ぼくらの 〜assasins of hero〜 作:カゲロー@
僕らは、先生を殺した。何よりその先生が望んでいた死だったけど、僕ら28人は皆、涙した。
色んな事を教わった。社会で生きていく術、弱者が生き残る術、力の使い方、自分にとって大切な物……
そして僕らは、一時期英雄として世間に持ち上げられた。全く望んだ物じゃ無かったし、殺せんせーを悪者と言う彼らに腹立たしささえ感じたけど、"地球を救った"という事、それは殺せんせーも肯定してくれたし、僕ら自身も少しだけ、誇りに思えた。
けど、僕らは思わなかった。もう一度、地球の命運を賭ける事になる事を。そして、他ならぬ僕らの命を賭ける事になる事を。
殺せんせーを暗殺してから一年。あの夜の欠けた月はもう無く、ベランダから見上げた空には、一回り小さな満月が輝いていたのだった。
「渚ー、ご飯よー」
「はーい、今行く!」
感慨深くその空を見ていると、母さんの声が部屋の外から聞こえた。僕は窓を閉め、スマホに最後の一文を載せた。
不意に月が見たくなったのは、きっと明日の事を思い、懐かしくなったのだろう。月は、あの長いようで短かった三年間の象徴のような物だったから。
「……よし、これでいっか」
出来た文を送信し、スマホをポケットに突っ込んだ。明日の夜の事、今からもう楽しみで仕方がなかった。
『じゃあまた明日!皆で集まるの、楽しみだね!』
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松来軒、村松君の両親が営むラーメン屋だ。今日は店を貸し切り、皆で集まる事になっている。
ガラガラガラ
店の戸を開けると、懐かしのクラスメイト達が集まっている。僕が最後みたいだったようで、28人全員の顔がそこにはあった。
「おー渚、遅かったなー」
「ごめんね。あの高校授業数多くてさ、いつも夜になっちゃうんだよねー」
「良いって良いって。こっち来いよ」
杉野にそう言われ、奥の席に向かう。そこには、かつて修学旅行で京都を一緒に回った、4班の皆で座っていた。
「渚、久しぶり!」
「お久しぶりです、渚君!」
「久しぶり、渚君」
「久しぶり〜渚、元気してた?」
「うん、皆久しぶり!皆も元気そうで何よりだよ」
そんなやり取りをして、席に着く。茅野の隣、杉野の向かいだ。カルマと奥田さんは奥に座っていて、神崎さんは奥田さんの隣。杉野はラッキーな事に、神崎さんの隣に居た。卒業してから、少しは積極的になったのかな?
「なんか頼むだろ?ほらこれ、メニュー」
「ありがと……うーん、どれにしよう……」
「よう渚、久しぶりだな!」
僕が悩んでいると、後ろから声がかかる。振り返ると寺坂君、そして3班の皆にイトナ君もいた。
「久しぶり!」
「ラーメンで悩んでんのか?じゃあこれにしてみろよ!」
そう言って寺坂君が指したのは、松来ラーメンと書かれたラーメンだった。
「この店オリジナルなの?」
「いや、村松のオリジナルだ。自分でダシまで研究して作ったんだとさ」
「へぇ、これにしてみようかな」
「ダシは中々だ。麺はまだまだだがな。インスタントラーメンを食ってるようだ」
「んだとイトナ!?」
イトナ君の毒舌に声を上げたのは、厨房に居る村松君だった。
「じゃあ村松君、この松来ラーメンで」
「あいよ」
メニューを置き、一息つく。
店を見渡すと、クラスの皆が和気藹々と話していた。身長が伸びてたり、髪型を少し変えたりしていたけど、岡野さんが前原君をど突いたり、中村さんが速水さんと千葉君にゲス顔で絡んだりしているのを見たりしてると……
「……やっぱ、変わって無いね」
そう思えてくるのだった。
「まぁな。やっぱ一年そこらだしな」
「でも、皆さん大人になった気がします。雰囲気というかなんというか」
「見た目だって変わってるよ。ほら、茅野さんもちょっと背が伸びてる」
「そうそう!前の身体検査で4cmも伸びてたんだ!!」
「身長なら俺も3cm伸びてたよ〜」
「カルマ見たとき、デカッ!て思ったもんなー。俺は高校入ってからはあんま伸びなくてさぁ」
「私もあまり。杉野君はそのままでも結構背が高いよ」
「え?はは、そうかな……渚はどうだったんだ?」
杉野の言葉にギクッっとする。なんでこっちに振るのさ……今まで目を逸らしながら水をちびちび飲んでたのに……
「え?ああ、えーと……僕は……」
「渚君は伸びてないんじゃない?」
「ちょ、カルマ!」
なんて事を言うのさ!僕だって1mm伸びたし!
「そ、そうか。酷な事を聞いたな」
「謝るなら最初から聞かないで!」
「んー渚君、このままだと私に追い抜かれちゃうんじゃなぁい?」
「それだけは絶対嫌だ!!」
茅野に肩を組まれてそう言われたので強く反論した。もしそうなったら僕立ち直れなくなるから!
「渚も来たし、乾杯しないか?」
すると、磯貝君がグラスを持ちながら立った。
「おぉ、良いね。やろうやろう」
前原君がそう言い、皆もグラスを持ち始める。
「じゃあ……ここにいる皆、忙しいのによく集まってくれたね。本当は烏間先生とビッチ先生も呼びたかったけど、予定が合わなくて呼べなかった。あれから一年経ったけど、皆それぞれの道へと頑張っていると思う。でも、この時間は色んな事忘れて、思いっきりはしゃごう!!
それじゃあ、皆のこれからを願って!」
「渚君の身長が伸びるのも願って!」「ちょカルマ!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
「乾杯!…ってこんな乾杯やだ!!」
「「「「「はははははっ!」」」」」
店に、皆の笑い声が響く。皆楽しそうで……僕も自然と、笑顔になれた。
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「……ん?もうこんな時間かぁ」
茅野がそう呟いたので、時計を見上げた。時刻は10時半。時を忘れて話していたせいか、体感時間の割に随分遅くなっていた。補導時間を考えたらもう家に向かった方が良いかもしれない。
辺りを見渡すと、人数もだいぶ減っていた。それぞれに予定があり、早くに帰っていったのだ。僕達のテーブルも、杉野、カルマ、そして奥田さんが既に帰っていた。
「さて、もうお開きにするか。皆、帰りの支度してー」
「「「はーい」」」
磯貝君の言葉に、皆が声を上げる。
「なんか、あっという間だったねー」
「うん。沢山話したからね」
「なんか……名残惜しいけどね」
「……まぁ、こんな近くに住んでるんだし、また近いうちに会えるよ!」
「……うん、そうだね!」
茅野と神崎さんとそんなやり取りをしたのを最後に、皆で店を出た。村松君の見送りに手を振って返すと、皆同じ道を歩いた。
また近いうちに会える……そのとおりだ。寂しくて、どうしようも無くなっても、皆にすぐ会えるんだから。
「じゃあ、僕こっちだから。またね」
「「「じゃあなー」」」
「「またねー」」
残った12人に別れを告げ、道を曲がった。そして……
「ヴォオエエェェエエェッ!!」
電柱付近に、吐瀉物を撒き散らしている男の人に、出くわしてしまった。後ろの皆も見ていたようで、立ち止まり顔をしかめていた。
「うぅ、気分が悪い……ヤケ酒なんて慣れない事をするもんじゃありませんねぇ……」
出来れば関わりたく無かったが、ほっとくのも気が引けたので話しかける事にした。
「えーと……大丈夫ですか?これティッシュですけど……」
「あぁ……どうもご親切に……」
その人は口元を拭うと、僕達に向き直った。
街灯に照らされたその人は、黒目黒髪の端正な顔立ちだった。身長は成人男性にしては低い。僕が言えた事じゃ無いけど……
青い顔をしたその人は酒を飲んでいたようだ。かなり匂ってきている。
「はぁ……人生良い事無いからねぇ……ついヤケになって飲んじゃうんだけど、酒に弱い方でねぇ……ウォブォッ!」
「そ、そうなんですか……」
再び吐く男の人に、僕は後退りしながら答えた。他の皆も心配したのか、こっちに来る。
僕がポケットティッシュを丸ごと渡すと、男の人はティッシュを沢山取り出し口を抑えた。少し落ち着いた所で、再び話し出すのだった。
「はぁっ……君達は?」
「あ、えーと……僕ら中学のクラスメートで、久しぶりに集まってたんです。貴方は?よかったらタクシーでも呼びますか?」
磯貝君が紳士対応をする。しかし、男の人はそれに答えず、順々に僕らの顔を見始めたのだった。
「……12、13…1人足りないか……」
「?どうしたんですか?」
「……まぁ構わないか。後々1人補充すれば良いだけだ」
「……おいアンタ、人の話無視して何ブツブツ言ってんだーー」
「ねぇ君達」
寺坂君が声を上げるが、その言葉を遮って男の人は話し始めた。
僕らはまだ知らなかった。これが、地球全体と、そして他でも無い僕ら自身の命運を分けた、戦いになるのだと。
「……地球を救う、ゲームをしてみないか?」
拙いので、矛盾する点、原作との相違点があると思いますが、それでもみて頂けると嬉しいです。出来れば感想等で教えて頂けるととても嬉しいです。
他の作品も書いているので更新は遅くなるかもしれませんが、これからもよろしくお願い致します。