ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第百七十七話

 みんなの顔を見ればパフォーマンスの出来がどうだったのかなど敢えて聞かなくても分かる。

 私達は口数少なく静真高等学校を後にし、あげつち商店街の一角で来ないことの分かっている朗報を待つのだった。

 

「失敗しちゃったね」

 

 反省はしている。それは口に出したルビィちゃんだけじゃない。

 

「まさかあんな初歩的なミスするなんて」

 

 どんなミスをしたのかも分かっている。もちろん梨子先輩以外にもみんな大なり小なりミスはしていた。

 

「気が緩んでたって訳じゃないと思うけど」

 

「なんか落ち着かないずら。六人だと」

 

「・・・・・・お姉ちゃん」

 

 けれどそれの原因が余りにも大きくて、それと直面することとなった今、どうすればいいのか分からなくなってしまった。そう言うように曜先輩や花丸ちゃん、ルビィちゃんが溢した。

 なんとなく予感はあった。けれどそれを見ないふりをしていた問題が噴出した結果だ。

 卒業した三人の不在。それが何よりもAqoursの輝き曇らせている。

 居ないものはどうしようもないじゃないかとも思う。スクールアイドルなのだから。けれど、それを言う資格は私にはない。穹に固執していた私には。

 

「あ、いた。千歌ー」

 

「むっちゃん」

 

「どうだった?」

 

 私達を見掛けて四五六トリオ先輩が駆け寄ってくる。

 本当にこの先輩方は頼りになる。鞠莉さんの居ない浦の星女学院の窓口役を買って出てくれた三人は静真高等学校で今回の結果を聴くまであちらの学校に残っていてくれたのだ。

 

「うん。やっぱり今のまま暫く分校の形にしたいって」

 

「だよね」

 

 歯に衣着せぬフラットなトーンで告げられた結果は案の定、という内容だった。

 Aqoursの良さは見ているこちらを突き動かす力。それが発揮されなかったのは見ていてよく分かっていた。

 浦の星女学院との統合を反対していた人達はどんな顔でそれを見ていたのだろう?あの場所にも果たしていたのだろうか?そう考えると居ないだろうと思えて仕方がない。一生懸命やっている生徒のことを見ている人は余計な心配などしないだろからだ。今回の問題は大方頭でっかちで実状すら録に確認していない者が騒いでいるだけとしか思えない。実際あくまでも聴こえた範囲だが、Aqoursのパフォーマンス後の会場では落胆の声はあったけれど嘲笑は聴こえなかった。

 

「ごめんなさい私達がちゃんとやっていれば」

 

「ううん。千歌達が悪いんじゃない」

 

 そう。悪いのはいい加減なことを言って私達に介入する大人だ。私達も、静真高等学校の生徒も悪くなんて無いのだ。

 向かっ腹が立ってしかたないけれど、現状あまり力になれていない私にはその資格すらないのかもしれない。そんな思いは四五六トリオ先輩も同じようで、

 

「寧ろ悪いのは私達。廃校の時も今回も全部千歌達に頼りっきりで。実際、千歌達以上に誇れるような部活してきたところないし」

 

「それは人数が少なくてみんな兼部してたからだよ」

 

「水泳部だってそうだし」

 

「でも、だからこそ私達がちゃんとやらなきゃいけなかったんだよ」

 

 水泳をやりたい人が居て、ハンドボールをやりたい人が居て、陸上をやりたい人が居て、でも誰かが一つに専念しては各部活が成り立たなくなって、誰も何も出来なくてーーーーーそんなのが嫌だから、自分の好きと同じくらい誰かの好きが大切だったから、みんながみんなのために力を尽くして部活動を守っていたのだ。

 みんながみんなのために力になってくれる。浦の星女学院はそんな素敵な学校だったのだ。それを卑下する必要なんて無い。

 

「私から見たらですけど、みんなちゃんとし過ぎなくらいですよ。こんな同級生とか先輩がうちの学校に果たしているのやら」

 

 穹も私と同意なようで、やれやれ、と大袈裟な調子でフォローを入れた。

 

「穹ちゃんが知らないだけで、きっと素敵な人が居るんじゃないかな?」

 

「無知を恥じる必要はないわ。これから知ればよいのだから」

 

「そうだね。先ずは知らないとだよね」

 

「それに、こっちのことも知ってもらわないとずら」

 

 そう。私達が知っているみんなの良いところを知ってもらわなければならない。それをせずして分かって貰うなんて都合が良すぎなのだろう。

 

「なら。どうするかまた考えないとね」

 

「・・・・・・よーし」

 

 考えが一旦前向きにシフトしたところで四五六トリオが一人、むつ先輩が和菓子屋に入ると、今川焼を人数分買ってくれた。

 

「はい」

 

「ありが、とう」

 

「浦の星のみんな、分かってるから」

 

「古い校舎も悪くないって」

 

「寧ろ、私達っぽくてちょっと良いかなー、なんて」

 

「ホントホント」

 

「私達らしいよね」

 

「なんて、冗談はさておいて。急がなくていいからさ、考えが纏まったら聞かせてね」

 

「今度はみんなで」

 

「浦の星女学院の良いところ、知ってもらおう」

 

 そう強くエールを送ってくれた四五六トリオの顔は誰が見てもこう言うだろう。輝いていると。

 この三人にはきっと自分達なりにあるのだろう。輝くために心に決めている“これ”というものが。

 こんな人達が浦の星女学院には沢山居て、きっと静真高等学校のみんなとも上手くやっていけるはずだ。だから何としても分校なんて取り下げて貰って、本当の意味で統合しなくては。そう思うと思わずクスリと笑ってしまった。

 

「星ちゃん、今の笑うところ?」

 

 むつ先輩が呆れたようにそう言ったので私は慌てて弁解した。

 

「いや、そうじゃなくて・・・数ヶ月前までは廃校阻止って全力を出していたのに今は統合だーって、なんだか不思議だなぁって」

 

「確かに、ホントだ」

 

「そう言われてみれば」

 

「あの時の気持ちが無くなった訳じゃないのにね」

 

 梨子先輩も曜先輩も遠い昔のことを思い出したみたいにそう漏らした。

 

「あの時の気持ち、か・・・・・・」

 

 曜先輩の漏らした言葉を千歌先輩が考え込みながら反芻しているのがやけに記憶に残った。

 

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