アリスのおもちゃ箱   作:ノスタルジー

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こう思うのは私だけではないと思いますが、旅団の戦闘員の能力って弱くね?


正しくない正直者

 「アリス!アリス!」

 ネオンが困った様子でアリスを呼びつける。

 「はいはい。アリスですよ。どうしました?ネオン様」

 アリスはニコニコと笑いながらネオンのもとに近寄っていく。ネオンの部屋には二人の少女とネオン付きの侍女が二人。

 「あのなぞなぞわかんないよ~答え教えて~」

 ネオンの言う「あのなぞなぞ」とはアリスがネオンの気をオークションから逸らすために作ったなぞなぞである。アリスの性格からして、正解があるのかどうかも疑わしいとクラピカたちなら思うだろうなぞなぞ。それをネオンは必死に考えていたようだ。

 「くすくす、答えを言ってはつまらないでしょう?ネオン様」

 「ええ~けどわかんないんだもん!じゃあヒント!ヒント頂戴!!」

 「ヒントですか…?わかりました。お教えしましょう。そうですね…ヒントは、同じだけど違う、です」

 「同じだけど違う?」

 「ええ」

 「う~ん…同じ…違う」

 ネオンは形のいい眉をハの字に曲げ、再びうんうんと唸りだした。アリスはそれを見て、愉快そうに笑っている。

 アリスを除く護衛団の面々はピリピリとした空気の中で忙しそうに動いている。その中でクラピカは大男―ウボォーギンを捕えるために動いているらしく、アリスにはネオンの子守りという重要任務が課せられていた。

 

 彼女にとっては重要人物の警護が大した仕事ではないのか、ネオンを視界に入れながら、アリスはカチカチと携帯を操作して「ゴン・フリークスの情報」を集めていた。

 「あら?」

 そんななか、アリスは気になるものを見つけた。

 「キルア・ゾルディック……」

 暗殺一家ゾルディック家。アリスが、本名でしょうか、と思ったのも当然。ゾルディックの名を語る奴はそうそういまい。

 興味を持ったアリスが情報提供者キルア・ゾルディックの流す情報を見てみれば、そこには――

 「ふふ」

 ――ヨークシンの街で取ったと思われる、ゴン・フリークスの写真が数枚あった。

 

 

 

 「――そうか。大体のことはわかった」

 翌日の朝。護衛団の面々は今までのことと現在の状況について、ヨークシンに到着したばかりのライト=ノストラードに報告をしていた。

 部屋には生き残った護衛団たちとノストラード親子。ネオンは椅子の上に体育座り、頬を膨らませて不満を精一杯アピールしている。

 「今後のことだが、まず娘は家へ帰す。それでいいね?ネオン」

 「……だって仕方ないじゃん」

 ヨークシンで行われる地下競売の競売品が全て盗まれ、それが中止になったとネオンには嘘を言った。ネオンは不満ながらも仕方ないというスタンスで渋々それを聞き入れたようだ。

 「センリツとアリスと言ったかな?今すぐネオンと侍女を連れて屋敷まで戻ってくれ」

 護衛団のうちの女性二名にそう命じたライト。性別のこともあれば、共に新人でハンターサイトにも名前が載っていないということも考慮した上だろう。

 

 「待ってください」

 その言葉に対し、反応を示したのはアリス。

 「私はここに残りたいのですが」

 そう自身の希望を告げた。そもそも何故アリスがそんなことを言い出したかと言えば、理由は簡単、アリスの一番の目的はヨークシンにいるゴン・フリークスとグリード・アイランドだからだ。屋敷に戻ってはそれらから離れてしまう。仕事より私情を優先させただけ。

 「何故だ?」

 「旅団を捕えることができるのはクラピカさんか私だけだと思いますが?」

 もちろんアリスはそんなことを伝えるつもりなど更々ない。ノストラード組を使って、というよりネオンを使ってグリード・アイランドを手に入れようかとも考えたが、彼らの資金的には難しそうだし、幻影旅団のこれから動きによっては全てのオークションが中止に追い込まれる可能性もあるから自分も動いておこうかと思っただけだ。

 アリスの言葉を聞いてライトはチラッとクラピカの方を見た。視線を受けたクラピカはアリスの言葉を肯定するように頷く。

 「……わかった。では、センリツと芭蕉でネオンの護衛を。ネオンは部屋に戻って支度をしなさい」

 「はーい」

 その言葉と共にネオンは部屋を出て、自室に向かった。アリスはその姿を見送り、満足気に笑った。

 

 「オークションは今夜から再開されるそうだ」

 バタンという扉が閉まる音が部屋に響いてから数秒後。ライトが口を開いた。

 幻影旅団の手に渡った競売品。それをいまだ取り戻していないのにも関わらず、コミュニティはそう決定した。マフィアとして面子を潰されたまま黙ってはいられないということだろう。コミュニティは盗まれた競売品を取り戻すために、プロの殺し屋たちに幻影旅団の抹殺を依頼した。

 「これはコミュニティに名を売るチャンスだ。――クラピカ、そしてアリス、お前たちに殺し屋のチームに参加してもらいたい」

 「……私たちがですか?」

 「ああ。お前には団員をサシで始末したという実績がある。……アリスはそのお前が腕前を認めるほどなのだろう?」

 ライトは本当はクラピカだけを行かせたいのだろう。アリスの強さに関して、疑問を抱いているようだ。それに先ほどのアリスのセリフ。コミュニティの動きを知っていたかのような口ぶり。ライトが一種の不信感を抱いても不思議ではない。ただ、補足しておけば、アリスはコミュニティの動向など知らなかったし、知る気もなかった。あたかも「わかってますよ」という空気を出して喋っただけである。

 ライトの胡乱な視線を受けても、アリスはニコッと笑ってライトを見つめ返すのみ。そうすると逆にライトが視線を外し、戸惑った様子をほんの少しだけ表に出す。

 「くすくす…私は構いません」

 「…私も、参加します」

 そうして、アリスとクラピカが旅団暗殺チームへの参加が決定し、ノストラード組は動き出したのだった。

 

 

 「アリス」

 一度解散をした面々。センリツと芭蕉はネオンの部屋に向かい、ライトはクラピカとアリスを暗殺チームに推薦するためコミュニティに連絡を取っていた。スクワラとリンセンはライトに付き従い、部屋の外へ。

 「はい?何でしょうか?」

 部屋で二人っきりとなったアリスとクラピカ。アリスはクラピカに興味を持っていたために自分から話しかけようかと思っていた矢先、クラピカの方からアリスに話しかけてきたのだった。

 「旅団は私一人でやる。邪魔はするな」

 そう簡潔に告げたクラピカ。同時にアリスに有無を言わせないようプレッシャーをかける。

 「ええ、ええ。わかりました。私は旅団には関わりません」

 その圧力を受けてもニコニコと笑って答えるアリス。クラピカはその態度にあっけにとられ、圧を緩める。

 「ですが、自衛くらいはしますよ?まさかそれも禁止なんて言わないですよね?」

 「あ、ああ。もちろんだ」

 「ふふ」

 おどけるアリスに毒気を抜かれたクラピカ。

 「……お前は一体何が目的なんだ?」

 不審の塊のようなアリスにクラピカが尋ねた。先ほどライトには旅団を捕まえる気があるというようなことを言ったかと思えば、クラピカには旅団とは関わらないと言う。クラピカでなくとも不審に思うのは当然というものだろう。

 「目的ですか?そうですね……探し物を探している、というのはどうでしょうか?」

 クラピカにはその言葉が本気か嘘か全くわからなかった。ふざけるな、と怒鳴りたかったが、そんなことをしたところでこの少女の顔に張り付く笑顔は取れないだろうと思い、クラピカは黙るのだった。

 

 

 

 「あいてはあの旅団だぞ?単独でやるにはヤバい相手だ」

 「ああ、最低限の協力は必要だと思う」

 ヨークシンのとあるビル。そこの一室に集ったのはその道のプロたち。暗殺者の集団だ。

その中には、アリスとクラピカの姿も見える。計十人。それが幻影旅団暗殺に集められた人間の数だった。

 現在。彼らが議論しているのは、旅団に対して単独で攻めるかチームで攻めるかということ。暗殺一家ゾルディック家のゼノ・ゾルディックとシルバ・ゾルディックを筆頭にした四人は動きづらくなる等の理由で、単独、自由行動を推している。その他の六人のうち四人は暗殺の万全を期すためにチームでの行動を。残りの二人、アリスとクラピカは何も言わずただただ黙って様子を窺っている。

 

 「あんたらはどう思う?」

 単独行動派の一人が尋ねた。もちろんアリスとクラピカにだ。

 「拙い連携は混乱を招くだけだ」

 クラピカは単独行動を推した。その後、唯一発言をしていなかったアリスに全員の視線が向かう。

 「ふむふむ…今は五対四ですか…じゃあ私が四の方に入れば五対五ですね。そうなったらどうします?殺し屋らしく殺し合いでもして決めますか?」

 ニコニコと物騒なことを口走るアリス。明らかにふざけている。メンバーの中にはその言葉にイラつきを覚えた者もいるようだ。キツイ視線が数個、アリスに向けられた。

 「くすくす…そもそも単独で殺せないと思ったのなら、何故この仕事を受けたんです?周りの人間が助けてくれるとでも思いましたか?もしそうなら随分と楽な仕事なのですね、殺し屋というのは」

 「くくく…嬢ちゃんの言うことはもっともだな。怖気づいたんなら帰ればいい」

 「自分の腕に自信のない奴もな」

 アリスの言葉とそれに賛同した単独行動派二人の言葉。チームでの行動を推していたメンバーはそれを聞いてプロとしてのプライドが刺激でもされたのか、反対意見は出なかった。

 「六対四か、決まりだな」

 一人の男のその言葉で暗殺者たちの会議は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 ネオンが姿を消した。クラピカにネオンの警護を担当していたセンリツからそう告げられた。オークション会場であるセメタリービルに向かう車内では、取り乱したライトが検問中の警官たちにネオンを保護するようにコミュニティを通し、通達を下した。

 

 「……どうやらお嬢さんはすでにセメタリービルの中にいますね」

 クラピカの念を使ったダウジングにより、ネオンの居場所が判明。すぐにセメタリービルに向かう車。その助手席に座るアリスは一人、考え事に没頭していた。

 アリスの頭の中を覗いてみれば、グリード・アイランドとゴン・フリークスについてしか存在しない。ライトが聞けば怒鳴り散らすような内容だが、読心能力者などではないライトにはアリスの頭の中など全く想像もつかないのだった。

 

 

 「ノストラード組のノストラードだ!娘が来ているはずなんだ!確認しろ!!」

 セメタリービルに到着するやいなや、ライトは入口を警護していたコミュニティの組員に激しい剣幕で尋ねた。答えを聞くとすぐさま中に入り、ネオンがいる501号室に向かった。クラピカもそれに続き、ビルの中を走る。だが、そこには彼らと一緒にいるはずのアリスの姿はなかった。

 「あまり得るものはなかったですね…自分で動くことにしましょうか」

 失望を含む声色でそう言いながら、アリスはヨークシンの闇に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 「あん?何だ、テメーは?」

 「誰でもいいね。敵は殺す」

 「あらあら?間違えました」

 順に団員フィンクス、団員フェイタン、アリスのセリフである。アリスがヨークシンの街を歩いていると、爆音や悲鳴が聞こえた。アリスは旅団が暴れているのだろうと予想し、その発信源、一番近くの場所に向かったのだ。

 するとそこにいたのは長身で強面の男―フィンクスと小柄でバンダナをマスク替わりにした男―フェイタン。共に旅団の中では好戦的な部類に入る戦闘員だ。

 「あ?間違えた、だ?」

 アリスの発言に疑問を感じた様子のフィンクス。

 「へぇ…俺たちのこと知ってるみたいだな」

 フィンクスはアリスの言葉を「旅団の中で狙ってる奴がいて、自分たちはそいつではなかった」という意味にとったようだ。

 「鎖野郎かその関係者かもしれないね」

 フェイタンも同じ結論を頭の中で下したよう。フィンクスは好戦的な笑みを携え、フェイタンは身に纏う殺気を強くする。

 「今まで生きてきたなかで、鎖野郎と呼ばれた覚えはないのですが…そもそも野郎ではありませんし。ああ、けど、鎖を操る能力者は知っていますよ?」

 「ほう…」

 「お教えするんで、見逃がしてもらえませんか?」

 「その必要はないね。捕まえて私が聞いてやるよ」

 「そういうこった。まぁちっと一緒に来てくれや、嬢ちゃん」

 「困りました…どうしましょうか…」

 警戒をしながらじりじりと間合いを詰めるフィンクスとフェイタン。アリスは心底困ったという風に額に手を当て、首を振る。どうも本気で情報を渡せば見逃してもらえると思っていたようだ。

 「仕方ありませんね…気は進みませんが、作戦変更です」

 そう言って、アリスは一冊の本を取り出した。

 

 

 

 フィンクスとフェイタンはアリスの本を目に収め、警戒度を上げる。アリスの取り出した本が念能力の産物ではないのは、二人にはすぐにわかった。

 「くすくす…見てください、この本。作者名はAliceと書いてあるでしょう?あ、申し遅れましたが、私はアリスと言います。この本の作者です」

 茶色いハードカバーの本を見せびらかすようにひらひらと振るアリス。タイトルは「美少女と怪物」。何のひねりもない、つまらなそうなタイトルに二人は聞き覚えはなかった。

 しかし、同時にさらに警戒度を上げる。その行動がアリスの念能力の発動条件であろうという当たりをつけて、フェイタンがアリスとの間合いを急速に詰めた。

 「きゃー」

 明らかに適当な悲鳴を上げて、しっかりとフェイタンの手刀をガードするアリス。その視界にはフィンクスが右腕をぐるぐると回しているのが見えた。

 

 片手で本を開き、片手でフェイタンの攻撃をガードするアリス。しかし、すべてをガードしきれなかったのだろう、着ていた黒いゴシックドレスがところどころ破けている。にも関わらず、アリスは朗々とした口調で何かを話し始めた。

 「『あるところに美しい少女がいました。その少女を愛する醜い怪物がいました。』」

 すると、アリスの背後から大きな真っ黒の怪物がどこからともなく現れたのをフィンクスとフェイタンは確認した。同時にフィンクスが怪物に接近し、入れ替わるようにフェイタンが距離を取る。

 「『怪物の体は固く、どんな攻撃も効きません。』」

 アリスを守ろうと一歩踏み出した怪物にフィンクスは右腕を振るった。

 ドオォォォォォン。フィンクスは自身の目の前で生じた爆音を聞き、怪物の右腕が自分の右腕をしっかりと受け止めているのを驚いた様子で見た。

 「『怪物の力は強く、どんな岩をも砕きます。』」

 怪物が空いた左腕を振るいフィンクスが軽々と吹き飛ばされたのを視界に入れながら、フェイタンはアリスの朗読を止めようと猛スピードでアリスに接近。

 しかし、怪物がアリスの前に立ちふさがっているため迂闊には近づけない。

 

 

 アリスの能力。フィンクスとフェイタンは当たりをつけた。「自身が書いた本を読むことでその内容を具現化する能力」だと。彼らが考えた対策はただ一つ、読まれる前に殺す。

 森の中から戻ってきたフィンクスとフェイタンは合流し、言葉を発することなく、その考えを共有。

 アリスは自分を睨む二者の視線を感じながらも笑顔を絶やさない。それがまた二人を怒らせる。

 「具現化系だろ?嬢ちゃん」

 フィンクスがアリスに話しかける。能力を暴露することで揺さぶりをかけようとしているのだ。

 「さぁ?どうでしょうか?操作系かも特質系かもしれませんよ?」

 「ほざけ。嬢ちゃんの能力は自分が書いた本を読むことで書かれたことを具現化する能力だろ?えらくファンシーなこって」

 「くすくす…ファンシーなのはあなたの頭の中だと思いますが」

 「あ?」

 「あなたの能力は腕を回すことでパワーアップする能力でしょう?子供のころは扇風機にでもなるのが夢だったんですか?」

 「―――殺す」

 挑発するつもりが逆に挑発されたフィンクスは見事にそれに乗ってしまう。

 「俺がやる」

 お前は下がっていろとその目が言う。フェイタンは熱くなった相棒を止めることなく、下がった。熱くなったバカには何を言っても通じないと長年の付き合いでわかっているのだ。

 

 

 ぐるぐるぐるぐる。フィンクスが腕を回す。

 アリスはそれを見て、何をするわけでもなく笑っている。その笑顔がまたフィンクスを苛立たせる。

 十分に腕を回し、力を溜めたフィンクスは熱くなった頭を冷静に働かせ、考える。具現化系の能力は「有り得ないことは具現化できない」という絶対的なルールがある。それを考えると先ほどアリスが言った「怪物にはどんな攻撃も効かない」というのは具現化不可能だ。

 あの怪物は朗読によって生まれた念獣。奴はただ固いだけだ――「怪物は固い」ということは具現化可能なのだから。ただ、その固さはアリスの念能力者としての腕次第。あの怪物を倒せないということは念能力者として自身がアリスに劣っているということ。それはフィンクスのプライドが許せなかった。

 「殺す」

 アリスに言ったか自身に告げたか。それはフィンクスにしかわからないこと。

 フィンクスは怪物にその腕を振るった。

 




原作のセリフをどれだけ使っていいのかわからなかったので、ところどころ話が飛び飛びになっている部分があります。
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