ぼくらの 〜assasins of hero〜   作:カゲロー@

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更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした!テストが終わってからもうすぐ1週間になるのに、グダグタしていたせいでこんな始末に……

イトナ編完結です!では、本編どうぞ!


第5話 「堀部イトナ」③

茅野が最後に転送され、全員が集まる。

 

「さ……さっきまで家にいたのに!?」

 

「毎回驚かされるわね………」

 

「コエムシさん、どうやって俺達をゲームに参加させてるんですか?」

 

茅野、速水さんが呟き、磯貝君が疑問を口にする。正直、僕らの皆が疑問に思っているだろう、どこにいても参加させられるのだから。VRのゲームだとしたら、どうやっているのだろう?

 

「前にも言いましたよね?ただの瞬間移動です」

 

だが、コエムシの答えはそんなものだった。それで僕らが納得するはずも無い。

 

「んなゲームの設定はどうでも良いんだよ!どうやって俺らをその……ARだかっていうゲームにブチ込んでるんだーー」

 

 

「寺坂」

 

 

まくし立てる寺坂君の言葉を、イトナ君は遮った。そして……

 

 

 

 

 

「…………ARじゃなくてVRだ馬鹿」

 

「おっ、おまっ、分かってらぁそんぐらい!言い間違えだっつの!」

 

「似てるが厳密に言えば違う。それにそんな言い間違えするわけないだろう。馬鹿」

 

「んだと!?」

 

いつも通り…いや、昔の毎日の光景に、思わず苦笑する。

すると一転して、イトナ君の顔が真剣になった。

 

「それと……少し静かにしてくれ。集中してるんだ」

 

「お、おう……すまねぇ」

 

イトナ君はそう言うと、椅子に座って目を瞑った。何故だろう、凄い静かなのに、波長が乱れてる……

操縦するのを前に緊張してるのかな?それとも……

 

すると、コクピット内の全面に光が広がっていく。そして、全面に外の世界が映し出された。前を見ると、既に敵は現れ始めていた。

敵は人型。青色の機体で、前回チュートリアルで戦った敵よりも大きい。顔や腕、胴体は盾のような形になっている。全体的に重厚感がある機体だった。前回と同じように顔の辺りには仮面みたいなものがあり、今回は………光点は5個だった。

 

「人型ですね……もしかしたら手強いかもしれません」

 

「はぁ!?一番最初からそんな強ぇ奴当てんのかよ!」

 

コエムシの言葉に吉田君が声を上げる。敵はランダムのようだけど、普通は段々と強くしていくものじゃないの?

すると、寺坂君がイトナ君の肩を叩いて言った。

 

「まぁコイツなら大丈夫だろ!E組イチのメカ使いだからな!俺らの順番回ってくる前に負けるなよ!」

 

そう言って肩をバシッと叩く。それに対しイトナ君は……

 

「……あぁ。絶対に負けない」

 

そう返したのだった。

てっきりいつもの様に毒を吐かれると思っていたのだろう、そんなイトナ君を訝しんで見ながら寺坂君は席に着く。

敵の機体が半分ほどまで見えてくる。全体が出てきた時、戦闘が始まるのだろう。少しの静寂が訪れる。

 

「……そういえば、このロボットってなんて名前なんだろ?」

 

そんな静寂を破ったのは矢田さんのその言葉だった。そういえば、名前とかは無かった気がする。

 

「コエムシは確かヌイグルミって呼んでたよね」

 

「はい。どのロボットもヌイグルミと呼んでいますし、固有名は基本ありませんが……」

 

「でもそれだと、区別するとき大変だよね~」

 

不破さんの言葉に、うーんと皆が頭を悩ませる。E組の皆のセンスはコードネームを決めた時に鍛えられている(悪い方向に)のだ。

何かないだろうかと悩んでいたとき、茅野が手を挙げた。

 

「実はさ、前回戦ってる時に思ったんだけどさ………このロボット、殺せんせーに似てない?」

 

「「「あぁ~……」」」

 

「確かに、触手っぽいので攻撃するしな」

 

「すばしっこいし」

 

「エネルギー砲使えるしな」

 

確かに、それっぽい感じがする。殺せんせーにしてはゴツゴツとがってるなぁと思い苦笑するが、不思議と僕もしっくりきた。

 

「どうだ?イトナ?」

 

吉田君がパイロットのイトナ君に向けてそう言う。少し驚いたように表情を変えた彼は、少し俯いた。

 

「殺せんせー………殺せんせーか」

 

イトナ君は繰り返し恩師の名を呟き、一瞬微笑んだ。

 

「じゃあ殺せんせーにけってー!」

 

茅野が元気にそう言う。僕らの先生に続き、このロボットも彼女に名付けられる事になった。

そうこうしているうちに、敵が完全に現れる。 全長はこのロボット……殺せんせーよりもかなり大きい。鉄の塊で出来た腕や胴体から感じる重厚感が、僕らを圧倒した。

 

「あぁちなみに、この戦場は君達の世界ではありませんので。存分に戦って下さい、イトナ君」

 

そう言われて外の世界を見てみる。そこは荒廃した東京だった。見覚えのあるタワーやビルがポッキリと折れていたり、辺りの建物には窓ガラスが一枚も無かった。人の気配も全く無い。ゲームでよくあるステージのようだが、なんともリアルだった。

けど、なんか妙な言い回しが気になった。"君たちの世界ではないから大丈夫"とはどういう事だろう?

 

「…………分かった…念じれば動くんだよな?これ」

 

イトナ君の問いに、はい。と答えるコエムシ。そうか、と短く返したイトナ君は、深く深呼吸した。

そして……

 

 

 

 

「………行くぞ。殺せんせー」

 

遂に、殺せんせーが動き出した。

初めに動き出したのはこちら。手を胸の前にかざし、そこに段々と光が集まっていく。

相手は動かない。こちらの動きを見て動くのか?それとも……

イトナ君がエネルギー砲を溜め終え、放つ。その光の玉は敵に向かって飛んでいく。敵は腕を胸の前に構えて盾のようにした。ガードするのか、そう思っていたのだが……

あろうことか、エネルギー砲は着弾した後、跳ね返って返ってきたのだった。

 

「ッ、危ない!!」

 

不破さんの叫びに間一髪でイトナ君は躱す。直撃を食らっていれば殺せんせーの体はタダでは済まなかっただろう。

 

「チッ、遠距離攻撃を跳ね返す能力か……!」

 

「イトナ!触手を使え!」

 

「分かってる!!」

 

磯貝君の言葉にそう叫ぶイトナ君。殺せんせーの肩と肘から、スルスルと四本の触手が伸びていく。

殺せんせーは一歩踏み出した。力強く踏み込み、途轍も無いスピードで相手に向かっていく。相手は迎撃しようとするが、殺せんせーは相手の間合いの一歩外で止まった。そして、体を旋回して触手を振り回し、先端の刃で相手の胴を斬り裂いた。

 

「よしっ!!」

 

「やるじゃんイトナ!!」

 

吉田君が声を上げ、岡野さんが賞賛する。しかし、イトナ君はそれで止まらない。

 

「らああぁぁあああッ!!」

 

触手の連撃は続いた。四本の触手は縦横無尽に振り回され、切っ先は超威力を生み出しながら敵を嬲っていく。

すると、コエムシが口を開いた。

 

「相手は人型、加えて遠距離攻撃の無効化能力を持っています。接近戦に持ち込まれたら厄介ですよ」

 

「ッ!分かったッ!!」

 

敵が腕で触手を振り払いながら一歩踏み出す。接近戦に持ち込もうとしているのだろう、コエムシの予想が当たっている。

イトナ君は先程よりも少し落ち着いていた。バックステップで下がりながら触手で追撃していく。流石元触手持ちだ。触手を上手く使って冷静に対処している。

 

「これならいけるんじゃね!?」

 

 

「流石だな!この調子でーー「まだだ……」ーーイトナ?」

 

 

盛り上がりを見せていたコクピット内に、その声は妙に響いた。

勝利への高揚、悦楽、そんなものは彼の瞳には全く無くて、まるで彼だけが別のものを見ているようだった。

 

「アイツを倒すまで……終わらない!!」

 

そう言って、イトナ君は敵を見据えていた。緊張、焦燥……恐怖、およそゲームをしてるだけでは感じないであろう感情の数々……

……まさか、彼は嘘をついて……!?

 

 

「イトナ君!まさかーー」

 

僕の言葉は、遮られた。

 

 

 

「はあぁああああッ!!!!」

 

 

 

彼の叫びに共鳴するように、殺せんせーは力強く地を蹴った。

相手は右腕で横薙ぎに振ろうとしていた。殺せんせーは身をかがめてその攻撃を回避する。頭上をもの凄いスピードで通っていく腕に戦慄しながらも前を見た。

イトナ君は決定打を与えるべく腕での攻撃に切り替えた。いくら貧弱とはいえ、この推進力を乗せた攻撃は触手の比では無いだろう。殺せんせーの全推進力を乗せた突きが胸を捉えた、そう思った。

しかし……

 

「なッ!!?」

 

相手の上半身が急に180度回ったのだった。空いていた左腕がもの凄いスピードで迫ってきた。

 

ガアァアン!!

 

「きゃあっっ!!」「うわぁっっ!」

 

大きな衝撃がコクピットにも伝わってくる。目の端で捉えたが、イトナ君は咄嗟に四本の触手を重ねてガードしていた。それでもこの衝撃だ。まともに食らってたら本当にヤバい!

 

「ッ!イトナ君!次の攻撃が!」

 

「チィッ!!」

 

右腕が追撃を加えるべく迫ってくる。イトナ君は咄嗟に触手で牽制しつつ、バックステップで距離を取った。先程まで殺せんせーがいた場所を分厚い金属の腕が音速にも匹敵する速さで通っていく。大破する殺せんせーのビジョンが鮮明に浮かび、もしものことを思うとゾッとする。

 

「やはりですか……ここは中距離から触手で戦うのが得策でしょう」

 

「つってもコエムシ、それじゃ決定打は与えられねぇだろ!?あの分厚い装甲の中に急所ってのがあるなら直接攻撃していかないとまずいんじゃないか!?」

 

「前回の戦いでは触手で急所を潰していたでしょう?やりようはいくらでもあります。それに、伝え忘れていましたが戦闘時間は48時間あります。それを過ぎるまでは、いくら戦っても構いませんので」

 

コエムシの言葉に驚く。48時間といえば丸二日だ。それだけ長期戦になる事もあるというのか。

 

「チッ、そんな長期戦も望めなそうだ……見てみろ」

 

イトナ君の言葉に皆が敵を見る。

相手は上半身をぐるぐると回しながら、殺せんせーを破壊せんと猛攻を繰り出していた。イトナ君が上手く触手を使ってバックステップで避けているが、これではこちらから仕掛けられない!

 

「クッ!……一旦背を向けて距離を取るか…」

 

殺せんせーが触手で敵を払い、それと同時に殺せんせーは踵を返そうとした。

 

「ッ!?イトナ君!!敵がッ!」

 

しかし、茅野はそう叫んだ。敵は大きく身をかがめて、素早く足払いをしてきたのだった。破壊された地上を削りながら放たれたその攻撃は、イトナ君が対処する前に届く。か細い脚は簡単に払われ、大きく転倒してしまう。

先程よりも強い衝撃、コクピット内では更に大きな悲鳴が上がる。

しかし、まだ相手の攻撃は止まらない。素早く立ち上がった相手は右腕を大きく振り回した。

 

「イトナッ!ガードだ!!」

 

「くッ…そ!」

 

二本の腕と四本の触手を重ねて攻撃に備えた。が、倒れている状態ではその衝撃をどうしてもモロに受けてしまう。

敵の右腕がうなり、殺せんせーを攻撃する。何とかガードするも、その攻撃で腕と触手のガードが崩れてしまった。

そしてその無防備な所にーー旋回してきた左腕の攻撃が直撃した。

 

ガアァァアアン!!!

 

「きゃああああッッ!!」「うわあああッッ!!」

 

先程の比では無い衝撃が僕らを襲う。しかし、それに気を取られているわけにはいかない。敵は追撃せんと迫っているのだ。

 

「イトナ!すぐに立ち上がって……対処……を……ッ!!?」

 

吉田君よ声が不自然に途切れる。何とか今の状況を確認しようと、外を見た。

 

「なッ……ん…!!?」

 

「嘘……でしょ…!?」

 

皆が声にならない悲鳴を上げる。それほど衝撃的だった。

そこには、殺せんせーが立っていた。僕らは倒れて地に座ってるはずなのに、そこには殺せんせーの"足だけ"が立っていた。

 

殺せんせーは、上下に分断されていた。

 

それは、絶望的な状況だった。

 

「な……こんなんどうやって戦うんだよ!!?」

 

「まぁ、一応待ってれば自然に再生されますが………敵はそんなのを待ってくれないでしょうね」

 

寺坂君の言葉にコエムシはそう返していた。それは、もう為す術が無いという事じゃ……?

コエムシが言うように、敵は待ってくれないようだった。殺せんせーの立ったままの下半身を腕で払い飛ばして退け、倒れている僕らの方へと歩いてくる。

腕を上げ、胸を叩き潰さんと振り下ろしてきたのだった。

 

「ッ…!まだだッ!!」

 

イトナ君がそう叫び、振り下ろされる腕を触手で止めた。

しかし、触手でパワーを生み出すためには切っ先を大きく振り回す必要がある。あの大きな腕を止められるとは、思えなかった。

 

「無理だ……防ぎきれねぇよ……」

 

ジリジリと腕は近づいてくる。岡島君の呟きは、敗北を皆に感じさせていた。

断念、落胆、ゲームだと断ずる皆はそんな思いで椅子に座っていた。

 

でも、僕が感じていた一抹の不安、それが本当なら……

 

 

 

「……っ!イトナくーー「…だだ」……イトナ君……?」

 

 

 

俯くイトナ君は、僕の言葉を遮って呟いた。やっぱり…彼らしく無い。焦って叫ぶのも、諦めが悪いのも、こんなに余裕が無いのも、普段のイトナ君じゃーー

 

 

「まだッ!終われないんだよぉおッ!」

 

 

ジリジリと迫っていた相手の腕が止まる。触手がギシギシと音を立てながら、相手の腕を押し返し始めたのだった。

 

「かつて……触手が俺に、聞いてきた。"どうなりたいか"と」

 

イトナ君を、皆は戸惑いの目で見ていた。所詮ゲーム、どうしてそこまでするのか、と。

 

「俺は力を求めた。けどそれは、俺には必要の無いものだったから……俺は触手を手放した」

 

でも、イトナ君は必死だった。それは、このゲームがゲームで無いと確信しているようで……

 

「でも、今は必要なんだ!全部守れる力が、敵を倒せる力がーー欲しい!!」

 

彼に共鳴するように、触手に力が篭る。爆発的な力を生み出し、思いっきり腕を弾き飛ばした。

イトナ君は、確固たる意志を持った瞳で敵を見据えていた。

 

「はあアァアアアッ!!!」

 

四本の触手がとんでもないスピードでうなる。攻撃を弾かれて無防備になった相手の胴体に無数の斬撃を与えていく。装甲が一枚、また一枚と剥がれていき……

 

「!!見えました!あれが急所です!」

 

丁度胸の真ん中の所に、球体が埋まっているのが見えた。あれがコエムシの言う急所らしい。

 

「これで終わりだッ!」

 

イトナ君の言葉と同時に触手の刃が急所へと向かっていく。

しかし、その刃を敵は左腕で弾いた。何が何でも死守しようとしているのが、伝わった。

追撃せんと、旋回してきた右腕が向かってくる。

 

「ッ!そこだッ!!」

 

するとイトナ君は、四本の触手を伸ばした。腕と足の関節にスルスルと、縄の如く触手を巻き付けてこちらに引き寄せる。

 

「はぁぁあッ!!」

 

そして、殺せんせーの腕を打ち付けて相手を転ばせた。敵は抵抗しようとしたが、触手の切っ先を地面に差し込んだ事によって完全にホールドされ、関節から先をジタバタと動かすだけになってしまった。

 

「上手い!」

 

「これならいけるぜ!」

 

脚が無いので、腕で這って敵へと向かう。触手で押さえつけたまま、殺せんせーは敵の胴体に乗った。

急所は、目の前にあった。

 

「……トドメだ」

 

殺せんせーの手でソレを掴み、本体から引きちぎる。それは花の蕾のような球体だった。

イトナ君は、念じた。それに殺せんせーは答え、その手に力を込めた。急所は破裂し、敵の顔にあった仮面の光点が消える。

 

「敵の急所を撃破。こちらの勝ちです」

 

「「「やったぁぁあっ!!」」」

 

コエムシの言葉に、皆は歓声を上げた。窮地からの大逆転、その戦いに興奮を隠せない様子だった。

彼を、除いて。

 

「いやぁ、やっぱ電子工学E組イチだな!ロボット操縦もお手の物ってわけだ!」

 

「……岡島君」

 

その彼は、今俯いているんだよ……

 

「凄い逆転劇だったよね!ホントカッコ良かった!!」

 

「………不破さん」

 

それをした彼は、ビックリする程落ち着いてるんだよ……

 

「にしても、これが15回もあるのか……」

 

「私きっとあんなに上手く出来ないよ〜」

 

「……皆ッ」

 

「大丈夫だって!なんせ俺らのロボットは殺せんせーだからな!!」

 

「こんなに心強いロボットいないよね!」

 

 

 

 

「皆ッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

たまらず声を上げてしまう。いきなり響く僕の声に、皆驚いていた。

 

「渚…?どうしたの……?」

 

でも、これだけはハッキリさせないといけない。どれだけこの戦いが凄くとも、僕らがこれから戦う事になっても、これだけは………

 

 

「イトナ君……話す事、あるよね……?」

 

僕の言葉に、彼はゆっくりと顔を上げた。驚いたように僕を見る反面、どこか達観した表情を、彼は浮かべていた。

 

「……やっぱ渚は一番の暗殺者だ……よく人を見てる………そうだな、言わないと、いけない……」

 

皆が訝しんで見る中、彼は、遂にその言葉を発した。

 

 

「俺はもうすぐ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー死ぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉は、ある程度予想できていて、

 

 

 

 

 

本当は一番、聞きたくない言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、はは、それはあれだろ?ゲームの設定だろ?別に本当に死ぬわけじゃ……」

 

「死ぬんだ。本当に。それに、これはゲームなんかじゃない」

 

冗談でしょ?そう茶化して終わらせたかった。実際現実味のある話じゃなかったし、最初はゲームだと信じて疑わなかった。

何より、イトナ君自身最初に"あれはゲームだ"と断言したのだ。

 

「だってお前……言ったじゃねぇか。あれはゲームだ。気にするなって!何だったんだよあれは!」

 

「確証は無かったんだ。そんな事言うわけにはいかないだろ。それに……俺だって信じたく無かった。乗ったら、本当に死ぬなんて……」

 

悔しそうにイトナ君は言った。だからきっと、始める前に"ゲームを辞退出来ないか"と聞いたのだ。

 

「でも、もう確信した。それは、俺が転送される前の時……コエムシは、この姿のまま俺の目の前に現れた」

 

「!!?」

 

「人形が現実世界でプカプカと浮き、喋っていた。触れても、何も仕掛けも無かった。最初から最後まで……コエムシは真実しか言っていない。コエムシの存在事態が、真実なんだよ……」

 

寺坂君は焦っていた。それは、イトナ君がこれまでに無いほどに真剣だったから。その真剣さが、彼の言う事が真実である事の証拠になっていたからだった。

 

「……そうだ、これも全て、仮想世界なんだよ。それなら、辻褄が合うだろ?契約を結ぶ前から、俺らは既にこの世界にいた……そうじゃ、ねぇのか?コエムシ?」

 

「……いいえ、全て現実です」

 

「ッ!!?」

 

でも、思考で理解できても、感情でそれを拒否してくる。

だって、信じられるわけない。このロボットを操縦すると、死ぬ?イトナ君は死ぬ?

ありえるわけが無い。そう、断じたかった。けど、全て真実なのだと、彼の、イトナ君の感情が雄弁に語っていたのだった。

 

「おいふざけんなコエムシ!どう言う事なんだーー」

 

 

「寺坂」

 

 

彼の……イトナ君の声が響く。見ると彼は、すっかりトレードマークとなったバンダナを外していた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

はぁ……やっぱ、渚には勘付かれていたのか……

感情を読むという渚の固有能力から、付け焼き刃の嘘は渚には通用しない。それは分かっていた。

……まぁ、気付かれても変わらないか。どうせ、最期には言うつもりだったんだ。

ゲームだと断じたのは、最後の悪あがき。コエムシが嘘を言ってると思い込ませる、悪あがきなのだから。

だから、それが真実なのだと決まった以上、伝えねばならない。

 

 

「俺は、もうすぐ……死ぬ」

 

 

皆の顔が衝撃に染まる。ある者は、先日のコエムシの言葉を思い出していた。渚は……辛そうに顔をしかめていた。

一番粘ったのは、やっぱり寺坂だった。最後まで、俺の死を信じられなかった。信じようと、しなかったんだ。

 

でも、真実は違うのだと、残酷なのだと、伝えねばならない。だから、俺は口を開いた。

 

 

「寺阪」

 

 

俺はバンダナを外した。正式にE組の一員となり、その際に触手を抑えるために付けていたもの。なんだかんだで気に入ってずっと付けていたものだ。

弱々しく立ち、皆の方を向く。

 

「な……なんだイトナ、やっぱ嘘なのか?そうだよな!?」

 

「お前はかつて、俺に言ったよな。"100回失敗したっていい。たった一回成功すりゃ、そんだけで俺らの勝ちだ"って」

 

「あぁ言ったさ!それが何だってんだ!?」

 

「あの言葉……今でも、俺の中に残ってる。それに助けられたことだってある………俺はお前に、感謝してるんだ」

 

きっと言うまいと思っていた言葉。でも、やはり伝えたかった。伝えて、おきたかった。

でも、と俺は続けた。

 

「時には……失敗してはいけない戦い、負けられない戦いがあるんだ。何かを背負って戦う時、大事な人を賭した戦い、もっと大きな物を背負った戦い!

………全部、もう一度やり直しなんて、あり得ないんだよ……」

 

「ッッ!!……」

 

きっと、寺坂が言うのは日常生活の範囲だったんだろう。普通は命を賭けた戦いなんて起こらないはずなんだ。

けど、この戦いは……

 

「コエムシの言う事が本当なら……これに負ければ地球が滅ぶ。この戦いは、絶対に負けられない……」

 

「そ……そんな事言ったってよぉ!信じられるわけないだろ!?」

 

「なぁイトナ?嘘なんだろ?そんな最期の言葉みたいに言うなよ!」

 

吉田と磯貝がそう叫んだ。信じられない、信じたくないと言うように。

 

あと、俺にどのくらい時間が残されているか、分からない。

だから……これで最期だ……

 

 

「俺は、少し後悔していた……あの一年は、俺にとっては半年間だったから……もっと早くE組に入りたかった。空白の時間を、楽しい思い出で埋めたかった……もう叶わぬ願いを、何回したか分からない」

 

 

きっと皆の瞳には、今の俺はとても弱々しく映ってるんだろう……その通りだった。いつもの毒を吐く事すら出来る気がしない。

でも……その方が素直で良いかもしれない。俺の想いを、全部伝えられる……

 

「でも……だからこそ、入ってからの半年は本当に楽しかった。本当に大切な物を、知ることが出来た。行方が分からなかった両親と………再開できた……」

 

1つ1つ紡いでいく言葉。それに込められた言霊は、皆に伝わってるだろうか。

皆は、悲痛に顔を歪ませていた。寺坂が、特に酷かった。出来れば、笑顔で終わりたかったけど……

 

「馬鹿な事も、大変だった事も、懸命に頑張った事も……何もかもが、楽しかった……」

 

 

ーーお前らに会えて……本当に良かった……

 

 

不意に、力が抜ける。

 

遂にその時はやって来て、

 

あぁ……父さんと母さんとも、話したかったな。

 

ここに居ない奴らとも、会いたかったな。

 

そんな事を考えても、もう叶わない。

 

だから、ここに居る皆に、精一杯感謝を伝えた。

 

最期に考えたのは、あの日々、

 

皆が笑顔でいる教室が浮かび上がり、

 

それが……散っていくように、消えた。

 

 

 

堀部イトナの思考は、そこで止まった。

 

 

彼は、一筋の涙を垂らしながら、

 

 

力無く、倒れた。

 




最初のパイロットという事から、イトナの話のテーマは単純に"死"なのだと思います。

あ、ちなみに、敵のヌイグルミはマスタングです。アニメ版ぼくらのでウシロ戦の敵ですね。

あと、クロスオーバーのタグを追加しときます。ぼくらのキャラも絡ませていく事になったので必要かと。
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