ラブライブ!サンシャイン!!~陽光に寄り添う二等星~   作:マーケン

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次話は今日中に投稿予定。しばしお待ち下さい。


第八十六話

 ラブライブ予選に用意しているのはAqoursの最新曲。その編曲の最終調整が終わり、梨子先輩と私、花丸ちゃんはようやく人心地つくことができた。

 

「ようやくできましたね」

 

「ええ。ありがとう、二人とも。星ちゃんの編集力があったから効率よくできたし、花丸ちゃんがリードボーカルしてくれたお陰で流れを損なわない編曲になったよ」

 

 梨子先輩は編曲、私はデータ編集、花丸ちゃんがモニターとして実際に曲を流して歌ったのだが、なかなかどうして、壮大な曲になった。特に入りの繰り返す度に増える楽器、そして一端落ち着けてからの総出演は聴くたびにワクワクする。なんというか既存の曲で例えるならば“A Whole New World”、豪華さがうるさくない曲だ。

 

「珍しいですよね。こんなオケ風な編曲をしたのは」

 

「そうね。これまで積み重ねてきたから出せる味なんだと思う」

 

「これまでのAqoursの歩みを象徴する曲ってことですか?」

 

「それだけじゃない。これからを始める曲でもある」

 

「だからタイトルがMIRAI TICKETずら」

 

 編曲が終わるとちょっとした講義会になった。この曲を作った感想や展望を話す梨子先輩や花丸ちゃんはとても良い表情をしていた。

 

「今までは憬れを追い掛けるようなテーマでしたけど、今回は憬れになるというテーマでしたね」

 

「ただ追い掛けるだけじゃない。それをこないだ自覚したからね」

 

「歌詞からも読み取れますね、それは」

 

 実際気持ちいいくらいにストレートな歌詞だ。それで居ながら積み重ねたもの、そしてAqoursらしさを含んだ歌詞の巧さを感じる一作だ。

 

「花丸ちゃんは流石に歌上手いね」

 

「うん。歌は昔から好きだったんだ。歌は短いけど一つの物語だったり、一時の感情だったり、意義だったり。色んな表情があって歌ってる時はその世界に入り込めるから好きになったの」

 

「本が好きな理由と根本的には同じだったんだ。それなら中学時代にルビィちゃんとカラオケ行ったりはしなかったの?」

 

 よく花丸ちゃんは目新しい機械を見ると未来ずら未来ずらと興味津々に騒ぎ出すのだが、沼津市内でルビィちゃんと遊び歩いていれば市内にある設備など慣れたものであると思うのだ。

 

「ルビィちゃん家は厳しいからそういう風に長時間遊んだりはできなかったの」

 

「ああ、それ納得」

 

 黒澤家はその家柄もあり結構厳しいらしい。ただし、節度を持って行動すれば多少のことは大丈夫なようでスクールアイドル活動についてもそれで通しているようだ。

 

「明日からダンス練習に専念できますね」

 

「ダンスはまだ苦手ずら」

 

「でも、私も花丸ちゃんも最初の頃に比べれば体力着いたよね」

 

 感慨深そうに梨子先輩が言うと花丸ちゃんも深く頷いていた。

 確かにピアノばっかり弾いてた引き籠もりの梨子先輩と本の虫になっていた花丸ちゃんの運動能力は同世代の平均水準よりちょっと下だった。けれどスクールアイドル活動を通じてダンスをしたり基礎トレをしたりとした結果、元が低かっただけあり肉体的なポテンシャルの成長率ではAqoursのなかでも1位、2位を争う。

 

「今の梨子先輩と花丸ちゃんそのものがある意味でこれまでの歩みを物語っている訳ですね」

 

「生活習慣とか趣向も少し変わってきて、昔はそんな事無かったのに最近リアルゴールドばっかり飲んでる」

 

「オラもお鍋を混ぜながら空いてる手で振付してたりとか」

 

 スクールアイドルあるあるなのだろう。今度は梨子先輩が深く頷いている。

 毎日会っているとついつい見落としてしまいそうな細かなところで変化し続けているのだろう。しかし、梨子先輩のリアルゴールドについては触れないでおこうと思ってたことだが、自らネタをぶっ込んできたあたり梨子先輩は侮れない。

 

「みんな一歩、ううん。もしかしたらそれと気付かないくらいかもしれないけど少しずつ変わってる」

 

「それはオラ達だけじゃない。学校のみんなもそうずら。だから千歌さんのクラスメートの方が学校のために何か出来ないかって思ってるって知った時それを感じたんだ」

 

「もう頓挫してしまいましたが、二人はみんなとステージに立つってこと、どう思ってたの?」

 

「正直に言えば私は全面的には賛成じゃなかったかな。学校を救うために学校のみんなと力を合わせるその方針には賛成。でも一緒にステージに立つのはちょっと違う気がしてたかな」

 

「オラはやり方次第ではそれでも良かったと思ってたかな。ほら、オラ聖歌隊に入ってるでしょ?だからあんな風に合唱するとまた違った歌の響きになるのかなって」

 

「そっか。じゃあ、みんなが同じステージに立てなくなった今、みんなの想いをどう表現していく?」

 

 曲は出来た。ダンスも完成形は見えている。あとはそれに近づけるように練習するだけだ。けれど、それだけで足りているのだろうかとずっと考え続けている。私も、千歌先輩も、いや多分Aqoursのみんな同じ様な想いはあると思う。

 

「星ちゃん。気持ちの伝え方は音楽だけじゃないよ」

 

「どういうことですか?」

 

「まだぼんやりとしか分からない」

 

「けど、歌って躍るだけがスクールアイドルじゃない。今はそんな気持ちしか分からない」

 

 歌って躍るだけがスクールアイドルではない。それはかつて私もそう思い、高校生活の音楽活動の場としてスクールアイドルになろうと考えていた。私のように考え、アイドルなんて柄じゃないガチのガールズバンドグループなんかもスクールアイドルとして登録してたりもするのだ。けれど、それがどのようにこの話しとつながるのだろうか?

 

「さ、一段落したし晩ご飯食べていくでしょ?」

 

「いただくずらー」

 

 いくら考えても全く妙案が浮かばない。けれど私には思いも付かないことをみんなはしてくれそうだと、そんな予感が私の胸を高鳴らせた。

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