ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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第七十八話

 Aqoursの始まりがμ’sへの憧れであるように、Saint Snowの始まりもまたスクールアイドル、ラブライブ初代王者のA-RISEだ。

 μ’sとA-RISEは全く異なるタイプのスクールアイドルであり、それらに多大な影響を受けたAqoursとSaint Snowもまた同じスクールアイドルでありながら共通項がまるで無い。ただ、唯一共有する価値観が光り(μ’sやA-RISE)への憧れという原動力、そしてその目標こそが越えなければいけない壁であることだ。

 

「私達も考えたことがあります。私達はA-RISEやμ’sといったトップスクールアイドルと何が違うのか?」

 

「答えは出ました?」

 

「残念ながらまだ分かりません。でも、それを知るためにも私達は勝つしかないと思っています。勝ってA-RISEの見た景色を見るしかないって」

 

 彼女達は結果からその過程、理念を得ようとするアプローチを取るつもりらしい。

 その在り方に私は少し引っ掛かるモノを感じながらも、それを飲み込み何も言わなかった。

 それは私がSaint SnowひいてはAqoursに対して引け目に感じることがあると気付いたからだ。

 彼女達と違い、私は私の音楽の源流を知らない。いや、本当はそれを知っている筈なのに私にその自覚がないのだ。

 私が音楽に取り憑かれた最初の音楽、私が自分で演奏したいと思う切っ掛けとなった音楽が絶対にある。だけど、それを忘れてしまっていることに私は恥ずかしさを覚えた。だからこの二組のグループに対し私は何も言うことはできない。

 

「勝ちたいですか?」

 

 けれど、私の抱いた引っ掛かりに千歌先輩が問い掛けた。

 何も分からぬまま、ただ勝てば良いのかと。

 ただ、千歌先輩の疑問に対しSaint Snowの反応は冷ややかだった。何を馬鹿なことを言っているのだと。

 

「勝ちたくないなら、何故ラブライブに出るのです?何故μ’sやA-RISEはラブライブに出たのです?」

 

 ある意味でそれこそが彼女達の結論のように私は感じた。

 誰よりも素晴らしいパフォーマンスを披露出来るスクールアイドルになること。即ちラブライブで優勝することであると彼女達は思っているようだ。

 確かに彼女達のスクールアイドル活動に対する姿勢をホームページの活動記録を見るとかなりストイックである。それはアイドルというよりもアーティスティックと言う方が正しいと思えるくらいに。

 彼女達の楽曲“SELF CONTROL!”の歌詞にも描かれている。

 強くありたい。唯一無二の存在でありたいという夢。そのために独立独歩の精神で、自らの心と向き合い、打ち勝つという孤高の闘争心が描かれた世界観。

 弱肉強食の世界でひたすらに自分を磨くことがトップに導くことであるという信仰。それがSaint Snowの生きる場所なのだ。

 だからSaint Snowには千歌先輩の疑問をそもそも理解できない。勝つこと以外に意味を求めるAqoursとは相容れない。彼女達は決定的に異なる価値観を持っていることだけがこの会談で分かった。

 

「貴方はどう思うのです、星さん?トップスクールになるためにどうあるべきなのか?」

 

「何故私に聴くのです?」

 

「ジェミニのアカリ、私達は注目していたんですよ。なんて型破りなんだって。二人で四人編成のバンド相当の音楽を作り、更にパフォーマンスと融合させるなんて欲張りすぎて、清々しいくらいに馬鹿げていて。だから、この人達はきっと凄い志があって音楽をやっているんだろうなって、そう思ってたんです。だから、ジェミニの片割れである貴方がどう思っているか興味があるんです」

 

「ラブライブは手段であって目標ではなかった。それが私から言える確実なこと」

 

「教える気は無いんですね」

 

「うん。ただ、ありがとう。そんな風に思ってくれている人が居たってこと、初めて知ったよ」

 

 聖良さんの言うことは私を少なからず驚かせた。ファンとは違うだろう。例えるなら近隣にある余所の学校の強豪チームのような感覚なのだろう。

 以前会った時は突然私が内緒にしていたジェミニのアカリのことを知っていたためいい印象は抱かなかったが、今は彼女の言葉を砂に嬉しく思った。

 今日穹と会えたらこの事を伝えようと、そう思った。

 

「さて、そろそろ今年のラブライブの告知が行われる筈です。このUTXのモニターで告知がされるのが毎回恒例もなっているんですよ。良かったら見に行ってみては?」

 

「もしかして、お二人はそれを見に北海道から東京へ?」

 

 その質問に聖良さんも理亞さんも揃って紅茶を飲んで黙りを決め込んでいた。

 

「今日はありがとう」

 

「礼には及びません。ラブライブ決勝でお会いしましょう」

 

 私達はソファーから腰をあげると揃って頭を下げた。

 結局自分達の命題、μ’sとの違いや、どうあるべきかについて新たな発見はなかった。けれど、同じ立場のスクールアイドルがどんな思想をしているのか知れただけでもある意味で収穫だったんではないかと私は思っている。

 

「はい」

 

 ただ勝てば満足する訳では無い。けれど、まだ見ぬ大舞台に心か躍るのは本当の気持ちなのだろう。別れ際に挑戦状とも取れる発言に、千歌先輩は笑顔で答えた。

 

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