Don't be saying   作:ショート

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本当すいませんでした!
週一投稿が聞いて呆れますね…。
テスト期間だったんです!
サボりじゃないんですよ!
来週からは頑張りますから、勘弁してください。



五話:直人

01

「御早う♡」

 

耳元で、囁くような声を聞いた。

誰も居なかった筈の部屋で、そんな声を聞いたならば普通は鳥肌ものだろうが、俺は特になんの感想も持たず目を覚ました。

この部屋に誰か人が居たとしても、別段不思議でもないからだ。

俺の幼馴染みである碧海が、毎朝飽きもせず起こしに来てくれるのだから、それは馴れるだろう。

碧海は今まで(小学生から)毎朝欠かさず起こしに来てくれている。

朝この声が聞こえなかったら、逆に心配になってしまう。「何かあったのか」と。

今日もこの声が聞こえたということはいつも通り、特別なことは何も無かったのだろう。

薄目を開けながら、幸せそうに微笑む碧海を眺め、俺はひとまず安心(?)する。

いくらコイツに酷い目に遭わされていようと、やっぱり心配にはなる。

俺はそこまで薄情じゃないからな。

今日は平日らしく碧海は制服を着ている。

暖かそうな紺色の、学校指定のコートを羽織っている。

ボックスコートだ。

碧海は甲斐甲斐しくも、俺に視線を合わせるべく屈んでいるので見えないけれど、下はスカートに黒タイツだろう。いつも通り。

まあ、俺はコイツの服装に特に興味がある訳では無いので、薄めに開けていた目をゆっくりと閉じた。

おやすみなさい。

 

「御早う。」

 

先程よりも威圧的な声と共に、瞼が強制的に開く。

どうやら碧海の仕業のようだ。

 

「起きなさい。」

 

「おはようそしておやすみ。」

 

碧海の腕を振り払い、瞼を固定していたつっかえを外す。

瞼を閉じ、碧海に背を向ける。

ああ、布団って暖かい――。

 

「って布団に入ってくんな!!」

 

さも当然のように入って来た。

ある意味コイツのメンタルは凄い。

 

「起きないと、お義母さんに『襲われた』って言うから。」

 

「いやーよく寝たわ!」

「うんもうバッチリ目が覚めた!!」

 

俺は勢い良く布団から飛び起きた。

既成事実を作らせる訳にはいかない。

例え嘘でも、法螺でも。

俺はちゃんと納得してコイツと付き合って…その…なに?結婚?……とかまで行きたいし?

ちゃんとコイツを好きになってからでないと、俺は認めないし、コイツを受け入れようとは思わない。

惰性で付き合うなんて、碧海に失礼だし、第一男として最低だろう。

俺は何となくで他人と恋愛する程遊び人じゃない。

ピュアピュアな心を持っているんだ、想像以上に。

面倒な奴、と思う奴もいるかもしれないが仕方が無い。

それが俺なんだから。

だから俺は―――

 

「………何やってんだ。」

 

ふと布団の方を見れば、顔を枕に埋めている碧海が居た。

何やってんだ?ほんとに。

 

「ふふふぉふぁふぇっふぇふぁふぅふぉふぉふぃふふぁふぃっふぇふふふぁん。」

 

「いや分からん。」

 

全然分かんねぇから顔上げろ。

 

ふぁふぁふぁ(だから)――」

 

「顔上げろ!」

 

楽しようとすんな。

 

「だから!」

 

ガバッと上体反らしのように顔を体ごと上げた碧海は、一気に捲し立てた。

 

「冬の汗って夏のよりも臭いって言うじゃん!」

 

「………?」

 

………?

 

「冬の汗って夏のよりも臭いって言うじゃん!」

 

「何で二回言った!?」

 

そしてこのドヤ顔である。

腹立つわぁ。

 

「……お前が変態と言うことが分かったよ。」

 

「今更?」

 

「開き直るな!」

 

「直人と会った時からもう直人フェチさ!」

 

「殴っていい!?」

 

今回ばかりはちょっと堪え切れないかも知れない。

こっちが恥ずかしいっての。

 

「まぁもういいや……。」

「ほら、部屋から出なさい。」

 

部屋つうか布団から出ろ。

 

「?」

「どうして?」

 

「着替えるからだよ。」

 

「?」

「どうして?」

 

「着替えるからだよ!?」

 

「?」

「どうして?」

 

「……………」

 

わざとらしく首を捻る碧海に、俺はいい加減腹が立った。

ので、半分はだけていた布団の端を持って、勢い良く碧海に投げ掛けて、布団で碧海を(くる)

そして押さえたまま、全力のボディプレスをお見舞いした。

 

「ぐぇっ…。」

 

カエルの潰れた時の声のような呻きが、布団越しにくぐもって聞こえた。

ざまぁ。

まあ俺は紳士だから、一回で満足した。

体をなるだけ早く退かして、碧海が布団を剥いでしまわない内に、早く着替える。

男の着替えは、その気になれば十秒だ。

下を脱ぎ、制服ズボンを着て、上のワイシャツに袖を通したところで、碧海が顔を出した。

 

「ちょっ……着替えるの早すぎる…。」

 

「残念そうな顔してんじゃねぇ。」

 

本当呆れた。

俺はボタンを掛けながら溜め息を吐く。

 

「ほら早く布団から出ろ。」

 

「おかしい…!」

「私が起こしに来た筈なのに…。」

「いやでもそれはそれで…。」

 

碧海は俺の台詞を無視して、何やら妄想に耽っている。

多分アイツを見る今の俺の目は、限りなく乾いたものだろう。

俺は面倒になったので、置いて行くことにした。

いつも通り。

ただいつもはすぐ気付いて追いかけてくるのだけど、今回は気付くのが遅れたらしく、暫く一人で登校することになった。

――案外一人は寂しかった。

 

が、合流して数十秒、一人の時間がどれだけ尊いか実感した。

 

02

時は流れて昼休み。

俺はいつも通り、碧海と机合わせで昼飯を食べている。

碧海お手製の弁当だ。

 

「どう?美味しい?」

 

「ああ。この前の生ゴミ味に比べれば、死ぬ程美味い。」

 

生ゴミ味とは、碧海の奴が「私の料理は不味い」と言った時、漏れなく能力が発動してしまって、言葉通り不味くなった時の弁当の(中身の)味である。

確かに生ゴミは不味いが、(なんで知ってるんだ)『不味い料理』から真っ先に生ゴミを連想するコイツの思考は、やっぱり理解出来ない。

不味いと言えば、焦げとか生焼けとか調味料かけ過ぎとかかけなさすぎとか硬すぎるとか柔らか過ぎるとかそういうもんだろう。

――全部俺だ。

 

「うう…。それはだからごめんって…。」

 

「冗談だよ。んな(そんな)に気にすんな。」

 

「うん……。」

 

「ま、俺は料理全然できないから、凄いとは思う。」

 

この卵焼きとか本当凄いもん。

層の厚さが均等だもん。

白と黄色の部分のバランスも良いし、もう芸術だよ。

まあ俺は無慈悲にも食すけれども、芸術品を。

味の濃さも完全に俺好みだし。

次の卵焼きを箸に取り、何気無く側面を眺める。

するとそこには白く「I LOVE YOU」と書かれてあった。

 

「神かお前……!」

「卵の神か……!」

 

器用過ぎるだろ。

 

「ドヤァ……。」

 

「うぜぇ……。」

 

「『これは俺も受けざるを得ない!結婚しよう!』」

 

「とはなりません。」

 

「ちぇっ…。」

 

碧海の神がかり的な才能が垣間見えた時間でした。

因みにあの卵焼きは十分で作ったらしい。

俺は料理が致命的に駄目駄目なので、凄いのか凄いのか分からない。

が、思えば、能力を使えば秒単位で作れる筈なんだけど…。

まあとにかく、相変わらずコイツの才能は凄いなってことで、話を纏めよう。

 

03

今日は以上のこと以外、特別なことは何も無かった。

平凡だった。

しかし、つまらないということは無かった。

日常が平凡でつまらないと、アニメや漫画のフレーズで見たこと、聞いたことはあるけれど、実際はそんなことはない。

少なくとも俺は。

平凡な生活が、全てつまらないなんてことは無いのだ。

全てがいつも通りだったとしても。

――放課後、うちのエロ大臣が体育の石塚に、荷物運びとしてこき使われていること以外、いつも通りだったとしても。

全てがつまらないなんてことは、有り得ないと思う。

 

04

「なあ直人。」

 

次の日の昼休み、いつも通り、机を向かい合わせて飯を食っていると、「エロ本(えろもと)」こと、榎本栄吉(えのもとえいきち)が、思案顔で話し掛けてきた。

ええ、皆さんお察しの通り「エロ大臣」です。

 

「ん?なんだ?」

 

「俺って昨日放課後…何やってたっけ…?」

 

「は?石っちに頭でも打たれたか?」

「お前石っちの荷物運びやってたろ、体育倉庫まで。」

 

俺が石っちと言った途端に、後ろで碧海が噴いた。

 

「んーー…。」

「分からん思い出せん。」

 

本当に分からないようで、不思議そうに首を捻っている。

 

「それ大丈夫…?榎本君…。」

 

若干呆れ気味で、碧海が言う。

俺もそう思う。

正常だったとしても大丈夫じゃないが、コイツの場合。

 

「いや、俺も本気で心配になってきたわ。」

「大丈夫かな俺…。」

 

「いやもう既に大丈夫じゃないだろ。」

 

俺がそう言った途端、後ろでまた、碧海が噴いた。

 

「若年性…ってこともある()()()()()()()()()……。」

 

碧海は心配そうな表情で呟いた。

若年性とは、アルツハイマーのことであろう。

かもしれないからね、なんて遠回しに言ったのは、能力が発動しないようにだろう。

 

「え」

「嘘マジかよ…。」

「余計怖くなってきた…。」

 

栄吉は青い顔になり、少し身震いする。

 

「今まではこんなことあったのか?」

 

「いや、寧ろ物覚えはいい方だぜ?俺。」

「URLとか一発で覚えられるし」

 

「嘘!?」

「凄いね…榎本君。」

 

碧海は感心しているけれど、コイツにも出来ないことでもないし、栄吉の場合、覚えているのはエロサイトのものだろう。

ああ、確実にそうだ。

 

「じゃあ…昨日突然ってことか…。」

 

「うーん…やっぱり思い出せんなぁー。」

 

栄吉は腕を組み、唸りながら首を捻っている。

 

「まあ、今後同じようなことがあったら、病院に行く、でいいんじゃないかな。」

 

「まあそうだな。」

 

俺達だけでは手の打ちようがない。

ただ物忘れなんて誰にでも多少なりともあるものなので、取り敢えず俺は碧海に同調する。

 

「うーん…まあそうなるよな。」

「……………」

「よしっ!考えないことにしよう!」

「ありがとな二人共。」

 

「「どういたしまして」」

 

俺達はコイツに何もしていないのだけど、お礼をされたら返すのが礼儀だろう。

と思い返事をすると、碧海が図ったように被さってきた。

ちらりと隣を見ると、ニヤニヤしながらこちらを見ている。

腹立つわぁ……。

 

「じゃあな新婚共。」

 

「違うわ!」

 

「違うの!?」

 

「違うわ!」

 

なんで驚いてんの!?

分かんない。俺コイツ分かんない。

 

「ずっと嫁だと思ってたのに…。」

 

「まず空気を読もうな。」

 

「読んだら結婚?」

 

「しません。」

 

「ちぇっ…。」

 

こんな問答を、いつかした気がする…。

 

「幼稚園の頃は……!」

 

「昔は昔、今は今。」

 

今日の昼休みも、いつも通りこんな感じで、二人平行線の会話をずっとしていた。

飽きもせず。

ただ俺はその間中、栄吉の物忘れのことが引っ掛かっていた。

栄吉は、彼が言った通り物覚え()()は良いのだ。

その上、数時間の記憶を忘れるなんて、普通では有り得ない。

それこそ病気でない限り。

――嫌な予感がするのは、俺だけだろうか…。

俺は言い知れない不安を抱えながら、いつも通りの一日を過ごした。




やっと本線に入れたって感じです。
伏線は今のところ少ないですけど、ちゃんと覚えてますから、活用していくつもりです。

クッソ文短いですけど、一話当たりを長くした方がいいですかね?(いいに決まってますよねすいません。)
でもそんなことしたら、投稿が月二回になってしまう可能性が…。

何も反響がなければこのままで行こうと思います。
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