ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第百八十九話

 善子ちゃんの独断専行を追いかけ私達はフィレンツェ中央市場で注文してしまった食事を掻き込み、目的地であるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂に向かって走った。

 それはもう、ぐるぐるっと、ぐるぐるっと、胃の中が暴れてしまうのを無視して。

 

「あの堕天使勝手なことして」

 

 梨子先輩が恨めしそうにお腹を抑えながら文句を言っているけれど、足を止めないあたり善子ちゃんのことを心配しているのが窺える。

 

「あんた達っていっつもこんな感じ?」

 

 穹は私に並走して笑いながら語りかけてきた。

 こんなことになっているというのに私も思わず笑ってしまった。

 

「こんな感じ」

 

「いいね。飽きなくて刺激的で、本当に果てが見えない」

 

「そうだね。どこまでも駆け抜けて行けそうな気になるよね」

 

 そう。そんな“気になる”のだ。けれど現実はそんな風に上手くは行かない。浦の星女学院の廃校は阻止できなかったことがそれを物語っている。

 

「でもね、そうじゃないんだ」

 

「そうじゃない?」

 

「錯覚だけじゃないんだ。私達は、いや、Aqoursはただ真っ直ぐな道を走ってきた訳じゃないんだ。曲がりくねって、それこそみえなくなりそうな道だってあったけど、動くことだけは止めなかった」

 

 だからただ力業で真っ直ぐな突き進むだけの“どこまでも駆け抜けていけそう”ではなく、どんなことがあっても諦めないからこそ“どこまでも駆け抜けていけそう”なのだ。

 

「そっか」

 

「うん」

 

「Aqoursかぁ」

 

「どうしたの?」

 

「いや、星はAqoursに入らないんだねって思って」

 

「私は」

 

「いや、分かってる。ケジメ付くまでは誰とも組む気は無かったってことくらい。でも今はどうなの?」

 

 穹との縁が再び繋がった今、かつて千歌先輩から受けた誘いを真剣に考えても良いのではないかと、穹の言葉で私の頭にはそんな考えが浮かんだ。

 

「星はAqoursに入らないの?」

 

 穹はそれでもいいよ、と本心からの言葉のように自然とそう口にした。

 直接そんな事を言われると、なんだかぐるぐるっとしているのが胃の中だけではないような気がして思考停止してしまう。

 

「これからのAqoursのこと。これからの私達のこと。ここで見付かるといいね」

 

 なんだか穹は答えを既に得ているかのようにそう言った。

 

「そうだね。見付かると良いねぇ」

 

「月さん?」

 

「まぁ、善子ちゃんああ見えて悪運だけは有りそうだし、普通に合流できると思うけどね」

 

 私達の後ろを走っていた月さんから唐突に声を掛けられたことで驚いたけど、どうやら善子ちゃんの話題を話していたと勘違いしたらしい。

 私は曖昧に笑って、天を仰いだ。この知り合い以外には全く私とのしがらみの無いこの場所なら答えが見付かるのかと。

 でも飛び込んできた景色にそういう悩みとかは別の大きな印象に遮られてしまった。

 

「ふぁあ!でっかー!?」

 

 千歌先輩もまた素直に驚きの声をあげるほどの存在感。ただひたすらに大きなゴシック建築と、丸い天蓋。目的地であるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂である。いや、こう言った方が通りがいいだろう。ドゥオモ、と。

 

「こんな大きい建物が街中にあるなんて」

 

 梨子先輩が感無量といった感じにそう漏らしているけれど、これだけの高い建築物となると近代建築しか馴染みがない私達には無言ながら激しく同意だった。

 昔、それこそトラックもクレーンもない時代の人がこれだけの物を作るのにどれだけの苦労をしたのか?いや、苦労だけでは決して出来ないだろつ。きっとこれを作るのに夢とか、願いとか、そういう熱量が存在したのではないかと思う。

 私達はしばらく呆然とドゥオモを見上げていると通行人なら話し掛けられた。それも、珍しいことに日本語だ

 

「探し人ですか?」

 

「はいそうなんです」

 

「ルビィたちと同じくらいの年頃で」

 

「身長も同じくらいで」

 

「いつも騒がしくて」

 

「自称堕天使のイタい女の子ずら」

 

「なるほど。それはとても崇高な御方」

 

 思わず流れで会話していたけれど、みんな同時に、ん?、と思い顔を向けると、 そこには不敵に笑みを浮かべる善子ちゃんの姿があった。しかも、どこで手に入れたコスプレグッズなのか定かではないが背中には白い羽が付いていた。

 

「ウィング善子ゼロ(EW版)?」

 

「違うわいっ!」

 

「どうしたのそれ?」

 

「堕天使たる私はこの地に導かれたことで昇華したのです。故に“堕”の文字は今の私には不要。天使ヨハネよ!」

 

 キラン、なんて言って顔の前に指三本翳してギャル擬きのポーズを取る善子ちゃんに思ったことはみんな同じだろう。

 また始まったよ、と。

 

「取り敢えず無事に合流出来たことだし手掛かりを探さない?」

 

「そう言うと思って予め入場チケットを買っておきました」

 

「ありがーーー」

 

「15ユーロください」

 

「・・・・・・ありがとう」

 

 天使の施しを期待したけれど、どうやらちゃんとチケット代は請求するらしい。

 ともあれ、目的の地には無事に着いた。

私達は次の手掛かりを探すためサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂に入ったのだった。

 

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