ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~ 作:マーケン
「ジェミニのアカリ」として活動していた時のアカウントで花火大会の時のステージの動画を動画サイトに投稿して数日、寄せられるコメントは無く、穹からのアクションは今のところ何も無かった。
彼女との関係をどのような形であれ切りの良いものにする。目下のところそれを目標にし、その第一歩として近況の片鱗を見せようと動画を投稿した訳だが、やり方が間接的過ぎるのかも知れない。よくよく考えれば私ですら暫くこの動画サイトにログインしていなかったのだ。何も知らない彼女ならば終わったものと割り切り一生アクセスしないかもしれない。
「はぁ」
私はスマホからジェミニのアカリのアカウントページの確認をして変化のないことに落胆し、溜息を吐き出そうとして、それを別の人の溜息に遮られた。曜先輩だ。
彼女は常の飄々とした様子から打って変わり、悩ましげな表情をしていた。だが今、それについて問い掛ける人はここには誰も居ない。
端的に言ってしまえば、今私と曜先輩の二人きりでコンビニの前でたむろっているのだ。
何故こんな組み合わせでここに居るのかと言われるとその原因は予備予選のパフォーマンスにある。
梨子先輩がピアノコンクールに出ることとなり、彼女はピアノの練習のために一足早く東京に言った。みんなで梨子先輩を見送った後、“想いよひとつになれ”のダンスフォーメーションの見直しをすることとなったのだが、そこで梨子先輩の穴を埋めるために抜擢されたのが曜先輩だ。
この曲は千歌先輩と梨子先輩のダブルセンター曲であったため、センターの梨子先輩と千歌先輩は他の人よりも特殊な動きがある。だが曜先輩ならば器用に立ち回れるという皆の期待があり、何より曜先輩と千歌先輩は幼馴染みであるため呼吸もすぐに合うだろうという楽観もあり推薦されたのだ。
「私、千歌ちゃんのこと全然分かってないのかな」
だが、予想とは裏腹に中々二人の呼吸は合わなかった。
私はもともと二人組のユニットで活動していたことから練習後に曜先輩に呼び止められアドバイスを求められたのだ。勿論、私のスマホで練習風景を撮影していたことも理由だ。
曜先輩は私のスマホからSDにコピーした動画を自分のスマホに移し、何度も見返していた。
「まだ初日ですよ。上手くいかなくても仕方ないきがするんですが」
「でも、梨子ちゃんのステップだと上手くいったんだよ?」
「寧ろ、梨子先輩のステップを覚えてるあたり凄い気がするんですが」
そう、ただ一度だけ息がピッタリと合ったのが、曜先輩が梨子先輩の動きを真似てステップを踏んだ時だった。それが曜先輩を焦らせていた。
「暫く梨子先輩と組んでたから千歌先輩の体に動きが染み付いちゃったんでしょうね」
「それはそれで悔しっ、おほん」
曜先輩はいつか言っていた。千歌先輩何かを一緒にしたことがないからスクールアイドルをすることになって楽しいと。だから曜先輩は千歌先輩とダブルセンターを勤めることになったことに特別な想いを抱いているのだろう。
だからこそ千歌先輩に影響を残す梨子先輩に対して曜先輩の中に曰く言いがたい想いが芽生えたのかもしれない。
「星ちゃんは二人組でやってたんでしょ?どうやってやってきたの?」
「そりゃあ、散々練習して喧嘩してましたよ。ただ、妥協はしませんでしたよ。私も穹もそれがわかってたから遠慮もしなかったですが、一度合うようになると不思議とあとはトントンと進みましたよ」
本当に穹は貪欲だった。下手に合わせようと私が妥協しようものなら突っ掛かってきたものだ。
だが、千歌先輩と曜先輩を見ているとお互いに譲り合っているような印象を受ける。
「うーん、そっか、星ちゃん達はそうやって来たんだ」
「ま、肝心なところで私は穹と話しを出来てなかったんですけどね。言葉が無くても伝わることはありますけど、やっぱり言葉で伝えた方が良いこともあると思うんですよね」
「うん、そうだね。でも、私はどう話しをすればいいんだろう?」
悶々と頭を抱える曜先輩だが、生憎私にはその答えはない。それは曜先輩の心の中にあることだからだ。
私はビニール袋の中からガリガリ君を取りだして風を開けると齧り付いた。
もう日も暮れているとは言え、まだまだ屋外は暑い。既に曜先輩とここで一時間以上たむろっているのでいい加減喉も渇くものだ。
横目で曜先輩を見ると彼女もまた暑いのだろう、汗だくになっているが、彼女はそれを意に返した様子は無かった。それだけ真剣に悩んでいるということなのだろう。
私は口の中に広がるソーダ味に舌鼓を打ちつつ、今暫く曜先輩に付き合おうと決心した。
例え答えが無くても相談には乗れる。それに迷っている時、悩んでいる時、それを知っている人がいると言うだけでいくらか気分が楽になるものだ。私はずっと一人で抱えていたからそれを良く知っている。
キーンと頭に走る痛みはアイスを囓ったことからなのか、悩む彼女の姿に私自身もまた頭を悩ませているからなのか判断できなかった。