リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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花吐き病パロです。






fiore 【XS←D】

 叶わない恋をするものだけが、罹る病がある。

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 それは現在ヨーロッパおよび世界各国に蔓延する病だった。

 感染経路は一切不明。

 実は人間に遺伝的に組み込まれていた~とか、最近出てきた最新型ウィルスだ~とか学説は色々あるが、実は普段『普通』に生活している分には全く無害な病気である。

 だが、しかし、コレには発症を促すべき鍵……いわばトリガーがあった。

 ……つまるところ、病気にかかりたくないのならこのトリガー予防をしてしまえばいい! というのが究極の防衛手段となるのだが、悲しいかな人のサガとはそう簡単にはいかないものである。

 

 そのトリガーは『恋』だった。

 

 

 しかも発症例を見ると決して叶わない恋、報われない恋、という厄介なものを抱えているケースが多い。

 相手を思えば思うほどに、体内に生成された花を吐いてく奇病は、いずれ死に至るという。

 唯一の治療法は両想いになることのみ。

 

 

 それが『嘔吐中枢花被性疾患』。

 

 

 愛すれば、愛するほど、命が削られていく。

 

 呪いのような、恋の病である――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 という非常に面倒臭くて厄介な病気にかかった跳ね馬が居た。

 

 ディーノはベッドに横たわり、清潔なシーツの上に寝かされていた。

 

 目の前には花びらが大量に入っている洗面器がある。

 見るのも鮮やかな、香るような厚みのある赤いバラの花びらが彼の視界を埋め尽くしていた。

 随分沢山吐いちまったな、なんてディーノは思う。

 こりゃもう長くねぇかもしれないな、という諦観が一瞬だけよぎった。

 

 病室には自分の腹心が「ボス!」といたたまれないような切羽詰まった必死な声で、呼びかけてくる。

 

「もう見ていられねぇ! せめて思いを告げるんだ! 今からでも遅くない!」

「……だめだ……!」

 

 また胸が痛くなる。

 締め付けられるような痛みが、やがて焼け付くようなソレへと変わり、気が付けば口から大量にまた赤が零れ落ちていた。

 鮮やかな色だった。

 綺麗な赤だった。

 

「……いいんだ……アイツに……オレ……あのバカに変な十字架を背負わせたくねぇんだ……!」

「ボス!」

「いいんだ……俺は……!」

 

 

 ずっと好きだった。

 

 

 いつから好きだったのか、もう分からない。

 気が付いたら好きで好きで、どうしようもない位惚れていて、こっちはそれで片思いしてきたのに、あの銀色は他のオトコに夢中だった。

 気が付いていたのに。

 知っていたのに。

 

 さっさと諦めれば良かったのだろう。

 女々しくいつまでも引きずっていないで、勝ち目がないと、振り向いてもらえないと分かっていたなら、他の奴を――もっと全うな恋をすればよかったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 ……でも、できなかった。

 

 

 

 

 

「……アイツ……馬鹿だから……ずっと……俺のこと……忘れられなく……なっちまうだろ……?」

 

 

 

 できなかった。

 やめられなかった。

 好きだということを、辞められなかった。

 

 

 愛することを諦められなかった。

 

 

 だから結局このザマだ。

 初めから、叶わないと分かっていたのに。

 最初から、報われないと知っていたのに。

 治る見込みがないと解っていたのに。

 

 ……それでもコレで死にたい、なんて思ってしまったのだ。

 

 

「だから……この思いを抱えて死んでやる」

「……ボス!」

 

 

 ただ一言いえば報われるのか、とも思った。

 

 

 好きだった、愛してた、と言えば少しでも報われるんじゃないか、と考えた。

 

 だが無理だろう。

 ソレを言ってしまえば、あの銀色は一生俺を忘れないだろう。

 アイツの心に自分という存在を切りつけてやりたい。せめて死の間際まで愛してたんだという事実を刻んでやりたい、という思いは確かにあった。

 もうこれは恋でも何でもない、ただの歪んだ独占欲だ。

 ……その自覚はあった。

 

 だからこそ。

 

 

 何も知らせないまま、何も傷つけないままで、消えようと決めたのだ。

 

 忘れられるのは怖かった。

 

 だが、それ以上に守りたい思いがある。

 

 

 ……オレはスクアーロのことが、本当に好きだったんだ……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う゛ぉおおおおおおい! へなちょこぉおおおおおおおおおお!」

 

 

 

「!? ……スク……アーロ……!?」

 

 

 

 突如として割れ響く大声が真っ白に染まった病室に反響した。

 

 現れたのは黒ずくめの麗人だった。

 鋭い目つき、すっと通った鼻梁、薄く色づく唇――――そして伸ばされた艶めく白銀の髪。

 

 

「な……んで……」

 

「くたばってんじゃねぇぞぉ!! しっかりしろぉ!!」

 

 

 ズカズカと入ってきた銀の鮫は、ディーノの肩をがっしりと掴む。

 最愛の人―――もとい病原が現れたことにディーノの頭の中で一瞬花が咲く。

 意志の強そうな銀の目と死にかかった金色の目が合った。

 

 

「どこのどいつだぁ!!」

「……は?」

 

 鮮やかな唇からは、鼓膜を直接打撃する近くに居る人間にそんな大声で叫ぶ必要がどこにあるんだよ……というレベルの騒音被害が発生していた。

 隣の病室からドン! という抗議の音がする。どうやらお隣さんは無事快復に向かっているようだ。

 退院の日も近いだろう。

 

 

 

 

「お前がホレこんでる奴はどこのどいつだぁ!!」

 

 

「ゴフッ!」

 

 

 

 耐え難い胸の痛みに襲われたディーノが吐花!

 やはり実物の破壊力は違う、軽くさっきの2倍もの花弁が口からあふれ出た。

 

 

 

「心配するなぁ゛!! オレが必ず見つけ出してきてる!! ヴァリアーを舐めんじゃねぇ゛!!」

 

「ス……スクアーロ……も、もういいんだ……!」

 

「よくねぇぞぉ!! テメェが死んだら色々厄介なんだカス馬ァ!!」

 

「……!」

 

 どうやらスクアーロはディーノに死んでほしくないようである。

 常日頃殺意とか怒りとかそうゆう感情でギラギラ光っているまなざしにはガチで心配している色と、「脅してでもコイツの片思いの相手を連れてきて、両想いにさせてやる」という決意がはっきりとにじみ出ていた。

 意中の人に多少なりとも思われている……ということにディーノはやや安堵する。

 が。

 

 

 

 

 

 

「ドン・キャッバローネが死んだらボンゴレの威光にかかわるだろぉがぁ!! またボスさんの悩みが増えるじゃねぇかぁ!!!! そんなん俺は認めねぇぞぉ!!」

 

「ガハァッ!!」

 

 

「ボスーーーーーーーー! しっかりしろ! 傷は浅いぞ!」

 

 

 結局すべてはザンザスの為! という宣言を改めて聞いたディーノの心にクリティカル!

 分かっていたけどやっぱりショック!

 目の前で好きな奴が惚気る生き地獄! ディーノは「なんで俺今際の際にこんな苦しまなきゃいけないの……?」と生まれてきたことを後悔していた。

 

 

「う゛ぉおおおおおい! なんかスゲェ花だぞぉ! 大丈夫かぁ!?」

「だめ……だスクアーロ……! それ……感染っちまう……!」

「病人が人の心配してんじゃねぇ、自分が治ることを考えやがれぇ」

「……いいんだ……もう……俺は……いいんだ……スクアーロ……」

「よくねぇぞぉ!

 

 

 お前が死んだら、ボスさんだって多少ガックリ来るだろぉがぁ゛!!!!」

 

 

「だからもうやめてソレやめて俺の心はもうとっくに折れオヴェェエエエエエ!」

 

「うぉ゛……」

 

「ボスーーーーーーーー!!」

 

 

 ロマーリオは思った。

 

 

 やべぇ、やべぇよコイツ……流石暗殺部隊! 流石ヴァリアー! そして流石次席!!

 今わの際に追い詰められたターゲットを殺しに来てる!!

 放っておけば勝手に死ぬ相手の息の根を、確実に! 止めに! 来ている!!

 

 しかも本人は全く無自覚!!

 

 スペルビ・スクアーロ……恐ろしい子……!

 

 と、ロマーリオはこの悪行を、『ヴァリアー・クオリティー』を未来永劫語り継ぐことを決意した。

 「10代目キャッバローネは二代目剣帝にトンデモナイ殺され方したぞー」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それに心配するな゛ぁ……ディーノ。俺には感染らねぇ」

 

 

「……え?」

 

 

 もう一度言う。

 花吐き病とは、『叶わない恋』、『報われない恋』をしている者が罹る病である。

 

 『片思いをしている』奴が感染する病である。

 

 治療法は…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チクショーーーーーーがぁああああああああああ!! ゴフッッッ!」

 

「う゛ぉおおおおおおおおおおい! へなちょこぉおおおおおおおおおおおおおおお゛゛!!」

 

 

 

 

 

 スクアーロの義手、左手薬指には。

 

 

 きらりと輝く銀色の、戦闘用じゃない、簡素だがシンプルで美しい指輪が嵌っていたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 




コレだから跳ね馬イジメはやめられませんwww
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