ぼくらの 〜assasins of hero〜 作:カゲロー@
「ねぇ君達。地球を救う、ゲームをしてみないか?」
唐突にそう言われ、僕らは口ごもってしまう。
「えーと……ちょっと意味が分からないんですけど……」
茅野が遠慮気味に聞く。僕ら全員が同じ思いだった。2年前、初めて殺せんせーが来た時よりはインパクトが薄いが、それでも初対面の人にゲームの誘いをするのはおかしな話だ。
「そのまんまの意味ですよ。これから14体のロボットが地球に侵略してきます。それを君達は迎え撃って下さい。君達が負ければ地球は滅び、ゲームオーバーって訳です」
そう言って男の人は懐からタブレットを取り出し、見せてきた。
そこには、二体のロボットが映っていた。一体は六足の虫の様なロボット。そしてもう一体は、線が細い人型のロボットだった。1枚目は二体が向かい合う所、2枚目以降は、その二体が戦っている所だ。
渡されたタブレットをスクロールしながら、皆で見た。そして、どれを見てもゲームとは思えないほど、リアルだったのだ。
「凄い……本物みたい……」
「迫力あるね……」
岡野さんと竹林君がそう呟く。正直、興味が湧くのだが……
「とても面白そうです。ですが……初対面の相手の誘いを受けるのは、その……」
「身の安全が保障できない、ですね。そう、君は正しい。こんな胡散臭い男の話なんか、信じない方が良いかもしれない」
磯貝君が言いにくそうに言うも、男の人は気分を害した風は無く、普通に答えたのだった。
予想外の対応に、僕らは少し戸惑う。
「……でも、少しでも魅力に感じたなら、参加してみる価値はあると思いますよ。大丈夫、ゲームの事に嘘は無いし、僕に君達を拉致監禁する気も無い」
何故だろう。ただのゲームなのに、とても魅力的に感じるのだ。それは皆も同じ様で、しっかり者の磯貝君も迷っていた。
だから、僕は口を開いた。
「この人、嘘付いて無いよ」
「な、渚?嘘付いて無いって……」
「うん。この人の波長に乱れは少しも無い。僕達が会話してからずっと」
「じゃあ……本当にゲームを……」
僕の言葉で、皆の意識は俄然ゲームをやる方向に向かっていった。
「なら良いんじゃねぇか!?写真見ても凄ぇ面白そうだったぜ!?」
「うんうん、楽しそうかも!?」
岡島君、矢田さんがそう言い、皆からもどんどんと肯定的な意見が出てくる。
しかし、神崎さんが口を開いた。
「でも、時間が……」
「「「「……あ」」」」
「……確かに、流石にもう時間が…」
「うん、私の家も特別に許可貰ってる分、破るわけにもいかなくて……」
磯貝君の呟きに、神崎さんはそう漏らす。厳しい家庭だと聞いたし、しょうがないのだろうが、ゲーム好きの彼女にとっては苦渋の選択だろう。
すると、問題無いとばかりに男の人は口を開いた。
「今日は"契約"だけで構いません。名前を言うだけだからすぐ終わりますし。後日また集まってもらえれば」
「それなら……良いんじゃないか?」
「うん!やってみようよ!」
磯貝君と不破さんがそう呟き、皆も賛同する。僕も乗り気だった。
「それは良かった。では……」
すると男の人は、近くにあったゴミ捨て場を漁り始めた。そしてその中から、何かの金属で作られたスタンド状の物体が出てきた。
「これに触れて名前を言ってくれ。それで契約完了だ」
「え、えーと……」
確か明日は生ゴミの回収日だったはずなのだが……
「じ、じゃあ俺から」
流石磯貝君、汚れ役でも進んで買って出てくれる。
「磯貝悠馬」
そう言ってスタンドに手を触れた。続いて僕らも歩み出る。
「潮田渚」
そう言って触った瞬間、何かゾクっとした。金属で出来ていると思っていたそのスタンドは、実際には全く知らない未知の物質な気がした。
「渚?どうしたの?」
「え?…ああごめん。どくよ」
茅野に声をかけられ我に返る。他の皆も並び、契約を待っていた。
「岡島大河だ!」
「不破優月!」
「矢田桃花だよ!」
「寺坂竜馬」
「吉田大成」
「…速水凛香」
「岡野ひなた!」
「神崎有希子です」
「竹林孝太郎」
「堀部イトナだ」
イトナ君が契約する。あとは茅野だけだが、茅野は遠慮がちに手を上げた。
「あのー、名前は本名じゃないとダメですか?」
「ん?偽名を名乗ってるのですか?それでも構いませんよ」
「そ、そうですか。それじゃ」
そう言って茅野はスタンドの前に立つ。板に手を当て、口を開く。
「茅野カエデ!」
こうして、全員の契約が完了した。
「契約完了ですね。ちなみに、あと1人枠がありますから」
そう言うと、男の人は立ち去ろうとした。慌てて僕らは止める。
「ちょ、ちょっと!後日やるってどうすれば良いんですか!?」
「連絡手段も無いでしょ?」
「ああ、すみませんねぇ。その説明をしていませんでした。連絡については問題ありませんよ。私が君達を迎えに行きます。後に分かりますからご安心を」
「そ、そうですか」
「近いうちにチュートリアルを行いたいと思います。次に会うのはその時で」
そう言って、男の人は踵を返した。でも、あと一つ聞きたい事があるのだ。
「もう一つ良いですか?」
「ん?何ですか?」
そう言って男の人は顔だけこっちを向く。
「名前、あなたの名前だけ教えてくれませんか?」
「名前、ですか………私の事は、"コエムシ"と呼んで下さい」
「こ、コエムシですか……」
「そう。ゲームマスターコエムシ。なんか雰囲気が出てて良いでしょう?」
正直、コエムシというネーミングセンスはどうかと思うけど。
男の人はそう言うと、今度こそ歩き出す。その姿はそんなにしない内に、闇夜に消えてしまった。
「なんか……不思議な人だったね」
「うん。てか……大丈夫かなぁ」
僕はそう漏らした。嘘は付いていなかったとはいえ、見ず知らずの人を信じても良かったのか。
「ま、まぁでも、面白そうだったし良いじゃねぇか!?多分あのゲームのβテストの人を探してたんだよ!?ラッキーだろ!」
「……まぁ、そうかもね」
岡島君の言葉に説得され、僕は無理矢理納得する。
「やっべ!?もうこんな時間じゃねぇか!?」
すると寺坂君がそう声を上げた。僕も慌ててスマホを開くと、11時まであまり猶予が無かった。
「じ、じゃあまたね!皆!」
返事を返す皆に手を振り、僕らは慌てて走り出す。
なんか不思議な出会いだったけど、これからどうなるんだろう。そんな事をふと思いながら、僕は帰路についた。
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「じゃあね」
「おう渚。じゃあな〜」
高校の友達に別れを告げ、僕は教室を出る。今日は先生方の会議のおかげで早く帰れる事になった。時刻は3時だ。
下駄箱から靴を出そうとすると、ポケットの中のスマホが揺れた。
茅野カエデ:コエムシさんの迎えって来た〜?
開くと、そんな文面が出てくる。僕は軽くスマホを操作し、返答してやる。
潮田渚:まだだよ。あれから3日だよね。
そう返してやり、もう一つ"また後で"と打ってやりスマホをしまう。これから歩くのにスマホを弄りながらは良くないだろう。
校門を出て、いつもの帰り道を歩きながら、思った。
あれから3日。短い期間だが、何かを待たされているととても長く感じた。
あの後、E組のグループチャットでゲームについて話した。契約した人は楽しそうに話し、あの場に居なかった人はそれを羨ましがっていたのだ。
ただ一つ、気になることが。それは、律が言った一言だった。
『話に聞くようなゲームのβテストは、ネット上の何処にも記録がありませんでしたよ?』
企業で作っていれば、いち早く情報を流していそうなものだ。それが無いという事は、あれだけのグラフィックを個人が再現しているという事になる。
いささか不自然だったが、そこについてはあまり追及しなかった。
何にせよ、僕らはコエムシのコンタクトを待つだけだ。そう思い、曲がり角を曲がった瞬間だった。
「待たせましたね渚君。時間ですよ」
突然コエムシの声が聞こえた。振り向くが彼は居ない。辺りをキョロキョロしていると……
いきなり、視界が暗転した。
今度、設定についても書きたいと思います。分からないところとかあると思うので。
あと、「夕凪颯の暗殺教室」の方も更新していきたいと思っています。大変ですが、頑張りますのでこれからもよろしくお願い致します。