ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第六十六話

 この内浦の海はメジャーな海水浴場とは言えない。客層はちょっとした家族サービスで来た近郊の住人や、プール代わりに遊びに来た子供とかがメインとなる。

 そのため、夜になっても近所の子供なんかは遊んでいたりもしたが、海の家そのものは早めに閉めることにしている。いつまでも開けていると子供の溜まり場になって夜遊びする子供が増えてしまうという理由から、自治体から閉店時間を決められているのだ。逆に言えば終わる時間が決まっているため、その後のスケジュールが管理しやすい。みんなはそれを利用して地域の活動を手伝いながらスクールアイドル活動をすることに成功している。

 私は海の家の食器を片付けながら、まだ残暑の残る夏の夜空の下で練習に励むみんなの声を聴いていた。

 ダイヤさんに嵌められた私は結局成り行きのまま海の家を手伝っていた。

 本当ならば自宅に保管している楽器類のメンテナンスやアルバイトをするつもりだったのだが、このままでは少なくともアルバイトは無理そうだ。楽器のメンテナンスは少しずつ進めるしかない。

 

「ごめんね。やっぱり手伝おうか?」

 

 善子ちゃんと鞠莉さんが作った謎の料理が大量の在庫となったためそれの片付けに頭を悩ませていた頃、一旦基礎練が終わったのか梨子先輩が顔を出し、そう申し出てくれた。

 

「大丈夫ですよ。休んでて下さい」

 

 そんな風に言われるとつい強がってしまう性分なのも私の損なところで、気付けば在庫は後回しにして箒を手にテキパキと海の家の中に入り込んだ砂を掃き出していた。

 

「今日はこの後はどうするんです?」

 

「今度のラブライブ予備予選に向けて新曲を作ることになったから、私は作曲に取り掛かるつもり。千歌ちゃんは作詞を担当して曜ちゃんは衣装をみんなと考えるような分担になってるの」

 

 体を虐めすぎても逆効果であるのはみんな承知しているようで、練習や作業の効率化を上手くしている。その効率化の中に私まで雑用係として組み込まれているあたりダイヤさんもちゃっかりしている。

 だが、ダイヤさんから報酬として見せて貰った花火大会の映像はかなり質と量が良かった。まさかあんなに多角的に撮影しているとは思わなかった。さらに言えばメンバー個別のアッブの映像もあるため、編集すればまるでテレビ番組で流すような出来の良いものが作れると確信した。花火大会のスポンサーである黒澤家と小原家の人脈があってこそ出来たパワープレイだ。そのデータと引き替えならば海の家の手伝いなど寧ろ安上がりな部類になる。

 

「そうだ、こないだの花火大会に向けて吹奏楽部を探してた時に色々調べて知ったんですけど、そろそろ吹奏楽関係のコンクールの時期ですよね?梨子先輩は今年のピアノコンクールはどうするんですか?」

 

 この情報は吹奏楽部に生演奏の依頼をするに伴い、吹奏楽部事情を調べた時に偶々気付いたことだ。だから大会後に梨子先輩からそれとなく聴いておこうと思っていたのだ。

 

「まだ決めてないの」

 

 東京のスクールアイドルイベントにみんなで行った時、梨子先輩が千歌先輩に音ノ木坂に在学中に出場したピアノコンクールで上手くいかなかったことを語っていた。

 私は盗み聴きしてしまう形でとそれを知ったのだが、知った以上、梨子先輩がその負の遺産を清算することを期待してしまうのは仕方の無いことだろう。

 同じ様に、とは言えないが乗り越えられる壁があるのなら乗り越えるに越したことはないからだ。

 私の問い掛けに梨子先輩は暫く難しい顔をして考え込んで、ようやく口にした返答は保留とのことだった。まだ気持ちの整理が付いていないのかもしれないため、私としてはそれ以上に勧めたりはしない。ただし

 

「いずれにせよ千歌先輩とかにちゃんと話さないと心配させちゃうと思うんですよね」

 

 最近続いているが、果南さんやダイヤさん、鞠莉さん、私と色々と言葉が足りずに失敗しているのだ。梨子先輩も嫌と言うほど知っているだろうが、コレばっかりは言わせて貰った。

 

「うん。それも分かってるんだけどね」

 

 梨子先輩はテーブルに広げた楽譜を見ながらどこか遠い目をしていた。目を落とした楽譜から何かを探すかのように。だが、その譜面には何も書かれていない。

 

「話し変わりますけど、今度の新曲。どんな曲にするんです?」

 

「ある程度ストックがあるんだけど、千歌ちゃんから歌詞のイメージを聴いて、新しく一から作るか、ストックの中から合うのを見繕って再編集するかかな」

 

「じゃあ千歌先輩待ちですね」

 

「星ちゃんからも千歌ちゃんに言ってよ。締め切り間近ですって」

 

 まるで雑誌の編集長の様な事を口にして笑う梨子先輩に先程一瞬見せた遠い目は無かった。だから私はそれほど今年のピアノコンクールに対し梨子先輩がどれ程頭を悩ませていたのか知るよしも無かった。迂闊にも私はこの時、ピアノコンクールの日程がラブライブ予備予選の日と同日であることを知らなかったのだ。

 だからこの時の私は脳天気にも、梨子先輩がラブライブ予備予選とピアノコンクールのどちらも上手くいくと良いななどと思っていた。

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