ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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久し振りに活動報告にて雑記でも書きます


第百五十三話

 思えば編曲、という作業を行うのはある意味で初めてだ。

 穹と曲を作っていた時は文字通り作曲だったし、カバーアレンジは編曲と言えないこともないけれど、こうして曲に一つの完成を与えるための作業という意味では間違いなく初めてだった。

 

「テーマソング?」

 

「どれどれ・・・・・・いいじゃない!」

 

 Aqoursの作曲担当 梨子先輩らしさを印象つけるピアノメインのイントロとアウトロ、Aqoursらしさを、そして沼津の海から聴こえる波音のようなツリーチャイムのキラキラした細やかな音や木琴による水泡感のある音、なによりドラムとストリングスのリードによる浦の星女学院らしい力強さ。そのシンフォニックなメロディーに乗せられた皆の言葉や方向性との一体感は自画自賛するほどだ。

 早速、何かと伝播力のある千歌先輩のクラスメートの四五六トリオに聴かせてみたところ好評で、直ぐに各生徒に曲を回してくれた。すると、

 

「このパートなんだけど・・・」

 

 なんて廊下を移動中にアイデアをくれたりするようになって閉校祭前日まで微調整を重ねた結果より楽曲の持つ力強さが増した

 流石に合唱練習する時間までは無いけれど、仮歌を入れているので多分皆覚えてくれるだろう。

 閉校祭前日の放課後、ヤドカリみたいにスクールアイドル部室に居着いた私は千歌先輩とホッと一息お茶を啜っていると、千歌先輩が「あっ」と声を上げた。

 

「ねぇ、星ちゃん。歌詞カードは?」

 

「・・・忘れてました」

 

 校内の生徒にならメールなりで送れば済むけれど、当日は浦女OBや近隣の方々も来るのだ。その人達のためにも全員に周知出来る方法を考えなければならなかったのだが、編曲に夢中になるあまり忘れていた。

 もう時間ないじゃん、とどうしようか頭を働かせようとすると千歌先輩が苦笑いして、

 

「なんだか逆だよね、こういうの。いつもなら私が前のめりになってるところを星ちゃんが冷静につついてくれたりするでしょ?」

 

「私、自分が当事者になると視野が狭くなるんです」

 

「良いんじゃない。それって夢中ってことでしょ」

 

 と言った。

 そう。千歌先輩の言う通り、夢の中だ。

 終りは見えているのに、いや、見えているからこそ私は私に正直になれた。去年の私がなれなかった私。それはきっと0から1に進み続け、そして1以上の存在になろうとするAqoursや浦の星女学院の皆がいたからだと思う。

 

「誰かが夢中になってるなら、別の誰かが見えない所を見てあげればそれでいいんじゃないかな」

 

「千歌先輩らしいですね」

 

「星ちゃんこそ。いつだって私達のこと見ててくれたでしょ」

 

 千歌先輩は臆面もなくそういうことを言えてしまう人だ。それが嫌味に聴こえないのがズルいと思う。勿論良い意味でだ。

 

「な、なんでこんなところに!?」

 

「ん?」

 

「どうしたんだろう?」

 

 なにやら校内がざわついたと思い、廊下に出て騒がしい方に進んだところ、突き当たりの廊下で、白い布を被った何かが派手に足音を発てて善子ちゃんに追いかけられていた。

 

「何、あれ?」

 

「なんかヨハネトラブルの予感が・・・」

 

 廊下を通りすぎていったと思ったら、ざわつきが更に増して、もう一度私達の前の廊下を通りすぎた。更に追いかける人が増えて、そこには何故か新旧うちっちーの着ぐるみも混ざっていた。

 

「あ、千歌。大変だよ!しいたけが」

 

「果南ちゃん?しいたけがどうしたの?」

 

 旧うちっちーがこちらに気付いたのか、着ぐるみ越しに果南さんが声を掛けてきた。

 因みに勿論のことだが、しいたけとは茸にあらず、千歌先輩の飼い犬だ。

 

「どうしてか、しいたけが迷い混んできて凄い混乱しちゃってるみたいなの」

 

「あの白いの被ってたのって、しいたけだったんだ」

 

「あ、外出ちゃったよ!」

 

 騒ぎの移動を耳で追っていたところ、下へ下へと下りて行き、窓からその姿が確認できた。

 そしてーーーー

 

「あっ・・・ちゃー」

 

 派手に入場門にぶつかり、固定が甘かったのか見事に入場門は倒壊した。見たところ下敷きになった者はいない様子で、それだけは不幸中の幸いだった。

 

「しーいーたーけー!」

 

「あぅっ!」

 

 千歌先輩が窓から名前を呼んだところ、元気な返事が帰ってきたところを見るに、どうやらしいたけもまた無事の様でホッと一安心だ。

 

「どうする、これ今から直してたら確実に終バス無くなるよ?」

 

「でもやるしか・・・忘れてました」

 

 私達は顔を見合わせて途方に暮れていたところ、小気味良いぴんぽんぱんぽーんというアナウンスが校内に流れ、誰もが予想していた通りの呼び出しがあった。

 

「高海千歌さん、高海千歌さん。直ちに理事長室に来なさい」

 

「ダイヤさん滅茶苦茶怒ってるよ。どうしよう」

 

「それと、近くに星さんも居るのは分かっていますわ。直ちに千歌さんを連れて此方に来るように!いいですね!」

 

 そう言われては仕方ないと、私は果南さんと共に千歌先輩の両脇を確保した。

 

「え?何かこれ私が悪いみたいな流れじゃない?」

 

「千歌の犠牲は忘れないよ」

 

「先輩、すみません。ダイヤさんには逆らえません」

 

 そんな、という悲鳴を他所に、私達はずるずると千歌先輩を引き摺って理事長室へと出頭し、何故か全員まとめてダイヤさんからお説教を食らった。正直、果南さんは完全に貰い事故である。

 こうして閉校祭準備は他の大勢の生徒を巻き込んでサドンデスの様相を見せることとなった。

 幸い、終バスを逃した生徒は鞠莉さんが自宅まで送ってくれるということで、決着は付いたのだが。

 

「言わば前夜祭ですね」

 

「何良いこと言った風に纏めてますの」

 

 何てダイヤさんに小突かれる私であった。

 

 

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