ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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次回は5/26に更新予定


第六十七話

 朝練して、海の家で働き、夕方からまた練習。夜は残飯を処理して曲や衣装作りというかなりのハードな日々が続いていた。

 私はそれに寄り添って彼女達のサポートをした。

 今日もまた夜の残飯処理を終えて、千歌先輩の家である旅館のお風呂に三交代で入った。

 私は丁度千歌先輩と梨子先輩と一緒のタイミングで入ることとなった。

 

「大分難航してるみたいですね」

 

「私待ってますよ」

 

 作詞担当と作曲担当か一緒になったのだから話題は自然と曲作りについてのものとなった。

 私の言葉に乗ってプレッシャーを掛ける梨子先輩の言葉に千歌先輩は鼻歌を歌って誤魔化した。

 

「あ、今のμ’sのMusic S.T.A.R.T!!ですね」

 

「当たり」

 

 この曲はひたすらに楽しさを詰め込んだパーティーチューンだ。頭を空っぽにして聴いていると思わず躍りたくなるようなそんな曲だ。しかもこの曲の振付は非常に覚えやすいのも魅力だ。ついでに言うならばPVもパジャマパーティーをしている内容となっている。丁度この合宿なんかにマッチしていると言えよう。

 

「じゃあ次は」

 

「もう、誤魔化されないわよ」

 

 鼻歌クイズになりそうなのを軌道修正した梨子先輩に千歌先輩は悪戯っぽく舌をだした。てへぺろってやつだ。

 

「ごめん。色々書いてはいるんだけどしっくりこなくて」

 

「無理に一人で考える必要ないんだから、煮詰まってるなら相談してね」

 

「水を差して悪いんですけど、千歌先輩はどちらかというと感覚派ですよね。多分こういう時って切っ掛けが無いと駄目だと思うんですよね」

 

 私の言葉に二人揃って図星を突かれたように呻き声を上げた。どうやら梨子先輩自身も感覚派のようで身に覚えがあるようだ。

 

「参考までに梨子先輩の時はどうやって抜け出したんですか?」

 

「余り参考にならないわよ。千歌ちゃんも知ってることだからね」

 

「どういうことです?」

 

 梨子先輩と千歌先輩は楽しそうに教えてくれた。

 ピアノを楽しく弾けなくなった梨子先輩は直感的に海の音を聴ければ何かが変わるかも知れないと思っていたこと。千歌先輩と出逢い、ダイビングに連れ出してくれたこと。そして海の音を聴けたこと、スクールアイドルになったことを。

 その話しには思い至ることがあった。というかばっちりその時のことを目撃していた。海沿いでハーモニカを吹いた時にいた見覚えのあるダイバー達の正体が千歌先輩と梨子先輩、曜先輩だったのだ。そう思うとなんだか歴史に立ち会ったみたいな感慨深さを感じた。

 

「でも、今の話しを聴くと・・・」

 

 海の音を聴けたことだけだろうか、と思った。

 確かに感覚に導かれたものを得られたのは大きい。だけれども、例えは梨子先輩が一人でダイビングして海の音を聴いたとしてそれでスランプを抜け出せたのか?私はそうは思えなかった。そう、本当に切っ掛けとなったのはきっと千歌先輩や曜先輩という自分に体当たりでぶつかり、真剣に一緒に悩みを解決しようとしてくれる仲間と出会えたことなのではなかろうか?

 

「どうしたの星ちゃん?」

 

「いえ、なんでもないです」

 

 だとすると確かに参考にはならない。今更人間関係の新しい変化を意図的に求めるなんて不純にも程がある。

 

「あっ、梨子先輩」

 

「? どうしたの星ちゃん」

 

 不純にも程があるが、一つ思い浮かんでしまった。というか、これも放置できない事では無いだろうかと思い、私は梨子先輩に無言で問う。ピアノコンクールの事を千歌先輩に話したのかと。

 

「そうね、話すべきよね」

 

「何の話し?」

 

「あのね、私ピアノコンクールに出ないかって通知が来てるの」

 

 千歌先輩は梨子先輩がピアノの演奏でスランプに陥っていたことを知っているためか、湯船から勢いよく立ち上がった。

 

「出なよ。出るべきだよ」

 

「うん。ありがとう。でも、その日は駄目なの。ラブライブ予備予選の日だから」

 

 私も千歌先輩もその事実に心臓が止まる思いだった。少なくともしばし呼吸を忘れた。それくらい衝撃的なことだった。

 ああ、私はなんて迂闊なんだろうと自分を呪った。まさかピアノコンクールの日が予備予選と被っているなどと夢にも思っていなかったのだ。

 梨子先輩の苦悩は私の予想を遙かに超えるものだっただろう。それを私は気付くことができなかった。それが情けなかった。

 

「でも安心して。予備予選、出るから」

 

「え?」

 

「確かにコンクールには出たいと思ったよ。でも、今の私の演奏がどう成り立っているのかって思った時、みんなの顔が思い浮かんだの。そしたら自然と答えが出たんだ」

 

「ーーーーー」

 

「みんなには内緒だよ。心配させたくないし、後で必ず私から話しをするから」

 

 じゃあ先に上がるね、と言葉を残し梨子先輩は先にお風呂から上がった。

 私も千歌先輩も何も言うことは出来なかった。何も言うことはできなかったが、本当にこれで良かったのだろうかと二人して同じ疑問が胸の中で渦巻いていた。

 

「千歌先輩」

 

「うん」

 

 だが、しなければならないことは分かっている。梨子先輩の決断に対して、肯定するにせよ否定するにせよ答えを出さなければならない。真剣に悩み、答えを出した梨子先輩に対して失礼だ。

 

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