ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第百九十五話

 イタリアでのライブを終えた私達は慌ただしく帰国準備をして駆け込みで飛行機に乗るはめとなった。

 ライブをやるとなって場所を決めてから実行するまでに予想以上に準備に時間が掛かったことが原因だ。

 何が予想外ってスペイン広場周辺のお店などに交渉したらやたら乗り気で店内のスピーカーを貸してくれたり、警察に顔が利く人がお目こぼしを貰えるように交渉してくれたりと、時間が掛かったなりに色々と良くしてくれたのだ。そのため、実は準備出来なかったのはライブ衣装くらいだったのだ。

 衣装の調達もスクールアイドル活動の一環であるため、全てを見せつけるなら用意したかったところであるけれど、今回は結果オーライだった。

 そんなこんなで私達はくたくたになりながら飛行機に乗り、泥のように眠っている間に無事に東京に着いた。

 

「私は一度家に帰るよ。バイクも回収しなきゃだし」

 

「そっか」

 

「星たちは沼津で次のライブ、するんでしょ?」

 

「そうだね」

 

 なら、一息付いたらまた行くよ、と穹は言った。

 春休みの残り期間は多くはない。

 私達の時間を無駄なく使いきるために穹は動くことをやめないらしい。

 

「あ、そうだ。聖良さんと理亞ちゃんにも連絡しなきゃね」

 

「イタリア行き勧めてくれたもんね」

 

 千歌先輩はそう言って早速メッセージを送ってくれた。

 

「じゃあ、私達も帰ろうか」

 

 日本を発つ時とは違い、今は3年生の3人も居る。

 なんだか函館に行ったときを思い出す。あの時は鞠莉さんの運転するワーゲンワゴンで下道をのんびりと走行して沼津に帰ったのだ。かなり時間を掛けてしまったけれど、あの時はそれが一番の正解だった。

 なんてこと無い願掛けみたいな、そんな意味があった。

 今回はもうみんなが乗るバスは無い。それが少しだけ残念に思えた。

 

「何、星?そんな残念な顔して」

 

「残念な顔って、それじゃただの悪口だよ」

 

「失礼、残念そうな顔して。イタリアに戻りたくなった?」

 

「そうじゃないよ。ただ、ちょっと思っただけ」

 

「何を?」

 

「もうあの時とは違うんだなって」

 

「当たり前でしょ」

 

「うん。当たり前だね。でも、こういう風に感じることが大切なんだよね」

 

 ずっと気持ちはここにある、と果南さんは千歌先輩の胸を指差した時のとこを思い出す。

 大切なものは時が過ぎ去って目の前から失われてしまったとしても残るのだ。

 だから感じることを拒絶してはいけないのだ。

 その時思ったこと、感じたこと、考えたことは全て繋がって行くのだ。時にはそれが誰かと交わって、同じ想いを共有したりして、私はそれが好きなのだと思えるようになった。

 

「それ、誰かの受け売り?」

 

「うん。みんなの」

 

 イタリアで千歌先輩に向けて語られた果南さんの言葉だけではない。沢山の人と関わって時間を過ごして、そんな中で少しずつ影響されてこうなったのだ。

 

「沼津のライブ、楽しみにしてる」

 

「Aqoursのライブ、だけどね」

 

 私と穹は拳をお互いに当てて別れの挨拶とした。

 颯爽と立ち去る姿勢の良い穹の後ろ姿を見て、今回はほんの少しの短い別れになりそうだと思った。

 

「あ、聖良さんから返事来た」

 

「どれどれ・・・・・・って、すごい長文!?」

 

 千歌先輩の横からスマホを覗いた曜先輩が驚愕の声を上げる。

 あとで内容を見させてもらったけれど、イタリアで3年生が千歌先輩にどのような話をしていたのか?どんな風に千歌先輩が感じたのかが気になるらしい。

 どうにも理亞ちゃんのスクールアイドル活動が上手くいっていないらしく、聖良さんも上手くアドバイスが出来ていないみたいなのだ。やる気はあるけど、それが上手くいっていないような、そんな感じらしい。

 最近はそれで理亞ちゃんの笑顔に少し影があるようだ。

 私達の練習を見に来てくれた時にもどこか焦りというか迷いというか、そんな気配はあったけれど、まだ解決出来ていないようだ。

 

「どうする?」

 

「あとで私達からも連絡してみますわ」

 

「同学年だしね。私達」

 

「だから千歌達は自分達のことをしてて。途中経過はちゃんと言うから」

 

「どうしてもって時は力を貸してください」

 

 それについては3年生の3人が引き継ぎ、それっきりその日はSaint Snowについての話題は出てこなかった。

 けれど帰りの新幹線の中、ダイヤさんを中心に3年生の3人が頻繁にメッセージをやりとりしたり小声で相談したりしているのがやけに気になった。

 

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