ぼくらの 〜assasins of hero〜 作:カゲロー@
次に目を開けると、そこはもう別の場所だった。薄暗く、他には何も無い空間。床かどうか分からない所に僕は立っていた。
「ここは……」
「コクピットですよ。ロボットのね」
僕の疑問に答えたのは、コエムシの声だけ。何処にいるのかと聞こうとした時、慣れ親しんだ声に遮られた。
「渚!」
「茅野?それに、皆……」
さっきまでは居なかった、契約したメンバーが全員居たのだ。
「おい!何処なんだよここは!?そもそもどうやって連れて来た!?」
「聞いてんだろ!?コエムシ!?」
寺坂君と吉田君が声を上げる。少し苛立っているようだったが、2人とも得体の知れない恐怖が見えた。他の皆も、僕自身も、今までに経験した事の無いイレギュラーな事態に困惑している。
「3日ぶりです皆さん、待たせましたね。チュートリアルを始めます」
そんな僕らの前に……一匹のヌイグルミが現れた。お世辞にも可愛いとは言えないような、そんなヌイグルミ。
いや、コレの外見はこの際どうでもいい。問題なのは……
「ヌイグルミが……喋った!?」
岡野さんが思わずそう言う。
この奇怪なヌイグルミは、どう言うわけか喋り、宙にプカプカと浮いていた。
「それにその声って……」
「はい。私はコエムシです」
「「マジで!?」」
寺坂君と岡島君が揃って声を上げる。にわかに信じられないが、こうして目の前にある以上信じるしかないのだろう。
「あの、コエムシ……さん?」
「コエムシで構いません。皆さん呼び捨てにしていたではありませんか」
「それじゃ……コエムシ。ここはどこなの?」
「どうやって連れて来たの!?」
「そもそもお前は何なんだーー」
「ああぁあ!もう!いっぺんに話さないで下さい!一つ一つ答えますから!
まず、ここは先程も言った通りロボットのコクピットです。先日見せたロボット、それの中です」
「それじゃここは……あのロボットの中……?」
「次に!どうやってここに連れて来たかは簡単です。テレポートでここに連れて来たんです」
「そんな話、信じられる訳がーー」
「だったら、他の方法でどうやったら連れてこれると?」
岡島君の言葉をコエムシは遮り、そう言う。確かに、僕が来た時には居なかった皆がいきなり現れたのだ。あんなの僕らの知っている技術で出来る事じゃない。
「はぁ、信じられない気持ちも分かりますが、信じて下さい。どうせ今後も体験するでしょうし。
最後に、私の事ですが……"コエムシ"はゲームのサポート役です。各種転移やゲームサポートをしますので」
「じゃあ、初めて会った時の姿は?」
「あれは私の本当の姿です。まぁ機会があればその内話しますよ。時間が押してますので、早くチュートリアルに入りましょう」
コエムシがそう言うと、今までただの空間だったこの場所の全面に、"外の世界"が映し出される。そこには、ロボットの外の世界の光景があった。
ただ違うとすれば……それをとんでもない高さの所から見ている事だ。海の上に立っているようだったが、水面が眼下の遥か下にあった。
「このロボット……どんだけ大きいの?」
「そうですね……今は海に少し浸かっていますが、全長が大体400メートル程です」
「よ、よんひゃく!!?」
確か見せてくれた画像でも、海での戦闘が描かれていた。比較するものが周りに無かったため、勝手に数十メートル程のものだとイメージしていた。
それが、400メートルと言うのだ。スカイツリーなど軽く超えてしまっている。僕はそのスケールの大きさにただただ驚いてしまった。
「ねぇ、あれ……」
そして、目の前にはもう一体ロボットが。形は僕らと同じ人型、僕らのよりも少し大きく、白いボディが光沢を放つ。顔には仮面の様なものがつけられ、そのスリットには光点が8つ。きっと、これが見せてくれた画像にあった"敵"だ。
「ほんとに、ロボットの中に入ってるんだ……」
「ここは、どこ?」
「太平洋側の海です。陸地には人がいますので」
速水さんの問いにコエムシはそう答える。
「さて、今目の前にいる敵を倒してもらうのですが、一番最初は彼に操縦してもらいます」
「え?彼って誰?………ってうわっ!!」
僕は思わず声を上げた。いきなり、椅子に座った男の人が現れたのだ。
その人は僕らの顔を見ると、微笑んで見せた。しかし、その笑みは大きな悲しみを帯びていた気がした。
「君達が……次のパイロットか……」
「彼が実際に戦闘するので、それを見てください」
その人が呟くと、コエムシがそう言う。この人もこのゲームを作る人なのだろうか。
「……それじゃあ、引き継ぎ戦を始めよう」
「……引き継ぎ戦?」
チュートリアルでは無いのか?そう思い誰かが呟くが、直後に僕達のいる部屋が大きく揺れた。そしてそれが、ロボットが動いている事によるものだと分かる。
「まず、ロボットの動かし方について。このロボットは念じれば動く。大事なのはイメージだ。上手くイメージできれば、ロボットは期待に応えてくれる」
男の人はそう言った。確かに、リモコンも無ければ操縦席にあるような機械類も無い。
ロボットは歩いて敵に近づき、半分まで距離を詰めて歩みを止めた。
「次に、このロボットの攻撃方法だ。大きく分けて二つある。一つはエネルギー弾」
男の人がそう言うと、ロボットは手を胸の前にかざした。そして、ロボットの手と手の間に、光が集まり始めた。
「基本、ロボット同士の戦いにおいて遠距離攻撃は牽制にしかならない。それだけ、ロボットは強固に出来ている」
すると、敵のロボットの顔が光りだす。そしてその直後、レーザーが一直線に僕らに向かって放たれた。
「うわっ!!?」「きゃあっ!!」
思わず声を上げるが、特に変わった事は無かった。確かに、これではビームは攻撃の役には立たないだろう。
「しかし、この機体は違う。威力は溜めた時間に比例し、最大まで溜めれば機体にダメージを与える事も可能だ」
最大まで溜めたのであろう大きな光の玉が、打ち出された。飛んでいくエネルギー弾は見事肩に命中し、装甲を一枚外した。
「凄ぇ……」
「腕や足に当てれば相手の戦力を大きく削げる。ただ、レーザーより当てにくいし、溜めが必要な分隙も多い。使う機会は限られるだろうな」
「それじゃ、他の攻撃方法が?」
「ああ。これだ」
男の人がそう言うと、腕の肘部分から何かが伸びた。スルスルと伸びていくソレは、一言で表すなら"鋭利な触手"だった。
金属で作られているはずなのに、ヌルヌル動いている。硬質感を全く感じさせない感じだ。でもそれは途中までだ。先端部分には、鋭利に光る刃が着いていた。
「この刃は見た目通り……いや、見た目以上の攻撃力を持つ。特殊な金属と技術で作られたこれは、並の機体の装甲なら切断できる程だ」
そう言うと、ロボットの触手がムチのように唸った。それは横薙ぎに飛んでいき、腕に命中した。そしてなんと、その腕を切り飛ばしたのだ。
「おぉぉ!!」
「本当に攻撃力高いんだ……」
「今のは特に上手くいった例だ。普段は何回か当てないといけない。だがそれでも、この触手の威力は絶大だ」
そう言って、次々に触手を繰り出していく。伸びる触手で戦うという性質上、敵と一定距離を保って戦っているため、こちらが一方的に攻撃している。
相手の装甲が段々と歪んでいく。装甲が弾き飛ばされた部分に、男の人はどんどん追撃していく。
「凄い、完全にこっちのペースだ!」
「もしかして、このまま勝てんじゃねぇか!?」
「いや……相手もくるはず」
竹林君の言葉通り、相手もただ一方的にやられるわけでは無かった。
追撃してくる触手を腕で迎え撃ち、そして突進してきた。
「迎え撃つの!?」
「いや……肉弾戦はなるべく避けた方が良い」
そう言って、ロボットを右にステップさせた。しかし、一瞬遅かったのか敵の伸ばした腕が僕らのロボットの腕に当たった。そして……一撃で腕を飛ばしたのだ。
「はぁ!?一撃かよ!?」
「本体は基本、攻撃力や耐久が他の機体より弱くなっていて、機動力が高くなっている。できるだけ避ける事に徹し、なるべくだが肉弾戦は避けるべきだ」
「でも、それじゃ決定打は与えられないんじゃ……」
「それはやりようさ」
岡野さんの不安そうな言葉に、男の人は問題無いとばかりに返した。
横に移動したロボットは、右足を軸に体を時計周りに捻った。
触手がうねる。回転の威力を乗せた触手は、一直線に敵に向かって伸びた。その速さは音速をも超えて敵に直撃し、敵の胸の部分を貫通した。
「凄ぇ!あの分厚い装甲をぶち抜いたぜ!」
「そして、最後に。敵には必ず"急所"が設定されている。それを破壊しろ」
すると、敵の顔にあった光点が全て消えた。
「あれが、倒した合図なんですか?」
「ん?あぁ…えーと、そういう事だ」
磯貝君の問いに、若干言葉を濁していたのが気になったが、これで終わり。勝利という事なのだろう。
すると、コクピット内が元の薄暗い部屋に戻った。男の人はふぅ、と一息つき、再び僕らに向かい合った。
「今回は結構運良く戦いが出来たかな。実際はもっと苦戦する時があるかもしれないよ」
「はは……気を付けますね」
「最後に言うが、このロボットは扱いが難しい。機動力はあって避けやすいが相手の攻撃の一つ一つが決定打になりうるだろう。だが、上手く使えれば絶大な威力を発揮する」
「とんだじゃじゃ馬なヌイグルミですけどね」
「……ヌイグルミ?」
「コエムシはロボットの事をそう呼んでいるんだ。
……さて、チュートリアルは終わりだ。僕の役割も、ここで」
男の人がそう言う。それを、僕は声をかけて止めた。
「あの!えーと、色々教えてくれて、ありがとうございました!」
「…………」
すると男の人は、僕の顔をじっと見た。最初に来た時に見せた、悲しみの顔で。
そして彼の波長は、驚くほど静かだった。あれだけ壮大な戦闘を終えた後なのに。
「……君達」
「は、はい!」
「………頑張れ」
それだけ言うと、男の人はコエムシを見た。そして、彼の姿が突然消えたのだ。
「コエムシ、あの人は?」
「戻りました。元いた場所に」
それだけ言うと、コエムシは再び振り向いた。
「さて……戦い方も分かった所で、早速最初の操縦者を決めましょう」
するといきなり、僕の前に椅子が現れた。
「なんだなんだ!?」
「これ……」
椅子が一つずつ、何も無い所から現れる。円形に並べられていく椅子の一つに、僕は見覚えがあった。
「これ、僕の部屋にある」
「私も、これ私のやつ!」
どうやら、皆一つずつ自分の椅子が出されているようだ。僕は自分のに近づき、触れようとした。しかし……
突然、全ての椅子がルーレットのように回りだした。僕は慌てて後ろに引く。
椅子の回転は段々と遅くなり、床にはさっきまでなかった紋様が現れた。そして、イスが止まる。
「誰か、名前を呼ばれた人は?」
コエムシがそう言い、皆が誰だ?と顔を見合わせる。
すると、手を挙げたのが一人。
「……俺だ」
それは、イトナ君だった。彼の椅子は、丁度紋様の先端部分に重なっている。きっと、彼が選ばれたのだろう。
いつもの落ち着いた感じだったが、不思議とワクワクしているようだった。
「堀部イトナ君ですか。戦闘は後日、また今日みたいに迎えに行きます」
コエムシはそう言う。きっとまた、僕らは転送されるだろう。
その前に、聞いておきたい事があった。
「コエムシ、一ついい?」
「はい、何ですか?」
「これは……ゲームなの?」
コエムシは一瞬黙った。しかし、次に発した言葉は、予想外の言葉だった。
「最初に説明した通り、14体の敵が攻めて来ます。君達はそれを迎え撃つ。負ければ文字通り、地球は滅亡します。そして……」
「そして?」
「操縦者は、自らの命を代償に戦う事になります」
聞き返す時間は無かった。次に見た光景は、家の部屋の中だったのだから。
はい。今回、彼らが使うのはジアースではありません。
設定の何もかもあれですね。あの人に似てますよね。
戦闘シーンとか自信無いですけど、できるだけ頑張って表現していきたいと思います。