ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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次回は2/3に更新予定


第三十五話

 東京は秋葉原。我らサブカル民の集う電気街口を出るとそこには内浦にはない、雑然とした賑やかさがあった。

 有名電機屋やデパートもそうだが、スクールアイドル専門店、コスプレ専門店、各種のグッズ専門店等々が軒を連ねている。

 予想通りと言うべきか、Aqoursメンバーはみんな自分の欲望に忠実に動きまわり、案の定はぐれた。幸い文明の利器に疎い花丸ちゃんについてはルビィちゃんが一緒に行動してくれたが、他の面々は土地勘が無いため梨子先輩と手分けして探す羽目となったのだ。

 

「それにしても」

 

 何とか集合を果たし各々の買い込んだ物を見ると、なるほど趣味が走ってる。

 千歌先輩はアイドルグッズ、曜先輩はコスプレグッズ、善子ちゃんは堕天使グッズ。そして梨子先輩は

 

「梨子先輩。私を連れ出しておいてそれは無いと思いますよ」

 

「う、面目ない」

 

 そう。梨子先輩もまたしれっと自分の趣味に走っていたのだ。はぐれたりしたら不安だと私を東京に連れてきたくせに。

 

「しかも、壁ドン?顎ぐい?意外と梨子先輩って乙女なんですね」

 

「言わないで。別にそういうことされたいとか、イケメンが好きとかそういうのじゃないの」

 

 意外な趣味が垣間見られたのは収穫であるが、微妙に知りたくなかった。まあ、私も二、三年前は福士蒼汰とかに現を抜かしていたりもしたから分からなくもない。イケメン+ときめきシチュエーションは最強だ。だが、あんな高校生がいるのはフィクションの世界だけだ。それを分かっているからこそ作品として楽しめるし、一時の夢を見ることができるのだ。

 

「暫くはこのネタで弄りますんで覚悟してくださいね」

 

「どうか、ご容赦を」

 

「知りません」

 

 別にイケメンとかアイドルとかにハマることは恥ずかしい事ではないと思うが、本人は体裁を気にしているようなので実に弄りがいがあるというものだ。

 

「何の話し?」

 

「な、何でもないの千歌ちゃん。それよりもう着いたわよ」

 

 私達はみんなと集合してから神田明神に向かっていた。

 私の知る限り日本にアイドルの神様なんかいない。当然ながら神田明神もそんなのではなく商売繁盛とかの御利益があるとかないとか、三が日は多くのサラリーマンが足を運ぶ。では何故私達が足を運ぶのかというと、かのμ’sがこの神社の階段で練習をしていたというのだ。その上μ’sメンバーの一人、東條希が巫女のバイトをしていたというのだからそりゃ話題に上がらない訳が無い。その話しが広まってからスクールアイドル聖地百選に選ばれている程だ。

 駅からそれほど離れていないため見に行くことは当初から予定されていたが各自買い物に勤しんでいたためもう夕方になってしまった。

 

「ここだ」

 

「これがμ’sがいつも練習していたって階段」

 

 神田明神へと繫がる階段“男坂”の前に着くと千歌先輩は感慨深げにつぶやき、ルビィちゃんは憧れに目を輝かせている。

 その感覚は私も覚えがある。かつての相方と音ノ木坂に学校説明会に行った時のことだ。私は特別μ’sに入れ込んでいた訳ではないものの歴史の一部を感じるような、足を踏み入れたようなそんな気分になった。

 

「登ってみない?」

 

 千歌先輩の提案に私達は頷き、駆けだした。

 階段はなるほど、かなりの傾斜があり足にくる。だが、長さがダッシュするには適している。頂上に着く頃にはすっかり息が切れてしまった。

 

「はぁ、けっこうきますね」

 

「というか、星ちゃん。練習とかしてないのに私達と同じペースって、どうなってんのよ」

 

「積み上げた貯金があるからね」

 

 管楽器などは吹くのに結構体力がいるのだ。ハーモニカは厳密には管楽器ではないが、吹くことには変わりない。だから私は肺活量と体力を同時に鍛えられるようランニングはやっていたのだ。引っ越してからは、特に最近はやっていないがそれでも人並みには動ける程度の体力は維持できている。

 

「μ’sが登ってたんだ。ここを。ラブライブを目指して」

 

 全員が登り終えると、階段を振り返ると夕焼けが美しく私達の目に映った。

 きっとこの光景はμ’sが練習していたときから変わらないだろう。そう思うとまた全国を制したμ’sが手に届くような、そんな近さを感じた。

 

「ーーーーーー」

 

 ふと、風に乗ってコーラスが聞こえた。私達はそれに釣られるように境内に入る。少し進むと社殿の正面の開けた場所に出た。

 社殿のお賽銭箱の前に二人の女子高生が熱心に歌っていた。

 アカペラでありながらただの歌に収まらない。非常に言葉として表現し難いが音楽になっている。伸びやかで綺麗なコーラスだ。

 紺と赤い縁取りをされた制服は見覚えはあるが、この近所の音ノ木坂やUTXとも違う。

 私もみんなも思わず聞き惚れていると、やがてコーラスは終わった。

 

「ブラボー」

 

 みんなが固まっている中、私はささやかながら拍手と喝采を送った。例え人に聴かせるために歌っていたわけではないとしても、人から賞賛されて嫌な顔をする人はいない。私なら流しで演奏して拍手を送られたらきっと嬉しい。

 

「こんにちは」

 

「こんにちは。すみません。盗み聞きするみたいになってしまって」

 

「いえいえ、公共の場で私達が勝手にやってたことですから」

 

 二人とも非常に似た顔立ちをしている。髪の毛の色も同じ薄く紫がかったものだし姉妹なのかもしれない。背の大きい方は多分姉なのだろう。柔和な余裕のある笑みを浮かべている。妹の方は勝ち気さが垣間見られるやや釣り目がちな目で私達を警戒するように見ている。まるで猫のようだ。

 というか顔を見たら益々見覚えがある。この二人は北海道のスクールアイドルでも三本の指に入る期待の新星、確か名はSaint Snowだ。ランキングを見るとよく彼女達の名を見かける。

 

「貴方達はもしかしてAqoursのみなさん?」

 

 私と同様にSaint Snowもまた私達のことを知っているようだ。Aqoursも有名になったものだ。

 

「マル達、もうそんなに有名人?」

 

「PVを見ました。素晴らしかったです」

 

 やはりと言うかAqoursをここに押し上げたのはみんなの想いがつまったあのPVだ。それを評価しているようだが、他の曲についてはどう思っているのだろう。この二人の実力は全国のトップランカーと遜色ないレベルだ。二人からしたら夢で夜空を照らしたいのPVの完成度の高さを評価したとしてもパフォーマンスそのものは物足りないと感じているかもしれない。だからこそのこの余裕の態度なのだろう。

 

「ありがとうございます」

 

「もしかして、明日のイベントでいらしたのですか?」

 

「はい」

 

「そうですか、楽しみにしてます」

 

 ここに道民の彼女らが居る理由などそれ以外にないとは思っていたがやはりそうであった。明日はきっと荒れる。イベントがではなくAqoursがだ。

 

「それにしても驚きです。貴方がAqoursに入るなんて、ジェミニのアカリさん」

 

 別れ際に彼女から出た言葉を理解するまで私は数秒の時間を要した。

 聞き間違いなんかじゃない。確かに彼女はジェミニのアカリと言った。何故知ってるのだ?いや、動画サイトに投稿してたのだ、知られることはあるだろうがよりにもよって何故彼女が知っているのだ。何故今それを口にするのだ。

 

「っ、私はただの引率です!」

 

「そうですか。ではまた何かの機会にパフォーマンスが見れることを期待してます」

 

 彼女は爆弾を投下してこの場を立ち去った。

 

「ジェミニのアカリって」

 

「ごめんなさい。明日のライブが終わったら話しますから。だから今は聴かないで下さい」

 

 何事か私に聴きたそうな千歌先輩、いやみんなからの追求を答える余裕は今の私にはない。唯一言えたのが今の一言だけだった。

 

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