コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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 始めましての方は始めまして。
 他の作品をご覧になった方はどうもです。
 
 他の作品を書いているのですが堪えきれなく投稿してしまいました♪
 楽しんで頂けたら幸いに思います。


原作開始前
第01話 「私の未来は明るくない」


 唐突ですがオデュッセウスと言うキャラクターを覚えているでしょうか?

 

 神聖ブリタニア帝国の皇位継承権第一位であるオデュッセウス・ウ・ブリタニア第一王子。

 

 アニメ第一期の登場時間はオープニングを入れても5分も無く、しかも登場シーンでは優柔不断な性格を出しただけである。知能がずば抜けているシュナイゼルやルルーシュ、武芸に優れているコーネリアなど他の皇族と比べるとかなり見劣りしてしまう人物だと私は思っていた。実際彼はブリタニア皇族にしては優しすぎるし頼りになりそうに無い印象を受けた。

 

 ただ彼が無能なのかと問われれば違うと断言する。

 

 悪さをした人物を処罰するだけでなく人々の役に立つような労働を条件に恩赦を与える更生プログラムを組むなど優秀な面もある。それだけでなくアニメ二期でルルーシュが王座を取った後は軍属になっているが、軍属となってランニングしているシーンにおいて周りの者は真剣な表情をしているなかで自然な笑みを浮かべている彼は異様であった。軍の鍛錬は軽い運動ではなく肉体と精神を鍛えぬく血反吐を吐くような訓練である。それを笑みを浮かべて行なうほど余裕があると言う事は彼は鍛えればかなりの実力を持っていたのではないかと思う。この世界の兵器であるナイトメアフレームはパイロットの運動能力に比例する物と考えている。それを考えると彼はコーネリアとまでは行かないかも知れないが小隊や中隊のエース級にはなれるのではないか?いや、武に優れた他の皇族を考えるともっと上になるかも知れない。

 

 彼は決して無能などではなく優秀な人物であった。ただ周りが優秀すぎて見劣ってしまった事と、優し過ぎた性格が競い争うブリタニアの中では活かせない為に低い評価を受けてしまったのだろう。歳の離れた弟に『あんな凡庸な男が』と言われるほどに…。生まれる国と時代を間違えたのだ。彼は平和な時代にこそ、その能力が発揮されるのだ。

 

 何故私がこうも彼、『オデュッセウス・ウ・ブリタニア』の話をするかと言うと私が『オデュッセウス・ウ・ブリタニア』だからである。

 

 意味が解らないだろうが私自身意味が解ってない。多分二次創作でよくある憑依なる物をしてしまったのだ。神様とやらに会った記憶は無いが前世の記憶はしっかりと残っている。

 

 「殿下。解らない所は御座いますか?」

 「今のところは大丈夫ですよ」

 

 私は今勉強をしている。と言っても前世の記憶がある為に数学や理科などはほとんど行なっていない。代わりにブリタニアの歴史や戦略に戦術、政治の勉強で手一杯なのだ。 

 

 ふりふりのフリルが付いた純白のシャツにブリタニアの紋章が入った灰色の上着を着た10歳の私の答えにしわのひとつも無いオーダーメイドのスーツを着た女性教師が感心するように頷いた。そのことに対して少し罪悪感を覚えてしまう。確かに勉強は難しい。十歳の子供に法律の授業なんてするもんじゃないと叫びたいが指示したのはあの父上…シャルル・ジ・ブリタニアである。九歳のルルーシュに『お前は死んでおるのだ』と無茶言った父上様なのである。出来るわけがなかった…。

 

 私が罪悪感を覚えているのはこうしてブリタニア皇族に失礼の無いように姿勢を正して誠心誠意尽くしてくれている彼女の授業の合間合間に別の事を考えているからだ。

 

 これからの私の人生設計だ。

 

 普通に過せばほとんどを弟のシュナイゼルにおんぶに抱っこしてもらって何とか生きて行けるだろうが、それだと最後はルルーシュにギアスをかけられてフレイヤで消滅と言う未来しかない。これをどうにかして回避してゆっくりとしたのんびりライフを送るにはどうするかと言う物だ。最初に思い付いたのがルルーシュが即位する現場に居ない事だ。だが、皇族の地位を捨ててもブリタニア皇族の血を捨てられる訳も無く要らぬ争いに巻き込まれ幽閉か死罪確定だろう。だったらシュナイゼルと共にダモクレスヘ行くか?もしかしたらルルーシュが殺される時の捕虜のひとりとして救い出されるかもしれない。しかし、出来れば…出来ればだがルルーシュを救ってやりたい気持ちもあるのであまり心情的に良くない手だ。では、ルルーシュに自分が「有能です」とアピールしての黒の騎士団に参加。…無理だ。第一王子で有名になっている私がブリタニア人を憎む日本人の中に入ったらリンチされてしまう。

 

 お先真っ暗な人生にため息を吐きたくなる。出来ればこの事をあのシュナイゼルに話して何らかの策を練ってほしいところだが、ダモクレスとフレイヤが支配する世界を完璧にしてしまう可能性が跳ね上がってしまう。それも嫌だし現状六歳の弟に「私の人生設計を組んでくれないか?」なんて言える訳もない。

 

 この部屋に居る教師と護衛役の黒服黒サングラスの計五名の視線を浴びながらノートを埋めて行く。授業と言うのは本来なら学校で行なうものだが正直レベルが段違いすぎて周りの生徒との学力が合わないのだ。ゆえに同年代の子と触れ合う事と、未来の布石の為に繋がりを作らせるという名目で午前中は学校で授業を受け、午後は宮殿の個室で自分のレベルに合った授業を受けているのだ。すでに十七時を過ぎた為に教師は深々と頭を下げて一言二言告げてから退席する。

 

 凝り固まった肩を三回ほど回して背筋を思いっきり伸ばす。ポキポキと骨が鳴り心地よい痛みが身体を走る。立ち上がり出口へと向かおうとすると当たり前だが黒服集団が四方を囲み追従する。彼らも仕事なのだろうが正直邪魔でしかなかった。この圧迫感はいつまで経っても慣れるものではない。扉の前に立つと自動ドアのように護衛の一人が開けてくれて感謝の言葉を述べつつ園に出る。

 

 「あにうえ」

 

 廊下に出ると同じく数名の護衛に囲まれた少年に声をかけられた。艶やかしい金髪に涼しい笑顔、純白の服装は彼をより一層際立たせる。我が弟にしてコードギアスのラスボス、シュナイゼル・エル・ブリタニアであった。

 

 「やぁ、シュナイゼル。今帰りかい?」

 「はい、あにうえはなにをなさっていたのですか?」

 「いつも通りの勉学だよ」

 

 まだ少し舌足らずなシュナイゼルと並んで歩く。こんな可愛らしい弟が目的の為ならば兄弟でも切り捨てる男になるなんて信じられない。もしかしたらすでに仮面を使いこなせて…そんな訳はないかな。

 

 「じゃあきょうはなにもないのですね」

 「…そうだね。予定は何かあったかな?」

 

 横に立っていた護衛の一人が懐から一冊のメモ帳を取って視線を動かす。まだ十歳の子供とは言え貴族が集まるパーティなどに皇族として出席させられたりするのだ。前世の記憶がある分十歳とは思えないほど落ち着いているのも関係してか何かしら呼ばれるのだ。もう少し子供らしい演技でもするべきだったか…そんな事を考えていると予定を確認した護衛の者が特にはありませんと告げてきた。なんていうか感情の一切無い機械的応答はどうにかならないかな?

 

 予定がない事を知ったシュナイゼルは嬉しそうに微笑みを向けてきた。こういう場合十中八九アレだろう。

 

 「またちぇすしませんか?」

 

 まだ幼いシュナイゼルだが外で遊ぶタイプではない。身体を動かすのが苦手と言う訳でなくただ単に身体を動かすよりも頭を働かすほうが得意だからチェスでよく遊んでいる。だが問題は遊ぶ相手が少ない事である。同い年のコーネリアはするものの一度もシュナイゼルに勝った試しがなく、月一程度しかしていない。負け続きのゲームを毎日やるような人は少数派の筈だ。それも六歳の少女となると尚更だろう。年上のギネヴィアはヤル気すらないようだった。あと相手をしてくれると言ったらこの宮殿に皇族に給仕している者達だが彼らは本気で相手をしてくれない。言わば接待プレイである。自分が負ける事前提で相手を楽しませる。そんな対戦相手に満足出来ないし皇族であるシュナイゼルが「ほんきでたのむ」と言ったところで相手が困るだけだ。

 と、言うわけで私である。兄弟で子供同士と言う事もあって本気でやれる。本当はチェスより将棋の方が好きなのだが西洋文化のブリタニアでは中々手に入らない…頼めば特注品を買って来てくれるんだろうがそこまでするのは少々面倒だ。

 

 「今日は勝てるのかな?」

 「勝ってみせますよ」

 「では、おやつでも賭けるかな」

 

 シュナイゼルと共に歩みつつたまにはケーキ類ではなく大福になってくれないだろうかと思うオデュッセウスであった。

 ちなみにチェスの結果はオデュッセウスの勝利であったがシュナイゼルに賭けた為におやつのケーキは没収された…。


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