奉仕部にドラえもんが来たようです   作:ナストマト

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続いた



アドベンチャー

 

奉仕部。そこは、生徒からの依頼を請け負い、手伝うのではなく助言を与える。魚を捕るのではなく捕り方を教えるという何とも慈悲深い部活である。

 

総武高生徒に限らず、八幡の妹の友達の相談に乗ったりしたこともある。この時は助言ではなく説得という形で救済したが。

 

よく考えれば一色いろはの時も説得によって解決したし本来の役割を果たした依頼って少なくね?結衣の時だけじゃね?

 

まぁそれはともかく、救済という形に相成ったのも依頼を請け負ったからである。逆に言えば、依頼が来なければ部活自体は暇なわけで。

 

「……」ペラッ

 

「……」ペラッ

 

「……」モグモグペラッ

 

前回も述べたが暇な時は各自で暇を潰す。基本的に八幡と雪乃は読書。ドラえもんはドラ焼き食べながらけん玉とかマンガとか。結衣はケータイ時々スピーカー。それが日常となっている。

 

そんな日常が今、壊されようとしている。他でもない由比ヶ浜結衣によって。

 

「……」ペラッ

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」ペラッ

 

「……なぁ、由比ヶ浜」

 

「んえ?どしたのヒッキー?」

 

「今何してるんですか?」

 

「何で敬語だし……何って見ればわかるじゃん。読書だし」

 

「熱あるのかお前」

 

「ちょっと!?それどういう意味だし!?」

 

「由比ヶ浜さん、悪いことは言わないわ。保健室に行きましょう」

 

「ゆきのんまで!?」

 

「お医者さんごっこカバン〜」ピョコン

 

「ドラちゃんも!?そんなにあたしが本読むのがおかしいの!?」

 

「「「おかしい」」」

 

「全員!?」

 

結衣がムキーっと怒るが事実は事実。かつて結衣が読書などという(彼女にとって)難解なものに手を出したことがあっただろうか。いやない(反語)。

 

「ああ悪かった、流石にお前でも本くらい読むよな。で、何の絵本読んでたんだ?ねずみく○のチョッキ?」

 

「絵本じゃないし!!れっきとした本だし!!」

 

「絵本もれっきとした本だと思うのだけれど……」

 

「見たところ漫画みたいだけど、何を読んでたの?」

 

そう、一般書籍にしては上から見た時の感じが違うのだ。漫画特有のページの色合いの違い方から漫画であると察する。ちなみに表紙は上手いこと見えないようになっている。何というご都合主義。

 

「あれだろ?女子が読むっていうくらいだし君○届けとか花○り男子とかだろ?」

 

「きらりん☆レボリュー○ョンかミ○モでポンかもしれないわ?」

 

「みんな違うし」

 

「じゃあ何読んでたんだい?」

 

「ドラゴンボ○ル」

 

「予想の斜め上だった」

 

なんでや!ええやろドラ○ンボール!

 

どうでもいいけどドラゴボとかいう略称に何故か嫌悪感を抱くのは自分だけじゃないはず。

 

「何で今どきド○ゴンボールなんて読んでるんだよ」

 

「戸部っちが『面白いから読んでみ?』って借してくれた」

 

「ああ、確かにあいつなら読んでそうだな」

 

「ねぇ、比企谷くん。ドラゴ○ボールというのはどういう内容なのかしら?」

 

「7つ集めると願いが叶うというドラゴンボールを巡る物語だ。アニメ化、後にハリウッドで映画化もされたな。あれは完全に黒歴史だが」

 

「こういうのって読んだことなかったんだけど、読んでみると結構面白いんだよね」

 

「また新たにアニメが放映されるくらいだからな。未だに人気が衰えないのは凄いところだ」

 

「こう、かめはめ波ーってやりたくなるね」

 

「わかる……わかるぞ由比ヶ浜……かめはめ波の真似してたらいつか出るんじゃないかと思ってかめはめ波かめはめ波とやるのはドラゴン○ール読者の宿命だ」

 

「そ……そうなんだ……」

 

みんなもやったよねかめはめ波。もし家の中で出たらまずいと思って外でかめはめ波の練習をするのは定番だよね。1日100回はやってたよね。

 

「いいなぁ、あたしもあんな冒険してみたいなぁ」

 

「やめとけ、お前じゃウーロンも倒せねぇよ」

 

「そういう事じゃなくて!ハラハラドキドキするような体験がしたいってこと!」

 

「うーん、そういうことなら」

 

そう言ってガサゴソとドラえもんが四次元ポケットを探る。ちなみにドラえもんはポケットの中をほとんど整理しておらず、道具がどこにあるかほとんど手探りの状態である。いざという時にあれでもないこれでもないと間違ったものを取り出すのはこれが原因でもある。

 

ピョコン!←道具を取り出した時の音

 

「アドベン茶〜」

 

取り出したのはお茶の入ったティーポットとカップ。色合いと香りは普通の紅茶のようである。

 

「これを飲んで外に出るとハラハラドキドキする体験が出来るんだ。もちろん絶対安全保証付き」

 

「今のあたしにピッタシじゃん!」

 

「……へぇ、いい香りね。少し飲んでみたいのだけれど」

 

「冒険する気がないならやめた方がいいよ。自分の家以外で効果が発揮されるから」

 

「そう、それは残念ね」

 

「家で飲むぶんには問題ないから今度分けてあげるよ」

 

「ありがとう。なら遠慮なくいただくわね」

 

ガララッ

 

「どーれ、やっとるかね?」

 

そこで突然奉仕部部室の扉が開かれる。入ってきたのは白衣を着た女性。

 

「先生、ノックを」

 

「細かいことは気にするな」

 

先生と呼ばれたこの女性は平塚静。八幡のクラスの担任であり国語教師。ちょくちょく少し古いネタを出してくるアラサー。結婚出来ないことを気にしている。ぶっちゃけ筆者が貰いたい。

 

「今日はどうしたんですか?」

 

「近くに寄ったついでに様子を見に来ただけだ。うむ、ちゃんと活動しているようだな」

 

「何もしてないんですがそれは」

 

「待つことも大切なことだよ比企谷」

 

ここで平塚目ざとくアドベン茶を見つける。

 

「ほう、いつもとは違うお茶だな」

 

「あ、それは」

 

「どれ、少し貰おう」ゴクッ

 

「「「「あ」」」」

 

静止の声も一足遅く、平塚がカップに入ったアドベン茶を飲んでしまった。しかもカップに入っていた分全て。

 

「ふむ、なかなかイケるな……どうしたんだ、揃いも揃って変な顔して」

 

「……先生、あのですね」

 

 

かくかくしかじか。小説って便利。

 

 

「なるほど、それはまた世界でいっとーユカイな奇跡だな」

 

「先生、古いっス」

 

「比企谷、葉を食いしばれ」

 

「冗談ですからファーストブリットは止めてください!」

 

スクラ○ドを読んでる女性教師。アリだと思います。

 

「そこの谷君はともかく、大丈夫なんですか?どこか身体に異変とか……」

 

「ん……?特に何も無いな」

 

「そろそろ効果が現れるはずだよ。効果は1口5分だけど、全部飲んじゃったから30分くらいかな」

 

「なんだ、結構短いな」

 

「命がいくつあっても足りないような経験をするからね。例えば───」

 

タ-ン

 

音が聞こえたその瞬間、平塚の目の前を何かが横切る。と同時に教室の壁に穴が開き、衝突するような音が聞こえる。

 

ハラリと平塚の前髪が数本落ちる。

 

「……え?」

 

何が起きたか分からないといった表情の面々。ちなみにドラえもんにも分かっていない。何が起きるかは起こるまで誰にも分からないのだ。

 

ピンポンパンポ-ン

 

『市内放送です。ただ今、千葉市内に熊が出現しました。猟友会が確保するまで、出来るだけ建物の中にいてください。繰り返し──』

 

放送を聞いて理解する。今まさに目の前を横切ったものの正体を。一斉に教室の壁に目をやると、何か埋まっているものがある。

 

弾丸である。

 

冷や汗ダラダラの平塚。然もありなん。まさに目の前を過ぎて行ったのだから。ついでに他の全員も冷や汗ダラダラである。ドラえもんまで汗ダラダラである。新陳代謝備わってんのかよ。

 

「──例えばこういう事が起きたりする」

 

「助けて下さい」

 

「土下座だ!?」

 

「いやいや、何もそこまでしなくても……」

 

「覚えておけ比企谷、大人になればこれくらい当たり前だ!」

 

「やべえ、さらっと社会の闇を見た」

 

より働きたくない欲求が強まった八幡であった。ああ、僕はどうして大人になるんだろう。ああ、僕はいつごろ大人になるんだろう。

 

しかし現実は非情である。平塚の土下座虚しく脅威は訪れる。

 

「グオォォォォオ!!」

 

教室の扉を蹴破る……ことなくきちんと扉を開けてやって来たのは熊である。アドベン茶は周囲への被害もありません。安心してご使用ください。壁の弾痕?とっくに直ってるよ。

 

熊は平塚の姿を捉えると平塚目掛けて駆け出した。

 

「グオォォォォオオ!!」

 

「なんで私なんだああああああああ!?」

 

突進して来る熊に対し平塚は上手く孤を描くように回避。そのまま教室から出て行った。それを逃すまいと猛追していく熊。残されたドラえもんたちはあまりの展開の早さに唖然とするしかないのであった。

 

 

「……どうすんのコレ」

 

「とりあえず追いかけようか。はいタケコプター」

 

人数分のタケコプターを渡し空から追いかけることにする。ちなみに八幡たちはタケコプターを既に使い慣れている。いつこうなってもいいようにスカートの下にはスパッツを履いているのである。サンキュースパッツ。

 

空を自由に飛んでいると、未だ熊に追いかけられる平塚を見つけた。普段なら人もそれなりにいるはずなのだが、アドベン茶の効果か、他に人は誰1人いなかった。おかげで熊が出たというのに騒ぎにならずに済んでいる。

 

そうとも知らずに平塚はただ走る。然もありなん、熊が追ってきているというのに周囲を気にすることが出来る一般人などそうはいないだろう。

 

平塚は走った。走った。既に満身創痍だ。

 

セリヌンティウス的な人を助けるために走るのではなく、ただ生きるために、生のために。

 

その姿はどこまでも美しかった───

 

 

〜完〜

 

 

いや冗談だから。冗談だからみんなしてこっちを睨まないで。何も無い虚空を睨まないで。

 

細かい角を曲がりに曲がってどうにか熊を撒くことに成功した平塚。その様子に八幡たちも安全だと知りつつも安堵する。

 

キョロキョロと辺りを見渡し安全を確認する平塚。熊が追ってこないと分かるとそこでようやく一息ついた。

 

だが、それも束の間。新たな資格が平塚の前に現れる。

 

 

デデンデンデデン

 

 

「ん?」

 

八幡たちがいち早く気づく。どこからともなく音楽が聞こえてくる。緊迫感溢れる音楽である。一定のリズムで刻む重い音が身体に響き、緊張感を煽る。

 

 

デデンデンデデン

 

デデンデンデデン

 

 

平塚も遅れて流れる音楽に気づく。そして理解する。

 

このBGMは……まさか……アイツが来るのか……ッ!?

 

足音が聞こえる。1歩1歩がとても重く聞こえる。それが自分の方へ向かっているのがわかる。

 

恐る恐る音のする方へと振り向く。

 

デデンデンデデン

 

デデンデンデデン

 

 

 

「Hasta la vista,Baby.」

 

 

 

ターミネーターである。

 

アーノルドシュワル○ェネッガー演じるT-800が全速力で平塚を追いかける。しかもショットガンを掲げながら。

 

「嘘だろおおおおおおおおおお!!!」

 

なぜ自分が追われなければならないのか。あれか、自分の息子が将来的に敵になるのか。マジかよ結婚できるのか私。と追われているのに歓喜の感情が湧き上がってきた平塚であった。

 

そのパワーを糧にして人間とは思えないスピードであっさりと逃げ切ることが出来た。その表情は笑顔に包まれている。ショットガンを持ったゴリゴリマッチョマンから逃げきれたのだからそれはそうだろう。

 

「出来る、出来るんだ!」

 

どこまでもブレないなコイツ。

 

まるで蜘蛛の糸を垂らされた瞬間のように、まさに天に登るような気持ちの平塚であったが、そんな余韻を遮るかのように、平塚の身体に影が差す。

 

《ギギィィィィィィィィィイイ!!》

 

バジュラである。

 

「……ヤック・デカルチャー」

 

と思わず呟いた平塚は悪くない。

 

 

 

 

 

 

その後、伝説のスーパーサ○ヤ人に追われたりアンチスパイ○ルに追われたり(何度も言うが無害だから)したが、ようやく30分が経過し効果が切れた。

 

ぐったりと道中に倒れ込んだ平塚を八幡たちが奉仕部へと連れて帰ったが、椅子に座った平塚は何処ぞの矢吹のように真っ白に燃え尽きた表情をしている。

 

「あ、あのー、先生?」

 

見かねた結衣が声を掛ける。

 

「……由比ヶ浜」

 

「は、はい」

 

数々のアドベンチャーを経験した平塚の結論。

 

それは───

 

「……夢は夢のままが良いんだよ」

 

「先生!?」

 

教師としてあるまじき発言であった。

 

 

 




何故か9と10評価入ってたから続いた。

もしかしたら続くかも。
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