リボーン短編集   作:ウンバボ族の強襲

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 _人人人人人人_
 > 突然の死 <
   ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄

!!ボスの死ネタ注意報!!

 それでも許せるという人はスクアロールしてください!









dimenticare

 

 

 

 

 全て消してくれ、がザンザスが口にした最後の願いだった。

 

 白いベッドに横たわるザンザスの姿を見たとき瞬時に理解した。

 むしろ驚いたのはかつては怒りの権化そのものだったはずの男の表情の方だ。

 

 

 病気だった。

 毒も炎もまるで効かない、暗殺部隊の長の体は強靭であり、同時に脆かった。

 それが力に特化しすぎた代償か、彼の持つ憤怒の炎が命まで焼き切ったせいなのか――あるいは、二度にわたる凍結のせいでどこかに異常をきたしていたのか、沢田綱吉には判断がつかなかった。

 

 分かっていたのは、本当にザンザスが、もう助からないということだ。

 

 なんだか現実感がないような、それでいてしっくりくるような不思議な感覚だった。

 常に炎が燻り続けているような男だったが、その薪はあまりにも少なかったのだろう。

 限られた燃料を高火力で燃やし続ければ、当然火の寿命は短くなる。

 だがその生き方がザンザスという人間にはひどくぴったりな気がした。

 

 

「俺の記憶は必要ねぇ」

 

 

 だから消せ、記憶を。と頼まれたときは思わず愕然とした。

 ボンゴレには幻術使いが数多くいる、アルコバレーノだったマーモン。

 確かに霧の守護者たちを総動員すれば全員の頭の中からザンザスという人間一人の記憶を消す位ならばできるだろう、と言った。

 実際に可能だと証明された。

 だからザンザスが死んだら、ヴァリアーや守護者、全員の頭の中からザンザスのことに関しての記憶がごっそりと抜け落ちる命令が極秘に発令されることになった。

 

 

「……本当にいいの?」

 

 

 色の失せた唇が開く。

 特徴的な赤い目が今では病のせいなのか暗く濁って、少し明るいだけの薄茶見える。

 暗くなった目の色がまるで普通の人間のそれのように思えた。

 普通に優しそうに見えた。

 

 

「人は殺しても、死なねぇ」

 

 

「……」

 

 

「殺しても消えねぇ。……消せねぇ」

 

 

 山ほど殺してきた男が吐く、妙に説得力のある言葉だった。

 

 

「じゃあ、いつ死ぬと思う?」

 

 

 分からなかった。

 綱吉には答えられなかった。

 

 

 心臓を撃ち抜かれたとき、違う。

 不治の病に侵されたとき、違う。

 

 愛するものなくしたときでもない。信じてた全てに裏切られた時でもない。

 それでも人は生きていける。

 この男がまさにそれを体現していたのだから。

 

 綱吉には答えれなかった。

 そして答えられないカスを待つザンザスではなかった。

 

 

 

「忘れられた時だ」

 

 

 

「……」

 

 

 曰く。

 

 存在が全て忘れられた時、やっと人間は死ぬことができる。

 どんなカスだろーが、人の記憶にはまとわりつく。

 

 誰かカスを消せば、そのカスの思い出を持つカスが更に報復に来る。

 だから消す。そいつも殺す。

 そうやって殺して殺して、片っ端からカッ消しても。

 

 ……それでも終わらない。それが記憶で、それが人間だ。

 

 

 と、息を切らせながら珍しく長くしゃべった。

 苦しいんだろう、と思った。

 ザンザスの思考回路では死ぬということは殺すということでも、死ぬということが消えるということにはならないらしい。

 何より死を前にした病人の前の口から何を聞いてるんだろうな俺は、と綱吉は思った。

 すごく冷静に思って、心の中だけで突っ込んだ。

 

 だから、とザンザスは苦し気に言う。

 

 

 

 

 

「スクアーロの中の俺は、こうでもしなけりゃ死なねぇ」

 

 

 

 

 何だかザンザスらしくないな、と思った。

 

 

 とても優しい目だった。

 そこに焼け付くような怒りは、なかった。

 それを見て綱吉は理解する。

 

 あぁ、そうか。とっくにザンザスは『死んで』いたんだ。と。

 

 

 おそらくは、病を得た時からだろう。 

 きっと病気になって、どんどん悪くなって、もう助からないと解ったのに、その運命に怒りを感じなかった、理不尽だと叫ぶ憤怒が起きてこなかった。

 ふざけるな、と感じられなかったのだ。

 

 怒りよりも、恐怖よりも。

 ただ、遺していくスクアーロのことを思ってしまったのだろう。

 

 その瞬間まぎれもなくザンザスは『死んだ』のだ。

 

 

 なのに、スクアーロは未来永劫ザンザスを殺せない。

 きっとあの馬鹿で純粋で、どこまでも愛しい銀色は、殺せないザンザスの思い出を背負って生きていくだろう。

 己の命が終わる日まで。

 

 

 

「アイツまで持っていきたくねぇからな」

 

 

 何言ってるんだ今さら、と綱吉は苦笑した。

 

 生きてる間は散々所有しておいて、見せびらかして、片時も手放そうとしなかったくせに。

 

 今だって、本当は会いたくて仕方がないくせに。

 

 

 

「やめろ、焼き付いて離れねぇだろ」

 

 

 あぁ、そうかよ。だろうね。

 人の最期なんてそうそう忘れられるもんじゃないよ。特にお前みたいな奴の最期なんか忘れようたって忘れられないよ、きっと。 

 夢に化けて出てきそうだよ、と言い切ると。

 ザンザスは口の端を歪めて笑った。

 

 あぁ、そうだ。だから。

 

 

 

「俺の最期はテメェにくれてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 





チョッパーの親父こと名藪医者ドクター・ヒルルクのセリフは泣いた。(再読中)
あの桜のシーンはヤバい。本当にヤバい。


だけど、生きてる人間がちゃんと忘れてあげないと、いつまでもその人は死ねないんだろうな、と。




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