなみに、チンク姉がやるときは、どこからともなく持ってきたらしい踏み台使用であることは、公然の秘密だ。
とりあえず、今日はここまでの投稿です。
*前書きや後書きは当時のものをほぼそのまま転載しています。