ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第十二話

 ドッキリ、ルビィちゃんのスクールアイドル体験永続編。

 オラずらペテン師花丸ちゃんはダークサイドに堕天した。

 親友のルビィちゃんの純粋な心を利用して、未知の領域スクールアイドル部へと彼女を投獄する。

 ホワイトかブラックかはたまたグレーか。暗中模索のなかをルビィちゃんが行く。

 花丸ちゃんの罠をかいくぐりルビィちゃんは望む未来を掴むことが出来るのか?

 頑張れルビィ。頑張ルビィ。はじまるよ。

 とまあ冗談はさておき今日はルビィちゃんをスクールアイドル部にぶち込むための作戦が決行される日だ。

 花丸ちゃんは上手いこと自らを出汁にルビィちゃんをスクールアイドル部に誘い出すことに成功した。

 私はと言えばこの作戦の成功率を上げるために放課後は別行動と決め込んでいた。

 今頃スクールアイドル部の活動に参加しているだろうと想いをはせながら私は屋上で読書だ。

 ハーモニカはどうしたって?それは言わないお約束だ。

 あのAqoursのライブ以降、どうにも演奏する気が起きない。

 私は音楽をしていていいのか?その命題に蓋をしたまま私はこの町に来た。だが、一度疑念が湧くとどうしてもそう問わずにはいられない。

 私はどうすればいいのだろうか。本の中にはその答えはない。

 

 “困った時はとにかく奏でよう。そこにきっと答えがあるよ”

 

 兎に角前向きな明るい声が私の中に響き渡る。

 こちらの気も知らないでいけしゃあしゃあと言ってくれる。

 私はそんな風には考えられない。片割れに過ぎない私には。

 

「あれ、黒松ちゃん?」

 

 悶々と膝を抱えていると来るはずのない高海先輩の声が聞こえた。

 その声のする方を見ると、Aqoursの三人と花丸ちゃんとルビィちゃんもまた屋上に上がってきたところだった。

 

「黒松ちゃん大丈夫?泣いているの?」

 

「やだな先輩。人の昼寝の邪魔をするなんて」

 

 私はわざとらしく欠伸をするとお茶を濁すような発言でやり過ごす。

 

「どうしたんですか?屋上なんか来ても何もないですよ?」

 

「その発言はそのまま返せるんだけど」

 

 渡辺先輩は疑いの視線を私に送るがどこ吹く風である。この程度のことを誤魔化せなくて半年も嘘を吐き続けるなんて出来なかっただろう。

 

「練習場所を探してたの。校庭も体育館もスペースなくて」

 

「ははあ、だから屋上。μ’sみたいに」

 

 かのスクールアイドルは屋上で練習していたのだと聞いたことがある。みんながここを選んだのはその影響だろう。

 

「邪魔じゃないかな?」

 

「寧ろお邪魔虫は私ですよ。帰りますんでお気遣いなく」

 

 私を気遣ってくれる桜内先輩に苦笑いしつつ、私はバッグを持ち上げて肩に掛けた。今日はもう撤収だ。

 

「あ、星ちゃん」

 

「どうしたのルビィちゃん?」

 

「練習、見ていかない?」

 

 その申し出を受けた私はそれとなく花丸ちゃんを見ると花丸ちゃんは頷いた。

 

「それじゃ折角なんで少しだけ」

 

 こうして私はスクールアイドル部の体験入部に巻き込まれる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー・・・」

 

 ダンスの基礎動作の反復練習。リズムに合わせて動くのでリズム感の調整も兼ねた練習だ。

 高海先輩は流石に練習してきただけあって動きが滑らかだ。

 ルビィちゃんもまたドルヲタを公言するだけあり初めてにしては動きに恥じらいがない。

 

「やっぱり好きなんだね」

 

「分かるずら?」

 

「うん。伝わってくるよ」

 

 ルビィちゃんは私が彼女と出会ってから一番活き活きとしていた。全身から溢れ出す楽しいがこちらに伝わってくる。

 汗だくになりながら、息を切らせながら、それでも顔は苦痛に歪まない。百点満点の笑顔だ。

 

「オラずっとこうなって欲しかった」

 

 花丸ちゃんは言っていた。ルビィちゃんは周りを気にしすぎていると。気にしすぎるあまり自分の好きを抑えてしまっていると。だからいつかそれを解き放って、ルビィちゃんの中にある沢山の好きを、熱を、輝きを何処までも羽ばたかせたい。それが今なのだと花丸ちゃんは夢を語るかのように話してくれた。

 だが、それは花丸ちゃんの気持ちだ。相手を思いやる気持ちが必ずしも良い結果に繋がるとは限らない。花丸ちゃんの思い描くのはあくまでも花丸ちゃんの中のルビィちゃんの願いだからだ。

 ルビィちゃんの持つ願いと花丸ちゃんの思い描くのはルビィちゃんの願いにどれ程の差があるのか分からないが、その差は必ず摩擦となり擦れ違う要因となる。

 それだけは絶対にさせない。仲の良い者同士が擦れ違うなどあってはならない。そんなものは私だけで十分だ。

 

「折角だから花丸ちゃんも楽しまないとね」

 

「うん」

 

 ルビィちゃんから花丸ちゃんに練習の順番が回ってきた。

 花丸ちゃんは運動は苦手らしく、動きがとても拙かった。だが、リズム感はいいのかタイミングそのものを外す事は無く、馴れてしまえば動きも良くなるだろうと思わせるような伸びしろがあることを垣間見ることができた。

 運動は苦手かもしれないが嫌いではないのだろう、楽しそうに踊っている。

 

「よかった」

 

 ルビィちゃんはそんな花丸ちゃんの様子を見て安心していた。

 

「ルビィね、花丸ちゃんが無理して私に合わせてるんじゃないかって心配だった」

 

 流石のルビィちゃんでも急にスクールアイドル部に体験入部しようなんて言葉を頭から信じていなかったらしい。花丸ちゃんの思惑はなんとなくは気付いているようだ。

 

「でも、花丸ちゃん楽しそう」

 

 ルビィちゃんの御墨付きがあるならば間違いない。ならば話は早い。二人が擦れ違う事の無い道筋は見えた。というより、私が変に構えていただけでそれは杞憂だったのだ。二人ならば自然とその結論に至っていただろう。なら私はただ見ているだけでいい。

 

「次黒松ちゃんやる?」

 

「やりません」

 

 そう。私は見ているだけでいい。運動が苦手とか断じてそういう理由ではないのであしからず。

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