コードギアス~私が目指すのんびりライフの為に~   作:チェリオ

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第114話 「戦争の分岐点」

 モニターに映し出される状況にシャルルは愉快そうに笑みを浮かべる。

 地上部隊は現在優勢であるがダモクレス前面に展開した主力隊は各々押し戻され始めた。

 真っ当な軍の総大将ならばこの状況下で笑みを浮かべることは無いが、シャルルにとっては事情が異なる。

 自分は敗者であり、敗者として勝者に従う為に行動しているのだから。

 勝者であるオデュッセウスが望む平和に従来のブリタニアは必要ない。

 今までのブリタニアは“嘘の無い世界”を世界に押し付ける為にギアス関連の遺跡を入手する為の武力。真相を知らずにその中で成長し増長した輩は今後のブリタニアでは馴染まないし、害悪ですらあるだろう。

 オデュッセウスにはそれを排するだけの度量はない。出来るとすれば斬り捨てられるギネヴィアかコーネリア、または出来る限り穏便に見えるように(・・・・・・)手段を講じれるシュナイゼルだけだ。

 

 ならば儂ら(・・)が排除の目的を与えてやろう。

 儂を旗印に集めて黒の騎士団と神聖ブリタニア帝国の連合軍が戦う。

 邪魔な輩を一掃し、これまで敵対していた各国とブリタニアを一致団結させられる。

 後はオデュッセウスとルルーシュが上手くやるだろう。

 

 シュナイゼルがこちらに入った事以外はすべて順調にシナリオ通りに進行中。

 シナリオと言っても儂が動き、反オデュッセウス派と儂に旧皇帝派を集めに集め、連合軍と戦って敗北となんともお粗末なシナリオだがな。

 ゆえにアドリブは付け加えさせてもらった。

 儂らの夢を打ち砕いたささやかな仕返しという訳だ。

 

 「陛下。予定通り連合軍が優勢ですがこのままでは…」

 「余りにも簡易に事が進みゆく…か」

 

 ビスマルクの危惧は最も避けるべきもの。

 あまりに容易にこちらが敗北を喫する事があればこのシナリオに勘付く者も出て来る可能性がある。シュナイゼルには事の真相を話してはおらぬがどうやら察しては居るようだ。察しておきながらあえてこちら側として指揮をしておる。が、戦力が同等でも突出した者らが向こうの方が多いためにシュナイゼルでも抑えきれないのが実情。

 ならばこの劣勢を覆すだけの物を使用するしかない。

 

 「シュナイゼルよ。フレイヤを使用せよ」

 「父上。まだこちらの部隊が連合軍と接して交戦中。撃てばこちらの被害は甚大ですが」

 「構わぬ。正面に展開する障害物(・・・)を排した後に、敵正面戦力を撃ち滅ぼせ」

 「味方ごと!?」

 「それがどうした」

 「―――っ!!」

 「カノン。皇帝陛下からの勅命だ」

 

 発射の指示が出される前にカノン・マルディーニが通信兵を押しのけてマイクを手に取る。

 友軍全体というか特定の誰かにこの事を伝えているようだ。

 さてもうここまでだろう。

 味方ごと屠れとの命令に周りが騒ぎ立てる。

 

 「儂に異論を唱える者はこの場を離れよ。使い物にならぬ駒に用はない」

 

 この一言に恐る恐る周りを確認し、どうしたら良いか分からぬ兵は一人が逃げ出すとそれに連なって退席して行く。

 残る意思を見せたのは儂を除けば三名のみ。

 否、残っているカノン・マルディーニはシュナイゼルが逃げ出さない為に居るに過ぎないか。

 

 「シュナイゼルよ。貴様は…」

 「私はすでに理解しております。その上でここに残りましょう。そもそも兄上に仕掛けた時点で覚悟はありますので」

 「……好きにせよ」

 

 どうせ困るのはあ奴だ。

 それにしても嘘を嫌っていた儂がこうまで嘘を付かされるとは…。

 

 「我が騎士ビスマルクよ。現時刻を持ってナイトオブワンの任を解く」

 「陛下!?」

 「貴様も貴様の好きにせよ」

 「―――ッ!!……イエス・ユア・マジェスティ」

 

 深々と頭を下げて指令室をあとにする。

 奴は奴でオデュッセウスと向き合うつもりだろう。

 後は儂の下に誰が来るかか…。

 

 

 その前にやるべき事はある。

 部隊に明記されていない第七軍に命令を出さねば不貞腐れてしまう。

 これこそ奴にとっては最大の難関となるだろう。

 

 「さぁ、好きに暴れよ。我がナイトオブシックスよ」

 

 三名しかいない指令室でシャルルが小さく呟き、楽し気に笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 「いやはやこれはこれでどうしたものか」

 

 ノネット・エニアグラムは微笑みながら状況を見つめる。

 すでにこちらの左翼は崩壊寸前。

 中央は押し戻され始めて、戦線を維持できているのは右翼のみ。

 地上軍はまだ優勢のようだけどどうなるか。

 

 「まぁ、やるようにやるだけだね」

 『何を呑気な事を言っているの!』

 

 呟きが漏れていたのかドロテアの怒声が届く。

 右翼を担当しているラウンズは私とドロテア・エルンスト卿の二人。

 連合軍から差し向けられた日本占領時に唯一ブリタニアに土を付けた厳島の奇跡で有名な藤堂 鏡志郎に直属の四聖剣。そしてオデュッセウス陛下の唯一のラウンズとなったアーニャ・アールストレイム卿。

 厄介な相手ではあるけれども他に比べたら幾分かマシだろう。

 

 左翼にはオデュッセウス殿下が企画して私も手伝った訓練を耐え抜いたグリンダ騎士団と謎の白い一本角。オリヴィア・ジヴォン卿にオイアグロ・ジヴォン卿との通信が途絶えたという事は少なくともあの二人と同等かそれ以上の者が二人以上いた事になる。 

 中央は話には聞いていたランスロット・アルビオンと紅蓮聖天八極式が固めている。

 詳しい内容は教えて貰えなかったがランスロット・クラブでは埋められない圧倒的な性能差があるとかないとか。

 実際モニター越しでもその二機の付近ではこちらの機体が撃破されているようだし、相手にするのはきつかっただろう。そもそもブラッドリー卿が初めに戦線離脱させられた事でお察しだが、モニカ・クルシェフスキー卿は災難としか言いようがない。

 そうでなくとも目撃情報では中華連邦の黎 星刻が搭乗している神虎に第二次ブラックリベリオンにてジェレミアが乗っているナイトギガフォートレスを確認している。戦力から現場指揮官まで充実し過ぎている中央をラウンズ二人で守る方が無理な話だ。

 

 『こちらだけでも敵を叩かなければ』

 「だったら指揮官を潰すだけの話」

 『敵旗艦に突撃でもかける気か?』

 「現場指揮官なら手も出るさ。行くぞ!」

 『付き合おう。ナイトメア二個小隊続け!』

 

 ドロテアの声掛けにグロースターを中心としたナイトメア二個小隊が随伴する。

 先頭を行くのはランスロットの予備パーツで組み立てられ、ノネット用に改修されたランスロット・クラブ。

 そしてドロテアのパロミデスがあとに続く。

 

 パロミデスとはユーロ・ブリタニア(亡国のアキト)でアシュレイ・アシュラが使用したアフラマズダの流れを汲む機体。

 大きな特徴と言えば肩部がガトリングから手のように五指がある腕のような大型ユニットだろう。外見上それ以外に武装らしい武装は無く、ライフルどころかメーザーバイブレーションソードの一本も付いていない。

 この機体は従来の機体と異なって手足を通常以上に強化し、その強靭な四肢こそがメインの近接武器なのである。

 

 次々と突破して行く先には前線で指揮を執る藤堂 鏡志郎の斬月が待ち構えていた。

 

 『私を狙ってきたか!狙いは良し―――だが!!』

 『―――線上で来るなら問題ない』

 

 斬月が飛び退くとシュタルクハドロンを構えたモルドレッドの姿が。

 ノネットは唇を嘗め、回避することなくそのまま突き進む。

 

 クラブには射撃武装など積み込んでいない。

 元々近接戦闘に特化した戦いを好んでいるノネットは武装として装備しているのはメーザーバイブレーションソード二本に大型ランス。そしてパーシヴァル同様の特殊武装ルミナスコーン。

 ただクラブのルミナスコーンはパーシヴァルと違って両手に付いてあるという点。

 

 両手のルミナスコーンを展開してシュタルクハドロンを中央より防ぐ。

 先端で分けられたようにシュタルクハドロンは拡散してクラブは勿論後続のドロテア達も無傷であった。

 

 「残念だったね。クラブのルミナスコーンの出力は以前より上げておいたのさ」

 『――かなり厄介』

 『だが間合いには入ったよ』

 

 シュタルクハドロンが払われると左右から暁 直参仕様が二機、頭上より月影が斬り込んでくる。

 避けていたとしても三方からの同時攻撃で仕留める気だったか。

 さすがは奇跡の藤堂。

 

 「でもそれじゃあ足りないね」

 『それと勘違いをしている』

 

 ルミナスコーンを解除して大型ランスで月影の攻撃を受け、左右から突っ込んで来る暁 直参仕様にパロミデスが対応した。

 斬りかかった朝比奈機は刀身を左肩部大型ユニットに捕まれ、卜部機の一撃は右肩部大型ユニットによって受け止めら、全くビクともしない様子から出力の違いを目の当たりにさせられる。

 

 『私の間合いに飛び込んだのだ貴様らは』

 

 受け止められたどころか卜部機は押し返された上に吹っ飛ばされる。

 『卜部さん!?』と心配して叫ぶ朝比奈は刀を引くことも押すことも出来ず、柄を掴んでいた手を掴まれた。

 拒もうとしてもパロミデスの力に敵わず無理やりに引き寄せられる過程で腕が千切られ、近付かされたところを頭部に一撃をお見舞いされて頭部が砕け散る。

 

 『朝比奈!卜部!』

 『人の心配をしている場合か!!』

 

 吹き飛ばされた影響で両腕を破損、片腕を引きちぎられ頭部はお釈迦となった卜部と朝比奈は戦闘離脱するしかなく。

 一気に二人を失って手数が少なくなってしまい藤堂が出るしかなかった。だが、下手に斬り合うと斬月まで同じ目に合いかねない。なので一撃離脱を繰り返して刀身を掴まれない様にしなければならない。

 

 『さすがは名の知れたナイトオブラウンズ。一筋縄ではいかんか』

 『――でも抑えてくれれば私が仕留める』

 

 さすがに味方が入り混じってしまった現状ではシュタルクハドロンは使えなくとも全身の小型ミサイルならば問題はない。

 ターゲット誘導に従ってパロミデスに向かって撃ち出す。

 斬月の一太刀を右腕で受け止めたパロミデスの大型ユニット―――通常のナイトメアの腕ほどの太さがある五指が周囲に散った。

 何が起こるか理解できずにいると散らばった両肩の大型ユニットの合計十指が威力は弱いがハドロン砲を放ち、配置から網の目状に展開されて小型ミサイルを全弾撃ち落とした。

 十指をよく見てみると大型ユニットからワイヤーが繋がっており、遠隔操作で動かせるようだった。

 反撃に多方向からのハドロン砲にモルドレッドは防戦一方。藤堂も押し切れずにいるとなれば千葉機の月影は援護に向かいたいところだがノネットがそうはさせない。

 

 「ヴァインベルグ卿から聞いていた通りだな。中々にピーキーな機体のようだ」

 

 オデュッセウスの下で改修に改修を重ねられた月影のスペックはラウンズ専用機並みに高い。高いがそれも使いこなしてこそ。ノネットが言ったように扱い辛く、暴れ馬のような機体を操れるのはスザクやカレンクラスのパイロットぐらいである。

 不利な条件の上に自身より格上の騎士に千葉は防戦一方……いや、押されつつある。

 

 『これほどまでの差があるとは……しかし私は!!』

 

 飛苦無型投擲用鉄鋼榴弾をすべて投げつけたが大型ランスの二振りで叩き落されてしまう。

 が、振り切る瞬間を狙ってすべてのスラスターを用いた制動刃吶喊衝角刀による渾身の一撃をお見舞いする。

 横向きになっていた大型ランスは真っ二つに斬られ、無防備なクラブの懐に入り込んだ。

 

 『負ける訳には行かない!!』

 「それはこちらも同じこと」

 

 返しの一撃を蹴りで逸らし、展開したルミナスコーンで左腕を潰す。

 片腕をやられた月影は距離を取ろうと後方に退く。

 ノネットは追撃することなく再びルミナスコーンを解除してコクピット左右に提げていたメーザーバイブレーションソード二本を鞘より抜いて構える。

 

 『新手か?』

 「あぁ…厄介なのが来たね」

 

 レーダーに映った接近中の機体をモニターで捉えるとそこには蒼の紅蓮弐式――蒼穹弐式改が映し出されていた。

 斬月とモルドレッドを抑えつつ空いている三指でドロテアが牽制射を行うとハドロン砲が機体を通り過ぎたかのように通過し、ドロテアは驚愕で表情が歪み、ノネットは頬を緩めた。

 

 「ここは任せたよ。私はあっちを担当する」

 『気を付けろ。普通じゃないぞ』

 「だろうね」 

 

 一度の動きでよく分かっている。

 ラウンズの一席であるドロテアの牽制射といえども回避しただけで名の通ったパイロットだろう。それに加えてあの動きはコンマ単位で操作するなど一般の技量どころかラウンズでも再現は難しい動き。

 二機とも速度を落とすことなく得物を振り上げてぶつけ合う。

 

 一回りも二回りもデカい右腕に注意しつつ、剣を振るっては傷を与える。

 大振りな一撃にだけ注意していると左腕より折り畳み式のナイフが展開され、左手のメーザーバイブレーションソードの柄を断ち切られてしまった。

 迫るは巨大な右手より発せられる輻射波動の光。

 右手のメーザーバイブレーションソードとナイフを押し止め、左腕のルミナスコーンを展開させて輻射波動を受け止める。

 たった一瞬斬り合っただけで相手はラウンズ並みのパイロットと理解した。

 

 「良い腕だ。私はナイトオブナインのノネット・エニアグラム。お前!名前は?」

 『……ライ』

 「ライか覚えておこう」

 

 いきなり名乗られて驚いているのか言葉数が少なかったがそれでいい。

 どうせまだまだ獲物を通して語り合えるのだから。

 

 ダモクレスからの直通が――カノン・マルディーニからの通信が届くまでは…。

 

 『戦場から離脱なさいノネット!!』

 「なに!?どうしたんだいそんなに慌てて…」

 『フレイヤを撃つわ!シャルル陛下は味方ごと吹き飛ばす気よ!!』

 「―――ッ!?それが一群の王がする事か!!…クッ、この戦場の全兵に告げる!離脱しな!フレイヤが発射される!!」

 

 全域に発したノネットの必死さに対抗していたライは手を止めて、周囲を警戒する。

 ノネットとライはダモクレスより放たれた一発の弾頭が中央のシャルル一派後方を消滅させる輝きを目にした。

 

 「ドロテア!味方を退かせるよ!!このままではこちらも撃たれかねない!!」

 『退くってダモクレスにか!?』

 「違う!神聖ブリタニア帝国(・・・・・・・・・)にさ!」

 

 苦い表情を浮かべながら自分ながら虫の良い事を言っているのは理解している。

 だけれどもここはオデュッセウス陛下に伏してでも頼まなければ全滅してしまう。

 でなければ残るのはフレイヤによる惨劇だ。

 何としても止めなければとノネットはオデュッセウスとの面会を申し込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 神聖ブリタニア帝国皇帝オデュッセウス・ウ・ブリタニアの座乗艦であり、神聖ブリタニア帝国軍旗艦浮遊航空艦アヴァロン級二番艦ペーネロペーは、フロートシステム被弾の為に日本の大地へと不時着を果たしていた。

 すでに旗艦はアヴァロンへと移され、ペーネロペーに乗艦していた親衛隊は脱出を行っている最中であった。

 脱出と言うのは炎上しつつあるペーネロペーからではなく、不時着してしまった敵勢力圏内からの脱出である。

 

 『ちょっとどれだけいるのよ!』

 『叩いても叩いても湧いて出て来やがる!!』

 『リョウもアヤノも喋る暇があったら手を動かしなよ』

 『『やってる!!』』

 

 佐山 リョウ、成瀬 ユキヤ、香坂 アヤノの三名が迫りくるサザーランドやグロースターに対して防戦一方でありながらも奮闘を見せる。しかしすでに追加装備されていた武装は使い果たして今や通常装備のみのアレクサンダ・ヴァリアントⅡとなっている。

 四十機を超えていたアレクサンダ・ヴァリアント・ドローンは全て大破して今や残るは有人機のみ。

 非戦闘員を装甲車数台に乗せて護衛としてハメル少佐率いる警備隊のアレクサンダが三機にアシュラ隊の面々が護衛に周り、残りは目立つように交戦しつつ後退。つまり囮兼殿。難易度で言ったら今までで最高だと言っても良い。

 

 『くそ!弾がねぇ!!』

 『私のを使って!』

 『あぁ!?』

 『私のは接近戦主体だから』

 『それはさすがに無茶だろうが!!』

 

 確かにアヤノの戦闘スタイルは接近戦向けでそれように改修されているが、数が数だけに飛び込めば辿り着く前に蜂の巣にされるのは目に見えている。

 しかしながら銃撃戦仕様のリョウのアレクサンダの弾切れ。近接戦闘を行えるは行えるがアヤノ機に比べて質は落ちる。

 選択的に間違ってないと分かりつつも自分よりも仲間が危機に瀕する行為を看過できない。

 互いに互いを思いやるからこそ生まれる矛盾。

 

 『おめぇら伏せやがれ!!』

 

 そんな矛盾を一蹴し、周囲の敵機に弾幕が通り過ぎる。

 咄嗟に伏せた三機の上を銃弾が通り過ぎて敵機を薙ぎ払う。 

 振り返れば赤いアレクサンダ――アシュレイ・アシュラ用のアレクサンダ・レッドオーガがチェーンガンを構えていた。

 

 『無事か?』

 『危うく味方に蜂の巣にされるところだったけどね』

 『皆、無事そうで何よりです』

 

 アシュレイにより開けた空間にアキトのアレクサンダ・リベルテ改が斬り込み、三人の盾になるようにレイラのアレクサンダ・ドゥリンダナが立ち塞がり両手で抱えていたマガジンを手渡す。

 

 『弾薬の調達で遅くなりました』

 『こんなに何処にあったのさ?』

 『それにアレ(チェーンガン)なんてあったか?』

 『陛下の試作品コーナーに…』

 

 乾いた笑みを浮かべる。

 オデュッセウスの悪癖というか妙に武器を収集する癖があるのだ。

 ランスロット・リベレーションに装備されている拳銃や短機関銃もその例で今までになかった造形の銃を作らせては保管する。それらをまとめたのが試作品コーナーと呼ばれる陛下専用のスペース。

 本国には武器と言わずナイトメアを収集している倉庫があるというから規模のデカすぎる悪癖であるが、そのおかげでまだまだ生き残れるのだから感謝しなければならない。

 後でレイラが苦情はいれるだろうけど…。

 

 『で、弾薬補充はありがてぇけどこれからどうする』

 『後退します。もう間もなく味方勢力圏内に到着している筈ですから』

 『そう言っても容易くは逃がして貰えない様だ』

 

 追加のサザーランドにグロースター、さらにはナイトギガフォートレスアラクネタイプが五機ほど接近してくる。

 地上戦で連合軍が有利に進めないのは所々にアラクネが配備され、その猛威を振るっていたに他ならない。

 戦場は空中戦に移行される中、どうしても地上部隊の強化と削減をしなければならなかったブリタニア軍はオデュッセウスの下にあったアラクネに目を付けた。ただし本来のアラクネを再現するとコストが掛かり過ぎるので大きさを一回り小さくし、脚部を六本に減らし、武装には腹部の十六連装小型ミサイルポッドに超電磁砲を二砲門、各足関節部機銃、頭胸部前方の三連装大型ガトリング砲が装備されている。

 電磁ユニット、複数のスラッシュハーケン、触肢型メーザーバイブレーションソード、ハドロン砲は無く、装甲もシュレッダー鋼と電磁装甲から一般の装甲板へと変えられた。

 メインとなるユニットはサザーランドの上部だけを使用させ、脱出機能はコクピットブロックのみ。

 

 以前に比べて弱体化凄まじいがそれでも火力は高く射程も長いので、現行の量産機で勝とうとするならばハドロン砲を装備するガレスを二個小隊は用意しなければならないだろう。

 

 『こりゃあ殿下に言うべき苦情が増えるな』

 『アキト少佐。殿下でなく陛下です』

 『こんな時もレイラは真面目だね』

 『デカ物退治ならこいつの出番だろ』

 

 アシュレイがチェーンガンを構えるが空回りするだけで一向に弾が放出されない。

 

 『アレ?』

 『総員散開!!』

 

 アフラマズダと違って予備弾倉をタンクで付けている訳でないので同じ感覚で撃って居たら早々に弾切れを起こす。

 理解させる前に指示を出して離れさせる。

 小型ミサイルと超電磁砲の砲撃が降り注ぎ、周囲に被害をもたらす。

 迎撃しながら後退するもナイトメア隊が回り込んで包囲しようと動き出して退路を断って殲滅しようとしている。

 たった六機で突破するには難し過ぎる戦局。

 レイラは策を巡らすが地形も把握も出来ず、戦力的に圧倒的劣勢に立たされている状態では有効策が思いつかない。

 出来得ることはアレクサンダ・ドゥリンダナのプルマ・リベールラを展開して味方を守る事のみ。

 圧倒的に手が足りなさすぎる。

 

 『―――っ!レーダーに機影』

 『敵の増援!?』

 『いえ、味方識別コードを確認』

 

 レーダーに映った一団に目を向けると通常のナイトメアよりも大きな機体が戦場を駆けていた。

 ケンタウロスのような下半身は馬で上半身は人型のナイトメアフレーム“エクウス”と鳥型のナイトメアフレーム“アクイラ”。

 パラックス・ルィ・ブリタニアとキャスタール・ルィ・ブリタニア専用機。

 という事は周囲のナイトメア隊は親衛隊。

 思わぬ増援に頬を緩ませるが未だ窮地を脱したわけではない。

 

 

 

 ―――ピシリ…。

 

 

 頭上より変わった(・・・・)ヴィンセントが着地するな否や包囲しようと左方に展開中のナイトメア部隊が一瞬で凍り付いた。

 信じられない光景を生み出したヴィンセントはその場でアラクネの一機と対峙する。

 

 『こちらジュリアス(・・・・・)キングスレイ(・・・・・・)。貴官らを掩護する』

 

 それだけ告げるとヴィンセントはアラクネ向けて一直線に進んで行く。

 迎撃しようとガトリングが火を噴くが氷結が影響してか弾丸が逸れて掠りもしない。

 

 上からはガレス一個小隊が、後方からはヴィンセント・ウォード三個小隊が周囲を固め、レイラ達を掩護するように周囲に対して弾幕を張る。

 

 『陛下直属の親衛隊の方々ですね』

 『はい、親衛隊隊長のレイラ・マルカル大佐です。そちらは』

 『私はキャスタール殿下の騎士を務めているヴィレッタ・ヌゥと申します。ここは我らとクロヴィス殿下の親衛隊であるキューエル隊で抑えますので撤退を』

 『すでに他の隊員は保護しております』

 『しかし私達だけ撤退は――』

 『いえ、私達も含めて皇子様方にとってはお邪魔となりますので』

 

 キューエルのガレスとヴィレッタのヴィンセント・ウォードの見据える先には先頭を突っ走るエクウスと頭上を飛行するアクイラの姿があった。

 皇族機という事もあって防御力が異常に高く、ナイトメア用のアサルトライフルではダメージを負わせているのかすら怪しく見える。

 

 『あっはっはっはっ、最っ高!』

 

 エクウスの前に立ちはだかるサザーランドを強靭な四足が踏み潰し、易々と振り回される大槌がグロースターを吹き飛ばす。

 

 『もうパラックス!ボクの分を残してよ!!』

 

 身軽な動きで相手を翻弄し、アクイラの鋭い両翼がナイトメアが障子紙を裂くように容易に切り裂く。

 

 『嫌だね。いっぱい狩って兄上に褒めて貰うんだから』

 『ボクだって褒められたいのに!』

 

 オデュッセウス陛下に褒めて欲しい一心で敵を楽しそうに蹴散らす様子には狂気すら感じ取れる。 

 気圧されるほどの狂気を感じながらも一騎当千。無双と呼べる光景に安堵を覚える。

 これで生き残る事が出来ると。

 

 一気に戦局を変えそうな二機に対してアラクネ三機が対峙するが、アクイラの角より発せられた拡散するビーム、エクウスからは雷撃を放たれて直撃を受けた二機が爆発炎上。残る一騎は距離を詰められて大槌の一撃からの翼で斬りかかられて沈黙した。

 戦果を挙げる度に嬉しそうな顔をする二人であったが正直面倒にもなりつつある。

 少々飽きが来たのだ。

 

 『こいつら数ばかりで全然手応えないな』

 『なんか倒しても面白くないね』

 『『一掃しちゃおうか』』

 

 アクイラとエクウスが距離を縮めたかと思うと急にエクウスがパーツ単位で崩れてアクイラへとくっ付いて行く。

 元々純白のエクウスと黒をベースにしたアクイラが合体して金色のナイトメアフレーム“レガリア”へと変貌した。

 大槌は超大型ランスと成り、背中にはエクウスの翼が生え、胸元にはミサイルの弾頭が姿を現す。

 

 『『アーハッハッハッハ!喰らえ!!』』

 

 ジュリアスに凍結させられたアラクネを除いて最後となった一機と周辺に展開するナイトメアフレームは悲劇であろう。

 レガリアはエネルギー量、防御力に攻撃力全てが出鱈目な機体だ。

 そもそも登場したゲームでは損傷を受けた二機が合体して出来上がった機体。

 たった一騎でランスロットに紅蓮弐式、ガウェインを相手取れる異常な性能。

 

 そんな化け物が目の前に現れたのだから…。

 

 頭部の角より放たれた二本の電撃が薙ぎ払い、胸部の大型ミサイルが着弾点を中心に吹き飛ばす。

 最後に翼で蓄積された電流をまとめた四つの光玉が放り込まれ、アラクネを巻き込んで周囲のナイトメアもろとも光で包み込む。

 目が眩むほどの光を発し、範囲内の機体は吹き荒れる電撃によって粉砕され、残ったのは浴びた電撃により放電する残骸のみだった。

 

 鬱陶しい敵機を殲滅した双子はにっこりと笑みを浮かべ、補給の為にレイラ達や救援に駆け付けた部隊を連れて味方陣地へと下がるのであった。




●パロミデスについて

 ドロテア卿のパロミデスなのですが詳細な情報がないので五指のハドロン砲辺りは勝手に想像して付け足しました。
 本来そのような機能があるか分かりません。

 漫画の双貌のオズO2に登場するのですが戦闘シーンは無く、あるのは飛行シーンのみ。
 武装は見当たらず、説明で四肢が強靭で格闘戦を主体とした機体としか…。
 もしかしたら何かで情報が出ていたのかも知れませんがこれ以上を私は知らずに、射撃武器が欲しいと思い設定を追加させて頂きました。


 ……というか大型ユニットの五指を見た瞬間に機動戦士ガン●ムユニコーンに搭乗するネオジオ●グを連想したのでそのようにしてしまいました…。

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