ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~ 作:マーケン
暫く分校のまま、とのお達しを受けた後、その日は各々心を整理しようということで解散の流れとなり、私は穹と共に食材を買い込んでから自宅へと帰宅した。
「どうするべきだと思う?」
「浦の星女学院はこれまでAqoursを旗頭に学校全体でステージを作ってきた。だからライブしかないでしょ」
“夢で夜空を照らしたい”ではスカイランタンを飛ばし、“MIRAI TICKET”ではみんなで10を叫び、“君のこころは輝いてるかい?”では学校の全員で部活説明会を盛り上げた。
浦の星女学院の良いところを見せるならまさにそんな姿だと思うし、ライブならばノウハウもある。きっと実現できる。
「でもそれだとライブの主役のAqoursのパフォーマンスだってかなり注目浴びるよ?あの様子じゃあ・・・・・・」
穹の言うことも分かる。新しいAqours、6人のAqours、それを始められていないのが今の現状なのだろう。
「それと、学校のこともそうだけと、折角なんだしライブやるなら私達も参加しちゃう?」
「それまでずっとこっちに居るつもり?」
「いや、一回帰ろうかなって」
「・・・・・・そっか」
冗談めかして言ってみたけれどやはりずっとは居られない。あまりまえだ。いくら春休みとはいえ穹にだって自分の生活があるのだ。
ならば穹が帰る前に、今後のことについて話をしなければならない。だけどどうすれば私達が一緒に活動していけるのか?その現実的な手段が私には未だ思い付かない。
「明日の夜には一度帰るよ」
「なら今日は一旦最後の晩餐だ。気合い入れなきゃ」
一人で自分の分だけの食事を作るのは只の作業だけれど誰かと一緒に誰かのために作る料理は楽しい。それが終わりを迎えるのは名残惜しい。
何を作るかは帰宅前に穹と決めて食材は必要な分だけ買ってある。きっとその時に言わなかったのは余計な負担を掛けたくなかったのだろう。だから今更豪華に、とはいかないのでせめて手抜きはしないようにしようと心に決めてエプロンを付けた。
「星さぁ」
「ん?」
キッチンに二人で入りとんとんと食材を並んで切り分けていると、何の気なしに穹が訊ねてきた。
「父親のこと、どうするの?」
そのワードを聞いた瞬間、私は胸の鼓動が大きく跳ねたのを感じた。けれど瞬間沸騰することだけは抑えて、努めて冷静に私は穹に返答する。
「どうするも何も、どうもしないよ」
「流石にここ数日の様子見て分かったけど、あからさまにおかしいよアンタ」
「何がおかしいかな?年頃の女子高生だったらこんなものじゃない?」
「アンタが父親に対してしてる道端の石ころみたいな扱い。流石に度を越えてる」
ああ、と私は感心した。穹は流石によく見ていると。
ここ数日、穹が家に泊まる関係上、どうしても父親との接触は避けられない状況だった。だけど、私が無視に近い態度をしようとも、冷たくあしらおうともそれは思春期の女子特有の、友人前だから気恥ずかしさがあったと流せるものと考えていた。
だけど穹は察した。部活説明会の件で父親と和解していないことが発覚してからアンテナを立てていたのだろう。
「アンタいいの?分かってもらえなくて」
「分かる気が向こうに無いからね」
議論は既に一年前に尽くした。そしてそれが却下された今、私は父親に対して諦めた。
言葉を交わすことに意味はない。気持ちをぶつけることに意味はないと。
「アンタだって分かろうとする気がないでしょ」
穹は呆れたように更に言葉を続ける。
「そうやって自分が正しいと思うことを貫く。それは一見正しいけど、それが周囲の意見を聞かずにただ頑なになっているだけなのなら、それは分校騒ぎを起こしている連中と同じだよ」
あんな連中と同じにされるのはちょっと穹だからと言え私も我慢ならない。言葉に怒気が宿るのも仕方ない。
「だったら?」
「アンタが分校騒ぎで怒り心頭になったでしょ。それと同じ気分になるってものよ」
包丁捌きは穏やかだし口調も丁寧だけれど、そこに籠った気持ちは激しかった。けれど私だって冷静ではいられない。
分かってる。図星だからだと言うことは。けれど、どうしてもだ。どうしても許せないことだってある。
「私はそんな星とは組めない」
「ーーーーー!」
思いがけないその言葉は私を呆然とさせた。
その後は穹とどんな会話をしたのかも分からない。料理は淡々と一緒に作ったし穹と食卓も囲った。でも料理がどんな味をしていたのかも分からない。ただ延々と穹の言葉が私の頭の中をぐるぐるとぐるぐると回っていた。
私と穹との関係に何故家庭の事情を持ち出されなければならないのだろう?
分からない。それがどのような意味を持つのか、どうして欲しいのか、私には全然分からない。
食後、私は夜風に当たりたいとハーモニカ片手にこっそり家を出たけれど、どこに行きたいのか定まらず玄関の前で暫くぼけっと突っ立ってしまった。
だからだろう。仕事が終わった父親と出くわしてしまったのも。
「ただいま星。なんでこんなところに?」
性懲りもなく私に声を掛ける父親を前に私は沸き上がる苛立ちを抑えられずに無言で家の中に戻った。
背中越しに父親のため息が聞こえてくるけれどため息を吐きたいのはこっちの方だ。
解消されない苛立ちを抱えていたからか私はこの夜はあまり眠れなかった。