ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第百十六話

 ここ最近のダイヤさんはどこかおかしい。みんなよりも早くそれに気付いたのは果南さんと鞠莉さんのダイヤさんを様子をこっそり覗うようなことをしていたからだけど、流石にみんなも違和感に気付き始めている。

 距離感が変なのだ。最近のダイヤさんは。

 みんなそれなりにお互いある程度砕けた仲になっているけれど、どうにもダイヤさんの受け答えがぎこちない。変に取り繕うような仕草が必ず入る。けれど、何を取り繕うのか誰も、何も心当たりがない。

 

「ねぇ、鞠莉さん。ダイヤさんのこと流石にみんな不思議に感じてるみたいですよ」

 

 昼休みのちょっとした時間。私は理事長室の革張りの椅子に腰を下ろし、理事長のデスクでお弁当を頬張る鞠莉さんに話を振った。

 

「もう少しそのままにさせておきなさい。いずれ気付くでしょうし」

 

「結局、ダイヤさんは何を悩んでいるんです?それがどうにも読めなくて」

 

「ちょっとした憧れ。それからくる嫉妬Fire~」

 

「ダイヤさんが嫉妬?」

 

 言ってしまうとダイヤさんは本人の努力もあるだろうが、ほぼ人が望むことの多くを持っている。明確な基準も定義もないけれど知力、美貌、財力、交友関係の水準が一般的と呼ばれるであろう水準を上回っている。

 更に言えばダイヤさんは基本的に自己完結出来る人だ。

 

「Yes.あれでダイヤ、決行寂しがり屋だったりするんだから」

 

「ダイヤさんが?でも成る程、だからルビィちゃんに甘いのか」

 

 構っているようでいて実は構って貰っている。もしかしたらダイヤさんの妹思いなところはそんなところから始まっているのかもしれない。

 

「私達が花丸や善子と気軽にやり取りしているのを見て寂しくなったのよ」

 

「確かに、お寺で一晩明かしてからみんな仲良くのりましたもんね」

 

 最近で一番驚いたのが、それなりに人見知りである花丸ちゃんが果南さんに本を貸していたことだ。

 

「でも立ち位置は変わらない。その立ち位置がダイヤに誤解させているんじゃなきかな」

 

「ダイヤさんだけみんなから打ち解けられてないって?」

 

 もしそう感じているならばその疎外感はやりきれないかもしれない。けれど、確かにその認識は人が幾らそうじゃないと言ったところで説得力を持たない。これは実感の問題だからだ。

 

「放っておくしかないんですね」

 

「まぁ、星は下級生の中ではダイヤとの距離感も近いし、いつも通りでいいんじゃない。それにしても」

 

 鞠莉さんはニヤニヤしながらこちらを見詰め、態とらしく言葉を一度切った。

 

「随分と周りのこと気にするようになったね」

 

「私のこと言ってます?」

 

「Off course.入学したばっかの頃なんて、誰かと関わるなんて状況に流されてって感じだったでしょ」

 

「その状況を一部作った人が言います?」

 

 それはズバリ図星だった。

 こちらに引っ越してきた当初、人付き合いは当たり障り無くいこうと思っていた。

 穹とのことがあったから、自分が誰かと仲良くするなんて烏滸がましいと、そう思っていたからせめて傷付けないようにしようと思っていたのだ。けれど、ルビィちゃんや千歌先輩と関わるうちに、気付けば人間関係は広がり、深まっていた。

 

「理事長だからね。余所からこの土地に、それもこの学校に人が来るって言うからね。色々気にしてたの」

 

「ああ、下調べもしてたみたいですしね」

 

「表面的な情報しか無かったけどね。けど、星も梨子も何か抱えているなって雰囲気はあったからね。何とかしなきゃってのはあったよ」

 

「こっちに引っ越してきて驚いたのはみんな凄く踏み込んでくるんですよね」

 

 埼玉に居た頃はそれ程の関係になったのは穹だけだった。それは埼玉はベッドタウンであり、人が多かったことから、広く浅い人間関係が構築されていったのだろうと思う。それとは対象的に沼津の一地域である内浦は人が少ない分、人間関係も距離感も近いのだ。

 

「嫌だった?」

 

「いいえ。助けられました。鞠莉さんの言うように、少しは周りのこと、人のこと、気にすることができるようになりました」

 

「なら良かった。けど、最近自分のことちゃんと見詰めてる?」

 

「え?」

 

「人のことばかり気にして、穹さんとのこと、棚に上げてない?」

 

 それもまた図星かもしれない。

 穹に聴かせる私の曲。方向性やメッセージ性は決まっているのに全く作曲が進まないのだ。

 

「忙しいことを理由にしたらいけないこともあるよ」

 

「分かってます。でも・・・」

 

 みんなとの時間を重ねれば重ねるほど、曲に乗せたい想いが増えていく。だからこそ纏まらないというのも要因の一つなのかもしれない。

 

「ま、自覚あるならいいの」

 

「ホントかないませんね」

 

「理事長ですから」

 

 二つ年上の先輩であり理事長であるその人は食えない笑顔で「教室に戻りなさい」と、退出を促すのだった。

 

「偶には今回みたいにこうやって相談して欲しいかな。今度は星自身のことで」

 

「その時はヒントだけ下さい。答えは自分で見付けなければならないでしょうから」

 

 もちろん、と本当に嬉しそうに笑う鞠莉さんは理事長という肩書きよりは先輩という言葉が似合う、年相応の少女の笑顔だった。

 

 

 

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