ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

73 / 206
第七十二話

 穹と組むようになってから二人でいる時間は必然的に増えた。お互いにお互いの存在が人間関係の中心になったわけだが、その他の交友関係も当然あるわけで、時には私達は別行動を取ることもあった。

 予定を合わせたい時に限って穹が他の誰かと先約があったりした時は、頭で理解をしながらも心に処理仕切れない、腑に落ちない感覚が芽生えたものだ。

 あの時の私はそれをどのようにやり過ごしたのだろう?その答えに心当たりが見つからないまま今日も彼女達と一緒にいた。

 屋上には手拍子の乾いた音が響き渡る。手拍子が一定のリズムを刻み、それに合わせて千歌先輩と曜先輩が歩み寄る。そして反転して背中合わせになるのだが、二人は今日もまた噛み合っていなかった。

 

「やっぱり梨子ちゃんのステップで行こう」

 

「でも」

 

「このままじゃ間に合わないよ。だから、ね」

 

「うん」

 

 曜先輩は自らそのように申し出るがそれが本心で無いことは直ぐに分かった。常日頃の満開の笑顔は影を潜め、思案顔になっているのだから分かり易いくらいだ。当然ながら千歌先輩もまたそれに気付いているようだが、今度の予備予選を突破しなければ九人でステージに上がることが叶わなくなる。その事実が枷となり曜先輩の申し出を強く否定出来ないでいるのは見ていて歯痒かった。けれど、妙案が浮かぶことも無く、曜先輩が梨子先輩のステップを真似ることで、二人の動きが噛み合うのをただ眺めるしかなかった。

 

「ほら、やっぱりピッタリ。ね、こっちの方がいいでしょ」

 

 ただ、動きは噛み合うのに、笑顔なのに、何故こうも痛々しいのだろう。

 

「はい。今日は練習お終い」

 

「この後はプール掃除をやりますわよ」

 

 その明らかに違和感のある空気を察し、果南さんが練習を打ち切り、ダイヤさんがさり気なく生徒会の手伝いを提案した。

 

「プール掃除まだやってなかったの?」

 

「まだやってなかったのじゃありませんわよ。貴方も放置していたでしょう?」

 

 自然な話し運びで空気感を持ち直させ、三年生達は私達一年生を引き連れて行く。二年生をそのまま置いて。

 

「二人はゆっくり練習してて」

 

「プール掃除は任せるずら」

 

 私達もまたそれに乗るようにして二人を残し手屋上から出て行った。

 二人で気持ちを話さないと好転しない。それを誰もが感じていたのだ。

 

「千歌ちゃんと曜ちゃん大丈夫かな」

 

 プールへと移動する最中、ルビィちゃんの呟いた言葉に明確な返答が出来る者は誰も居なかった。

 

「私、少し曜さんの気持ち分かるかもしれない。中学の頃、周囲から少し浮いてた私にルビィちゃんがいつも一緒に居てくれたけど、一緒に組めない時なんかはどうしたんだろう、どうしてだろうって思ったから」

 

 花丸ちゃんとルビィちゃんの付き合いができたのは、私と穹の様に中学に入ってからだ。

 本を読むのが好きで、自分の好きなことを共有することができずにいた花丸ちゃんに理解を示したのがルビィちゃんだった。だから花丸ちゃんにとってルビィちゃんは付き合いの長さ以上の親友だと思っているからこそ、こういう感性が働いたのだ。

 

「でも、千歌先輩は別に梨子先輩ばかり気にしてるから曜先輩と動きが合わせられてないわけじゃないと思う」

 

「そうね。千歌っちが曜のことを大切に思っていないなんてことはないわね」

 

「私も千歌と曜とは幼馴染みだけど、やっぱり曜が千歌に懐いてる感じはあったからね。曜の想いが強いんだよ」

 

「ですが、想いが強いからこそ、二人のそれが一致した時、とんでもない力を発揮するでしょう。私達は余計な口を挟まず当人達にゆっくり話してもらいましょう」

 

 そのためにこうして無理矢理にでも二人きりになれる時間を作ったのだ。

 

「でも、不思議ですね。みんながAqoursとして動き出してから一月も経ってないのに、みんなお互いのことを自分のこと以上によく知ってるんですね」

 

 私の言葉に皆お互いの顔を見合わせて、違いない、と苦笑いした。

 

「一応梨子先輩に今起きていること伝えようかなって。ちょっと電話しますね」

 

 私はスマホで梨子先輩を呼び出すと数回のコール音の後に梨子先輩が電話に出たためスピーカーホンにしてみんなと一緒に喋った。

 

「星ちゃん?電話なんて珍しいね」

 

「そうですね。ちょっと直に言葉で伝えたくて」

 

「どうしたの?」

 

 私は事のあらましを説明した。曜先輩が梨子先輩の代わりにセンターを務めること。千歌先輩に対する想いが強いあまり空回ってしまっていることを話した。

 

「そっか。曜ちゃんが。曜ちゃんってホントに千歌ちゃんのこと大好きなんだね」

 

「これ私の見解だけど、曜は梨子に嫉妬Fire、がメラメラしてるんじゃないかなって」

 

「そんな。私からしたら寧ろ・・・いや、そうね。お互い様なのかもね。ちょっと後で私、曜ちゃんと話してみるね」

 

 梨子先輩はそう言って電話を切った。

 ダイヤさんの言葉ではないが、同じ大好きという想いが一致しているからこそ、相乗効果で凄い力が発揮できると思う。

 私達は二年生組が上手くいく事を祈り、プール掃除をやった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。