ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第百十二話

 迎える時は急いてしまうけれど、過ぎてしまえば呆気ない。そんな通り雨のように学校説明会は終わりを迎えた。

 奇跡的に天候も回復し、疲れがありながらもフルパフォーマンスでAqoursはライブをすることが出来た。

 学校説明会に来てくれた人は間違いなくポジティブな印象を受けただろう。

 かく言う私も片付けの終わった今も興奮が冷めやらず、屋上に夕涼みに来ていた。思えば私は割と個人行動が多く、集団行動に対して幾分冷めた目で見ていた節がある。

 何故皆でやらなければならないのか?なんで大して付き合いの無い者のために頑張らなければならないのか?何故それを素晴らしいことだと吹聴するのか?そんな思考が常に心の何処かにあった。勿論、頭ごなしに否定はしないし協力しないという訳では無かったけれど、どちらかと言えば個人単位の行動の方が性に合っていた。

 けれど今回、私は自然と集団行動に身を投じていた。目的が同じだったからというのもある。けど、それよりももっと根源的に、楽しいと感じたからだ。

 その気持ちが来てくれた人にどのくらい伝わったかは分からない。けど、どうか伝わっていて欲しいと、そう思った。

 

「あれ、星ちゃん?まだ居たんだ」

 

「梨子先輩・・・どうしてここに?」

 

「うん。なんか名残惜しくて。景色でも眺めてから帰ろうかなってね」

 

 傾きだした日は既に沈み、空は半分は紫色に染まり、夜の到来を告げていた。

 早くしないと暗くなってしまうと思いつつ、帰ったら今日という日が終わったのだと実感してしまうため足か中々進まない。

 

「なんだか文化祭みたいだったね」

 

「それ言えてますね。忙しなくて、手作りで、皆前向きで」

 

「私初めてなんだ。そうやって皆でやったことが終わって寂しいって思う」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ。ずっとピアノばっかりだったからね。もちろんサボってた訳じゃ無いよ?でも、心ここにあらずっていうか」

 

「ああ、担当になった係を淡々とこなすやつですね」

 

「もう何回目になるかな。内浦に来てそんな初めてと出逢うのって」

 

「そうですね。最初は何も無い場所だって思ってたんですけどね」

 

 私も梨子先輩もこの地域では新参者だ。だから内浦で得る感動に対する感覚が近いのだ。

 

「星ちゃん、鞠莉さん達残留組を説得してくれたんだって?」

 

「いや、あれは私が居なくても結果は変わりませんでした」

 

 私がしたことなど単なるダメ押しだ。実際、王手を掛けたのは名も知らぬ受験生だ。彼女の代弁した皆の願いがあればこそ、鞠莉さん達は一見無理に見えそうな現実を踏破できたのだ。

 

「結果が変わらないなら過程は関係ない?」

 

「・・・」

 

 けれど、梨子先輩の返しの問い掛けに私は否定出来なかった。その問い掛けを否定することは前期ラブライブ予選に参加して敗退したAqoursを、そして私自身でさえも否定することになるからだ。

 

「梨子先輩ってそんな人を試す言い方するキャラでしたっけ?どちらかと言えば弄られキャラというか、オチキャラというか」

 

「オチキャラ!?」

 

「その反応の良さが梨子リストには堪らないんですよ」

 

「何?梨子リストって」

 

「そんなジト目で見ないで下さいよ。ほら、羽生結弦ファンをユズリストって言うみたいな?」

 

「私のファンなんて居ないよ」

 

 私は冗談のつもりで話していたのだが、梨子先輩が本気でファンなんていないと思っているのだから驚きを隠せなかった。

 

「居ない筈ないんですよ。試しにTwitter見てみますか・・・ほら」

 

「えーと、梨子ちゃん貴重な生演奏枠?あざと医くらいの美少女?ピアノガチ馬?素射っすわ?」

 

「おっとと、まぁ、よく分からないのもありますが、Aqoursメンバーの中でも個々で注目されたりするんですよ」

 

 恐らくは特定厨だろう、梨子先輩がピアノコンクールで優勝した経歴も紹介されていたりもする。ここまで注目を集めてファンが居ないなんて口が裂けても言えない。

 

「はぁ、何か改めてラブライブってコンテンツの大きさを実感したわ」

 

「ホントですね。でも、だからこそチャレンジしがいがあるんですけどね」

 

 私が音ノ木坂に入って路上ライブやライブハウスの活動とは別に、スクールアイドルを通して音楽活動をしようと計画していたのもそれが理由だ。

 注目される為に音楽活動をするのではなく、注目されるからこそ楽曲について様々な視点からの感想が聴けるのだ。それを踏まえて次のステップに繋げられる。ラブライブとは挫けずに前を向いて走れば成長に繫がる、成長を促す、そんなコンテンツなのだ。

 

「そんな大きなコンテンツの中に居て、自分達の成長を感じることは?」

 

「確かに前回の地区予選よりも今回の予備予選とか学校説明会のライブの方が確実に進歩してる・・・けど」

 

 梨子先輩はそう言って言葉を濁す。

 

「梨子先輩?」

 

「ラブライブは頑張れば頑張っただけある程度の結果がついてくる。でも、学校の統廃合は私達の頑張りだけじゃどうにも出来ないこともあるんじゃないかなって」

 

「ラブライブの結果が入学希望者数に直結しない。そう言いたいんですね。でも、現状、やはり無関係ではないんですよ」

 

「うん。それも分かってる」

 

 目に見えない繋がり。一見無関係に見える事象が回り回って相互作用する関係性、因果。それを無闇矢鱈に信じることはただの盲信だろう。梨子先輩はリアリストだからこそ、捉えきれない因果を頭から信じることは出来ないのだろう。

 

「捉え方は人それぞれですからね。梨子先輩はそういう立ち位置で良いんじゃないですか?」

 

「たぶん、悩んでるって事は、私自身信じたいんじゃないかなって、そう思うんだ」

 

 それを聴いて私は密かに共感した。みんなの信じるものを信じたい。そんな思いを私も持っているからだ。

 

「なんだか話し込んじゃったね。そろそろ帰ろうか」

 

「そうですね。送りますよ」

 

「ふふっ、生意気言わないの。それに同じ方向じゃない」

 

「そうでした」

 

 私達は心地良い冗談を口にしながら屋上を後にした。

 こんな時だからだろうか?本来出逢うことの無かった私達がこの町でこうして冗談を交わしているのだ。それこそ何の因果だと思う出来事だと普段なら考えないようなことを思った。

 

 

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