アリスのおもちゃ箱   作:ノスタルジー

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ノスタルジーです。
もし知っている方がいらっしゃればうれしい。知らない方は初めまして。

またなんか書いてみたんですが、3作同時に更新できんのかな?
あんまり何も考えていないのですが、週一ペースはキープしていきたいと思います。

できる限り。


護衛団入団

 「あらあら?どうしたんです?」

 清らかな声。そのなかには人を嘲け笑う歪んだ音が含まれている。

 その発信源は少女。長い金髪に黒いゴシックドレス。整った笑顔。

 「はぁ…はぁ…テメェ…何をしやがった」

 男が尋ねる。男の周りには数人の男が、死んでいた。

 「さぁ?」

 くすくす。少女が口に手を当て、笑う。

 「く、くそがぁ!!何なんだよ!?テメェは!」

 「あなた方が誘ってきたのに、ひどい言われようです。興奮しすぎじゃないですか?」

 「うるせぇ!こいつらに何したんだよ!?」

 男は地面に横たわる仲間たちを指し示した。

 「あぁ分かりました。そこで寝ているあなたのお友達は興奮しすぎて、鼻血を出して出血多量で死んじゃったんじゃないですか?ご存じの通り、私かわいいですし。あれあれ?でも地面には血が全くないですね?う~ん…じゃあ吸血鬼かな。吸血鬼がみなさんの血を吸った。それで皆死んじゃった。どうです?この名推理」

少女はペラペラと饒舌に話し出した。楽しげに話す少女だが、その顔にはいまだに嘲笑が見え隠れしている。

 「…ふ、ふざけんなァ!!」

 男が声を張り上げ、自分より一回り小さな少女に向かっていく。

 いつの間にか男の手にはナイフがあった。

 「きゃー怖いー」

 話声が少女にとっては悲鳴なのか。全く恐怖心が感じられない。

 

 男が少女との距離を詰める。

 「『美しい少女が悲鳴を上げると、それはそれは恐ろしい怪物が現れました』」

 今までとは打って変わった様子で、少女は朗々と語りだす。

 男の目に巨大な、緑色をした醜悪な怪物が映った。太い腕、大きな体、汚い顔、手には棍棒。

 「『優しい怪物は人を殺して、どんどん醜くなっていきます。ですが―』」

 「な…な、なんだよ…何なんだよ!?」

 男が喚く。

 「『―醜い怪物は美しい少女のために』」

 少女が紡ぐ。

 「『また殺しました』」

 最期に男は怪物が大きな腕を振り上げ、自分を潰そうとその腕を勢いよく下ろしてきたのを見た。

 

 

 「くすくす…あぁつまらなかった。お祭りの方がまだましですね」

 少女は町の大通りに戻り、人ごみの中をかき分けて行った。

 祭りの煌びやかな光は少女の心には何の影響も及ぼさず。

 「帰ろう」

 少女は真っ直ぐに宿泊していたホテルへ帰っていった。

 少女の黒いドレスが光を飲み込み、金の髪が光を弾いた。

 「はぁ…早く来ないかなぁ…ゴン・フリークス君」

 少女の艶のある溜息が喧噪のなかに消えた。

 

 

 

 

 「どうしようかしら…?」

 少女の悩みは自身の目的に関することだった。少女の滞在するヨークシンでは毎年9月に多数のオークションが開催される。誰もが参加できるオープンなものもあれば、マフィアやギャングなど裏の人間しか知らないような黒いものもある。

 少女の目的はその裏のオークションに出品されるという一品に関係すること。その一品は「グリード・アイランド」―最高ランクのハンター、ジン・フリークスとその仲間たちが作り上げた、ゲームだ。

 「奪うのが手っ取り早いのだけれど…やっぱりやりすぎかしら?」

 物騒なことを言いながらも、少女は自分の使命を思い出し、踏みとどまった。

 「でも、もう早く終わらせたいし…うーん」

 数十秒の思考の後。ちょっと動くくらいならいいでしょう、と何の根拠もなく自信を納得させた。

 「じゃあ、コネを手に入れておきましょうか」

 裏社会で大事な、大事なコネ。それを手に入れておけば、後に役に立つときがくるだろう。少女は自身の目的のためにそこに躊躇なく飛び込むことを決めた。

 

 

 

 次の日。少女はある場所に来ていた。そこは少女のような華やかな人間が来るような場所ではない。いわゆるスラム街といった風な場所だった。少女に浴びせらせる視線には金欲や性欲が隠す気もなくにじみ出ている。しかし、少女はそんなどす黒い感情にも動じず、スタスタと道のど真ん中を歩いていく。

 その足がとある雑居ビルの前で止まった。少女は迷わず中に足を踏み入れ、コツコツと音を立てて、コンクリートの階段を上がっていく。

 目的の階まで来た少女は一つのドアを開け、中に入っていった。

 

 「ノストラードファミリーの護衛の雇用面接に参加したいのですが」

 開口一番。気ダル気に机に座る女性に向かって、そう告げた少女。

 「あんた…聞く必要もなさそうね」

 「何のことでしょう?」

 にこやかに尋ねる少女。

 「……明後日の午後1時にこの場所へ行きなさい」

 女は地図を少女に投げて渡した。何故少女はノストラードファミリーが護衛を募集していることを知っていたのかという疑問が女にはあったが、自分より年下であろう少女が発する圧迫感を感じ、その疑問が口から出そうになるのを抑え込んだのだった。

 「ありがとうございます」

 乱暴に投げられたにも関わらず、少女は笑ってそれを受け取るとすぐさま踵を返し、部屋を後にした。

 「……何にも聞くなってことね…とんだ怪物よ…」

 女は冷や汗を流し、少女と二度と会わないことを心の中で願った。

 

 

 その二日後。大きな屋敷の一室。高級そうな調度品が並ぶ部屋に少女はいた。少女は値踏みするように周りにいた男女をジロジロと見るが、皆はそれ気づいているにも関わらず、何も言わない。ただその翡翠のような綺麗な目に晒されるのをよしとしている。

 しばらくすると一人の中性的な容姿の青年が部屋に入ってきた。

あの人はすごく面白そうですね。少女はその青年を見て、そう思った。

少女がじっと青年を見ているとその視線に気づいた青年が少女と目を合わせた。すると青年の目には驚きと恐れが見て取れた。

 少女は青年に話しかけようと席を立とうとしたが、屋敷の執事が現れ、全員が揃ったという旨を告げ、手にしたリモコンを操作し始める。

 部屋に飾られた絵がモニターとなり、一人の男を映し出した。出花のくじかれた少女は少し不機嫌になりながらも、しぶしぶ腰をソファーに下ろしたまま。

 

 「このリストの中から一つ、どれでもいいから探して来てくれ」

 モニターに映る男がそう言うと執事が人数分のデータカードを取り出し、皆に配った。少女もそれを受け取り、見てみると珍しい品々が映し出された。

 「ふうん…なるほど…ですが、こんな面倒なことをするのは嫌なので――」

 ――ここにいる全員を殺したら合格にしてくれませんか?

 ふいに少女がそう言うと参加者たちは皆、自身の出来る限り出せる最高の反応と動きで少女から距離を取って構えた。

 「くすくす…冗談ですよ。皆さん、リアクションがお上手ですね。コメディアンにでも転職するのはいかがですか?」

 皆が恐ろしいものを見たかのような顔で少女を見るなか、視線を集めた少女は面白いおもちゃを見つけた子供のように笑うだけだった。

 

 「条件の変更はない。嫌ならとっとと帰ることだな、お嬢さん」

 モニターの男が言う。少女と同じ部屋にいる者たちは、その言葉に対して少女がどういう反応を見せるか、じっと固唾を飲んで見ていた。

 「あらあら、それは残念です。では、仕方ありませんから何か探してくることにしますね」

 にこやかに答える少女を見て、参加者たちは安堵の溜息を吐いた。

 「もう一度言う。そのリストの中のものを一つだけでいい、探し出して来てくれ。そうすれば正式に採用し、護衛と収集活動を任せよう」

 それをかき消すようにモニターの男が話を続けた。

 「では、検討を祈る」

 男がその言葉を言った後、モニターは再び絵を映し出した。

 

 男の説明が終わった後、参加者たちはさっそく品々を探しに行こうと、部屋から廊下に通じるドアに向かった。

 そんななか青年はデータベースの中のある一品を見て、動きを止めていた。少女は何が青年の目に留まったのか気になったため、先ほどのリベンジも合わせて声を掛けようとした。

 しかし、再び違う人間の声によって妨げられた。

 「ん?開かねーぞ」

 ドアに手を掛けた一人の男が言った。ガチャガチャとドアノブを回そうとする音が鳴っているが、ドアは一向に開かない。

 「一つ言い忘れたが、強いことが雇用の最低条件だ。その館から無事出られるくらい、最低な」

 モニターに男の姿が再び映り、そう言うと同時に部屋にあったドアが全て勢いよく開かれた。

 参加者たちはドアから素早く距離を取り、部屋の中央に集結した。少女はその中心でサプライズパーティが開かれたかのようにニコニコと笑っている。

 ドアから侵入してきたのは11人の黒装束の人間。その姿を目にすると、少女は笑顔を固まらせ、うんざりした顔に張り替えた。

 これは面倒ですね、と心の中で愚痴を言い、辺りを見回す。すでに他の参加者たちが黒装束と戦闘を開始していた。少女の目には放たれた銃弾を指に巻いた鎖で弾いた青年の姿が映った。少女はその光景を見て、小さく笑いながら迫りくる剣を華麗に回避してみせた。

 黒装束の攻撃は参加者たちに掠ることもなく、参加者たちは黒装束を殴り飛ばし、蹴り飛ばしていた。少女はただ回避に専念し、いつ終わるのでしょうかという一人ずれた疑問を胸に抱いていた。

 

 その少女の疑問に答えを出したのは、少女の気にする青年だった。

「奴らを止めろ。三秒待つ。1…2…」

 「オーケー、わかったよ!」

 青年が一人の男を捕え、ナイフを向けた。

 聞けば男は参加者の一人でありながら、もともとファミリーの護衛として雇われていたハンターで、試験官のような立場なのだと言う。青年は見事それを見破り、男を捕えてみせたのだった。

 それを見た少女はパチパチと拍手をし、青年に賞賛を送った。

 「すばらしい推理ですね。私は全くわかりませんでしたよ」

 考える気が更々なかったにも関わらず、少女は言った。

 「ふん…喜ぶのはまだ早いぜ?あと一人、潜入者がいるからな」

 捕まったトチーノという男が嘲るようにそう言うと、青年は薬指に巻いた重りのついた鎖を垂らし、潜入者を見つけるためのダウジングを開始した。

 参加者一人一人の前で鎖の反応を見ていく青年。少女にもその時が訪れたが、鎖は何の反応も示さず。その鎖が反応を示し、ゆらゆらと左右に揺れたのは、一人の若い男の前だった。

 「いたな…お前が潜入者だ」

 

 その後、潜入者と疑われた男は、確かに世間的に見れば論理性のかけらもないダウジングや心音で疑いを確かなものにされていった。

 

 「我が問いに 空言人が 焼かれ死ぬ」

 一人の男が能力を使って、真偽を確かめると言いだした。男曰く、「嘘吐きは 灼熱地獄に 落ちるわよ」とのこと。

 先ほどの青年と同じように参加者一人一人に確認していく。

 「あんたは、潜入者か?」

 そう聞かれた少女はここでYesと答えたら本当に焼け死ぬのだろうか、と思ったがそれ以上に気になることがあった。

 「質問なんですが、嘘を吐かなければいいということは、何も答えなかったら燃えないのでしょうか?」

 手を上げて、男にそう尋ねた少女。

 「ぬ?それは…そうだな…」

 「ではでは、黙秘権を行使します」

 少女は口の前で手をクロスさせ、バツを作ってそう言い放つ。

 「でもそれじゃあ、あなた疑われるわよ?」

 セクシーな容姿の女が少女に忠告をした。しかし、少女はそれを聞くと笑みを深くするだけだった。

 「はぁ…わかったわ」

 少女が場を自分勝手に面白おかしく混乱させようとしているのは誰の目にも明らかだった。女もそれに気づいたためか、潜入者と思しき男に近づき、ふいに口づけをした。

 「きゃー」

 年頃の少女らしい黄色い悲鳴を上げる少女。女の能力は「キスした者を自身の支配下におく」というものらしい。キスをされた男は犬のように這いつくばり、女の質問に答えていく。

 「くすくす…惨めですねー」

 女の「お前の能力は?」という問いにもハァハァと息を荒くしながらも、しっかりと答えた男。

 念能力者にとって自身の能力の子細が知られることは、死ぬに等しい最悪。だが、この惨めな男は仲間を含めて6人の人間にそれを告白した。

 少女はそれを聞き、楽しそうに笑うのみだった。

 

 

 

 潜入者を除く参加者たちが、傾いてきた日の光を体に浴びながら屋敷の庭を歩く。これから彼らはリストの中の品を探しに、行動を開始するのであろう。

 「俺は芭蕉。さっき見た通り、具現化系の能力者だ」

 俳句を現象化する能力。どうにも使い勝手が悪そうな能力ですね、と男には言えない感想を少女は抱いた。

 「私はヴェーゼ」

 「センリツよ」

 セクシーな女と変わった容姿の小さな女が名乗った。

 「心音を聞き分けるようだが、何系なんだ?あんた」

 芭蕉がセンリツに尋ねる。念能力の系統は6種類。心音を聞き分けることができる系統なんて強化系しかないと思いますけど、と少女は言おうとしたが―

 「さぁ?そのうちわかるでしょう…」

 とセンリツが言ったことで言うのをやめた。

 「あなたは?」

 青年にセンリツが尋ねた。少女は聞き耳をしっかりと立てて、それを聞こうとした。しかし、青年は黙ったままで答えようとはしない。

 「断る。まだ仲間になると決まったわけじゃない」

 センリツに二度目に名を尋ねられても青年はそっけなく、そう返すのみ。少女も青年の名を知りたかったが、青年はこの採用試験を確実にクリアしてくるであろうという確信があった。そのため青年の言葉を「仲間になれば教えてくれる」と解釈し、その欲求を押さえつけたのだった。

 「…で、嬢ちゃんは?」

 最後に芭蕉が少女に尋ねた。

 「私ですか?私は、アリスと申します。これからよろしくお願いしますね、皆さん」

 丁寧に少女は答えた。その返答はまた全員が会うことになるということを予期しているかのような口ぶりだった。

 

 

 

 

 

 

 「オーケー!五人とも正式に採用だ」

 再び五人が集い、モニターの男と実際に対面した。皆がリストに書かれた品物を所持。もちろん少女もその中から一つを手に入れていた。

 「俺が護衛団リーダー、ダルツォルネだ。よろしく」

 モニターの男が名乗る。全く親しみの感じない挨拶をして、ダルツォルネはさっそく任務を少女らに言い渡した。その内容はボスの護衛。ヨークシンのホテルまでボスを送り届けるという単純な護衛任務だ。

 「何か質問は?」

 ダルツォルネがそう聞くと、青年が尋ねた。

 「ボスを狙う人物に心当たりは?」

 「答える価値もない愚問だな」

 少女はコクコクと頭を縦に動かし、賛成の意を示した。

 「どういう意味だ?」

 「アリスとか言ったな、お嬢ちゃん。この馬鹿に教えてやってくれ」

 「確かに襲撃者の情報は大事ですが、情報が錯綜する裏社会で未確定な情報や嘘の情報に流され護衛対象を危険に晒す、というのはよくある話です。ですので、リーダーさんは、どんな相手がいつ襲ってきても大丈夫なように護衛をしろ、と仰りたいのでは?」

 アリスがそう言うと、ダルツォルネは少し満足げな表情をした後、青年に向き直った。

 「その通りだ。俺たちは誰が、いつ、どこから、どんな方法で襲い掛かってこようともボスを守る。お前たちはそれだけを頭に入れておけばいい!」

 青年に迫力ある口調でそう告げたダルツォルネは、ボスに面会するからついて来い、と言って五人を部屋の外に連れ出した。

 

 

 「よろしくね!新入りさんたち!」

 マフィアのボスという人物は、アリスと同じくらいの年齢の少女だった。

 「はい。よろしくお願いしますね、ボスさん」

 アリスは他の四人が予想外の光景に驚き、固まっているのをよそに丁寧にあいさつを返した。

 「うわ~可愛い子ね!ねぇねぇダルツォルネ!この子は私のボディーガードにして!!」

 「お嬢様…護衛のプランというものがありますので…それは…」

 「いいじゃない!いっつも警護はおじさんばっかで花がないんだもん!!」

 「侍女たちがいるではないですか…」

 少女とダルツォルネが言い争うなか、話題の中心である少女はただただ、楽しげに笑っていた。

 

 

 

 「ねぇアリスは強いの?」

 「さぁ?どうでしょうか?」

 「何それー!またそうやってはぐらかすー!」

 「くすくす…いつか私の強さをお見せする時が来るかもしれませんから、その時まで秘密です」

 「むぅ~」

 ヨークシンへ向かう飛行船の中、その一室。二人の少女は楽しげに話をしていた。一人は金髪で黒いゴシックドレスを着た不思議な雰囲気の少女。一人はマフィアのボスとは思えない明るい性格の少女。

 「そうだ!アリス!占ってあげよっか?」

 「占い、ですか?」

 唐突にボス、ネオンが提案する。

 「うん!私の占いよく当たるって評判なの!いつもはめんどくさいからやらないんだけど、アリスは特別ね!」

 「なるほど…私も女の子ですし、占いは大好きです。お願いしていいですか?」

 「オッケー!決まり!じゃあさっそくこの紙に名前と生年月日と血液型を書いてね!」

 そう言ってネオンは侍女から受け取った紙をアリスに手渡した。アリスはそれを受け取ったあと、なんとも言えない表情をした。

 「ごめんなさい、ネオン様。私、自分の生年月日も血液型もわからないのです…」

 「えっ?そう…なの?えっと、なんかごめん…」

 「ふふ、いいんです。気にしてませんから。それよりトランプでもしませんか?私、大好きなんですよ、トランプ」

 暗くなりかけた雰囲気を明るくしようと努めるアリス。どこからかトランプを取り出し、ネオンを誘った。

 「うん、うん!やろっか!」

 ネオンも持ち前の明るさを少し嘘を混ぜながらも取戻し、侍女二人を混ぜて、彼女たちはトランプに興じるのだった。

 なお、戦績はどんなゲームでもアリスの勝ちだった。

 

 

 「なぁ、どう思うよ?」

 少女たちが楽しく遊びに興じる部屋の外。廊下で警護をしていた芭蕉は仲間に尋ねた。

 「それは…どっちについてかしら?」

 扉を挟み、芭蕉の隣に立つヴェーゼが問いを返す。

 「そりゃあ…どっちもだ」

 「ボスの方は予想外ね…どんな強面が出て来るかと思いきや、可愛らしいお嬢さんなんだもの。あの子の方は…味方なら心強いわね…」

 「全く同感だな…」

 念を会得した者ならアリスの強さはわかる。芭蕉たちでは束になってかかっても、敵わない。それは全員が理解していた。だからこそ、ダルツォルネは一番重要なポジションにアリスを置いたのだ。アリスが信用できるかどうかがわからなかったため、かなり渋っていたが。アリスをどこに置くにせよ、アリスが暴れだせばネオンを守れないことがわかっているのだろう。ダルツォルネは爆弾を抱えたような気でハラハラしていた。

 芭蕉とヴェーゼはそれ以来、会話をやめて警護に専念した。

 センリツと青年―クラピカはずっと黙っていた。

 

 次の日の朝。飛行艇はヨークシン近郊の飛行場に無事、到着した。

 

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