リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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 いい夫婦の日。(間に合ったァ!)
 評価ありがとうございました。





mele

 その日、ヴァリアー幹部候補生であるフランが有給を願い出ていた。

 

 

「と、いう訳なのでーーミーは休みますーー。今日はーだいじな用事がありますーー」

「あ゙ぁ? 通ると思ってんのかぁ!! ふざけんなぁ!!」

「栄養分が銀髪に行った万年脳みそエネルギー不足な隊長には言ってませんーー。今日はーミーはー大事な日ですーー」

 

 一通り上司であるヴァリアーの美人作戦隊長をdisってるようで外見は誉めたフランはいつも通りどこまでも淡々かつ飄々とした態度で大事な用事、とやらを声高に主張していた。

 そこで、アホのスクアーロはようやく気づく。

 

「……フラン、お前……カエルはどぉしたぁ!?!?」

 

「うるさいですーーこの天然メガホンボイスーー鼓膜が死にますーーーー死んだら呪いますーー」

 

 そう、ベルフェゴールに嫌がらせで被らされているカエル頭が今日は存在していなかったのだ。

 かわりに、その頭部にはやはり何かが載っている。

 そう。

 

 

 子供の時にかぶっていた――――アップルの被り物が。

 

 

 

「今日はーージャッポーネのナガノ=ケンのアッポーの日ですーー。なのでーージャッポーネまで行ってミーはアッポ―を祝わないといけないんですーー」

「……」

「そう、フルーティーに!!」

「何言ってんだぁ! つーかフラン、刺さってんぞ……テメーの頭に銀ナイフ刺さってんぞぉお!!!!」

「これは前髪切り忘れた堕王子にやられましたーー」

「果汁滴ってんぞぉ!!」

「それは血ですーー幻覚で果汁っぽくしていますーー」

「重傷じゃねぇかぁ!! いいからさっさと医務室に行けぇ゙!!!!」

「嫌ですーー。ミーはジャッポーネに行くんですーー!」

「ナイフが脳まで到達したのかぁ! なんでそうなる……何がてめーをそこまでさせやがる!!??」

「おい、カス鮫」

 

 スクアーロの背後からかけられる低音バリトン声。

 と、同時に投げられる瓶。

 数秒後。

 

 避けるということを知らないスクアーロの銀糸を束ねて作ったような艶やかな髪はテキーラで濡れることになった。

 

 

 

 

「なにすんだぁ!!」

「プライベートジェットを出せ、行くぞ」

「はぁ゙゙!?!?」

「てめーも来い」

「え……別にロン毛隊長は要りませんーーつーか絶対来ないで欲しいですーーできれば恒久的現世追放って方向性で」

「……は?」

 

 

 こうして、ヴァリアーツートップ&幹部をのせた暗殺部隊専用機は日本(長野)へと飛んだ。

 

 ……はず、だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 

 話は変わるが、11月22日は『いい夫婦の日』と呼ばれている。

 

 財団法人余暇開発センターが、夫婦で余暇を楽しむゆとりあるライフスタイルを提案した結果11月22日を「いい夫婦の日」と提唱しだした結果である。

 無論、テキトーな語呂合わせの結果誕生したものだから勿論日本語のゴロアワセ。

 なので世界共通認識な訳もなく。

 結果日本独自の一部だけでやるような地味な記念日だったりする――だったり、する、の、だが。

 

 

 

 

「奈々~~♪」

「あなた~~♪」

 

 

 沢田夫妻はここぞとばかりにこの記念日にかこつけてイチャついていた。

 イイ年こいてアツアツのバカップルぶりをみせる両親に、流石のボンゴレ十世もタジタジである。

 

 

「父さん……母さん……流石にやめてよ!!」

 

 見てるこっちが恥ずかしい!とばかりにいい年こいてまるで思春期の少年のように顔を紅潮させるボンゴレ・ネオ・プリーモ。またの名を世界最大手のマフィアのドン。

 

「え~~だって~~……ツー君もだけど、家光さんお仕事忙しいって全然家に居ないし……」

「そーだー。だからこうやって愛情を温め合ってんだから多めに見ろっつーの倅よ」

 

 ねー、とばかりに息を合わせる両親に頭を抱えるネオ・プリーモ。

 まぁでも親が仲良いのは良いコトだよな、そうだよな、それに別にこの日常が嫌いなわけじゃない。

 ……と、自分に(無理やり)いいきかせた綱吉は二人に何か甘いモノでも買ってきてあげよう、今日くらいは親孝行しよう、と玄関のドアに手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「施しだァ!!」

 

 

 

 

「うわぁああ! 出たぁああッ!?」

 

 

 

 

 突如顔面に投げつけられる、アッポーパイ。

 

 当然イキナリの奇襲にツナに避けられるまでもなくこのままでは顔に白い何か(ホイップクリーム)と若干粘ついた特徴的な芳香を帯びる黄色みがかった何か(ドカスタードクリーム)が付着してしまう!

 年齢よりかは幼くみえる幼気な、まだあどけなさの残る綱吉君の顔に――!

 そんな――そんな――エ●い光景に――他人の手でされたくないッ!

 

 と、いてもたっても居られなくなった六道骸が綱吉の家の前に設置されていたゴミ回収用のポリバケツの蓋をぶち破るッ! 何か頭に魚のホネとか刺さってるッ!

  

 かくて素晴らしく無駄な身体能力を発揮した六道骸が肉盾となりアッポ―パイによる強襲は防がれたのだった。

 アッポ―パイナポー奇跡のコラボである。

 

 

 

 

「やった!! よくやったありがとうXANXUS!!」

 

「ぶはははははーーーー!!」

 

「ゔぉおおおおおおい! 沢田ァ!! リンゴはまだあるぜぇ!! 心配すんなぁ!!」

 

「つ、綱吉君……僕……今白濁に塗れて……っ……!」

 

「あ、警察ですかー? 今家の前に白濁に塗れた不審者がいるのでちょっとしょっ引いて貰えますか?すみませんっと…………さてと、何だかよくわかんないけどなにしに来たんだよヴァリアーの二人!! 俺のせいでイタリアンマフィアが逮捕されたら悪いからとにかく家入って!!」

 

「お邪魔しますだコノヤローー!!」

「入るぜぇ!!!!」

 

「……あー、もうちょっと静かに入れないかなーうん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綱吉くぅん……」

 

 

 こうして、世界から。

 

 アッポ―パイに塗れたパイナッポーが一人監獄の中へとぶち込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー? 誰だー? こんな日に来やがる無粋な奴は誰だーー? さっさと追い返してや……うぉおお!? XANXUSじゃねーか?!」

「あら~~あらあらあら~~こんにちわ~~スクアーロさん」

 

 とりあえず五月蠅いから家の中に入れたモノの。

 綱吉は対応に困っていた。

 考えても見れば綱吉の父親、沢田家光とXANXUSとの縁は浅くはない。

 その昔。XANXUSがまだ子供の頃、九代目の養子に入ったばかりの頃に家光は世話係として傍にいたのだ。その後オッタビオとかいう変態眼鏡にとられた、と家光が愚痴っていたのを綱吉は薄らと聞いている。

 子供の時の世話係で、『あの嘘』の片棒をかついできた相手。

 きっと時分が思うよりも複雑な何かがある――と綱吉はゴクリ、と唾を飲み込んだ。

 

 

 

「家光」

 

 

「……おう」

 

 

「てめーには因縁がある」

 

 

「…………否定はしねぇな」

 

 

「だが、今日は」

 

 

「お、おう……」

 

 

「俺は」

 

 

「…………はい……」

 

 

 

「てめーら全員……祝い殺してやる!!」

 

 

 

「「祝い殺すーーーーー!?!?」」

 

 

 

 長年の確執、少しだけこじれた親子関係を乗り越え

 今、沢田親子の心がひとつになった。

 

 

 

 

「おめでとうだドカスが!!」

 

「投げるぜぇ!!」

 

「やめろ!! パイを投げるなパイを!!」

「スクアーロまたてめーのせいか!! ゆりかごん時も指輪戦の時も……XANXUSを誑かすのはいつだってお前だァ!!」

 

 スクアーロが常備していた袋からリンゴ(長野産)を取り出す。

 リンゴを完璧なコントロールでぶん投げたのはボス。

 家光にクリーンヒット。

 爆ぜるリンゴ、飛び散る果汁。

 

「母さん頭下げて!! こいつら本気でヤバいよ!!」

「……ねー、つー君」

「何!? 今それどころじゃな……」

「このリンゴ後でX-BURNERで焼きリンゴにしない?」

「俺の必殺技ガスコンロみたいに言わないで母さん!!」

 

 沢田奈々は動じなかった。

 

 

 

 

 

 色々あって、飛び散りまくったパイとかリンゴとかを吸引力が初代から変わらない零地点突破・改で吸い取った綱吉は半ばキレぎみに怒声を張り上げる。

 

 

「っていい加減にしろよXANXUS……! イベントならお前ら二人でやってりゃいいだろ!」

 

 ぴくり、と次球を投擲しようとしていたXANXUSがパイを投げる手を止めた。

 そのいかにも神経質そうに結ばれた厚めの唇が開かれる。

 

 

 

 

 

「沢田綱吉」

 

 

 あぁ、コイツに本名で呼ばれると何かドキっとするんだよなぁ……とツナは思った。

 

 

 

 

「……今日は恋人の日じゃねぇ」

 

「……うん」

 

「ましてやカップルの日でもねぇ」

 

「………………うん……」

 

 

 

「『夫婦の日』だ!!!!」

 

 

 

 そこかぁああああーー!! なんでこの人そこに拘っているんだぁあああああ!!

 

 その時、綱吉の超直感がフル稼働し、何かを察する。

 

 XANXUSとスクアーロはデキているのは周知の事実。

 最近やっと恋人のような甘ったるい関係になっているイケナイ関係約20年の熟年カップルだ。

 だが二人はあくまで男同士。

 カトリック総本山のおひざ元イタリアでは同性婚は流石に認められていない(2016年制定で準結婚制度認定)

 なので夫婦じゃない。

 

 だがXANXUSはスクアーロとこの日をお祝いしたかった。

 というか、単にイチャつきたかった。

 もう誰でもいい。

 つか何でもいい。

 

 とにかく祝わせろ。

 

 だが二人の身近に既婚者はいなかった……。

 

 

 

 

 

 

「クソ迷惑だぁーーーーー! 帰れよ!! さっさとイタリア帰れぇ!! つか自分の親でも祝ってろよ! 九代目親馬鹿だから喜ぶんじゃないかなァ!?!?」

 

「ゔぉおおおおおおい!! 沢田ァ! それ以上ボスさんのデリケートなところに踏み込むんじゃねぇ!!」

 

「……」

 

「あああああもう面倒くさいなぁ!! じゃもう二人結婚しろよ! お前ら内縁じゃん! 恋人関係じゃん!」

 

「あ゙ぁ? 何言ってんだぁ? 俺とボスさんが恋人関係な訳ねぇだろぉ!!」

 

「お前が何言ってんだ」

 

「勘違いもいい加減にしろぉ!」

 

「お前こそ勘違いもいい加減にしろ!」

 

「カスが!!」

 

 渾身のアッポ―パイが銀髪に直撃し、純銀を白いクリームが汚していく。

 白磁の肌をさらに白いもので汚しながらも、スクアーロが見る者全てを魅了するような凄絶な美貌をキョトン、とさせていた。本当に男か、いや、三十路か、と疑いたくなるほどの可憐さである。

 だが恐ろしいのはこのスクアーロ、これは計算でも何でもなく本当に分かっていないのだ。

 そう、神はスクアーロに涼し気な容姿と冴え渡る剣才を与えたが――その分、脳を削っていた。

 

 

「何すんだぁクソボス!!」

 

 つまるところ、この馬鹿はなんでパイを投げられたのか1ミリたりとも理解していなかった。

 

 流石の綱吉も頭を抱えた。

 

 

「……XANXUS……」

 

 

 あぁ、コイツも苦労してるんだな……。

 

 長年のDVに耐えてきたスクアーロはXANXUSに愛されているなんぞ本当にそれこそ1ミクロンたりとも思えなかったのだ。XANXUSはあくまで主であり、自分は部下であり、そして剣なのだと信じて疑わなかった。

 時折向けるそれはあくまで劣情の類であるけど別に自分はそれで充分だ――と、勝手に満たされている何とも面倒くさい手合いだった。

 半分はXANXUSの自業自得とはいえ気の毒な話である。

 

 

 と、言う感じで収拾がつかなくなったバカップルのパイ投げ合戦は、『竹寿司』に舞台を移して第二ラウンドに突入ということになった。

 

 ……する、はず、だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 

 ほのかに漂う香りは、どこか神性を感じさせるものだった。

 

 金具と金具が静かな空間に打ち響く音が広がる。

 

 手と手がふれあい、そこに僅かな温もりを生み出した。

 

 

 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

 

 

 山本家には喪をつかさどる黒服に身を包んだ人間が陳列していた。

 

 

「(な、ナニコレーーーーーーーー!!)」

 

 

 

「あれー? しっしっしっしボスじゃん。超偶然」

「ドンも一緒なんだね……ってママン!? クリームだらけ!? どうしたの!?」

「ボスにやられたぁ」

「や、ヤベェ……ヤベェよ先輩その恰好……! なんかスゲェ……エロく見える!!」

「やばいよ……写真撮らなきゃ……これは――これは――売れる!!」

「? 何言ってんだぁ?」

 

 そこには喪服姿のベルフェゴールとマーモンの姿があった。

 

 なぜか一切突っ込まないスクアーロ。

 どこから何を突っ込めばいいのかもう分からない綱吉。

 そうだ着物だと手を突っ込む場所が沢山あるから触り放題だと新事実に気付いたXANXUS。

 

 

「ん? 誰か来たのか?」

「待てよ親父。この爽やかなシャンプーの芳香……スクアーロなのな!!」

「犬並だな山本」

「よ゙う。どぉしたぁ? 誰か死んだのかぁ?」

「葬式か?」

「暗殺部隊のツートップにこんなこと言ってもアレだけど日本はそんなにホイホイ人は死なないから」

「あ、違うのなー。実は今日……。

 

 

 ……お袋の、命日なのな……」

 

 

 

 ひゅおぅ、と笛のようにふきすさぶ、

 

 一陣の、風

 

 

 

 

「……母親の……命日……」

 

 ツナ、本日二度めの超直感。

 XANXUSのデリケートなスイッチ、オン。

 

 

 

「冗談なのな! これが山本家式の夫婦の日なのな!」

「泣けるぜぇ」

「王子寿司食いに来ただけだし」

「僕はギャラ貰ってるんだよ」

「XANXUS……あのさ……ほ、ほら冗談だってば……だからさ……」

「……」(沈思)

 

 XANXUSが遠い目をしていた。

 

「お袋、見てるか……。オレ、ちゃんとしてるかどうかは分からないけど、大人になったのな」

「ゔぉおおい、線香ってどうやってあげるんだぁ?」

「あげんな」

「まずリングに炎をつけます」(適当)

「お袋……実は俺、好きな人がいるのな」

「燃やすぜぇ!!」

「……おい、マーモン。信じたぞ」

「面白いからもうちょっと見てる」

「まだ片思いなんだけどな! ははっ!」

「ゔぉおおおい! なんか松明みてぇになったぞぉ! すげぇ!」(青●)

「スクアーロ何してんの!! 消すの! それは消すの!! ……ってリングの炎!?」

「……髪が長くって、銀髪で、すげぇ美人で……」

「山本ぉ……恋してんのかぁ……分かるぜぇ、片思いは辛ぇよな……」

「お前それ無自覚なら本当スゲェわ」

「しっしっしっし……ウチのママンは魔性だから仕方なくね?」

「で、ソレでボスが切れる……っと」

「声がデカくて、メチャクチャ剣が強くて、片手が義手な人なんだ」

「すげぇ……偶然だぁ! 俺もだぜぇ!」

 

 

 

「や、やめろ山本ーー! 山本! 手を握るな!! スクアーロ! 松明……じゃない線香を離せ!! ベルフェゴールとマーモンは煽らない! 面白がらない!! つか二人共なんで地味に距離取ってんの!? え……? 何?

 や、ヤバいここで精神世界からXANXUSがカンバック! ちょ……違うんだXANXUSやめろこんな所で銃ぶっ放したら仏壇が仏壇がぁああああーーーー!!」

 

 

 

 




傍から見ればどう見ても夫婦なのに、お互い認めようとしないカップルのバイオレンスラブは続くのだった……。

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