ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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本日はリアルのAqoursの5thライブです。
行ってくる前に更新しました。


第百七十一話

 廃屋同然の校舎、そして分校と書かれた表札。何が起きているのか分からない私達は各生徒に片っ端から連絡をして、事情を知っていると言う四五六トリオと喫茶店 やば珈琲で落ち合うことになった。

 

「なにそれ?」

 

「何でも浦の星と一緒になるのが嫌だって声が一部であるらしくて」

 

「しばらく分校で様子を見ましょうってことになったんだって」

 

「それで浦の星の生徒用に今は使っていない小学校を借りたらしくて、教室も今のところ一つだけ」

 

 バスで再び沼津近くまで戻り、商店街の中にあるやば珈琲で四五六トリオから聴いた話はまさに寝耳に水だった。

 浦の星女学院は生徒に人格者が多く、近年稀に見るほどに平和な高校だった。だから統合先に迷惑を掛けるような問題児もいないし、当然ながらそんな事件も起こしていない。それなのに何故反対されなければならないのだろうと私達は首を傾げた。

 

「統廃合になって、廃校になった学校に移ったんじゃ意味無いずら」

 

「それに、三年生卒業してもルビィ達全員一つの教室に入ったら・・・・・・」

 

 言うまでもなくすし詰めだろう。少ないとはいえそれでも六十人近くの人数が浦の星女学院には居るのだ。ただでさえサイズが一回り小さい小学校の教室ではオールスタンディングでなければ入れないだろう。

 ルビィちゃんが冗談じゃないと顔をしかめていた。

 

「何それ、授業できないじゃーん」

 

「スクールアイドル活動もね」

 

「あ」

 

「でも、どうして一緒にしたくないなんて声が?」

 

 私達には理由に心当たりがない。強いて言うならば自主性が強すぎる、ということか。それこそ統廃合阻止のために活動するくらいに。

 自主性が強い、解釈によっては我が強いとも取れる性格は集団に新しい風を吹き込みやすい。それが良い作用なのか悪い作用なのかは分からないが。故にその変化を嫌い、我が強い人物を歓迎しない風潮も世の中にはあるのだ。

 浦の星女学院生の最後の抵抗は統合先の静真高等学校の耳にも届いているだろうことを考えると、その可能性は0ではないと思った。

 

「星の居るところは賑やかだね」

 

「皮肉?」

 

「そうかもね。でも、どうにかするんでしょ?」

 

「どうにかって・・・・・・するしかないんじゃない?みんなでさ」

 

 問題を抱えたまま統合先に編入する訳にはいかない。というか、これでは編入とすら言えないのではないかと思う。

 どうするべきかはまずは正しく状況を掴まなければと思ったが、ふと、居る筈の人間が一人足りないことに気付いた。

 

「そう言えば曜ちゃんはどうしたずら?」

 

「さっきまでここに座ってて、確か電話が掛かってきててーーーー」

 

「う、嘘っ!?」

 

 善子ちゃんが驚愕の声をあげると窓に駆け寄って食い入るように外を見詰めた。

 私もその視線を追うとーーーーー

 

「へ?」

 

 曜先輩が往来の中、誰かと話をしている姿が見えた。多少距離があるため細部は分からないものの、その誰かがどうにも男っぽい。しかもイケメン系の。全体的に黒で統一された服を地味に見せることもなく着こなし、キャップを被っているところはなかなかのセンスと言えよう。

 自分の色恋沙汰には興味は無いものの、私も人並みに年頃の乙女だ。人の色恋沙汰にはちょっと胸がときめくものがある。

 曜先輩程の器量も見た目も良い女の子の隣に居るのがどんな人物なのか興味が湧かない訳がない。

 

「ずらぁ!?」

 

「あっ」

 

 それは花丸ちゃんもルビィちゃんも同じようで、善子ちゃんと合わせて私達に四人はガラスにへばりつくように様子を見守っていた。

 当然の帰結として私達の不自然な行動は他の面々の注意を引くことになり、

 

「何」

 

「うぇ!?」

 

「な、な、な何でもないずら」

 

「リトルデーモンが少しだけざわついてるだけよ」

 

「ぴ、ぴぎぃい!」

 

「落ち着いて」

 

「何を隠しているの?」

 

「そうだよ。何を見たの?」

 

「な、何でもない。何でもないの」

 

「見ないほうがいい」

 

「その通りずら」

 

「曜さんがナンパされてるんだよ。しかもイ・ケ・メ・ンに」

 

「穹ぁっ!?」

 

 ニヤリと意地悪く笑みを浮かべた穹はしれっとテキトーな事を言って千歌先輩と梨子先輩を煽った。

 

「なんだ。またか」

 

「また!?」

 

「だって曜ちゃんだよ」

 

 千歌先輩の言葉は予想外なものだったけれど、最後の一言で凄く説得力が増すあたり曜先輩は流石だと思う。全方位型万能美少女 渡辺曜とでも今後は称するべきなのかもしれない。

 

「ま、あまりしつこいとめんどくさいだろうし、ちょっと様子見に行こうか」

 

 千歌先輩は梨子先輩と連れだって店を出ていく様子は本当に慣れっこだとでも言うようで、やっぱり曜先輩の相方として長い付き合いがあるなと思った。

 ふと、私と穹はどうなのだろう?みんなからはどんな風に見えるのだろうと思い、穹の様子を盗み見るが、当の本人はほぼ初対面となる四五六トリオ先輩達と挨拶を交わしていた。

 穹と私、ある意味で二人で完結していた世界は広がりを見せ、今後はどうするべきなのだろう?

 

「私達も追うわよ」

 

「善子ちゃん待って」

 

「ずら」

 

 千歌先輩達に続いて一年生組が外に出てしまい、私と穹もそれを追う形で店を出る。

 

「ねえ穹」

 

「何?」

 

「・・・・・・ううん。何でもないや」

 

 穹がこっちに来れたらいいのに、なんて思ったことは口に出せない。単に千歌先輩と曜先輩の関係を垣間見て一時的に感じた気の迷いだ。

 穹は「変なの」と特に深く追及することはなかった。

 店を出て直ぐに私達は千歌先輩達と合流を果たし件のイケメンと対峙することになったのだがーーーー

 

「女の子?」

 

 近くで顔を見るとイケメンはイケメンでも男子ではなかった。それにしても顔の造形にどことなく見覚えのある感じがする。それは私だけでなく他の面々も思っていたらしく、頭に疑問符が浮かんでいるようだった。

 

「あ、そうか。紹介したことなかったっけ、私の従姉妹の月ちゃん」

 

「渡辺月です。よーろしく」

 

 月と名乗った少しだけ年上な雰囲気を持つ彼女はキャップを脱ぐと肩口で切り揃えられた綺麗な黒髪がハラリと垂れた。

 キャップで少し陰っていた表情がより良く見えるようになると、その快活そうな顔で敬礼しながら自己紹介をしてくれた。

 

「取り敢えずここでは何ですし、落ち着ける場所で話そうよ」

 

「話し?」

 

「そ。静真高等学校と浦の星女学院の話し」

 

 月さんはイタズラっぽくウィンクしてそう言ったのだった。

 

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