不気味な世界の中で、不気味な人間が、不気味な物語を紡ぐ。
彼らは何故……………………………。
・鬱要素
・残酷な描写
・意味不明な表現
・胸糞が悪くなるような描写
これらのことに耐えられる方はこのまま御閲覧ください。
前に目覚めたのはいつだっただろうか。
寝ぼけた頭の中、僕はそんなことを考える。
というよりも今はいつなんだろうか。
僕は周りを見渡す。
狭い部屋に、ベッドと机と、ピアノに時計だけのシンプルな部屋だった。
ただ一つ異様なのは、窓がない上に、ドアが板で打ち付けられている点だろう。
ドアが打ち付けられてるなぁ。じゃぁでれないのかな.......。
僕はぼんやりと不気味なドアを見つめる。
まぁ、いいか。
僕はベッドから降りて、部屋を詳しく見て回る。
まずは最初に目に入ったピアノだ。
薄暗くて、ほこりっぽい部屋とは対照にハッキリとした赤色の鍵盤はとても綺麗だった。
僕はつい、鍵盤へと手を伸ばす。
鍵盤を押し込むと「ボローン」と酷く歪んだ音がした。
僕は鍵盤から指をはなす。
「っ!」
はなした指には赤い塗料がべったりとついていた。
ベタベタとしていて気持ち悪い。
僕はピアノから離れた。
すると突然壁の向こうから声が聞こえてくる。
「いやぁぁあああ!!!助けてぇ!!」
「......」
うるさいなぁ......
僕はそう思いながら、壁の方をみる。
「......?」
なぜかさっきまではなかった貼り紙が貼られている。
《うるさい隣人にお困りではないですか?》
貼り紙にはそんなことが書かれていた。
よく見ると貼り紙の下には小さなボタンがあった
僕はそのボタンを......
押し込んだ。
《がんっ!!》《ぐちゃっ......!!》
鈍い音の後に気味の悪い音が聞こえ、やがて音がピタリと止む。
「しずかになった......」
僕はそう呟くと、部屋の隅の机へと向かった。
机には一つだけポータブルゲーム機がおいてありそれ以外には何もない。
僕はその画面を見る。
その画面には暗い背景に真っ白な文字で。
《あなたはどっち?》
そうかかれてあり、下には
・愛すべき
・愛されるべき
この二つがあった。
「......」
どうやらどちらかの文字に触れればいいようだ。
僕は、数秒の思考を終えて、愛されるべき。に触れた。
そして.........。
「がっ.....!?」
首を締め付けられるような感覚。
そして、
《プツン》
軽い音とともに僕の意識は途切れ。
その後再び動くことはなかった。
『答えを間違えた』
ここはどこ!?
私はパニック気味に自分に尋ねる。
もちろん答えなどわかるはずもなく、私は呆然と立ち尽くしていた。
周りを見渡す。
全体的にピンク色の女の子らしい部屋。
ベッドやピアノのある豪華な部屋だ......
ただ、違う。私がいた部屋じゃない。
パパやママは?クマのお人形さんは?
私は泣きそうになって頭を抱えた。
そのまま何時間たったのだろうか?
私はゆっくりと顔を上げる。
このままメソメソと泣いていたって仕方がないんだ。
ここからでる必要があるんだ。
私は涙でグシャグシャになった顔をこすって部屋を改めてよく観察した。
ドアはある。あるんだけど......。
《ガチャガチャッ!》
.........鍵かかってる.........。
窓は見当たらない。
私は他のところを探した。
タンスがあったので中を確認する。
中には......
「!!......クマさんっ!!」
私の大好きなお人形。
いつも一緒の友達、クマさんが椅子に座っていた。
「よかったぁ............。」
私はクマさんを強く抱きしめた。
しかし、そのときあることに気づく。
「ひっ!?」
抱きしめた腕にドロッとした感覚が襲う。
反射的に腕を放してしまい、クマのお人形は地面に落ちる。
すると......その瞬間。
《ブチッ》
そんな音とともにクマのお人形の顔と胴体が離れる。
「っ!?ひぁっ.........なんで......。」
私は地面に倒れ込んで呆然と千切れた二つの残骸を眺めていた。
『謝って』
ふとそんな声が聞こえる。
「え?」
『謝って』
さっきよりもハッキリと聞こえる......。
「ご、ご......ごめんなさい.........。」
私はいわれたとおり謝る。
『うん。まぁ、いいや』
どこからともなくそう声が聞こえてくる。
そして、声が聞こえなくなった。
私は半ばノイローゼのような状態になってフラフラと壁にもたれ掛かる。
すると......
《ボローン》と酷く歪んだ音が耳に刺さる。
その瞬間私の中で何かが切れるような感覚を覚えた。
普通密室に閉じこめられて冷静でいられる人なんてあんまりいないだろう。
私は完全にパニックを起こした。
「いやぁぁああ、助けてぇ!!!」
頭を抱え、足を震わせながらうずくまる。
怖い、怖い...
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
すると......
上の方で何か物音がする。
《がこんっ》
《ぐちゃっ》
私は声を出せないまま自分の体から鮮血が吹き出すのをただただ見つめる。
私は最期に、こんな声をきいた。
「しずかになった......」
それは冷静で残虐な声だった。
『近所迷惑』
「......どこ?ここ......。」
私は虚ろな目でベッドから体を起こす。
周りをみると、見覚えのない部屋に独りいることがわかった。
決して広くはないが別段狭くもない。
私は部屋の中をぐるっと見回した。
なんだか随分と不気味な部屋だ。
たしかテレビで見た監獄がこんな感じだった気がする。
薄暗く、湿っていて、壁の所々には血のようなものが付着していた。
部屋は鉄格子で二つに区切られていて牢に出口は見あたらない。
鉄格子の向こうには重厚感のある扉があるのが分かった。
ただ、おかしなところと言えば私がドレスを着ていること。
あと牢の隅に椅子がおいてあって、そこにクマの人形が座っていることぐらいだ。
私は部屋を詳しく見て回ろうとベッドから下りる。
《ガシャッ......》
「......?」
すると手元から重々しい金属音が聞こえた。
私はゆっくりと手元を見やった。
漆黒に綺麗に部屋の薄暗い光を反射させる。
私の腕には大仰な手枷が填められていた。
手枷自体がどこかに繋がれているわけではなく、単に左右の腕の自由が利かないだけ。
私は別段気にすることもなく部屋を見て回った。
部屋に窓は見あたらない。
空気の流れるところはなさそうだ。
どうにかしなければ死ぬのは時間の問題だろう。
次に自分の寝ていたベッドを見る。
薄汚い簡素なものだ。
縁に指を走らせれば埃がつく。
私は軽く顔をしかめると指についた埃を息で吹きとばした。
次にベッドの横にある小さな机。
ボロボロの羽根ペンとインク、そして手帳ぐらいのサイズの冊子。
手枷をじゃらじゃらと鳴らしながら冊子を手に取る。
『日記』
とても簡単なタイトルがきれいな字で記されていた。
自由が利かない手でそれを開くと、
『一人目。3月15日。心臓発作。』
?
『二人目。3月15日。出血多量。全身打撲。』
.........?。
『三人目。3月24日。焼死。』
.........。
パタン。
私は冊子を閉じて元の位置へと戻した。
そして次に牢の隅にある椅子とクマの......。
《カチャッ》
《ガタン》
唐突に横から何かが開くような音が聞こえる。
そちらの方を向くと、鉄格子を挟んだ向こう側のドアが開いていた。
そこから警察官のような格好をした豚が二人入ってくる。
「おい、みろよ」
「あぁ、みたぜ」
「まだ生きてやがるぜ」
「あぁ、生きてやがる」
「もうすぐ終わりだけどな」
「あぁ、もうすぐ終わりだ」
「哀れなもんだぜ」
「あぁ、哀れなもんだ」
「豚みたいに焼かれるんだろ」
「あぁ、豚みたいにな」
「丸焼きだぜ」
「あぁ、丸焼き」
「熱くて熱くてたまらないだろうな」
「あぁ、痛くて痛くてたまらないだろ」
「内蔵が灼ける感覚だ」
「あぁ、肌が溶けていく感覚だ」
「哀れなもんだな」
「あぁ、哀れだな」
ガンッ。
私がありったけの力を込めて鉄格子蹴り飛ばす。
鈍い音が鳴り、右足に激痛が走った。
「怒ってるようだぜ」
「あぁ、怒ってるな」
「怯えてるようだ」
「あぁ、怯えてる」
「手遅れなのにな」
「あぁ、手遅れなのにな」
豚が淡々と続ける。
「嬢ちゃん、もうすぐで死ぬんだぜ?」
「あぁ、もうすぐで死ぬな」
「怖いかい?」
「あぁ、怖いんだろうな」
「気味が悪いかい?」
「あぁ、気味悪がってる」
「だが、仕方がない」
「あぁ、仕方がない」
「いわゆる自業自得ってやつだ」
「あぁ、自業自得ってやつだな」
「そうなるべきなんだ」
「あぁ、そうなるべきだ」
ガンッガンッガンッ
引き続き鉄格子を蹴り飛ばす。
その様子を豚達はじっと見ていた。
やがて、右足の感覚は完全になくなった。
「無理だよ」
「あぁ、無理」
「受け入れるんだな」
「あぁ、受け入れろ」
そう言い残すと、豚は部屋から出ていった。
《ガチャン》
鍵をかける音がして、やがて音は聞こえなくなった。
私は暫くその場に立ち尽くす。
右足から鮮やかな血がだらだらと流れ出す。
まるで蛇口でも捻ったかのように流れ続ける。
「.........。」
私は別段気にすることもなく、また部屋を調べ始めた。
次はクマの人形だ。
明らかにこの部屋とは不釣り合いな見た目。
私は人形へと手を触れる。
「......っ!」
すると指が人形のこめかみへとめり込んだ。
指先にはドロッとした感覚が伴う。
反射的に手を離すとその勢いで人形は床へと落ちた。
すると...。
《ブチッ》
そんな音と共に人形の頭と胴が離れる。
「.............。」
私は、引き離された人形だったものをただ見つめる。
すると...
『謝って』
「...?」
『謝って』
唐突に喋りだした人形の頭を睨む。
《グチャッ》
感覚のない右足を人形の頭に向けて思い切り放る。
気味の悪い音を立てて、人形の頭は潰れてしまった。
その後も追い打ちをかけるように人形を踏み続ける。
もはやそこに感情はなくそれは作業に近いものだった。
『ひ..ド.い...』
するとまたもや人形がしゃべる。
ぐちゃぐちゃの発音で聞き取るのが難しかった。
《グチャッグチャッ》
なおも踏みつけ続ける。
『ゲッ...ガッ..ア゛ッ.......』
人形の声はどんどん歪み、聞くに耐えない喘ぎになる。
そこまでなっても私は踏むのをやめなかった。
やがて人形の声が途絶える。
いや、もはやそれは人形とは呼べなかった。
虹の色を全部混ぜて床にぶちまけたような。
土留色の無様なただの塊。
私はソレを視界から消すため部屋の他のところを見て回る事にする。
『ユルサナイ』
しかし今度はソレからハッキリと声が聞こえる。
私は振り向く。
そこにはさっきまで原形をとどめていなかったソレがすっかり元通りになって佇んでいた。
『ユルサナイ。ゼッタイニユルサナイ』
だんだんと語気が荒々しく変わっていく。
『ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ』
やがて耳が痛むほどの大声となった。
「煩い。」
思わず私が呟いた。
「煩い煩い煩い」
一度声を発するとダムが崩壊したかのように言葉が押し寄せる。
「煩い煩い煩い煩い煩い」
虚ろ目で人形の頸もとに手を掛ける。
「煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い......。」
自由の利かない腕にありったけの力を込める。
「煩い煩い煩い煩い煩いうr......。」
すると途中で声がでなくなる。
それと共に口から勢い良く赤色の液体が吹き出る。
気づくと身体中が熱くて熱くてしょうがない。
腕にも力が入らず人形の頸からいつの間にか離れていた。
「ガァ...ア゛..ギッ..」
さっきの人形のように声になっていない喘ぎを漏らす。
呼吸ができずに強烈な臭いに嗅覚は全く働かない。
燃えてる?
何が?
部屋?
私?
息を吸おうとするとすると肺が裂けるように痛む。
内蔵が焼ける。
乾ききった眼から液体が止めどなく流れ続ける。
『ザマァミロ』
殆ど聞き取ることができない耳に、鮮明にそんな声が飛び込んだ。
「ッ.........」
これ以上ないほど張り上げた声が虚しく空を掻いた。
そしてやがて五感は完全に機能を失い、
《プツンッ......》
そんな軽い音の後。
意識が途切れた。
『自業自得』
「は?」
そんな間の抜けた声が狭い部屋にこだまする。
俺が目を覚ますとそこは見覚えのない小さな部屋。
小汚い壁と粗末な布団。
どことなく牢獄を思わせる内装だ。
しかしそんなことはどうでも良い、重要なのは…。
「クッソ……うごかねぇ……」
俺の手足が拘束されていることだ。
手は後ろにまわした状態で縛られ、足は床と鎖でつながっていた。
「クソが…!」
《ガンッガンッ》
力一杯拘束を解こうとするが、どうにかなる気配は全くない。
「無理………か…。」
ただ、パニックを起こして喚くほど馬鹿じゃない。
無理なら別の方法を探せば良いだけの話。
俺は部屋を見渡す。
だいたい5メートル四方の正方形。
その一辺に寄りかかるようにして俺は身動きがとれなくなっている。
ほかに気になることと言えば俺から見て右側の壁。
隅には蜘蛛の巣がはっているような小汚いソレには小さな窓がついていた。
残念ながら床に座らされた今の体勢では覗くことは叶わない。
そして、目の前の壁。
壁の真ん中に堂々と扉が佇んでいた。
嫌に仰々しい見た目のそれは分厚そうで簡単に開きそうにない。
ザッと見て気になるのはこれくらいだろうか………。
さて、本格的にまずい状況になってきた。
打開策は思いつきそうにない。
「おーい!!誰かいないのかーーーっ!!??」
ありったけの声で叫んでみる……。
が、反応はない。
とりあえず助けを待つ他なさそうだ。
「なんでこんなことに……………。」
俺はぼやきながら足を繋ぐ鎖を睨む。
美しく黒光りするそれがヒドく憎らしく思えた。
………。
それから何分か経っただろうか。
《チャン》
《バタッ》
そんな音で途切れかけていた意識を取り戻す。
眠りかけていた脳を叩き起こし顔を上げる。
そこにいたのは二匹の豚だった。
どちらも警察官の制服を身につけている。
「おい、みろよ。」
「あぁ、みてるぜ。」
「こいつがそうなのか……。」
「あぁ、こいつがそうだ。」
「今日連れてこられたんだろ?」
「あぁ、今日連れてこられた。」
「何したんだ?」
「あぁ、俺も知らない。」
「まぁ、罪を犯したんだな。」
「あぁ、罪を犯したんだ。」
「すぐに死ぬだろう。」
「あぁ、すぐに死ぬな。」
「幻に魅せられるんだ。」
「あぁ、幻にな。」
「夢に溺れていくんだ。」
「あぁ、夢に溺れていく。」
「哀れだよな。」
「あぁ、哀れだ。」
目の前の豚達は身動きのとれない俺を見下ろす。
酷く濁った目。
感情など映さない。
「今日もう一人来るんじゃなかったか?」
「あぁ、そうだったな。」
「準備しないとな。」
「あぁ、準備しよう。」
《バタン》
《ガチャッ》
鍵をかける音と、豚どもがどこかへ向かう足音だけが耳に刺さる。
「どういうことだよ…………。」
罪を犯した……確かに奴らはそういった。
俺が何をしたって言うんだ。
いや………それよりも今頭の中を支配しているのはその後の言葉だ。
『すぐ死ぬだろう』
死ぬ?
死ぬ……死ぬってどういうことだ?
殺される?
ここで?
俺が?
「落ち着け………」
俺は声に出して自分に言い聞かせる。
そんな簡単に死ぬとか殺すとか餓鬼じゃないんだ。
一度ゆっくりと息を吐いた。
なんにせよ此処から出る術をもう一度考えよう。
長居するには危なすぎるだろう。
先ほどよりも念入りに部屋を調べ始めた。
そして、一つ新たな発見をした。
俺の位置からちょうど死角。
首を限界まで回し、上を見上げるとそいつはいた。
全体像を見ることは出来ないが恐らく熊の人形だろう。
首を吊るような形で天井からぶら下がっている。
明らかにこの部屋とは不釣り合いのソレに怪訝な眼差しを向ける。
しばらく見ていると首が痛くなり一旦楽な体勢になろうと、顔を前に持ってくる。
すると………。
「うわっ!?」
目の前に在った熊の人形に思わず声をあげる。
確かにさっきまでそこにはなかったもの。
まさか。と思い、後ろをもう一度振り返るとまるで最初からなかったかのように人形が姿を消していた。
移動したのか?
人形が?
頭の中でもくもくと疑惑が膨れ上がっていく。
『ねぇ』
不意に声がかかる。
目の前の人形だ。
『聞きたいことがあるんだ』
そいつは天井から長く垂れた紐に首を吊るような形で俺の目の前にいる。
妙に響く声に俺は人形に目を向ける。
『昔、ゲームで聞いたんだ』
正直に言うと不気味だ。
今すぐにでもこの場を離れたいぐらいに。
『人はね、人を愛するらしいんだ』
人形が語り出す。
『でもね、皆が皆…人を愛するわけではないらしい』
『そこで僕はおもったんだ』
『人は愛するべきなのかな?愛されるべきなのかな?』
気持ち悪いことを語る人形に気分が悪くなる。
『ねぇ、教えてよ。人は愛すべきなのかな?愛されるべきなのかな?』
耳を覆いたくてしょうがない。
「知らねぇよ」そう答える直前だった。
『教えてくれたら今君が一番欲しい物をあげるよ』
人形のそんな言葉が耳に飛び込んだ。
一番………欲しい…もの………?
頭の中で人形の言葉を繰り返す。
一番欲しいもの……そんなの部屋の鍵……いや……足枷の錠の鍵か……?
どちらにせよそれが本当なら答えない理由はない。
「分かった。教える………。」
『本当かい!やったぁ……楽しみだな。』
「愛すべきか愛されるべきだったな……?」
俺は目の前の熊の人形を見据える。
別にどちらだと答えても問題ないだろう。
「愛すべきだ。」
俺は適当に答える。
『へぇ……そうなんだ……!えへへ……愛すべきかぁ……。』
気持ちの悪い声で人形はうれしそうに言った。
「あぁ……だから俺の欲しいもの……鍵をくれよ。」
俺は人形に食いかからんばかりの勢いでせがむ。
『うん。もちろん!でも、それじゃ受け取れないよね……まず拘束を解かないと……。』
人形はそう呟く。
そして、数秒もせずに……
《カチャン》
「うぉ……!?」
手を縛っていた縄が切れて、足枷がはずれる。
「おぉ……………ありがとな。」
俺は素直に礼を言った。
『いやいや!それより、今君が一番欲しい物は僕の下だよ。』
その言葉に俺は人形の真下に視線を向けた。
今、この状況で俺がもっとも欲しいもの………。
言うまでもない、この部屋の鍵だろう。
俺は期待を胸にそれを拾ったがその期待は大きく外れることとなった。
「………なんだ……?これ………。」
俺は手に持ったタブレット菓子のようなものを睨みながら呟く。
『君が今、一番欲しいものさ。』
「はぁ?………そんなわけないだろ………鍵を出せよ。」
『?なに言ってるんだい………?君の欲しい物はそれだろ?』
当然のように意味の分からないことを言う人形に言葉を失う。
一発殴ってやりたかったがそんなことしても意味はない。
「クソ……。」
俺は一度悪態付くと人形を視界から外した。
何にせよ拘束は解けたのだ、さっきよりも詳しく部屋を見て回ろう。
だが、その前に………。
俺はもう一度人形にもらったタブレット菓子のようなものを見る。
「ラムネか何かか……?」
当然こんなものが俺の欲しいものな訳がない。
しかし、食べ物を持っていると意識した瞬間、空腹感が襲ってきた。
「………。」
こんなものでも腹の足しにはなるだろう………。
俺は包装している紙を取り外し菓子を取り出す。
白く、丸いそれは腹が減っているせいか、かなり美味そうに見える。
「とりあえず食べよう………。」
俺はそれを口の中に放った。
「………。」
菓子だと思ったが甘くない。
何か、薬の類だったのだろうか………?
何故か、とても懐かしいような感覚になる。
俺はもう一つ取り出す。
そしてまた口元へと運ぶ。
噛み砕くと口の中に何ともいえない味が広がった。
そして、もう一つ、もう一つ。
もはや作業のようにただただそれを頬ばった。
「もう………ないのか………?」
虚ろ眼でそう、呟く。
頭に響くガンガンとした痛みが心地よい。
手の先が痺れて感覚が麻痺している。
視界がゆっくりと揺れている。
上手く立っていられないので後ろに尻餅をついた。
すると、目の前の風景が変わる。
「お兄ちゃん!おはよう!」
妹に起こされる。
体を起こすとそこは砂漠。
暑い暑い。
目の前の雪に顔を埋めながら呟く。
「あら、今日はご機嫌ね。」
横で妻が微笑んだ。
すぐ横にある包丁を掴み、姉の顔に突き立てる。
害虫は潰れて死んだ。
「あぁ、お疲れさま。今寝かしつけたところかい?」
最愛の夫に尋ねられ、すぐさま反撃を試みる。
自分の手札を見て、仲間のサインを確認した。
相手は4カードに団子を集めている。
サインを確認して標的の真下に移動する。
顔のない友人にキスをした。
頭の中を蠢く虫を殺そうとかきむしる。
横を殺し屋が歩いている。
見つかったら殺される。
自分の指を食いちぎり腹を満たした。
頭が痒い。
寒くて凍え死にそうだ。
横で老婆がお父さんを貪り喰う。
宙吊りにされたクローン達に挨拶をした。
殺される。
自分に向けられた歓声に銃口を向ける。
煙草を吹かして時計を合わせた。
弟の頸に剃刀を突き立てた。
彼に指輪を填めてもらうが上手くいかない。
逃げなくては……。
「このままでは我々の国に未来はない!」
大仰な演説をする自分のこめかみを撃ち抜く。
変わらない毎日に嫌気がさす。
駄目だ。殺される。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
「落ち着け。」
大丈夫。
今までのは幻。
誰もいない。
ここにいるのは俺だけ。
ゆっくりと瞼をあけた。
『どうしたの?』
「うわぁぁぁあああああああああああああああああああ」
横にあった椅子を掴み、殺し屋に投げつける。
《グチャッ》
歪な音がしてそれは崩れ落ちた。
「やった?やった。やった。やったやったやったやったやったやった!!!!」
俺は手の震えを抑えながら呟く。
「あはは……あははは。あはははははははは。」
壊れたラジオのように繰り返し、繰り返し。
『ュ……ぃ』
「あははは。…………あははははは。」
目の前の炎に笑いが止まらない。
痒くて仕方がない、皮膚を破る。
「あはは、はは。あは………。」
目の奥が熱い。
目をくり貫いて水を流し込む。
「あははははは。は、はは。」
目の前で湧く罵詈雑言。
頸もとに二枚の刃が添えられている。
「あははは、ははは。はは。」
心地よい痛みに顔を歪めながら笑みを浮かべる。
横に質の良い服を着た年配の男が現れる。
「あはははははは、あはは。」
民衆の声に答えるように一礼すると俺の両横に立つ兵士に合図をする。
その合図とともに剣が勢いよく落とされた。
「あはは。あは………………。」
大歓声に酔いながら視界は暗転した。
『ザマァミロ』
そんな声と共に。
『依存』
「あれ?」
僕は体を起こして周りを確認する。
狭い部屋に、ベッドや机、ピアノに時計だけのシンプルな部屋だ。
ドアは板を張り付けられていて出られそうにない。
ゆっくりと立ち上がり、机に向かう。
机の上には壊れたゲーム機と一冊の本。
『記録書』
殴り書きで書かれたタイトルを見て、本を手に取る。
『一人…。心……作。……の………誤…。それ………り、処す。』
『二…目。………量。全…打撲。一……の………ため………。よ…て処す。』
『……目。…死。時……変……失…作。…暴………神…反…、…れ…………処す。』
『四……。斬……。…人…と同………系………………………作。以前…………し…………法薬……………暴………て処す。』
『五…目。…殺。………………………。』
これ以降は破れていて見ることはできない。
しかし、写真が一緒に挟まっていた。
一枚目の写真。頸を抑えながら苦しむ男。
二枚目の写真。鉄の塊に押しつぶされて原形をとどめていない何か。
三枚目の写真。黒こげになった人間。
四枚目の写真。顔と体が分かれた笑っている男。
五枚目の写真。頸もとから血が溢れている男。
「………。」
黙ってそれらの写真を繰り返し見続ける。
「あはは。」
僕は静かにそう笑った。
僕は自分のやるべきことを理解する。
そうだ。みんなそうなんだ。
抑えきれない笑いを漏らしつつ机の引き出しを開く。
そこには一つだけポツンとカッターナイフがおいてあった。
それを手に取り刃を突き出す。
薄暗い明かりを反射するそれは酷く美しい。
「あはは。はははは。」
愉快でたまらない。
一つ一つ大事に行動を起こす。
カッターナイフを自分の前に掲げる。
手の震えを抑えるためそれを持つ手に左手を添えた。
「ありがとう。」
僕は小さくそう言うと両手に力を込めた。
そして、自らの頸もとへーーーーーーー。
『廻る』
はい!最後まで御閲覧いただき、本当にありがとうございます!
『処す』を執筆させていただきました!彩風と申します。
え?作品がアレなのにあとがきのテンションが高くて驚いてる?
いえいえ、こんな作品だからこそ明るくあとがきを書いているのです!
今回『処す』を執筆させていただきましたが、正直なところ自分の精神状態が心配です。
何故、こんな作品を書いたのか今でもよくわかっていません。
別に作者はメンヘラでもなんでもありません。多分。
ですが、普段書かない内容の作品でとても新鮮でした!
誤字等ありましたら教えていただけると幸いです。
この、『処す』は短編の小説として投稿させていただきましたが、場合によっては続きのようなものを作ることも考えています。
まぁ、続きとはいっても、同じ類の作品というだけで『処す』とは何の関係もないものですが。
因みに、作品中に出てくる《彼ら》ですが……文中にはほとんど情報が書かれていません。名前や年齢。性別すらも確かではないのです。
皆さんの想像力に期待してこのようにさせていただきました。
また、時系列や表現などはわざと狂わせた部分があります。大変意味不明瞭ですが、そこも寛大なこころでお許しいただければ幸いです。
もし感想がありましたら是非是非お願いします!
お粗末な作品ではございましたが、閲覧ありがとうございました。
それでは、また会える日があることを願っております………。
この作品はフィクションであり、実際の人物・団体などとは一切関係ありません。