とある科学の能力模倣   作:Isaac 1,92

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2話

 

 学園都市は日照りの続く夏が訪れていた。

 

 櫻井結は夏休みを1日を自宅で過ごすことに惜しさを覚え。ウィンドウショッピングを楽しんでいた。本日の仕事は深夜からというのも彼女を街に連れ出す要因になった。

 

 セブンスミストとは第7学区にある洋服専門のショッピングセンターで、常に一定の賑わいを見せている。今日の目的地はそこにしよう、と意気込んできた結だったが。

 

(爆発事件のため臨時休業~~~!?)

 

 セブンスミストは絶賛休業中であった。楽しみが奪われると人間は不機嫌になる。それを現在進行形で体感している結は、やり場のない怒りと犯人に対する憎悪で顔を歪めた。周囲からは、開かない自動ドアに体を投げ出した手足真っ黒の女子高校生に対する冷たい差すような視線だけが飛んでくる。「ママ~あの子何してるの?」「あ、あれは見ちゃいけません」状態である。この学園都市には親子連れなどいないからそのような会話が起こることはないのだが、周囲の視線はまさにそれそのものである。

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

 

 果敢にもこの変態女子高生に声を掛ける人物がいた。結は絶望の淵にあった気持ちを何とか鼓舞して、ようやっと顔を上げるとそこには頭から花を咲かせた少女が立っていた。

 

「・・・頭がパーティー・・・」

 

「・・・はい?」

 

 絶望に落ちた人は何を言うかはわからないのである

 

 

 

 

「ごめんなさいね、さっきは変なことを言っちゃって。ええと、、、」

 

「初春です。初春飾利と言います」

 

「そっか、初春さんね。私は櫻井結」

 

 絶望から何とか復活(十分程度かかったが)した結は頭に花のヘアバンドした初春と自己紹介を交わした。場所は近くの広場のベンチ、二人の手にはそれぞれ自動販売機で初春が購入してきた缶ジュースが握られている。

 

「それでさっきはどうしたんですか?何かあったんですか?」

 

「いや、セブンスミストで買い物でも、と思ってきたんだけど・・・」

 

「ああ、今立ち入り禁止になってますからねぇ。私はその現場をもう一度確認しようと思ってたんですけど」

 

「現場を確認?」

 

「一応ジャッジメントなんです。私」

 

 なるほど、初春が着ている制服の右袖にジャッジメントの盾の腕章がしてあることに結は気が付いた。

 

「へぇ、それで?どうだったの?」

 

「ええと、それがもう補修工事を始めてしまっていて見ることは出来なかったんです。犯人は逮捕されたんだからいいだろう、って」

 

「あ、犯人逮捕されてたんだ」

 

「はい!ですから、もう安心してくださいね」

 

(一発ぶん殴ってやりたかった・・・)

 

「ん?どうしました櫻井さん」

 

「い、いや、なんでもない・・・ところでさ、なんで犯人が逮捕されたのに現場なんか見に来たの?」

 

「う・・・それは・・・」

 

「あ、聞いちゃまずい奴だった?」

 

「・・・はい、申し訳ないのですがお答えできません・・・」

 

「そっか、ならいいの。さてと、私はそろそろ行きますかね」

 

「あ、待ってください」

 

 立ち上がった結を初春は呼び止める。

 

「私、セブンスミストほどではないですけど、結構いい洋服屋さん知ってるんです。案内しましょうか?」

 

 結が狂喜して首を縦に振るのには、コンマ1秒もかからなかった。

 

 

 

 

 

 夕暮れ時、結と初春は二人並んで帰路に立っていた。

 

「いやぁ、どうもありがとうね、初春さん。おかげでいいのが見つかったよ」

 

 結は左手に持った紙袋を初春の前に持ち上げて見せる。

 

「いえいえ、困ってる人を助けるのもジャッジメントの仕事ですから」

 

「あ、それ、この前会ったジャッジメントの人も同じこと言ってた。ピンクのツインテールの人で・・・」

 

「ふふ、白井さんですよね?」

 

「え?知ってるの人?」

 

「覚えてないのも無理ないですけど、私、あの発火能力者(パイロキネシスト)の強盗事件の時に現場にいたんですよ?」

 

「え?そうだったの?」

 

 他愛もない会話を交わすうちに二人はある高架下にやって来た。太陽の光が遮られ、電灯の少ない薄暗いそこは時間が停滞しているようにどんよりとした雰囲気が漂っている。

 

「おーねぇちゃんたち、ちょっとオレ達と遊んでこうぜ~」

 

 声を掛けてきたのは高架下でたむろしていた数人の『いかにも』な男たち。初春は不快感を顔に見せて、

 

「興味ないので失礼します!」

 

 ときっぱりと断った。

 

「ああ?すかしてんじゃねぇよ!」

 

 しかし、それで引き下がってくれる集団ではないようだ。

 

「いう事聞いてくれないとちょーとお痛しちゃうかもしれないなぁ、俺達の強くなった能力でさぁ?」

 

「へぇ、君たち能力者なんだ」

 

 結は初春の前で喚き散らしていた男に近寄った。男は自身と余裕であふれた笑みを浮かべたまま結を見た。

 

「ああ?そうだよわかったらおとなしく言う事を・・・なんだてめぇ」

 

 結は男のいう事を無視してそのままレザーグローブを外し、素手で男の顔に触れた。

 

「へぇ、君。電撃使い(エレクトロマスター)か、それもレベル3だ」

 

 結はその男に触れたままそう、男に告げた。

 

「な、なんだてめぇ!?」

 

 男は仰天して後ずさり、結から距離を取った。

 

「図星かい?」

 

 聞くまでもない。男は先程の余裕の表情をどこに捨てたのやら、焦りが顔一面に現れていた。

 

「う、うるせぇ!このアマぁ!」

 

 男は怒りに任せてその指先から電撃を発して結に投げつけた。一筋の高電圧の光が結に向かって真っすぐに飛んだ。しかし、

 

「な、なにぃ!?」

 

 その電撃は結に当たる直前でその軌道を不自然に変えた。そして、全く関係のない場所に当たり火花を散らした。

 

「な、なにが・・・」

 

「うろたえたんじゃねぇぞ!単純なことだ。そのアマぁもたまたま同じ能力だったってだけだろう!」

 

 リーダー格と思われる男が結に攻撃をそらされた男に怒鳴り散らした。互いに電撃使い(エレクトロマスター)の場合に起こる電撃の屈折現象。今のがそれだ、とリーダー格の男は推測したのだろう。

 

「こっちは人数いるんだ。能力者の一人や二人にビビってんじゃねぇ!これでも・・・喰らえぇ」

 

 男は結に向かって空中に浮遊させたコンクリートブロックを飛ばした。物体浮遊(テレキネシス)の能力だ。

 

「!初春さんこっち!」

 

 結は初春の手を引いてそのブロックを躱す。

 

「おらぁ!お前たちもやれ!」

 

 男のその声を皮切りにしてほかの者も攻撃を始めた。走る結達目掛けて水の入ったペットボトルが投げつけられる。そしてそのペットボトルが結達の足元に着地し、破裂した。

 

爆発能力(エクスプロージョナー)!?」

 

「は!違うね!よく見とけよ電撃使い(エレクトロマスター)!」

 

 ペットボトルの中に入っていた水が渦を巻きはじめ、ありえない方向に飛んだ。それは一塊の水流となって結の背を強かに打った。

 

「オレの能力は水流操作(ハイドロハンド)だ!」

 

 結はそのまま前に転んでしまう。すぐに飛び起きると、すでに男たちはニヤニヤと意地に悪い顔で初春と結に迫っていた。

 

「おいおい、もういい加減降参した方がおめぇらのためなんじゃねぇのか?」

 

「あんたら・・・」

 

 結は両足に力を込め前傾姿勢を取った。そしてレザーグローブを両手とも外すと、男たちに向かってこう言った。

 

「悪いけど、頭に来た。こっからは手加減できないから許してよね」

 

「は?」

 

 結は男たちに向かって駆けだした。

 

「おいおい、もしかして今ので頭打ったかぁ!?かまうな、やれ!」

 

 しかし、男たちの能力は結には当たることはなかった。結はすべての攻撃を寸でのところで躱し、その()()()両手で男たちの肌の見えている部分に触れていく。腕、首・・・そして男たち全員に触れたのち、結は再び男たちの前に立ち、一つため息をついた。

 

「ウォーミングアップは十分できたかしら?」

 

「な、なんだおめぇ・・・」

 

 自分たちの攻撃をするすると躱されたことに目を丸くしている男たちに、結はさらりと気に留めた様子もない。

 

「さぁね、昔からこういう体質なの。生まれたときから(・・・・・・・・)のね。さぁ、本番はここからよ?」

 

 結は両手を振ると、右手から電撃を放った。そして、隙間なく、自分の隣に転がっていた石ころを数十粒浮遊させて男たちに向けて飛ばした。

 

「な、なに!」

 

 男たちは驚きのあまりその場から動けず、一番先頭にいた男が電撃をまともに喰らい気絶し、またその近くにいた男も、大量の石の礫に打たれ卒倒した。

 

「あ、ありえねぇ!?多重能力(デュアルスキル)だと!?」

 

 結が放ったのは電撃使い(エレクトロマスター)による電撃と物体浮遊(テレキネシス)によって放った石礫。どう考えても複数の能力を持たない限り不可能な現象である。しかし、多重能力(デュアルスキル)は理論上、脳の負担から考えて不可能とされていた。

 

「どう?まだやる?」

 

「ぐ・・・しゃぁねぇ・・・見逃してやる・・・」

 

 さっきまで押していた男たちは形成が逆転されたことで、一気に戦意が喪失したようだった。男たちはゆっくりとした足取りでその場を後にする。

 

「うわ、あいつら仲間置き去りですか・・・初春さん、こいつらどうするの?」

 

 結は仲間に放置された可哀そうな気絶した二人を指さして言う。

 

「え、えっと・・・い、一応アンチスキルを呼びますね・・・それとジャッジメントも・・・」

 

 初春はそういうと、自分の携帯を取り出して連絡を取り始めた。

 

(・・・この調子じゃしばらく掛かるかもしれないわね・・・あ~あ、仕事前に少し寝たかったのに。これじゃ無理かもしれないわね)

 

 結は一人、ため息をついた。

 

 

 

 

 

 今日もまた、実験は行われるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜、白髪の少年が街を歩いていた。

 

「今日もずいぶんと派手だったわねぇ。後片付けをする身にもなってほしいわ」

 

「・・・お前か・・・別にいいだろ、お前が何かするって訳じゃないんだろ?」

 

「まぁね。でも、ちゃんと全部片付いたか確認するまで残ってなきゃいけないのは私なのよ?」

 

「おめぇには給料が出てんだろうが・・・真面目に働けよ・・・」

 

「わかってますよぉ・・・はい、いつもの」

 

「ん・・・」

 

「う~ん、これっていつも思うんだけどどこがゴールなのかいまいちわかんないのよねぇ・・・」

 

「んだそりゃあ?んじゃあ、これ、やる意味あんのか?」

 

「ま、やれって言われてんだからやるしかないんだけどね。それに、研究者様たちは一応何かわかってるみたいだし」

 

「そうかよ・・・」

 

「相変わらず君はつれないなぁ・・・それじゃ私はお仕事に行ってきますよぉ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おやすみなさい。一方通行(アクセラレータ)

 

「じゃぁな、『物まね芸人』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の午後、ジャッジメント第177支部は初春飾利の話で大盛り上がりだった。

 

「初春!それ本当!?幻の多重能力者(デュアルスキル)!ついに現る!」

 

「あはは、佐天さん今日そればっかり」

 

 佐天は初春の周りを行ったり来たりして落ち着かない様子。初春は昨日出会った結についてすでに佐天と同僚の白井に話していた。結が電撃使い(エレクトロマスター)の電撃と物体浮遊(テレキネシス)を使って物を飛ばして不良を撃退した話に佐天のテンションは上がりっぱなし。一方の白井は半信半疑の様子だ。

 

「そんなのあるわけないですわ。能力は一人一つ。これは絶対ですわ。その方はきっと、磁場を使って物を持ち上げたんでしょう。それよりも、なんであなたは当然のようにここにいるのです?佐天さん?」

 

「あ、やっぱり駄目でした?」

 

 白井に注意された佐天はてへっ、と舌を出す。

 

「ダメに決まってますわ。ここはジャッジメントの・・・」

 

「黒子!多重能力者(デュアルスキル)がいたって本当!?」

 

「お、おねぇ様まで!?どこでそれを!?」

 

 ドアを勢いよく開け放って入って来たのは、御坂美琴だった。

 

「ああ、御坂さんには私がお伝えしたんです。きっと興味があるだろうと思って」

 

「佐天さん、あなたなんてことを・・・」

 

「ねぇ、初春さん!今すぐにバンクにアクセスして探し出して頂戴!」

 

「え、あ、はい!」

 

 御坂の勢いに押されて初春はパソコンを操作する。やがて表示されたのは学園都市に記録された櫻井結の個人情報画面。ジャッジメントは学園都市に在籍する全住人の個人情報を記憶している『バンク』にアクセスする権限が与えられている。しかし、今回のこれは明らかに職権乱用である、が、このメンツにとってはそんなのは日常茶飯事なのでそれを指摘したところで今更なのだ。

 

「あ、この人。あの銀行強盗の時の!」

 

「この方が多重能力(デュアルスキル)ですの?」

 

 御坂と白井がパソコンの画面を初春の後ろからのぞき込みながらそういう。

 

「はい、名前も一致してましたし、昨日も手足が真っ黒だったんで間違いないです。・・・え?あれ?」

 

 初春はそこまで言って言葉を切った。

 

「この人・・・レベル0(無能力者)よ?」

 

「そ、そんな!あの時確かに!」

 

 しかし、初春が何確認してもパソコンの表示は変わらない。間違いなく、櫻井結はレベル0・無能力者と表示されている。

 

電撃使い(エレクトロマスター)ならまだしも・・・レベル0・・・」

 

「どういうこと?能力もないのに電気を起こす方法があるとか?」

 

 白井と御坂は頭をひねる。しかし、うまく説明する方法がない。

 

「これは・・・もしかしたらレベルアッパーかもしれないですね」

 

 佐天がどや顔になる。

 

「レベルアッパー?なんですの?その胡散臭そうな代物は」

 

 しかし、白井は、噂大好きの佐天の話を端から信用していない様子だった。

 

 レベルアッパーとは。

 佐天曰く、簡単に使用者の能力レベルを上げてくれる道具らしい。形状も使用方法も謎だが、それは噂ではご愛敬というやつである。そして佐天の推理では、本来不可能である多重能力(デュアルスキル)の素質をもった人物がレベル0(無能力者)の中にいて、それがレベルアッパーを使用することによって発現したのではないか?というものであった。

 

「またそんな突拍子もないことを」

 

 白井はやはり、佐天の話を真に受けていない様子である。

 

「でも白井さん、結構噂はあるみたいですよ。ほら」

 

 初春が白井に掲示してきたのはとある掲示板。そこにはレベルアッパーを扱うという組織がよく使っているファミレスの店名が明記されていた。

 

「最近、レベルと被害が一致しない事件が多いのはもしかしたら、これが原因かもしれませんよ?」

 

 グイッと迫る初春。しかし、それに反応したのは詰め寄られた白井ではなく御坂だった。

 

「わかったわ、私ちょっと行ってみる!」

 

「あ、おねぇ様!?ちょっとお待ちになって。おねぇ様たらぁ!」

 

 相変わらず御坂さんは御坂さんだ、と初春と佐天は顔を見合わせて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

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