ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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次回は7/28更新予定。


第八十五話

 曜先輩とルビィちゃんと共に沼津市内の商店をまわった翌日、ラブライブの運営から問い合わせについての返信があった。

 ラブライブの予備予選のエントリーが始まった時点で浦の星女学院のスクールアイドル部として登録しているメンバー以外のステージでのパフォーマンスは不可であるとのことだった。また、予備通過ごとのメンバー追加申請等は行っていないため、途中加入作戦もできない。ステージに一緒に上がるという目論見は崩れてしまった。

 どんな形でもいいから力になりたいと申し出てくれたみんなにどのように説明すべきだろうか?

 私は結果報告と相談のため今日もまたみんなの練習する学校の屋上に足を運んだ。

 

「そっか、駄目なんだ」

 

「その分、頑張らないとですね」

 

「その前にみんなに話さないと」

 

 みんなでステージには立てないと聴き、千歌先輩は落胆していた。けれど、みんなへの配慮を忘れないあたりは流石だ。

「なら家庭訪問かしら?聴いたところ全校生徒が賛同してるって話しだし」

 

「なんか先生みたいですね」

 

「私、学園長ですから」

 

 鞠莉さんは冗談めかして人が率先してやりたがらないことを引き受けようとする。さり気なく学園長だからと理由付けしてるのが抜け目ない。

 

「私も同席します。生徒会長ですから。お二人は気持ちを伝えるのは上手いかもしれないですが、上手くは説明できないでしょ」

 

 感覚派の二人に任せては不安だと名乗りを上げるダイヤさん。しかし、一つ忘れて貰っては困ることがある。

 

「私も同席しますよ。問い合わせする際に色々と調べてますので細かい質疑応答にも対応できますから。その代わり、他のみんなはパフォーマンスの構成を考えてください」

 

 そう、私だ。私はスクールアイドル部の、Aqoursの一員ではない。けれど、この学校の誰よりも寄り添って彼女達のことを見て来た。だから、彼女達側の人間として力になりたい。そしてそんな立場の私だからこそAqoursのみんなと学校の子達の架け橋となれると思うのだ。

 

「じゃあ、この学校みんなとこの学校の魅力を一っっっ杯、詰め込んだステージにしよう」

 

「ふ、革命の時、来たれり」

 

「やめるずら」

 

 何時までも引きずってもしかたないと、曜先輩に善子ちゃん、花丸ちゃんが空気を変える。

 そんないつものやり取りに絆されたわけではないけれど、一先ず練習を再開しようと各員ウォームアップを始める。

 

「千歌、来たよ」

 

「あ、練習に誘ってたんだった」

 

 ただし、練習が再開されることはなかった。千歌先輩達二年生組の同級生、通称四五六トリオが屋上に顔を出したのだ。これには流石に私も心の準備ができていなかった。

 

「あ、みんなごめん。ステージ立てないや」

 

 けれど、千歌先輩はしれっと、雑に、ざっくばらんに参加不可を告げた。

 

「そうなんだ」

 

「うん。エントリーしてないから駄目なんだって」

 

「うん」

 

 その有無を言う余地の無いシンプルさが寧ろよかったのか、四五六トリオは残念そうにはしていたけれどこれといった波風はたたなかった。

 

「じゃあ千歌。みんなには私から伝えとくから、託したって」

 

「うん」

 

「先輩方。良ければ見学、していきませんか?」

 

「そうね。折角だしお邪魔するね」

 

 千歌先輩とのやりとりは非常に短かった。けれど、そこに込められた感情の熱量は横で見ていても思わず汗が滲み出る程だった。それもそうだろ。その熱量は彼女に賛同する生徒、つまり全校生徒の持つ気持ちの総量なのだから。

 

「私ね、ううん。私達ね、例えステージに立てなくてもみんなを応援したいって、学校をなんとかしたいって気持ちは変わらない」

 

「みんなが頑張っている姿を見ていると、不思議と応援したくなるんだ。そんな気持ちがみんなにも分かって貰えたらきっと学校だって救えると思う」

 

「だから応援するよ、みんなで。私達の学校にいるスクールアイドルはみんなに愛されてるんだって、みんなに分かってもらいたいから」

 

 一瞬でも煌びやかな舞台を夢見ただろう。銀河の海のようなサイリウムの煌めき、地鳴りのような声援、空を飛んでいるような高揚感。そんな感動を夢想した筈だ。それが叶わないと知って落ち込んでいる筈なのに、なぜこの学校人はこんなにも温かいのだろう?

 私は厚顔にも、Aqours以外がステージに立つことに難色を示していたにも関わらず質問をぶつけてしまった。

 

「なんで、そんなに平然としているんですか?」

 

「だって、私達はスクールアイドルじゃないもん」

 

「みんなと同じ想いを抱いてもいるし、そうじゃない部分もある」

 

「私達の一番はステージに立つことじゃない。学校を存続させることだからね」

 

「でも」

 

「そりゃあ一緒にステージに上がれるかもって舞い上がったりもしたけど、そこはやっぱり私達の立つステージじゃないんだよ」

 

「実はこないだ星ちゃんが演奏してくれたじゃない?その時にそう思ったんだ」

 

「演奏しているときのあそ場所は確かに星ちゃんのステージだった。だから、人にはそれぞれの立つべきステージがあるんだって、そう感じたんだ」

 

 言うなればそれは棲み分けの話だ。AqoursにはAqoursの、私には私の、そして彼女達には彼女達の戦うべき場所があるのだ。それが、今回はニアミスしただけ。

 なんてことのない思いも寄らぬ急接近したに過ぎない。

 

「みなさん、ウォームアップしながら聴いて下さい」

 

 私はみんなにそう告げると懐からハーモニカを取り出す。

 曲は“Snow halation”。μ’sの楽曲の中でも不動のラブソングだ。

 その歌詞に込められた内容を紐解くと、少し強引な解釈かもしれないが、必ずしも対象を人と限定しない。

 だからこれは新しい発見と挑戦の曲ともとれるのだと私は思っている。

 だから、Aqoursに感化かれ自分達の本心と出会った彼女達に私はこの曲を贈る。

 炎天下の夏の太陽の下、雪のように白いのはきっと心の中に灯った光なのだろう。

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