ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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次回は12/23更新予定


第二十三話

 翌日は休日であったが優雅に惰眠を貪ることは許されなかった。津島さんに呼び出されたのだ。どうやら堕天使グッズを捨てる、言わば埋葬の時を私に見守って欲しいらしい。なぜ幼馴染みである花丸ちゃんではなく私なのかと問うたところ、屋上で学校との関わりを繋ぎ止めてくれたことと堕天使を褒めてくれたからだという。

 私はもちろん堕天使グッズを捨てようとしていることを千歌先輩に通報した。元々千歌先輩達も今日津島さんを説得しようとしていたらしく、二つ返事で了解と返事が来た。

 

「ねえ、津島さん。一つ聞きたいんだ」

 

 私は津島さんの住むマンションのゴミ捨て場で一箱の段ボールを抱える津島さんに問い掛けた。千歌先輩がまだ着いていないから時間稼ぎ、とかそんなものではない。純粋に聞きたかったことがあるのだ。

 

「自分の好きなことを自分自身にも隠すのってどんな気持ち?」

 

 埼玉からこっちに引っ越す際に私が出来なかったこと。もし私が音楽との繋がりを断っていたらどうなっていたのかと、どうなってしまうのかと疑問に思うのだ。

 

「まだ実感なんて湧かないかな。これから私自身どうなるのか分からないし」

 

 津島さんは段ボールをゴミ捨て場に置くと力無く笑った。

 

「例えばさ。私がもしハーモニカをやらないって言ったら津島さんはどう思う?」

 

「ハーモニカのない貴方なんて似合わないわよ」

 

 彼女もまた私とハーモニカを認めてくれる。例え仮初めでもそれは嬉しかった。だが、それだけに私は恐れる。私が犯した罪が彼女らに知れ渡ることを。それを知ったとき、私は本当にハーモニカを手放さなければならなくなるかもしれないことを。

 それでも今はそれを置いておく。何故ならば役者が揃ったからだ。

 

「なら私も本音をいうね。津島さんはやっぱり堕天使ヨハネが一番良いよ」

 

 さあ、私の出番はここでお終い。だって星の光なんて覆い隠す程の太陽が出てきたのだから。

 

「堕天使ヨハネちゃん」

 

 私の言葉に呼応するように堕天使アイドルの衣装を身に纏ったAqoursがゴミ捨て場に集まった。その姿に先日のような恥じらいも躊躇いもなかった。こないだの見た目だけの姿なんかより余程様になっていた。

 

「スクールアイドルに入りませんか。堕天使ヨハネとして、Aqoursに」

 

「何言ってんの?昨日話したでしょ」

 

「良いんだよ、堕天使で。自分が好きならそれで良いんだよ」

 

 千歌先輩は肯定する。好きなことで輝ける人を。何故ならばそれは自分自身が、自分達自身が目指している事だから。

 

「だめよ。生徒会長にも怒られたでしょ」

 

 だが津島さんは拒絶する。

 津島さんは堕天使に対して好きな気持ちと、人目を気にする恥じらいが混在しているのだ。だから素直にうんとは言えない。それを言えたなら今頃は堕天使グッズを身に纏って街中を闊歩していらだろう。

 

「それは私達が悪かったんだよ。善子ちゃんは良いんだよそのまんまで」

 

「どういう意味?」

 

「私ね、μ’sがどうして伝説を作れたのか?どうしてスクールアイドルがそこまで繋がってきたのか、考えてみて分かったんだ。ステージの上で自分の好きを迷わずに見せることなんだよ。お客さんにどう思われるかとか、人気がどうとかじゃない。自分が一番好きな姿を、輝いている姿を見せることなんだよ。だから善子ちゃんは捨てちゃだめなんだよ。自分が堕天使を好きな限り」

 

 それは津島さんの一番コンプレックスな部分だ。

 堕天使なんていない。分かってる。

 高校生にもなって恥ずかしい。分かってる。

 それでも好きならじゃあどうすればいいのか?決まっている。好きのままでいれば良いのだ。自分の納得いくまで。それがきっと輝くことに繋がるから。

 

「いいの?変なこと言うかも」

 

「いいよ」

 

「時々儀式とかするかもよ」

 

「それくらい我慢するわ」

 

「リトルデーモンになれっていうかも」

 

「それは、でも、いやだったらやだって言う」

 

 好きなことだけをやればいいわけじゃない。そうやって人に迷惑をかけていいわけでもない。ただ、自分の根底にある本心を見失わないこと。ただそれだけの話だ。

 千歌先輩の言葉に返事はしなかった。ただ、一度置いた段ボールを大事そうに抱え上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 津島さんが堕天使グッズを部屋に戻すのを手伝いみんなで津島さん住むマンションに程近い小さな公園に来た。

 公園は滑り台くらいしか遊具もない本当に小さな公園だ。

 何故そんな場所に来たかと言えばみんなで歌える場所を探しに散策していたからだ。

 津島さんが堕天使を卒業しないと改心したと同時にスクールアイドルになることを決意したため、早速練習しようという流れになったのだ。

 

「星ちゃんお願いがあるんだけど」

 

「どうしたんです?藪から棒に」

 

「何か一曲、演奏を頼みたいんだけど」

 

「随分とまた唐突ですね」

 

「うん。よく考えたらさ、私達の節目節目の時はいつも星ちゃんが演奏してくれたなって。今回善子ちゃんが正式に入ってくれたしそのお祝いを兼ねてね」

 

 言われてみればグループ名の決定や初ライブ後、花丸ちゃんとルビィちゃんの入部の時などに私はちょいちょい演奏していた。というより、私はそれとは関係なくしょっちゅうピーヒャラと演奏してる気がする。

 

「了解です」

 

 私は懐からハーモニカを取り出し演奏を始める。曲はメーデー。BUMP OF CHICKENの曲だ。この曲は相互理解がテーマとなっている。

 千歌先輩の、Aqoursの気持ち。津島さんの気持ちを今後とも理解しあえる関係であることを願っての一曲だ。

 やはりというかみんなの反応を見るとこの曲を知らないようだがしかたがない。今からもう10年近く前の曲なのだから。そこに一抹の寂しさを感じると共に諦観が私にはあった。

 ここには私の音楽を楽しんでくれる人はいるが、あの時間を共有した人はもういないのだと。

 

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