ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第十八話

 太陽の日射しも厳しくなり遮蔽物のない屋上はいい加減暑い。特に放課後は日中に熱せられたコンクリートが容赦なく輻射熱を放ち上と下から両面こんがりターンオーバーだ。

 そんな環境でもここに来る物好きはいる。私とスクールアイドル部とそして

 

「あれ、善子ちゃん?」

 

 堕天使ヨハネこと津島善子だ。

 今日も今日とて教室に顔を出さずに屋上に来ていた彼女は、物好きの一人、国木田花丸に見つかったのだ。

 津島さんは花丸ちゃんに姿を見られた瞬間に逃亡を図り屋上から姿を消した。

 

「あー、花丸ちゃん。任せた」

 

「うん。了解ずら」

 

 私はこれまでちょくちょく関わっていたが津島さんはついぞ教室には来なかった。勿論普通に登校するようにそれとなく勧めたりもしたが、効果は無かった。

 ならばきっと誰か別の適任者がいるということだ。私には届かない言葉や想いも幼馴染みである花丸ちゃんなら或いは届くかもしれない。

 

「じゃ、花丸ちゃんが戻ってくるまで場は繋ぎますよ」

 

 けしかけた手前穴埋めは必要だ。私は今日もまたハーモニカを取り出すと、気の向いた曲を奏で始めた。

 曲はHOT LIMIT。T.M.Revolutionの曲だ。子気味良いテンポの夏の代表曲。

 歌詞に非常に遊び心があり、夏の楽しさ、陽気さを跳ねるように表現している。

 私個人としてはその羽目を外したくなるような陽気さは夏の到来時にこそ相応しいと思っている。

 もちろん皆は世代では無いが、サビまで行けば聴いたことある程度には認知しているので、サビになると予想通り盛り上がった。

 余談だがこの曲に現れるのは堕天使ではなく妖精であるのであしからず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、私は堂々と学校前の坂を上る津島善子の姿を目撃した。いけしゃあしゃあと登校するその姿に花丸ちゃんの説得が実を結んだことを確信した。

 

「おはよ、ヨハネスブルグの天使」

 

「なによそれ、ヨハネよ、ヨ・ハ・ネ。はっ、違う。善子です。お間違いのないように」

 

 津島さんは独自の堕天使というキャラクターを心の内に秘めている。秘めている?表に頻繁に出てる気がするが、まぁ秘めているのだ。そのため彼女と会話をするとコロコロとキャラクターが行ったり来たり忙しいのだが、今日も朝から絶好調のようだ。

 

「いい?ズラ丸にも言ったけど、私が堕天使になりそうになったら止めなさいよ」

 

「あ、そういう方向性なのね」

 

 どうやら彼女は自分の趣味を隠していくようだ。

 だけど私は確信している。無理だと。だって津島さんと話していると唐突に、そして頻繁に堕天使が顔を出すのだ。その時の没入ぶりはもはや第二人格と言っても過言では無い。沼津のビリー・ミリガンだ。

 

「いいの?自分の趣味を隠して辛くない?」

 

 誰しもが自分の全てを晒している訳ではないが、少なからず隠している部分も知って欲しい、分かって欲しいという願いを持つ。乙女の秘密の花園とでもいうものだ。

 だから津島さんはきっと隠せない。彼女はまだ堕天使を卒業出来ていない。

 

「いいの。普通に学校行って、私はリア充になるんだから」

 

 リア充=彼氏持ちとは限らないが、男子のいない浦の星女学院、沼津も内浦という田舎町、この環境でリア充になるとか無理ではなかろうか?

 

「あ、がんばって」

 

「今流したでしょ。絶対流したよね?」

 

「そんなことないよ、善子ちゃん」

 

「ヨハネよ、はっ」

 

 うん。直ぐにバレるだろうけど、きっと皆に迫害されることはないだろう。彼女は気付いていないだろうが、彼女は面白い。特に堕天使から元に戻った瞬間が非常に。ついつい堕天使を誘発させたくなる面白さだ。人の悩みを面白がるのは些か不謹慎かもしれないが、微笑ましいのだから仕方が無い。

 

「じゃあ折角だしクラスメートに挨拶しよ。ほら、前歩いてるあの三人組」

 

「え、ちょっと待って」

 

「おはよー」

 

 無理矢理先行するクラスメートに声を掛けて振り向かせると、あわあわとしていた津島さんは一瞬で澄ました顔に切り替わっていた。

 

「おはよう。ちょっと休んでたけど心配掛けて御免ね」

 

 なんて品行方正な女学生ぶった言い方をしている、なにこれどこの深窓の令嬢。

 入学式の自己紹介の時とのギャップが激しすぎて三人とも目を丸くしている。

 さて、どこまで続けられるか実に見物である。

 

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