ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~ 作:マーケン
自宅に帰り、メールをチェックすると聖良さんから早速ピックアップした曲のリストが届いていた。
パッと思い浮かばなかっただけで、私でも知っているような曲が幾つもあり、改めて聖良さんのポップスに対する知識の深さを思い知る。流石はラブライブ決勝大会に進出したことはある。
その中からどれを選ぼうかとリストにある曲を口笛を吹きながら吟味する。
そう言えば穹と組んでカバー曲をしようとお互いにアレンジしたい曲目を一覧にしたらエライ数の曲が並んだものだ。お互い欲の向くまま選んだ結果がこれかとお互い苦笑するしかなかった。
流石に一から新しく曲を覚えられるとしたら1曲が限度だ。だから完全に初見の曲は一度全て省いて選別する。
年代が一致するからと言って必ずしも知っている訳では無いため、可能な限りリストにある曲がどんな経緯で流行ったのか調べ、広告的に使われたり、ラジオでパワープレイされたりといった曲は優先的に選ぶ。
これは私の持論だが、音楽とはそれ単体よりも、その楽曲に夢中になっていた時の思い出との抱き合わせでこそ心に残りやすいものである。だから出来るだけ昔のことを思い出せる、そんなセットリストにしたいのだ。
「ん?梨子先輩?」
ふとスマホのバイブレーションに気付き、着信を見ると梨子先輩から電話が着ていた。
「もしもしどうしました?」
「どうしました、じゃ、なーい!私が引き取る事になっちゃったじゃない」
「あ、そうなんですね」
なんて言ってみるけれど、大凡そうなるだろうなとは思っていた。
「どうしても預かりたくなかったなら警察に届ければよかったんですよ。そうしなかったってことは心の何処かに預かっても大丈夫って気持ちがあったんじゃないですか?」
実際、梨子先輩は犬アレルギーではないらしいし、過去に噛まれたとかそういうトラウマも無いらしい。つまりは単なる食わず嫌いなのだ。
本人もそれは自覚があるらしく、千歌先輩宅に行った時なんかは頑張って千歌先輩の家の犬、しいたけに触ろうと試みたりと苦手克服しようとはしているらしい。
だったらいいか、という気持ちが私にあったことは否定しない。
「それに私の家より犬を飼ってる千歌先輩の家が隣にある梨子先輩の方が何かあったときに便利でしょ」
「星ちゃん、ちゃっかり理論武装してきたわね」
梨子先輩はあからさまにはぁ、と溜息を吐くと電話口から慰めるように可愛らしい犬鳴き声が聞こえた。
「ああ、ノクターン!静かにしないとだめよ」
「ノクターン?」
「そう。ほら、少しでも馴れるにはやっぱり自分で名前を付けなくちゃって思って」
「ライラプスってのは?」
「いいの。(仮)だった名前なんだから」
なんだかややこしい事になりそうだと思い、これ以上踏み込むのは止そうと私は無理矢理話題を変えた。
「そうだ。こないだ私に話が回ってきた老人会の演し物。何曲かやろうと思うのですが、この中だったらどれがいいですか?」
そう言って絞った曲目を梨子先輩に伝える。
梨子先輩はスクールアイドルを始める前はμ’sの存在すら知らなかったけれど、過去に流行った名曲などは案外知っていたようで、知ってる曲なんかは一言二言コメントをしてくれた。
その曲を伝える間もノクターンは時々吠えていた。雨の中、ずぶ濡れで見つかったから時間差で体調を崩さないかとも思ったけれど、どうやら杞憂だったらしい。
「以上です」
「じゃあ、3曲目と16曲目が良いと思うよ」
「その心は?」
「ノクターンが反応してたから」
これは冗談と受け取って良いのか迷ったけれど、案外馬鹿に出来ないチョイスだったので否定も出来ない。
「ところで、星ちゃんは自分の曲はやらないの?」
「そこまでの説得力のある曲は残念ながらこれまで作った曲の中には無いと思いますので」
決して手を抜いた訳では無い。その時々で作り出せる最高のものを作ってきたという自負もある。けれど、それだけでは人の心を動かすには足りないのだ。
本当に凄い曲は初めて聴く曲であっても記憶に残り続けるし、体が底から熱くなったり、涙が出たりするのだ。
「それを決めるのは星ちゃんだけじゃないんじゃない?」
「そうかもしれませんが、やっぱり今回私のオリジナル楽曲をやるのは違うと思いますよ」
一方的に自分のお勧めを押し付けるだけでは人は喜ばない。人を喜ばす為の企画に出演するのに、それではいけない。だから私は今回、オーディエンスに寄り添った構成にしようと考えているのだ。
「ワンっ」
「こーら、静かにしないと駄目よ、ノクターン」
電話の向こう側ではどことなく問い掛けるようにノクターンが吠え、それを梨子先輩が窘める。
「案外満更じゃなさそうですね。安心しました」
「そ、そんなことないよー」
「苦手克服頑張ってください」
では、と通話を終える直前、ノクターンがまた吠えているのが妙に耳に残った。
犬も吠えれば棒に当たる、という言葉があるように何かと暗喩が含まれる生物なのだ、犬とは。
Aqours 3rd福岡行ってきたので雑記でも書きます。