奉仕部にドラえもんが来たようです   作:ナストマト

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奉仕部にドラえもんぶっ込んだら面白いんじゃね?

って思ったら書いてた。




塞翁が馬

青春とは以下略。リア充爆発しろ。

 

俺ガイル2次にありきたりなこの冒頭はもういい。読者の皆さんも飽きただろう(メタァ)。とっとと話を進めることにする。

 

陽が登れば鶏鳴が響き、今日も今日とて何の変哲もない普遍的な1日が始まる。社会人は働き、食い扶持を稼ぎに行く。

 

学生は学びに、あるいは部活動などで青春の1ページを刻みに行く。

 

そしてここにも学舎へと向かう学生が1人。整った顔立ちだが、クセ毛で猫背。極め付きはその目。邪眼の持ち主かと見紛うほどの特徴である。

 

腐っているのだ。

 

いったいどうなったらそこまで目が腐るのか。死界でも張っているのではないか。納豆をいくら発酵させてもそのレベルには達しないだろう腐り具合。なるほど、絶壁の雪の女王がゾンビと称したのも頷ける。

 

何を隠そう、このゾンビが主人公の比企谷八幡である。

 

自称ぼっち孤高の存在シスコン千葉マスターetc…。やれば大体のことは出来るそこそこ高スペックの持ち主。それを活かそうともしない面倒くさがり屋。

 

そんな彼は部活に入っている。強制的に入部させられたのだが、止めずに続けているのはどういう風の吹き回しだろうか。彼を知る者ならその事実に驚きを隠せないだろう。

 

もっとも、その知る者が少ないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。八幡にとってはそれが目覚ましとなる。これでも国語学年3位という成績の持ち主である。その代わり数学が学年最下位だが。9点って何だよ、むしろどこで点取ったんだよ。

 

今のが今日最後の授業であり、ここからは放課後だ。先ほども述べたように八幡は部活に所属している。部室へと向かうために鞄を持ち教室を出る。

 

「ヒッキー待ってよ!」

 

やや駆け足で八幡の元へとやって来た女子は由比ヶ浜結衣という。アホの子、犬好き、そして何より巨乳。今まさに駆け足で来た時に揺れる双丘の美しさよ。(ニュー)トンもビックリの万乳引力。八幡の視線が自然とそのたわわな果実へと向かうのも仕方のないことなのだ。

 

「なんで先行くし!」

 

「別に一緒に行かなきゃならん理由もないだろ」

 

「いいから行くの!」

 

「へいへい」

 

こいつらは毎日のようにこんな会話をしている。例えるなら「ばあさんや、ご飯はまだかのう」「あらやだ、もう食べたじゃありませんか」くらいのテンプレ会話となっている。もう付き合っちゃえよ。そして爆発せよリア充。

 

向かった先は1つの空き教室。引き戸を開けると1人の女生徒が目に入る。

 

「やっはろーゆきのん!」

 

「こんにちは、由比ヶ浜さん」

 

「うぃーす」

 

「あら、蚊取り線香が効かなかったのかしら」

 

「霊長類ですらないのかよ……」

 

「それは霊長類に対する侵害ね」

 

「霊長類以下ですかそうですか」

 

「冗談よ。こんにちは、比企谷くん」

 

「……おう」

 

 

会うなり八幡を罵り始めたのは、八幡の所属する奉仕部の部長にして絶壁の雪の女王こと雪ノ下雪乃である。容姿端麗、博学才穎、猫好き。そして絶壁。胸で船越英一郎が犯人を追い詰めてるのではないかと思うほどである。立つ場所すら無いが。

 

そしてこの奉仕部にはもう1人、いや、1人と言って良いのだろうか。とにかく、雪乃の他に存在する人物がいた。

 

身長130cmも行かないほど小さく、頭が大きくほぼ2頭身。見た目は基本的に丸く色は青い。

 

まるかいてちょんから始まる絵描き歌で描けるホンワカパッパな青ダヌキ。

 

 

 

 

 

「こんにちは、ぼくドラえもんです!」

 

 

 

 

 

第1話『塞翁が馬』

 

 

 

奉仕部の活動は依頼を受けてから始まる。つまり依頼人が来なければ基本的には暇なのである。そんな時は各々で暇を潰す。

 

結衣は携帯を弄り、八幡と雪乃は本を読む。ときどき結衣が話しかけてそこから会話が生まれる。そんなこんなで時間を潰し、依頼人が来なければその日は終わりである。

 

ドラえもん? けん玉やったりルービックキューブしたりゴロゴロコミックを読んだりしてるよ。あと基本的にどら焼き食べてる。

 

そんな日々が常だが、今日は八幡が本を読んでいない。それを不思議に思った結衣が声をかける。

 

「ヒッキー、今日は本読んでないんだね」

 

「車に水ぶっかけられたんだよ。俺もカバンの中身もびしょ濡れ。中に入ってた本もお陀仏」

 

「だから朝あんなにびしょびしょだったんだ。昨日雨すごかったからねー」

 

「更にそのせいでスリップして転倒して肘擦りむくしチャリはパンクした」

 

「凄いことになってた!?ヒッキー大丈夫なの!?」

 

「一応な。身体よりチャリと本の方が痛いが」

 

「疫病神があなたに取り付くとは思えないけれど」

 

「それは俺が疫病神だからってことですかねぇ……」

 

「ヒッキー、今日1日ほとんど寝てたよね。あれって教科書とかも全部濡れちゃってたからなんだ」

 

「いや、それは夜ふかししてたから」

 

「全然違う理由だった!?授業はちゃんと受けなきゃダメだよ!!」

 

「それお前が言えたことじゃないからな?」

 

「うっ……」

 

「しかし、本当に最近疫病神が取り付いてんじゃないのかと疑いたくなるくらい良いことが無いな」

 

ため息1つ。そんな八幡にドラえもんが声をかける。

 

「人間万事塞翁が馬、きっとそのうち良いことがあるよ」

 

「サイオーガ……?」

 

「ポケモンみたいだなそれ。そうじゃなくて塞翁が馬だ」

 

「塞翁が馬というのは、人生における幸不幸は予測しがたいということ故事成語よ。幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのだから」

 

流石ユキペディアさん。まるでどこかからコピペしたような正確さである。

 

「そんな故事成語なんて当てにならないだろ」

 

「うーん、それじゃあこれを使ってみる?」

 

そう言ってお腹のポケットをまさぐるドラえもん。4次元へと通じるそのポケットの中には多くのひみつ道具が収納されており、その全てが未来で作られたものである。

 

果たして今回出すひみつ道具はなんだろうか。

 

ピョコン!!←ドラえもんが道具を出した時の音。

 

「サイオー馬〜」

 

「サイオーバ?」

 

「だからポケモンだろそれ」

 

取り出したのは小さな馬。およそ30cmくらいだろうか。目がちんちくりんで何ともアホそうな馬である。

 

「これは塞翁が馬を元に作っていて、悪いことがあった時にこのウマに蹴ってもらうと良いことが起きるんだ」

 

「不確実じゃなく確実に揺り戻しが来るというわけか」

 

「便利なものね」

 

「でも、良いことが起きた時にこのウマに蹴られると、悪いことが起きてしまうから気をつけてね」

 

「しかし、これから起きたことじゃないと駄目なんだよな。朝から起きた不幸はノーカンだよな」

 

「うん、そうだね」

 

「それなら腐った目で見つめられた私は蹴られても良いと思うのだけれど」

 

「おいドラえもん、これ罵倒されたってことで蹴られていいだろ」

 

「う、うーん。サイオー馬の判断によるからなんとも……」

 

「ブルルルル……」

 

「あ、動き出した」

 

サイオー馬は何かを探す様に駆け回った後、八幡へと体を向けた。

 

「ん?」

 

「ヒヒーン!!」

 

ドカッ!!と大きな音が響き、後ろ脚で腹を蹴られる八幡。

 

「グハッ!?」

 

「うわ、痛そう……」

 

「ゲホッゲホッ……ちょっと待て、ゲホッ……むしろこれ蹴られる事が不幸だろ」

 

「でも痛くないだろ?」

 

「え?あ、ああ、確かに。衝撃は大きかったが痛みはないな」

 

「ええと、これで良いことが起きるんだよね?」

 

「そのはずだが……」

 

そんな不安と期待が入り交じる八幡たちの元へ来訪者が現れる。ガララッと扉が開く音のする方を見やれば、なんとそこには可愛い男の娘がいるではありませんか。

 

「失礼します。八幡は居ますか?」

 

「と、戸塚!?」

 

この男の娘は戸塚彩加。女子顔負けの愛らしい容姿の持ち主だが、れっきとした男である。だが、ぶっちゃけ性別とか関係ない。戸塚は戸塚である。男、女、秀吉みたいなものだ。戸塚は戸塚として愛でれば良いのだ。

 

そして八幡も、戸塚を愛でるロマンチスト、略してTMRの1人であり、戸塚と聞けば条件反射でパブロフの犬のように飛びつくほど溺愛している。

 

「戸塚じゃないか!どうしたんだ!?」

 

「あ、八幡!えっとね、さっき平塚先生が呼んでたから伝えようと思って」

 

「わざわざその為だけに来てくれたのか?ゆっくりしていけよ。お茶でも飲むか?お菓子もあるぞ」

 

「ごめんね、これから部活なんだ」

 

「なん…だと…」

 

「じゃあ、僕はちゃんと伝えたからね。またね、八幡!」

 

ピシャリ。無慈悲にも八幡と戸塚の間に隔てられる扉。ああ無情。八幡の思いは届かず。しかし八幡、その目に落胆の色は無し。

 

「サイオー馬の効果は確かなようね。念願の戸塚くんに会えたんだもの」

 

「ああ、素晴らしい馬だ。赤兎馬や松風にも勝る名馬だな。まさにディープインパクト」

 

「彩ちゃんに会えるだけでいいんだ……」

 

「じゃあ俺は平塚先生の所に行ってくる」

 

「あ、うん。行ってらっしゃい」

 

そうして八幡は部室の外へと出ていく。取り残された雪乃と結衣とドラえもん。なんだこのドラえもんの異質さ。

 

雪乃が1つため息。

 

「はぁ…」

 

「どうしたのゆきのん?」

 

「比企谷くんに幸福が訪れたということは、私の冗談は少なくともサイオー馬には不幸と捉えられたのよね……。これが世間一般の意見だとしたら、私は冗談でも言うのをやめた方が良いのかしら……」

 

「そ、そんなことないよゆきのん!確かに悪口っぽくなってるけど、本当のことを言ってるだけだから!」

 

「結衣ちゃん、フォローになってないよ」

 

「ええ!?」

 

やはり由比ヶ浜結衣はアホの子である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部活が終わり帰り道。4人での下校は途中でおしまいとなる。とある分かれ道で、それぞれの道へ、家の方角へと歩き別れていく。だが八幡とドラえもんは同じ道を歩く。

 

何をとち狂ったかこの青ダヌキ、なんと八幡の家に居候しているのである。なぜかと聞かれたら詳しい話はまた今度。

 

昨日の雨による水溜まりも、昨日は何だったのかという程の燦々照りつける太陽によって既に蒸発仕切っている。それでも八幡は何が起きた時のためにとサイオー馬を侍らせている。

 

しかし何事もなく家に着いた。得てしてそういう時に起きないものである。物欲センサーくたばれ。いいからSSレア寄越せ。楓さんをお迎えさせろ。

 

(結局なにも無かったな。いや、起きて欲しい訳じゃないが)

 

と思いながら八幡が家の扉を開けると、愛しい愛しい彼の妹が玄関で待っていた。

 

「お帰りお兄ちゃん!それにドラちゃん!」

 

彼女の名前は比企谷小町。八幡の妹、コミュ力オバケ、以上。……いや他に書くことないし。文字数多くなるし。特徴のない小町が悪い。俺は悪くねぇ!

 

「なんか軽くディスられた気がするんだけど……」

 

「気にするな。で、なんで玄関に居たんだ?」

 

「むふふ、それはね、お兄ちゃんを待っていたからですよ!あ、今の小町的にポイント高い!」

 

「はいはい、あざといあざとい」

 

「むー、釣れないなぁ。でもお兄ちゃんを待ってたのは本当なんだよ?」

 

「なんでだよ」

 

よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに胸を張る小町。うんうん、膨らみかけのアレがたまらんですなぁ。

 

「実はね、お父さんが宝くじで20万円当てたんだって!!」

 

「……は?」

 

「それでね、今日くらいは豪勢にってことで特上ずしが届いてるんだ!!お父さんもお母さんも珍しく早く帰ってきてお兄ちゃんを待ってたんだよ?」

 

「……ちょっと待ってくれ、処理が追いつかない。つまり親父が20万当てて寿司食いねぇってことでOK?」

 

「だからそう言ってるじゃん。早くしてよお兄ちゃん。ああ、寿司が小町を待っている!!」

 

フフフーン♪と鼻歌を歌いながらリビングへと戻って行く。

 

「……なんかとんでもないことになったな」

 

「良かったじゃないか。少しはお小遣いがアップするかもしれないよ?これでドラ焼きが多く買える」

 

ドラ焼きに囲まれた状況でも妄想しているのか、ヨダレを垂らしながら舌なめずりしウフフと笑い始めた。

 

「ヨダレを拭けヨダレを。まぁ、そうだな。少しは我が家の生活も楽になるか」

 

「何してるのお兄ちゃん!早く来てよ!」

 

痺れを切らした小町がリビングから声を荒らげる。

 

「へいへい」

 

と、そんな小町に少し呆れながらも相槌を打つ。正直宝くじが当たったという実感も何も無いが、まぁ小町が嬉しそうだし良いか、と、どこまで行ってもシスコンの八幡である。

 

(しかし寿司か。いつ以来だろうな)

 

普段家では小町が食事を作ってくれるわけで寿司など食べることは無い。両親が共働きのため外食をすることもない。少なくとも八幡の記憶で寿司を食べた記憶など遠い過去の事だった。

 

だからこそ小町も喜んだのだろう。既に八幡の舌も寿司モードである。想像すればドラえもん程ではないがヨダレが溢れ出す。

 

いざ寿司を食さんと靴を脱いで上がろうとする。

 

「ブルルルル……」

 

「ん?」

 

が、それを1頭の馬の嘶きが遮る。八幡とドラえもんが振り返れば八幡とドラえもんへと身体を向けるサイオー馬の姿が。

 

「……あ」

 

ここで八幡、部室でのドラえもんの言葉を思い出す。

 

 

『でも、良いことが起きた時にこのウマに蹴られると、悪いことが起きてしまうから気をつけてね』

 

 

「……おいドラえもん。これって俺たちより親父が蹴られるべきじゃねぇの?」

 

「……パパさんたちは既に幸福が起きた後だから対象にはならない。でも僕たちは今、幸福が訪れたわけだから」

 

「つまり蹴られるのは俺たちだけってことか」

 

「そういうこと」

 

「ヒヒーン!!」

 

八幡とドラえもん駆け出す。

 

「「冗談じゃねぇよ(ないよ)おおおおおお!!」」

 

「ちょっとお兄ちゃん!?どこ行くの!?」

 

「知るかあああああああああ!!」

 

 

その夜、街中に2人の叫び声と馬の声が甲高く響き渡ったそうな。

 

 




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