一台のワゴン車が高速道路を走っていた。
車窓からは幾台もの風力発電用の風車が流れて行っていた。
車内はカーステレオから流れるラジオ番組が特集として何かの商品の説明をしていた。
誰もが経験する日常。何の変哲もない平和。
ワゴン車に乗った一家族は寮生活を送る娘との再会を楽しみ、またその娘もそんな時間を楽しんでいた。
・・・らしい。
娘は体中を包帯で巻かれ、車いすに座って三つのベッドとその上に載ったモノを眺めていた。
その目は、何の感情も抱いてなかった。
ある意味、この瞬間が彼女、櫻井結の生まれた瞬間と言えるかもしれなかった。
超能力を科学で解明した学園都市において7人しかいない
すでに
『第一位』の限界は『第一位』が引き出せばよいと、、、
科学者たちは一つの画面を見てほくそ笑んだ。
ー 櫻井 結 -
ー
交通事故により全身に外傷。また、脳の一部に損傷を負ったことにより他人との感情の共有が実質的に不可能。また、特異的な能力を発現。その強度も性質も絶えず変化し、流動的であることから測定が困難として「レベルx」と設定する。家族はすべて他界。現在は学生寮で一人暮らし。
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科学者たちはこの能力を知っていた。表沙汰にはできなかった彼女の能力を、、、
街を歩くその少女は変わった身なりをしていた。少しつばの大きめの麦わら帽子にショート気味の髪。ゆったりとした涼しげな半袖の白いワンピースには端にレースがあしらわれている。ここまでは普通かもしれない。しかし、変わっているのはその中だ。ワンピースの下にはスポーツ用のタイトなアーマーを全身に着用し袖から突き出る手足は真っ黒。靴下は長いルーズソックス。手にはレザー生地の手袋を履いている。結果として、彼女は肌の露出が顔以外はなく。本来は肌が見えるはずの部分がすべて真っ黒になっているのだ。
彼女を始めて目撃した人は必ずと言ってもいいほどその格好に驚いて振り返る。それだけ彼女は目立っていた。
「櫻井結さんだね?」
話しかけたのは白衣を着た初老の男性だった。名前を呼ばれた少女は驚いて振り返る。
「誰ですか?」
中学に入学したばかりの彼女は初対面の相手に使う敬語を知らなかったため遠慮することなくその男性に言った。男性も特に気にした様子もなく続ける。
「少しお話が合ってね。お仕事してみる気はないかい?君の能力を使って」
男性と少女の間に奇妙な間があく。
(どうしてこの人は私の能力を知っているのだろう、、、)
もちろん出鱈目かもしれない。しかし、男性が来ている白衣はとても男性にふさわしいように見えたし、本当にどこかの研究機関の人なのかもしれない。両親を失った彼女は学園都市が出している福祉金で日々何とかやりくりしている状態だ。お金が手に入るというならば多少のリスクを負うメリットも十分にある、、、
少女は初老の男性にうなずいた。男性としては思いの他ことが上手く進んだことに内心驚いていた。しかし、早く終わるのならばそれに越したことはない。男性は少女を連れて車に乗り込み自分の研究機関に戻った。
「お仕事って何ですか?」助手席に座る少女は男性に尋ねた。
「何、ちょっと手伝ってほしいんだよ。ある能力者のデータを取るのに、君のその能力が必要なんだ。もちろん報酬は出すよ?」
「わかりました」少女は納得したように答えた。男性はやけに素直な少女の態度を不思議に思ったが特に追及はしなかった。少女としては報酬が出る、と聞いて安心しただけだったのだが、、、
車は高速道路に入った。巨大な風車が車窓を流れては現れる。
ここは学園都市。
住人の8割を学生が占める大、高、中、小、様々な学校がひしめき合う街。また、大学で行われる各研究により世界で最も科学の進んだ街。
今日もまた、どこかで実験が行われる。