ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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長くなるので分割して更新します


第百五十九話

 昨日言ったことだって出来るとは限らないし、一度した決意も揺らぐことだってある。言ってることとやってることが違えば当然反感を買ってしまうし、矛盾していると自分ですら反省するだろう。けれど人間誰しもが有言実行出来るとは限らないし、正しくあろうとしてもうまく出来ないのだ。

 だから千歌先輩が、Aqoursが、決勝を前に揺らぐのも納得できる。けれど、浦の星女学院の生徒が、内浦の人々が、Saint Snowがやり方は違えど支えてくれる。そしてそんな支えのお陰でこうしてラブライブ当日を迎えることが出来たのだ。

 

「あれ?どうしたの星ちゃん?」

 

 朝食後の時間は集合時間まで自由時間。各々自分自身を見詰める時間として使うこととなったのだけれど、それは私もまた例外ではない。だから私は各メンバーに一人づつ話したかったため、旅館を出る前にルビィちゃんに話し掛けたのだ。

 

「お礼を言いたくて」

 

「お礼?」

 

「うん。お礼。だって私のこと放っておかなかったでしょ?」

 

 特段今まで言及することは無かったけれどAqoursが一年生三人の中で一番最初に私に声をかけてくれたのは実はルビィちゃんだ。

 地元の中学からそのまま進級している人が多い浦の星女学院で、若干アウェーな気分でいた私に、人見知りで超ド緊張していたルビィちゃんは勇気を振り絞って声を掛けてくれた。

 

「それにしてもまさか第一声が、『く、くく、くろまつさんは私の髪の毛、邪魔じゃないですか?』だなんて予想の斜め上過ぎて声だして笑っちゃったよ」

 

 名前の順であるため、私はルビィちゃんの後ろの席だった。多分ルビィちゃんのツインのサイドテールが邪魔では無いかと気にしてたんだろうと思うけど、まさかそんなこと聞かれるなんて思わないし、ましてや名前まで間違われるなんて予想外過ぎる。

 

「私もまさかその直後に髪の毛を引っ張られるなんて思わなかったよ」

 

「フリフリと揺れる髪の毛見てたらついね。まさかそれだけであれだけ絶叫されるとは私も思わなかったけどね」

 

「今までお姉ちゃん以外の人に髪の毛触られることなんてなかったから」

 

 そんなこんなで結果的に初っ端から全開で人となりを見せたことで私達は話せるようになった。そしてルビィちゃんを通じて花丸ちゃん、そして花丸ちゃんを通じて善子ちゃんとも仲良くなった。

 

「今日まで燻ってた私をありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 私はルビィちゃんにお礼を述べて旅館を出た。

 昨日に引き続き今日も快晴。沼津と違い建物に囲まれた空は狭いけれど、それでも気持ちの良いものだ。

 

「どこかにお出掛け?」

 

「果南さんは?」

 

「私は海にね」

 

 旅館の玄関先でストレッチしていた果南さんのいつも通りのぶれない姿勢に思わず苦笑いしてしまう。けれど、同時に寂しさも感じる。果南さんは放っておくとどこまでも自由に飛んでいってしまいそうだからだ。実際、卒業したら海外にダイビングのライセンスを取りに行ってしまうのだから。

 

「星はどこに?」

 

 質問に質問で返した私に果南さんは再度問い掛けた。それは単に各自自由行動だから気になったに過ぎないのだろうけれど、自由に自分の好きを追い求める果南さんから問われると深い意味があるように感じてしまう。

 私はどこを目指しているのか?今日という決着の後、私が思い描く絵はどんなものなのか?

 

「・・・・・・私は結局欲張りで、Aqoursのみんなとも一緒に居たいし、穹とも音楽をしたいと思っています。だから両方出来る所を目指してみようかなって」

 

「そっか。星も行きたい所、ちゃんと見えているんだね」

 

「ありがとうございます。そうやって気に掛けてくれて」

 

 三年生間で問題を秘めていた中で、多分一番意固地になっていた果南さんと接することで私自身とも向き合う切っ掛けになった。

 

「これでも私、千歌と曜の姉貴分だったんだよ?御安いご用だよ」

 

 じゃあね、と果南さんはラブライブ決勝目前だというのにランニングで海に向かった。

 果南さんの背中を見送った後、さて私もと思った矢先に、今度は旅館から出てきた梨子先輩に話しかけられた。

 

「相変わらず元気一杯ね、果南ちゃんは」

 

「梨子先輩」

 

「果南ちゃんと何話してたの?随分深刻そうな顔してたけど」

 

「どこに向かうのかを話していました」

 

「人はどこから来て、どこに向かうのかってこと?聖書ないしゴーギャンみたいね」

 

「果南さんって、一見脳筋っぽいけど結構考えてますよね」

 

「酷い言いぐさね。でもリアリストだって私も思う」

 

 まだ三年生の三人がAqoursをしていた頃、スクールアイドル活動をすることで鞠莉さんの可能性を奪うと思った果南ちゃんはその関係を終わらせることで鞠莉さんを旅立つ切っ掛けにした。夢見心地ではそんなこと決してできないだろう。

 

「でも夢も信じてる」

 

 けれど、全力でぶつかれば叶うものもあると知っている。そうやって叶った願いは確かにあった。だから果南さんは行動するのだろう。

 

「リアリストで夢を追う人のことを何て言うか知ってる?」

 

「うーん・・・ロマンチスト、ですかね」

 

「正解」

 

「それ、本当の意味と違いますよね?」

 

「いいの。それに果南ちゃんにとっても似合ってると思わない?」

 

「同意です。でも、梨子先輩にも似合ってると思いますよ」

 

「ありがとう」

 

「それはこちらの台詞です。同じ外様でありながらどんどん沼津に馴染む姿に刺激を貰ってましたから。そこで梨子先輩には果南さんからされた質問をぶつけてみようと思います。梨子先輩はどちらに行かれるのですか?」

 

「私の答えはシンプルよ。 音ノ木坂学院に行って、ラブライブ決勝に行って、沼津に帰るの」

 

「ありがとうございます」

 

「うん。じゃあ行ってきます」

 

 梨子先輩は軽い足取りで、それこそ音符を奏でるように鼻歌を歌いながら出掛けていった。

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