コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第109話 「戸惑う新皇帝に動き出す旧皇帝」

 メルディ・ル・フェイはにっこりと笑みを浮かべて、キョトンとした表情を晒してながらもお茶をしているオデュッセウス・ウ・ブリタニア皇帝陛下と対面する。

 本日は新皇帝になったオデュッセウス陛下に取材を申し込み、忙しい中お時間を作って頂いたのだ。

 特に今日は超合集国との会談が日本であるから本当に忙しいのだ。

 それでも時間を作って下さったのはユーロピアでの一件を私が知っている事もあるんだろうなと思う。私自身それをチラつかせながら約束を貰ったのだからずるいやり方をしたと反省している。後悔はそれほどないけれど。

 私はフリーの記者として自身の好みの情報に跳び付く。

 その好みの中にはオデュッセウス陛下関連の事も入っており、今日は陛下として短い期間で成した、成そうとしている件やネットで騒がれている噂の取材を行う。噂の方は凡そ理解しているので反応を見てただけであるが…。

 私と陛下を除いて室内には唯一のラウンズであるアーニャ・アールストレイム卿が陛下の護衛として待機しているのと、私が連絡して来て頂いたギネヴィア・ド・ブリタニアとニーナ・アインシュタインの計五名がソファに座っている。

 親衛隊長であるレイラ・マルカル大佐もいつもなら居る筈なのだが、今日に限っては席を外している。というのも日本に向かう準備や向こうでの警備計画を確認に確認を重ねたうえで最後の見直しなどを行っているのだ。

 護衛も日本に同行するアールストレイム卿がついているので陛下が作業に集中できるように出航までペーネロペーでの待機にしたそうだ。

 取材を行っている最中の陛下は返事を返しつつ僕の横に並んで座っているお二方を不思議そうに見つめている。

 隣に座っているのはカタカタと震えながらずっと俯いているニーナ。そしてその横から凍てつくような視線と威圧感をニーナに放っているギネヴィア。

 このまま放って置くのも可哀想ですし、そろそろ話を進めるとしましょうか。

 

 「さぁて陛下。最後にちょっとした噂を伺ったのでお聞きしたいんですけど」

 「なんだい噂って」

 「ニーナさんと恋人という噂が――」

 「ぶふぉ!?」

 

 紅茶に口を付けた陛下は吹き出し、カップ内は荒れて陛下の顔面に飛び散る。

 小さく咽ながら困惑しながら俯きつつ真っ赤になったニーナを見つめ、焦りながらこちらへと視線を戻す。

 ふむ、陛下は原因を知っている筈なのにお気づきでなかったと。

 やっぱり面白い反応が見えました。それとギネヴィア皇女殿下の周りだけ気温が下がったような気がしますね。

 

 「ちょちょちょ!ちょっと!どういう事?」

 「あれ?アールストレイム卿のブログ見てないんですか」

 「・・・目を逸らさずに説明を」

 

 全員の視線が集まったアーニャはそっと明後日の方向へと顔をそむける。

 ジトーと見つめていた陛下は懐より携帯を取り出しブログを確認しようと検索し、画面を睨むように読み始めた。

 内容は簡単だ。

 全く情報の無い女の子に膝枕されている事から冗談交じりで噂が広まったのだ。

 納得はするだろう。

 なにせ何の情報も無い女性と膝枕など噂の種だろう。

 

 「陛下はガードが甘すぎるんですよ。それといろんな女性に手を出し過ぎです」

 「兄上!?それはどういうことですか!!」

 「違ッ!誤解を招く発言は控(ひか)えてくれるかい」

 「同じ画像を上げているのにニーナさんだけ取り上げられたのは知名度の違いです。アールストレイム卿もギネヴィア皇女殿下も知名度が高く両者とも仲が良いのは情報を発信していますが、ニーナさんはただの技術士官という事で知名度も低く、陛下と仲が良いという情報はネットの中には上がっていません。しかも調べられたとしても18歳の子が陛下直属の技術士官入りしているとしたら憶測で勘繰る者も出てきます。そこんところよく考えないと情報が拡散しやすい現代社会では訂正も難しいんですから」

 「あれは私が知らない内に……いえ、すみません。返す言葉も無いです」

 

 オデュッセウス陛下ががっくりと肩を落とすとニーナも申し訳なさそうにする顔を青くする。

 このままだと空気が重くなったまま。

 クスリと微笑みながらメルディは少し悩んでニーナへと視線を向ける。

 

 「ニーナさんはどうなのかな?」

 「は、はい!?」

 「陛下と恋人疑惑掛けられた相手としては」

 「そんな…私となんて…」

 「勿体ないって感じですか。なるほど――嫌ではない。寧ろ好ましいと」

 「人の心を読まないで下さい!」

 「ほぅ、当たっていましたか」

 「はぅ!?」

 

 いつになく声を荒げて立ち上がったニーナはハッと我に返って肩を窄めて腰を下ろす。

 若干俯いて申し訳なさそうにしているが表情は何処か嬉しそうであった。

 

 「噂とは言え本当に勿体ない話です。陛下は自身の身を顧みずに河口湖で助けて下さったり、人種差別することなく誰にでも手を差し伸べる事が出来る心が強く、お優しい方なんです。

  私には無い物をいっぱい持っている雲の上の人なんです。だから私となんて…」

 「そう自分を卑下するのは良くないよ」

 「陛下?」

 「十人十色。君が出来ない事を私が出来るようにニーナ君にしか出来ない事があるんだ」

 「そんな!私なんかが陛下に出来ない事が出来るなんて」

 「現にこの世界(・・・・)には無かったエネルギー生成技術を生み出したじゃないか」

 「この世界?」

 「……この…コホン。今までなかった新技術を作り出す事なんて私には出来ない。おかげで帝都の“アイアスの盾”も完成することが出来たんだ。誰にも成し得なかった偉業を成したのだから君は胸を張るべきだよ。私なんかではなく私だから出来たのだと」

 

 微笑みを浮かべた陛下のお褒めの言葉にニーナは余計に俯いて表情を伺うことは出来ないが、耳が真っ赤に染まった事でどういう想いなのかは手を取るように理解できた。

 

 「さて、そろそろ時間だね。私は行くよ」

 「はい。取材を受けて下さりありがとうございます。道中お気をつけて」

 「ありがと。行ってくるよギネヴィア。ニーナ君」

 「え、えぇ、私も後程向かいますので…」

 「い、行ってらっしゃいませ…」

 

 陛下とアールストレイム卿が退室するのだがギネヴィア皇女殿下の反応に違和感を覚える。

 ニーナは恥ずかしがってはにかんでいるのは分かる。

 しかしギネヴィア皇女殿下が言い淀んだのがおかしい。

 僕が知っている皇女殿下なら冷たさを一切感じぬ優し気な笑みを浮かべて送り出すはずなのだ。

 それなのに皇女殿下は眉を潜めている。

 

 「…メルディ」

 「はい、なんでしょうか」

 「今さっき…兄上は微笑んで(・・・・)いたかしら?」

 「え?普通に微笑んでいましたが…」

 「そう…そうよね。おかしなことを聞いたわ」

 

 どこかしっくり来ていなさそうなギネヴィア皇女殿下が退席し、見送ったニーナに続いて部屋をあとにしようとした時ふとある事に気が付いた。

 

 あれ?陛下の出発時刻って一時間も先では…。

 

 首を傾げつつメルディは次の取材の現場。

 日本へ向かおうと民間の飛行場へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 これは歴史的な瞬間なのだろう。

 紅月 カレンは他人事のように眺めていた。

 急遽設置されたフェンスに囲まれているアッシュフォード学園校舎前で、神聖ブリタニア帝国皇帝オデュッセウス・ウ・ブリタニアと黒の騎士団CEOのゼロが対面し、メディアのカメラマンに見えるように握手を交わしている。

 世間的には敵対関係だった両者(ゼロとブリタニア)が手を取り合い、平和への道を歩み始めたように見えるのだろうが、事情を知っているだけになんとも微妙な心持ちだ。

 どうもオデュッセウスはブラックリベリオン直後からこの展開を狙っていた節がある。

 私達が逃亡生活していた際に会った奴は何やら思わせぶりな台詞を言ったり、助言をくれたりした事にも思う事があったが今となればすべて予想していた事なのだと理解する。いや、そうなるように手も貸していた。

 協力者のマオに反ブリタニア勢力の捕虜とされていたネモ、さらに弟役として記憶を書き換えられたルルーシュの監視をしておきながらあっさりと黒の騎士団入りしたロロ。人員もさることながら千葉中尉の月下を改造した月影をゼロに渡るように手配したりとブリタニアとの戦力の格差を埋められるように計らっていた。

 事が判明したのはオデュッセウスとの契約を終えたネモがマオとロロと共にゼロに伝えた事が原因だ。

 どうもネモはオデュッセウスに協力すれば自由を手に入れられるという契約の下で働いていたらしく、神根島の一件でそれも終了したとの事で一時戻って来るようにと通達されたとか。

 マオはC.C.と一緒に居たいから残ると言い、ロロはどうするべきか悩んで今は保留という形で黒の騎士団に在籍している。

 

 マッチポンプと言うと全てをアイツに操られていたみたいで癪だから否定する。

 この結果は私達が勝ち取ったものだ。

 しかし助力を得ていたのは事実。

 この事は私とゼロ、C.C.の三名しか知らない。もしも他の誰かに知られたら悪い方に話が進むだろうし、千葉中尉の耳に入ればどうなる事か…。

 

 そんな二人(ブラコン兄弟)が握手しているとしか認識できないカレンは警備の為にゼロの側で控えている。

 向こうも親衛隊が周囲を警戒しているが当の護衛対象はのほほんとしたものだ。

 

 ディートハルトからの報告で日本近海に多くのブリタニア軍が動いている事が分かっている。

 その多くが皇族連中で、ゼロは――ルルーシュは色々考えた後にため息交じりに「血縁ながら呆れるほどのブラコンだな」と呟いていた。

 つまりそういう事なのだろう。

 動いた者らはオデュッセウスが心配し過ぎてギリギリまで動いている。

 私からすればルルーシュも含め皇族にはブラコンとシスコンしかいないという認識に至った。

 

 「この会議でブリタニアと共に歩めることを強く願おう」

 「私もそうありたいと思ってますよ。ところで暫し学園内を歩いても。少し落ち着かなくて…」

 「構いませんが」

 「ありがとうございます。レイラ達は先に会場で待っておいて」

 「この場で護衛を外すのは――」

 「私はゼロと話があるんだ(・・・・・・・・・)

 「――――畏まりました」

 

 納得せざるを得なかったレイラは親衛隊やアーニャと共にその場で待機し、オデュッセウスはゼロに続いてクラブハウスの方へと足を進める。私も遠慮した方が良いのか?それとも護衛として付いて行った方が良いのかと悩みながらも付いて行く。

 別段何も言われないという事は良いのだろう…か?

 

 「いやはやすまないね。会議前だというのに緊張しちゃって…」

 「兄上。ここは会議に使う予定がなかったので警備の都合上チェックはしましたが盗聴の類はさせてません」

 「ん?という事は何か公に出来ない話をするという事かい?」

 「いえ、そういう訳ではないのですが―――顔色が優れないようですが何かあったのですか?」

 

 クラブハウスに入ってあははと乾いた笑いを漏らしながら呟いたオデュッセウスにルルーシュは疑問をぶつけた。

 顔色が優れないと言ってもいつもと変わらない様にしか見えないカレンは凝視するが、どう見たって顔色が悪いようには見えない。

 けれどフリーズしたようにびしりと固まった事から心当たりはあるのだろう。

 一応皇帝になった男がこうも分かり易い反応を見せるのは如何なものかと今更ながら思ったが今はどうでも良いか。

 関節が錆びた人形を無理やり動かすようなぎこちなさを見せながらオデュッセウスはゆっくりと振り向く。

 

 「……分かる?」

 「えぇ、分かりますよ」

 「ごめん。私全然分からないんだけど」

 「馬鹿な。見れば解るだろう」

 「あー、皇族特有のブラコンフィルターでないと見えないのね」

 

 それは分からない筈だ。

 抗議の視線をシスコン(ルルーシュ)から受けるが無視してそう納得する。

 そう納得するしか話も進まないだろうし。

 隠していたのかバレてがっくりと肩を落としたオデュッセウスは階段に腰を下ろして俯いた。

 

 「はぁ…感情のコントロールって皇帝だったら必須だよねぇ…。いつも通りしているつもりだったんだけど」

 「大丈夫だと思うわよ。一般人には違い解らないから」

 「それはそれで弟妹に心配をかける事になるってこと。シュナイゼルみたく仮面を使いこなせれば……いや、無い物強請りしてもしょうがないか」

 「それでどうしたのですか?兄上が表情に出すほどの事です。助けられるかは分かりませんが協力は惜しみませんよ」

 

 ルルーシュの言葉に悩みながらオデュッセウスは重い口を開けた。

 

 「ニーナ君の言葉を聞いてからざわついて落ち着けないんだ」

 「「はぁ?」」

 

 どういう事だと首を捻る二人にオデュッセウスは出発前にブリタニア本国であった話を手短に、そして端的に、重要な所は出来るだけ詳しく話して頭を抱える。

 つまりニーナに自分が褒められたうえに勿体ないと言われたが好ましい的な発言を貰って胸がざわついていると…。

 

 「なんなんだろうかこの胸のざわめきは…」

 「ねぇ、ルルーシュ。私何となく分かったんだけど」

 「奇遇だな俺もだ」

 「「恋でしょ(だな)」」

 「ふぁ!?」

 「もしくはそういう感情を意識して受けた事がないか…かな」

 

 朴念仁のルルーシュにまで指摘されたオデュッセウスは素っ頓狂な声を上げた。

 にしてもシャーリー……よくこの朴念仁に恋愛に気付けるぐらいに成長させたわね。

 良くも悪くも優し過ぎるところがあったからそういう感情を向けられたらどう対処したら良いのか分からないというのが近いのだろう。

 初心な少年みたいな反応をする三十二歳のオデュッセウスに呆れ顔を向け苦笑いを浮かべる。

 

 「まさか自分で気付いていなかったの?」

 「兄上とて今まで好きになった女性は居るでしょう?」

 「勿論いるさ。ギネヴィアにコーネリア、ナナリーに…」

 

 あれ?何かがおかしい。

 次々に名前が挙がるのはオデュッセウスの妹か身近な女性。中にはアッシュフォード学園のメンバーも入っていた。

 もしかしてというかまさか…。

 

 「ちょっと待ってよ。もしかして人を好き(・・)になったことがないの?」

 「へ?いや、だから好きな女性は――」

 「違う違う。私達が言っているのはlikeじゃなくてloveの話」

 「つまり愛した事が無かったって事か?」

 「もしかして初恋も無かったんじゃない」

 「そんな事……………あれ?」

 

 否定しようと思い返したオデュッセウスは否定する材料がなかったのか首を捻る。

 それも鑑みて色々理解し、納得したのだろう。

 見る見るうちに顔が真っ赤に染まっていく。

 

 「どどどど、どうしよう!?」

 「落ち着きなさいよ。あんたはどうしたいのよ」

 「こんな取り乱した兄上は初めて見たな」

 「いやさ、それよりこの後の神楽耶様達との会議大丈夫なの?」

 「だいじょばない!どうしようルルーシュ」

 

 わたわたと慌てるオデュッセウスを落ち着かせようとし、ルルーシュの提案で恋愛に詳しい(と思っている)シャーリーに相談をすることに。

 そして何故かエールを送られてパニックに陥るオデュッセウスを治める方がラウンズを相手にするより大変だという事を知るのであった…。

 

 

 

 

 

 

 ビスマルク・ヴァルトシュタイン。 

 帝国最強――否、今や元帝国最強の騎士は静かにモニターを見つめていた。

 モニターに映し出されるは黒の騎士団が警備をしているアッシュフォード学園に到着し、若干疲れが見えるが優し気な笑みを浮かべたオデュッセウス・ウ・ブリタニア。

 父親であるシャルル陛下の座を奪い、夢を潰えさせ、ナンバーズびいきなどと言われながらも皇帝を務める男。

 

 「相も変わらず気持ちの悪い笑みを浮かべていらっしゃる」

 「言葉が過ぎるぞブラッドリー卿」

 「過ぎるも何も我々はシャルル皇帝陛下に従う者。ならばアレは敵でしょう。ならば敬意を払う必要は無いと思いますが?」

 

 ニヘラと挑発的な笑みを浮かべるルチアーノ・ブラッドリー。

 何がシャルル皇帝陛下に従う者だ。奴はただ単に気にくわなかったオデュッセウス殿下を殺せる機会に跳び付いただけだろうに。それにシャルル陛下に真の意味で従っている者は私を含めても二人しか(・・・・)いない。

 他の者は利用されている駒でしかないというのに。

 視線からブラッドリーを外したビスマルクは周囲に見渡す。

 

 この通信兵と通信端末に各部調整用のコンソールが集中する指令室にはシャルル陛下に付き従う騎士が勢揃いしていた。

 騎士として仕えた誇りを胸に集まったドロテア・エルストンにモニカ・クルシェフスキー。

 シュナイゼル殿下と共に合流したノネット・エニアグラムとジノ・ヴァインベルグ。

 ある者との決着をつける、もしくは帝国を見極める為に参加したオイアグロ・ジヴォンとオリヴィア・ジヴォン。

 帝国最強と謳われるラウンズの精鋭たち。

 そして若くから宰相として帝国の頭脳となり、政治でも軍事でも強みを発揮したシュナイゼル・エル・ブリタニア第二皇子。

 早々たる面子に十分な戦力に兵力。

 我らが行うのは帝国に反旗を翻した不埒者の粛清という大義名分を掲げた道化。

 陛下の夢が潰えたとしても騎士として最期まで付き従うのが道理だろう。

 

 「ローゼンクロイツ伯爵と私兵部隊収容を完了致しました」

 「これで準備は整ったかぁ」

 

 指令室の扉が開きシャルル・ジ・ブリタニア皇帝陛下が入られる。

 全員が作業を中断して席に座られるまで頭を垂れる。

 

 「報告をせよビスマルクよ」

 「ハッ、現在ローゼンクロイツ伯爵を収容して全ナイトメアフレームの格納を確認したところでございます」

 「基地の方はどうした?」

 「データは消去し、施設は隈なく爆破して我らの痕跡は塵一つ残りません」

 「良かろう。なら出航致せ」

 「イエス・ユア・マジェスティ」

 

 下げていた頭を上げてビスマルクは兵士達に聞こえるよう声を張る。

 

 「これより我らは不当な手段で玉座を掠め取った不埒者共を討ちに行く。出港準備をせよ!!」

 「外部偽装解除します」

 「各システムチェック」

 「エネルギー回路順調に始動しています」

 「フロートユニット起動を確認」

 「各ブロックに異常なし」

 

 兵士達が急ぎながら慌てず作業を行っている。

 指令室まで届く揺れを感じながらビスマルクは作業を眺めながらただ待つ。

 外部からの揺れは収まり、今度は内部が揺れる。

 続いて感じたのは僅かながらの浮遊感。

 全ては順調に進んでいるようだ。

 

 「全システムオールグリーン!いつでも行けます」

 「陛下。ご命令を」

 「うむ、ダモクレス浮上!目標――神聖ブリタニア帝国帝都ペンドラゴン!!」

 

 何故シュナイゼル殿下がこちら側についたのか疑問は残るものの、カンボジアの大地から離れ、超大型空中要塞ダモクレスはその姿を晒し、空へとゆっくりながら浮上して行く。

 多くの兵士、多くのナイトメア、そして現在生産出来たフレイヤ弾頭を抱えて…。


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